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■夏の日の想い出・日日是好日(13)
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それでティップは木馬を川の水の中に入れ、ティップはそれに乗ります。そして南瓜男は木馬の尻尾を掴んで泳ぎました。一行は徐々に川を向こうの方へ進んでいきます。ただし川の流れがあるので結構流されます。しかし頑張って泳いでいる内に何とか向こう岸に辿り着くことが出来ました。
「渡れた!」
「でもかなり流されましたね」
「煉瓦の道に戻ろう」
それで一行は頑張って川岸を遡り、元の道に復帰します。
「でもだいぶ濡れちゃったね」
「歩いてる内に乾きますよ」
「そうだね」
と言って、ティップは南瓜男を木馬に乗せてやります。そして自分は馬と一緒に走ろうと思いました。木馬に乗ってるよりその方が早く乾く気がしました。それでそのまま馬をスタートさせます。
ところが馬の速度があまりに速く、南瓜男を乗せた木馬は先に行ってしまい、ティップは置いてけぼりになってしまいました。
走り疲れたティップは座り込んでしまいましたが、やがて気を取り直して道を歩き始めました。
「この道はエメラルドシティの門の所で終わってるはず。そこで合流できるだろう」
とティップは思ったのです。
さてジャックの方はティップが付いてきてないというのには全く気付かず、エメラルドシティの門まで来てしまいました。そこで馬を停め、下馬した所でやっとティップが居ないことに気付きます。
「困ったなあ」
と思っていたら門番(黒山明)が声を掛けます。
「私はエメラルドシティの門番です。お名前と来訪の趣旨をお聞きしたい」
「えっと私は南瓜頭のジャックと申しますが、来訪の趣旨って何だろう?」
「用事が分からないのですか!?」
「実は主人とバラバラになってしまいました。主人が来れば用事は分かるのですが」
「なるほど取り敢えず中にご案内しますがこのサングラスを掛けてください」
と言って緑色のサングラスを渡します。南瓜男は頑張ってそのサングラスを掛けました。
それで中に入ると緑色のガイド:ソフィー・グリーンウッド(宮里夢美 13)(*21) がジャックと木馬を案内します。
それでジャックはかかし王(倉橋礼次郎 33)に会いましたが、かかしと南瓜の対話は何だか訳の分からないものになりました、でも取り敢えず2人は仲良くなりました。そして2人で輪投げをして遊び始めました。
(*21) 昨年の『オズの魔法使い』では小牧が演じた役である。小牧とできるだけ近い雰囲気の男子中学生で小牧より下の学年ということで彼が選ばれた。彼は膝丈スカートとタイツ(ガーターベルト留め)を履いている。昨年小牧はスカートを拒否してショートパンツを穿いたが、宮里は何も考えずに渡されたスカートを穿いた。
「へー。スカートなんですか」
「昔は男性もスカートを穿いたんだよ」
「そうなんですか」
「男性はショートスカート、女性はロングスカート」
「今とまるで逆ですね。ロングスカートの男の子よく見るもん」
「昔は女性が足を見せるなんてとんでもないという考えかた」
「なるほどー。だったらこれはショートで男性用なんですね」
「もちろんだよ」
この物語は放送順としては『星の銀貨』の後なので、視聴者の大半は彼が一応男性であること知っている。でもスカートを穿いているので
「ああ、今回は女の子役だったのね」
「男の子役をする必要無いよね」
などと言っていた。
一方のティップは歩いてエメラルドシティへの道を歩いていました。やがて彼はひとりの少女(白鳥リズム)に会いました。
少女は制服のようなものを着ています。エメラルドグリーンのブラウスにスカートは4色で前面が青、左が黄色、背面が赤で右が紫です。スカートは女性にしては珍しい膝丈で、その下に緑色のタイツを履いています。
またブラウスを留めるボタンは、上から青・黄・赤・紫です。
ティップはつい彼女のほうを眺めていました(ほぼ変質者)。少女は座って食事をしているようでした。片手にサンドイッチ、片手に固ゆで卵を持って食べています。やがて少女は立ち上がりました。そしてティップを見ると言いました。
「ねえ、この荷物を持ってくれない?そしたら中のサンドイッチもひとつあげるから」
「うん」
それでティップは彼女の荷物を持ち、サンドイッチもひとつもらい、歩きながら食べます。しかし彼女の歩く速度が速いので付いていくのが大変でした。それでも頑張って付いていきながらサンドイッチを完食します。
「サンドイッチありがとう。名前を訊いてもいい?」
とティップは小走りに歩きながら聞きます。
「私はジンジャー将軍です」
と彼女は答えました。
「へー。女の子で将軍って凄いね。どんな仕事をしてるの」
「今度の戦争で革命軍を率います」
「今度の?今戦争が起きてたなんて知らなかった」
「これから起きるのよ。知らなくて当然。計画は秘密の内に進めていたから。それに私たちは全員女性なの。だから動きは知られにくかった」
「確かに女性の動きはあまり注目されないかも」
「私たちは密かに連絡を取り合い、賛同者を募り、今日集結することにしていた。今日私たちはエメラルドシティに進軍し、かかしを玉座から引き摺り降ろす」
「なんで?」
「この国はずっと人間が治めていた。かかしが国王だなんてふざけてる」
「そんなことしようとしてもきっとみんな殺されるよ。都は国王直属の親衛隊が防衛しているはず」
「国軍は長い平和の時代が続いてだらけきっている。親衛隊長はあの長い髭(ひげ)を維持するためにその労力の大半を使っている。そんな調子だから親衛隊で真面目な人ほど辞めてしまっている。でもオズの魔法使いがエメラルドシティを支配していた時はみんなオズが怖いから従っていたけど、今は誰もかかしなど怖がっていない」
ティップはジンジャーが熱い口調で語るのを感心して聴いていました。
「あなたも革命軍に加わらない?」
「女の子だけで構成してるんじゃなかったの?」
「ティップちゃん可愛いから、女の子に変えてあげてもいいけど」
「女の子に変えられるの?」
「ちょっと男の子の印を切り落とせば。あれが無ければ女の子と同じ扱いでいいよ」
「10年考えさせてください」
やがてジンジャーとティップはエメラルドシティ近くの広場に至ります。そこには50-60人の女の子が集まっていました。(革命軍:信濃町ガールズ(*23))
全員制服を着ていますが4種類あるようです。スカートの前身頃が青の子、赤の子、黄色の子、紫の子がいて、ブラウスの第1ボタンもスカートの前身頃の色と同じです。どうも青の子は東の国から、赤の子は南の国から、黄色の子は西の国から、紫の子は北の国から来たようです。
「ジンジャー、その子は?」
とひとりの女子(川泉スピン)が訊きます。彼女はペッパー大佐といいました。
「大丈夫。行動には加わらないけど味方だから」
「だったら制服を着てもらおう」
「制服って?」
「ブラウスにスカートだよ。君、どちらの地方の出身?」
「北のギリキンです。でもスカートは勘弁して」
「なんで?ふだん何着てるのよ?」
「ぼく男の子ですー」
「嘘!?」
ということでティップはグリーンのブラウスに前身頃が紫のショートパンツ(*22)を穿かせられてしまいました。ブラウスの第1ボタンも紫です。
(視聴者の声「スカートでいいのに」)
(*22) スカートの中央を縫い合わせただけなので、キュロットスカートに見えるが気にしない。ちゃんと他の子と同じ緑色のタイツも履いている。なおこの時代にファスナーは無い。ファスナー付きのズボンが生まれたのは1940年。
(*23) 革命軍の役をわざわざ単価の高い信濃町ガールズで構成したのは何といっても秘密保持のためである。これが1人1日1万円程度で使える富士川32などだと撮影後にメンバーが「小牧ちゃんと『オズの虹の国』の撮影したんだよ」などとブログとかツイッターに書いてしまうような事故を防ぐのが難しい。わりと規律のしっかりした解決ゾローズでも鳥山局長は信用しきれなかった。
このドラマではたったひとりの軽率な行動が全てを台無しにしかねない。
それでプロ意識が高く絶対に守秘義務を守ってくれる信濃町ガールズ本部生を使ったのである。このドラマの成功の可否は最後のエピソードまでティップの“正体”を隠しておくことにある。ギャラは高かったが、おかげで実際小牧と一緒に何のドラマを制作したかについて一切の情報漏れが無かった。
なお原文では革命軍は100人と書いているが人数の都合で50-60人にした。また原文は revolt 反乱と書いているが、本人たちが自分で反乱と名乗るわけがないので革命(revolution)と超訳した。
原作ではエメラルド・シティに多数存在する宝石も奪うと言っているが、そうなると窃盗団にすぎないので、これはカットした。また美人だけで構成したと言っているのもカットした。原作はかなりの女性蔑視思想で書かれている。
それで革命軍は行進を始めました。出身地方別=制服の配色別に4列になって進軍します。ティップはみんなの荷物を積んだ荷車を牽いて後ろから付いていきました。この時ティップは革命軍のみんなが武器を何も持っていないことに気がつきます。武器も持たずにどうやって都を制圧するつもりなんだろう?とティップは疑問を持ちました。
やがて一行はエメラルドシティのゲートの所まで来ます。緑の門番(黒山明)が出て来ます。
「えー、皆さんのご用件は?」
「かかしの王を玉座から引き下ろしに来た。おとなしく私たちを通過させなさい」
「面白いことを言うね、君たち。良い子はおうちに帰ってお母さんの手伝いをしなさい(*24). 変なことをしようとすると怖いことになるよ」
「私たちは怖くないよ」
とジンジャーは言って1歩前に出ます。門番は本能的に怖くなり、緑の兵士を呼ぶためのベルを鳴らしました。しかし彼は女子の集団に取り囲まれ、拘束されて縛り上げられてしまいました。門の鍵も無防備に首から下げていたので奪われてしまいます。
(*24) 原文は milk the cows and bake the bread.乳を搾ってパンを焼きなさい。女性蔑視が酷すぎるので緩和して訳した。以下も女性蔑視の酷い箇所は緩和している。
それで一行は門を通りました。ティップもそれに続いて門を通ります。
「あれ〜?噂に聞いてたのと違う.全然緑じゃない」
とティップが疑問を言います。
「都の中ではみんな緑色のサングラスを掛けるからね。だから緑に見えるだけ」
とジンジャーが言います。
「そうだったのか」
向こうから長い髭を伸ばした緑の親衛隊長(山奥深夜 49)が駆けつけて来ます。
「止まれ!君たちは何だ?なぜサングラスを掛けてない?」
しかし女性兵士の一団は止まりません。
「止まらないと撃つぞ」
と言って長い銃を彼女たちに向けます。
銃口を向けられてさすがに止まる者もありますが、ジンジャーは止まりませんでした。銃口の真ん前まで行って言いました。
「私たちは何も武器を持っていませんよ。それでもあなたは私たちを撃ちますか?」
ジンジャーの堂々とした態度に親衛隊長は気合負けして銃口を下げました。
「悪かった。この銃は弾(たま)が入ってないんだ。暴発が怖いから」
それで親衛隊長はその銃を取り上げられ、縛り上げられてしまいました。
親衛隊長が降伏したので、他の兵士たち(リダンダンシー・リダンジョッシー)も何もしません。一部は逃げ出してしまいました。
それで革命軍はエメラルドシティを無血制圧したのです。
ティップは革命軍の一行とは離れ、南瓜男たちを探していました。宮殿の中庭に行ってみますと、かかし王と南瓜男が輪投げをして遊んでいます。
「お父さん!やっと会えた」
と南瓜男が言います。
「そちらは?」
とティップは訊きます。
「この国の王様ですよ」
「あなたが王様ですか?エメラルドシティは革命軍に制圧されましたよ。じきにこの王宮も制圧され国王も拘束されますよ」
「何?それはけしからん。親衛隊に言ってそいつらを止めさせなければ」
「親衛隊も全て降伏しましたけど」
「え〜?そんなぁ」
「革命軍はあなたを王位から引きずり降ろすのが目的です」
「王位など私はたまたま国王になっただけだし、王冠は重たくて疲れるし」
「国王をやめてもいいのなら、拘束される前に逃げたほうがいいと思うけど」
「逃げないとどうなる?」
「かかしさんの中身を取りだして敷物にしようなんて言ってたよ」
「いやだー!逃げる」
とかかしは言っています。どうもこの人は元々国王などする柄では無かったようだなとティップは思いました。きっとドロシーという大魔女が凄かっただけで部下は大したことなかったんだ。
ティップは木馬を連れてきました。そして革命軍の制服を脱いで元の服に着替えます。そして木馬にかかしを乗せ、南瓜男も乗せると自分も乗って一気に駈け抜けて王宮、そしてエメラルドシティを脱出しました。そしてそのまま木馬は掛けて、西の国まで行きました。そしてこの国の王様になっている錫の木こりにかくまってくれと頼んだのです。
木こり(森原准太 33)は
「王位を略奪するとは許せない。奪還すべきだ」
と主張しました。気弱になっていたかかし(倉橋礼次郎 33)もやはり勝手に王位を奪われるのは納得できないと思い直します。
取り敢えず一行は“メンテ”をされます。かかしの“外皮”はきちんと洗濯され、中身も新しいわらを詰めてもらいます。南瓜男は手足をしっかりとした木材で作り直してもらいました。木馬も傷んでいる所をきれいに補修してもらいました。
それで木こり・かかし・南瓜男・木馬とティップはエメラルドシティを目指したのです。
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