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■夏の日の想い出・日日是好日(15)

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「そういうことなら、確かにそうなのでしょう。でもパストリア王は亡くなっているから、誰かが王位を継承しなければなりません」
 
「パストリア王にはまだ幼い女の子がいたのです。その子こそが正当な王位の継承者です」
 
「その子が生きているなら本当にそうでしょう。私は王様をやってるのも辛かった。その子が出てくれば私はもちろん喜んで彼女を支援します。ジンジャーじゃなければいいですよ。それでその子の行方は?名前は?」
 
「名前はオズマ姫です。私もかなり探したのですが見付けきれませんでした。ただ彼女は巧妙に隠されているようなのです。パストリアから初代オズの魔法使いが王位を奪った時、魔法使いが彼女を隠したものと思われます」
 
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「グリンダ様でさえ分からないというのは凄いですね」
 
「私はこれらに関する文献をもう一度注意深く読んでみます。それまでみなさんはここで少し休んでいてください」
 

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(*27) 原作では物凄く能力の高い魔法使いがパストリア王から王位を簒奪して(恐らく国王夫妻を処刑して(*28))、その魔法使いがその後エメラルドシティを支配し、ドロシー事件で気球によりオズの国を去ったということになっている。これは第一巻でのオズの姿と著しく乖離している。この設定については当時の読者からもかなりの批判があったらしい。
 
今回の翻案ではパストリア王から王位を奪った魔法使いが何らかの理由で居なくなった後、第一巻に出て来た男が魔法使いの振りをしていたということに設定変更した。
 
(*28) 『オズの魔法使い』の初期の演劇(1902)ではパストリアは国外に追放され、路面電車の運転手になって Trixie Tryfle というウェイトレスをしている女性と結婚したとされている。これは『オズの不思議な国』が執筆される前である。この劇ではオズマの母については言及が無い。
 
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しかし国王を国外追放するならオズマも一緒に追放すればよいはずで、王女だけモンビに預けた理由が分からない。
 
1902年の劇ではパストリアは後にオズの国に戻って、オズの魔法使い・ドロシー・かかし・木こり・ライオンを反逆罪で処刑するよう命じる。むろん全員逃亡する。
 
オズシリーズの第4巻『ドロシーとオズの国の魔法使い』(ハヤカワ文庫の邦題は『オズと不思議な地下の国』)ではオズの国の支配者は男性はオズ、女性はオズマという名前であるとするが、そうなるとパストリアが本当に王であったのか疑問が出てくる。なお、他の作家が書いたオズ本『The Magical Mimics in Oz』ではオズマ姫は妖精の子供であるとしているが、それだとオズマに正当な王位継承権があったのか疑問である。
 
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パストリアという名前がどう見ても女性名に見えるのはよく分からない。
 

翌朝、グリンダは一行の前に現れて言いました。
 
「文献を色々検討していて3ヶ所で気になる点を見付けました。ひとつはオズの魔法使い(初代)は豆を食べるのにナイフを使っていたということ、ひとつは彼がモンビの所を3度訪れていること、彼が左足を軽くびっこ引いていたこと」
 
「モンビ!?」
とティップが声をあげます。
 
「どうもオズマ姫の行方の鍵をモンビが握っているようなのです。おそらくオズの魔法使いがオズマ姫を隠すのにモンビに手伝わせたのです」
 
「モンビは今エメラルド・シティに滞在しています。ジンジャーの参謀を務めているようです」
とティップは言います。
 
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「でしたら私はエメラルド・シティに行かなければなりません。そしてモンビをジンジャーから引き渡してもらうのです」
 

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それでグリンダは300人ほどの親衛隊を連れてエメラルドシティに向かったのです。ティップたちはガンプに乗って一緒に向かいます。
 
映像は多数の女性騎兵(*30)を連れ、馬車でエメラルドシティに向かうグリンダ(*29)そしてガンプに乗るティップたち。
 
(*29) 原作では12人の召使いが担ぐ輿(こし)に乗っているとされているが、何のためにそんな時間のかかる乗り物に乗るのか理解不能である。グリンダの都はエメラルドシティからかなりの距離があったはずなのに、翌朝には到着しているというのも、こんなのんびりした乗り物で行くには計算が合わない。そこでこのドラマではグリンダは普通に馬車に乗ったことにした。
 
(*30) この女性騎馬兵たちはCGである。ただし出演者の中で馬に乗れる人には乗ってもらい、その映像も使用している。28人の出演者の中で8人が馬に乗った。この映像を隊列の先頭に使用している。これ以外に320人の兵士をCG生成した。
 
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グリンダたちは明け方エメラルド・シティに到着しました。門番の革命軍兵士(佐藤ゆか・南田容子)を拘束し、すみやかにシティ内に展開。革命軍兵士を20名ほど拘束しました。ジンジャーも気付いて王宮の塔から外を見ますが、圧倒的な兵力に町を占拠されているのを見て驚きます。
 
ティップが「僕に使者をさせてください」と言って、交渉役を買って出ます。
 
革命軍からペッパー大佐(川泉スピン)が出て来てくれたので彼女とティップは話します。
 
「ペッパー、グリンダは君たちが特に抵抗しなければ君たちに危害は加えないと言っている。こちらが欲しいのはモンビの身柄なんだ。モンビに尋ねたいことがある。だからジンジャーに伝えてくれないか?モンビを出してくれって。モンビについてもこちらの質問にちゃんと答えてくれるなら危害は加えないと言ってる。ぼく自身がモンビの身の安全は守るよ。エメラルドシティの門を警備していた兵士と町中に展開していた兵士22名をこちらで預かっている。モンビと交換しないかって」
 
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「分かった、ティップ。ジンジャーに伝える」
と言ってペッパー大佐はジンジャー将軍に伝えに行きました。
 

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ジンジャーはモンビを呼びます。
「グリンダが君に訊きたいことがあるらしい」
「グリンダの所なんかに行ったら私は殺される。今やグリンダの力は私の力を大きく上回っている」
「しかしティップが君の身の安全は守ると言ってる」
「ティップは私が彼を殺そうとしたと思い込んでいる。絶対仕返しされる」
「でも君が10年以上掛けて育てた子なんだろ?ティップの性格として育ててくれた恩を忘れるような子ではないよ」
 
「あのぉ・・・・身代わりを立てたらダメですか?」
「ん?」
 
それでオズの魔法使いの王宮に仕えていて、ジンジャーの征服後も何となくそのまま居座っていた、ジェリア・ジャム (Jellia Jamb/七石プリム 13) が呼ばれます。
 
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「お前ちょっと私の身代わりにグリンダに会ってこい」
「え〜?でも私まだ13ですよ。お婆ちゃんの身代わりなんてできません」
「大丈夫。老人にしてあげるから」
「いやだぁ!」
 
そけでモンビが魔法を掛けて、彼女はモンビと同じ姿(モンビ役の沢村キック2役)に変身してしまいました。
 
「いやぁ、こんなしわくちゃだらけの格好」
 
それでジンジャーは「人質交換」と称してクアドリングス軍に拘束されていた22名の兵士とモンビに化けたジェリアを王宮の門のところで交換したのです。
 
クアドリングスの兵士は“モンビ”に
「あなたの安全は保証する」
と言って、キャンプに連れて行き、グリンダに会わせます。
 
「なんだお前は?」
とグリンダは言います。
 
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「え、えっとマンピ(だったかな)と申します」
「お前モンビに魔法を掛けられたな」
「ごめんなさい、ごめんなさい。どうか命だけは助けてください」
「別に君を殺したりはしないよ」
「だったらついでに元の姿に戻してもらえませんか?」
「それは魔法を掛けたモンビ自身にしかできない」
「そんなぁ」
 

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ジンジャーが人質交換で嘘をついたので報復としてグリンダはクアドリングス軍を城内にまで侵攻させました。王宮自体を制圧します。そして親衛隊長(川井唯)がジンジャーに直接会って本物のモンビを出すように要求しました。
 
「済まなかった。モンビはどこ?」
と近くに居るシナモン少佐(三田雪代)に訊きます。
 
「あれ?ついさっきまでその辺に居たのですが」
 
実はモンビは「絶対捕まる〜殺される〜」と思って薔薇の花に姿を変えていたのです。
 
クアドリングス兵が多数でモンビを探します。ティップや木こりなども探します。
 
モンビの探索をしているティップの所にジンジャー(白鳥リズム)が来て言いました。
 
「ティップ、モンビが言っていたけど、“人を大理石にする薬”なんてのは嘘で、君をさんざん怖がらせて真面目に仕事するようにさせるつもりだったと」
 
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「そんなことだろうとは思ったんだけどね。ほんとに大理石に変えられたらたまんないから逃げ出した」
とティップ(羽田小牧)。
 
「今回の事件が落ち着いたらまた2人で暮らすといいよ」
「うん。考えとく」
 
「私はかかし以外の“人間”が王位に就くのであれば退いても構わない」
「それがパストリア王の遺児の女の子が生きてるみたいなんだよ。モンビがその子の行方を知っている可能性があるんで探している」
「そうだったのか!パストリア王の王女であれば王位を返すのに異論は無い」
「ありがとう」
 
それで革命軍の兵士たちもモンビの探索に加わってくれました。
 

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王宮の隅々まで探したもののモンビの行方は分かりません。日が暮れて来たのでクアドリングス軍は王宮の秩序維持(革命軍の監視)に当たる30名ほどを残してキャンプに引き上げます。この時木こりはふと薔薇の花が一輪咲いているのを見て、綺麗な花だなあと思って手折りました。トゲがあっても金属の身体の木こりには関係ありません。
 
モンビはぎゃっと思いました。
『木こり君、私は美味しくないよ』
などと念を送ります。
 
結局木こりはその薔薇を食べたりはせずそのままグリンダのキャンプに持ち帰ります。モンビは夜みんなが寝静まった頃、そっと逃げだそうとしますが、そこをグリンダに見付かってしまいます。
 
モンビはグリフィン(Griffin)に変身して逃げました。グリンダは木馬に飛び乗るとモンビを追いかけます。ティップたちはガンプに乗り、2人を追います。この3者の真夜中の追いかけっこがドラマ上は3分も続きます(原作では1時間続いたと記述されている)。
 
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しかしついにモンビは力尽き(1時間も全力飛行すれば疲れる)、オズの国・外縁の砂漠の端で降下してしまいました。グリンダが彼女の身体の上に金の糸を掛けるとモンビの魔力は失われてグリフィンの姿はモンビの姿に戻ります。
 

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「私はあなたを捕らえました。抵抗してもムダです」
「私をどうするんだ?」
「今は少し休んでいていいですよ。そのあと私のキャンプに連れ帰ります」
 
「どうして私を捕まえようとするのです?私があなたに何をしたというんです?」
とモンビは荒い息の中で尋ねました。
 
「あなたは私には何もしていません。ただ私はあなたに尋ねたいことがあるのです」
 
そこにティップたちの乗るガンプが到着します。それで全員ガンプでグリンダのキャンプに戻ることにしました。こんな砂漠の上では落ち着いて話もできません。それで木馬をガンプに放り込み、グリンダがモンビをガンプの上によじ登らせます。その時、ティップがモンビの手を引いてあげました。
 
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10年以上育てた我が子のような存在であるティップに手を引かれて、モンビは感銘を受けたようでした。
 
「モンビ、大丈夫だよ。グリンダは君を殺したりしないから知ってることを教えてよ」
とティップは言いました。
 

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ガンプがエメラルド・シティに戻るまでの1時間ほどの時間、モンビはグリンダの魔法の糸に拘束されていましたが、ティップはずっとモンビの手を握ってあげていました。モンビは何かずっと考えているようでした。
 
「ティップ、お前家を出たあと着替えてないのか?」
「あ、そういえば着替えるような暇が無かった」
「着替えを用意しておいたから着替えなさい」
と言ってモンビはいつも持っている肩掛けカバンの中から服を取りだして渡します。
 
「ありがとう」
と言ってティップは受け取りました。それで着替えようとするのですが・・・
 
「これ女の子のドレスじゃん!」
「似合うと思うけどなぁ」
 
(視聴者の声「うん。似合うと思う」)
 
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「全くこんな状況でジョークをするモンビに呆れるよ」
 
「お前たちいいコンビのようだな」
とグリンダも呆れて笑っています。
 
ドレスはモンビに返し、モンビは微笑んでそれをバッグに戻しました。
 

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やがて一行はエメラルド・シティに設営したグリンダのキャンプに到着します。グリンダは言いました。
 
「モンビ、話に入る前に、あなたの身代わりにされた可哀想な少女の魔法を解いてあげてもらえませんか」
 
「そいつはうざくてあまり可哀想でもないのだが、その姿では嫁にも行けんだろうし、解いてやるよ」
と言って、モンビの姿のジェリア・ジャムを呼ぶと何か呪文を唱えました。ジェリアが少女の姿(七石プリム)に戻ります。
 
「やったぁ。嬉しー」
と言っているので少女が余計なことを言ってモンビを怒らせる前に、グリンダは彼女を連れて行かせました。グリンダも彼女の性格が分かっているようです。
 

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「モンビ、ありがとう」
とグリンダはお礼を言います。
 
「それで本題に入るのですが、あなたに尋ねたいのです」
とグリンダは言う。
 
「初代オズの魔法使いが、あなたの許を3回訪れた理由。そして幼いオズマをどこに隠したのか、教えて欲しいのです」
 
モンビは沈黙しています。グリンダが色々尋ねるのですがモンビは一切口を訊きません。
 
「困りましたね。あなたがどうしても何も言わなければ、私はあなたを処刑するしありません」
 
「ちょっと待って、グリンダ。約束が違う」
とティップが抗議します。
 
「最後まで聞いて、ティップ。そしてモンビ、私はあなたを処刑したりはしません。なぜなら、あなたは喜んでそのことを話してくれるからです」
 
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夏の日の想い出・日日是好日(15)

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