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■夏の日の想い出・日日是好日(17)
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『5色の旗』の歌の後、話のまとめのようなエピソードが流れる。主として語り手により説明される。
ジンジャーにより革命軍の解散が宣言されたので、革命軍の兵士たちの一部は故郷に戻りましたが、大半はエメラルドシティに住むことになりました。彼女たちのためにオズマは紡績工場を建てることにしました。
彼女たちの多くは故郷に戻っても仕事がなく、こういうのに参加した後では結婚できる可能性も低く、貧しい家庭では結婚できない女性は間引きされる危険さえありました。
クアドリングス軍は撤退しますが、元革命軍の女子たちが変なことをしないように、平和維持軍として30名を残しました。
王位を退いたかかしは木こりと一緒に西の国に行くことにしました。
オズマはモンビのために王宮の敷地内に小さな離れを建て、そこに彼女を住まわせました.最初は王宮内に部屋を用意したものの
「調度が立派すぎて落ち着かん」
と言うので、小さな家を建てて、畑まで用意しました。ジンジャーがモンビの小屋に一緒に住んでくれることになりました。南瓜男もそこに一緒に住みました。
「僕を食べないでね」
「かぼちゃパイも美味しそうだけどなぁ。まあ作物がちゃんと出来てれば君を食べたりはしないよ」
「僕畑仕事頑張る」
木馬はオズマの乗り物としました。
13年前に初代オズの魔法使いがこの国の支配者になって以来、この国にはまともな“政府組織”が無くなっていました。
オズマは都をそしてオズの国全体を治めるのに“政治の専門家”が゛必要であると考えました。それでグリンダと相談し、クアドリングスの内務大臣の助手をしていたショルダン(西宮ネオン)という人を招きました。また、ここ3〜4年ほどエメラルドシティ住民のとりまとめ役になっていたエブロ(田船智史)という大工の棟梁、それからヒゲの元親衛隊長の奧さんラムダ(松原珠妃!)の3人で話しあって物事を決めて欲しいと頼みました。この3人を参議としました。
オズマは新しい衛兵も組織する必要がありました。ジンジャーに打診したものの「自分はもう退いた」と言うので、革命軍の副官だったペッパー大佐(川泉スピン)、そしてオズの町の消防隊長だったピノン(新田金鯱)を各々赤衛兵、青衛兵のトップとして新たな将軍に任命し、その下に取り敢えず男女50名ずつの兵士を付けることにして、募集を掛けました。赤衛兵は女性、青衛兵は男性とします。衛兵たちの制服は白いブラウスまたはシャツと緑のスボン、緑のベレー帽ですが、赤衛兵は赤いスカーフ、青衛兵は青いネクタイをします。サーベルと長銃を持ちます。
ちなみに性別は自己申告です!ただし疑問のある人は審査されます!
革命軍にいた女性が多数応募しましたがエメラルドシティに元から住んでいる女性も結構応募しました。
映像では多数の男性・女性が身体能力のテストを受けている映像(怪傑ゾローズだが、何の撮影かは知らされていない)。その中に一瞬、ソフィー・グリーンウッド(宮里夢美)が衛兵の制服で赤いスカーフをしているのが映る(*35).
青衛兵・赤衛兵はオズマ姫に忠誠を誓いました。そしてクアドリングス兵たちから軍事訓練を受けました。
(*35) ファンの声
「やはり女子として応募したのね」
「女としての審査にも通ったのね」
「当然よね」
「男子として応募したけど『君は赤に行って』と言われて女子に回されたんだったりして」
「ありそう!」
実際には女子出演者の悪戯で本人もよく分からないうちに赤いスカーフを付けただけのことである。
オズマはエメラルドシティの住人・訪問者に掛けさせていた緑のサングラスを廃止したので、エメラルドシティは必ずしも緑ではなくなりました。しかし市中の道路を緑色のアスファルトで舗装し、また多数の街路樹を植え、花壇もたくさん整備したので、充分緑の多い街になりました。
道路を整備する時、緩やかな傾斜を付けて中央が高く、両脇が低くなるようにしました。これで雨水が全て側溝に流れ込み道路が効率よく排水されるとともに、側溝の流れを良くして衛生を保ちます。
一方で浄水場を整備し、北の川から導水路を作り、市内に上水道を完備させました。これらの事業は10年掛けての大事業となりました。これらの費用を賄うため、オズマは王宮各所に飾られていた多数の宝石を売却して資金としました。
一方でオズマは市内に多数の学校、そして病院も整備しました。
オズマ女王はエメラルドシティ郊外の黄色い煉瓦の道の途中にやってきました。
「先日の大雨で崖崩れが起きて道が通れなくなったんですよ、それでみんなで片付けていたのですが、あの大岩が動かせなくて」
それはざっと見て直径3mほどあります。恐らく重さは40tくらいとオズマは頭の中で概算しました(*36)。人間が動かせる重さではありません。しかしオズマはその岩を破壊できる気がしました。
「破壊します。皆さん危険ですから離れててください」
それでみんなが離れた所でオズマはその岩を凝視して「破壊」と念じました。岩が爆発して粉々になりました(*37).
「おぉ!」
「さすが我らのオズマ女王だ!」
「後はよろしく」
「はい」
(*36) 球の体積は半径をrメートルとすると4/3 πr
3立方メートルだが直径dの式に直すとπ/6 d
3m
3になる。岩の密度をρ (g/cm
3= t/m
3) として質量はπρ/6 d
3t となる、π=3.14 ρ=2.8 とするとπρ≒9 と考えて良い。するとこの式は 1,5 d
3t と簡単にできる。だからティップはモンビから、岩の重さを計算するには直径を三乗して1.5倍しろと教えられていた。
そこで彼女は3mを三乗して27とし、1,5倍して(3倍して半分にする)して約40tという暗算をした。
(*37) モンビは、ガンプの中、および護摩木などの準備をしている待ち時間に自分が身に付けているほぼ全ての魔法をティップにコピーした。だからオズマは実はモンビの魔法をほぼ全て使える。このことをオズマ本人はまだ意識していない。
この設定は次作以降で使われる・・・かも?
オズマが男の子として育てられたため、女の子の常識を全く持ってない問題については、結局ジンジャーがオズマの“女子教育”に当たることにしました。
最初の頃オズマはよく転びました。
「スカート穿いてそんな歩き方をしたら転ぶに決まってる」
と言ってジンジャーが“女性らしい”歩き方を指導します。
「女の子になるって大変なんだね」
とオズマ姫は弱音を吐いていました。
「身体を女の子の身体に変えること以上に社会的に女になるのというか、そちらが大変な気がする」
とオズマは言います。
「うん。女は女に生まれるのではなく女に育つと言う。君はまだ女としては生まれたばかりだからな。10年くらい女をやっていれば女らしくなるかもね」
「10年かぁ」
「しかしティップが男の子のままだったら結婚してもいいと思っていたのだが、女になってしまっては結婚できないから残念だ」
などとジンジャーは言います。
「僕もジンジャーのこと、わりと好きだったよ。でももしかしてぼく男の人と結婚しないといけないの〜?」
「当然」
「そっかぁ」
「それで後継ぎを産んで」
「もしかして僕が赤ちゃん産むの〜?」
「当然」
「うー。頑張る」
ジンジャーは言いました。
「ティップ、本当のところはさ、世の中に完全な男、完全な女なんて居ない。みんな男の振りをしてたり、女の振りをしてるだけだよ。世の中みんな各々の性役割を演技しているんだ」
とジンジャー。
「あ、そういうもんかなぁ」
「本当に勇気のある男なんてめったにないけど、みんな勇気があるかのような演技をしている。本当に優しい女ってそう多くないけど、みんな優しいかのような演技をしている」
「うーん・・・」
「だから君も優しくて可愛い女の子であるかのような演技をしてればいいんだよ」
「あぁ」
「それならできる気がしない?」
「できるかも!」
「それで少し頑張ってみよう」
「うん。やってみる。ありがとう」
それからオズマ女王はとても優しくて可愛らしい女王である、女の理想だと国民に言われるようになったのです。
「完」の文字の後、エンドロール。
出演者
ティップ:羽田小牧
南の魔女グリンダ:仁田友里
かかし:倉橋礼次郎
木こり:森原准太
モンビ:沢村キック
南瓜男ジャック:揚浜フラフラ
渡し守:仁川浩光
緑色のガイド・ソフィー・グリーンウッド:宮里夢美
緑色の門番:黒山明
緑色の親衛隊長:山奥深夜
その妻ラムダ:松原珠妃
緑色の少女ジェリア・ジャム:七石プリム
オズ親衛隊:リダンダンシー・リダンジョッシー
羽猿:銀色アルゼンチン・銀色ナイゼンチン
消防隊長ピノン:新田金鯱
ショルダン:西宮ネオン
エブロ:田船智史
西の国の夫婦:秋風コスモス・木取道雄
ジンジャー将軍:白鳥リズム
ペッパー大佐:川泉スピン
シナモン少佐:三田雪代
ナツメグ中尉:月城たみよ
革命軍:信濃町ガールズ
桜井真理子、安原祥子、大崎忍、太田芳絵、中村昭恵、斎藤恵梨香、夢島きらら、大仙イリヤ、直江ヒカル、今川ようこ、大空由衣子、坂田由里、左倉まみ、山本コリン、甲斐波津子、水谷康恵、花園裕紀、箱崎マイコ、鹿野カリナ、広瀬みづほ、松島ふうか、直江アキラ、三陸セレン、山鹿クロム、豊科リエナ、甲斐絵代子、水谷雪花、早幡そら、酒田レモン、石条ぼたん、川泉パフェ、鈴原さくら、宮地ライカ、知多めぐみ、花畑バニラ、米田ショコラ、南里くりこ、西浜ももこ、長浜夢夜、古屋あらた、麻生ルミナ、夏江フローラ、筒木サリナ、水巻イビザ、山口ヨルカ、入瀬ホルン、春野わかな
グリンダの女性兵士たち
エレメントガード(4)槍田湖寿絵、望田寿子、宮城海夏、川井唯
ナイスエンジェルズ(4)樋口照実、佐原朋希、山本小夜、溝口初恵
フィフティースリー(4)横山一子、美波五月、樺島典江、仁藤由希
乙女地区(4)島本璃久、鹿本菜美、佐竹遙花、宮田輝代
白雪1200km(5)十勝萌子、五和真希、四谷恵美、三嶋道代、二見睦子
愛の十字架(4)鷹木礼子、真鍋亜矢、冨田瀬梨花、喜納満里
語り手:立山みるく
オズマ姫:羽田小牧
一般的な家庭が映る。スーツを着た夫(元緑の門番:黒山明)とドレスを着た妻(元緑のガイド:宮里夢美)がパンとスープを食べながら楽しそうに会話している。ベビーベッドには赤ちゃん(ロボット)も寝ている(*38).
(スーツはこの頃アメリカで遊び着として着始められていた。古い人から見ると「なんてだらしない」と思えるような服だった)
(*38) (日本の一部の)視聴者の声
「ああ。結婚したんだ?良かったね」
「夢美(ゆめみ)ちゃん(*39) きっといい奧さんになるよ」
「赤ちゃんもできたんだ。優しいお母さんになりそう」
「私もゆめみちゃんに奧さんになってほしいー」
「私の赤ちゃん産んで欲しいー」
(日本の大多数および海外の)視聴者の声
「可愛い女優さんだね」
「いいお母さんになりそう」
(*39) 名前の読みは本来“ゆめよし”だが、ファンはみんな“ゆめみ”ちゃんと呼んでいる。普通の人も“ゆめみ”と読んじゃう。共演の女子は「ゆめみちゃん」と呼ぶ。共演の男性やディレクターは「宮里さん(ちゃん)」と呼ぶ。つまり誰1人として「ゆめよし君」などとは呼ばない。
本人は「この服着て」と言われて「はいはい」と言って着て演技したが後から「これまさか女役だったりして?」と少し疑問を感じた。
離婚するという夫婦(秋風コスモス・木取道雄)が、木こり王(森原准太)のところに来て訴えます。
「私たち離婚するんですけど、どちらが家を出ていくか揉めてて」
「その家は誰が建てたの?」
「結婚した後で2人で建てたんです」
「うーん。かかし大臣どう思う?」
「そうだなあ」
かかし(倉橋礼次郎)は考えています。かかしは考えるのに時間がかかります。
(2時間経過)
「家を半分こにしよう」
「なるほどー。よし俺がやってやる」
と木こり王は言うと、その家にやってきました。
そして斧を使って家を真ん中から真っ二つに分割しました。
「半分にした。この各々に住むように」
ジンジャーは小さな声でティップに訊きました。
「ところで“した”?」
オズマは恥ずかしそうに頷きました。
「男の時とどっちが気持ちいい?」
「女の方が5倍気持ちいい」
「やはりねー。2500年くらい前にテイレシアスという人がいて男に生まれたけど女に変わったらしい(*40)。その人が言ったという。快感を10に分けて男が1とすれば女は9だって」
「あ、そうも知れない」
(*40) テイレシアースはラーイオス王が息子に殺されることを予言した予言者。それでラーイオス王は生まれた男の子を捨てる。その子エディプスがやがて成人して、ある時旅の途中で老人と争いになり、その老人(ラーイオス)を自分の父とは知らずに殺してしまう。そしてある町に辿り着き、難問を解決して市民に喜ばれ、不在の王に代わり新しい王に推挙される。王妃と結婚し跡継ぎの子供も生まれる。
しかし実は不在の王というのがラーイオスであり王妃というのが実は自分の母であった。
テイレシアースは男に生まれたが、ある時山中で蛇が2匹交尾(相互挿入)しているのを見た後、女に変わったという。
あるいは、ゼウスとヘラが性の快感は男と女のどちらが大きいか議論し、その実験台で性別を変えられたとも。彼が女の方がずっと気持ち良かったと報告したので、議論に負けたヘラが怒って彼の視力を奪った。しかしその時予言能力ができたともいう。
この神話にインスパイアされてアポリネール(1880-1918) は『テイレシアスの乳房 (Les Mamelles de Tiresias )』(1917)というドラマを書いている。男に負けない存在になるために女から男に性転換した元女性の物語である。主人公の乳房が蝶のように飛んで行って胸の無い男になってしまうシーンが見せ場。
(男が女になるのは象徴的にはペニスの消滅だが、女が男になるのは象徴的には乳房の消滅)
反戦と男女平等を訴えた政治的な作品だが、当時は酷いジョークと受け止められた。なお主人公は男になった元女性だが、男性俳優ではなくソプラノによって演じられる。乳房の消滅シーンは胸の所に入れた風船を飛ばして演出する。
「あらためて訊くけど男に戻りたい?」
しジンジャーはオズマに訊いた。
ブルブルとオズマは首を横に振った。
「まあ女の方がいろいろ便利なこともあるよね」
とジンジャーは笑って言った。
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夏の日の想い出・日日是好日(17)