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■夏の日の想い出・日日是好日(14)
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目次 8
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かかし前王が旧友の木こりの所に逃げ込み、きこりは西の国の軍隊を連れてエメラルドシティを奪還しに来るかも知れないという情報はジンジャー将軍を不安にさせました。エメラルドシティの住人たちも今はまだ自分たちの支配を受け入れてくれた訳ではありません。
そこに北の国の魔女モンビが来て言いました。
「私が君たちに協力してあげよう」
モンビは“命の粉”を取り戻し、ティップにおしおきをしてやろうと思っていたのです。
エメラルドシティに向かっていたはずの木こりたちの一行は歩みを止めました。
「これはおかしい。我々は同じ所をぐるぐる回っている気がする」
「だいたいエメラルドシティへの道にこんなひまわり畑とかあったっけ?」
どうも一行は巧みにこのひまわり畑に誘い込まれ、ここで同じ所をぐるぐる歩かされていたのです。
「これは魔法だ」
とティップは言いました。
「このひまわりに幻惑されている。このひまわりを見ないように、目を瞑って歩いてみてはどうだろう?」
「目を閉じるといっても僕の目は閉じられるように作られていない」
とかかしが言います。
「みんな色々身体の構造が違うからなあ。木馬の目なんてただの木の節だし」
「だったら木馬君はひまわりに幻惑されないよね。だから木馬君が先頭を歩いて、他のみんなは木馬君の尻尾に捉まっていこう」
とティップが提案しました。
それで木馬が先頭にたち、みんなそれに繋がって歩いて行くと、何とかひまわり畑を抜けることができました。
少し行った所で、今度は木馬の足がウサギの巣穴に填まってしまいました。みんなで穴から引き出しますが、足が折れています。
「どうしよう?このあたりに森は無いし」
その時、かかしが言いました。
「ジャック、君の足を1本木馬君にあげてくれない?そしてジャックは木馬君に乗っていけばいいんだよ」
「なるほどその手があったか!」
南瓜男が足をあげることに同意したので、木馬は彼の足をもらって歩けるようになりました。
一行が歩いて行くと、目の前に急流がありました。しかしティップ
「これは誰かが魔法で見せた偽の川だよ」
と言って見えるものなど気にせず“急流”を歩いて横切ります。他の者も続きましたが、水など全くありませんでした。
そしてティップにはこの魔法を掛けているのが誰か分かってしまいました。
『モンビの魔法を物心付く頃から見てきた僕を簡単には騙せないよ』
目の前に高い崖が見えました。しかしティップは全く気にせず“崖”を歩いて通り抜けます。一行も続きましたが、全く何の障害もありませんでした。
目の前に40本の分かれ道がありました。しかしティップは
「こちらだよ」
と言って指さして正しい道を進みました。一行もそれに続きました。
「どうして正しい道が分かるの?」
「この程度の魔法、僕には効かないよ」
「すごーい!」
モンビは最後に一行の前に多数の炎を見せました。しかしティップは
「平気平気。みんな僕に付いてきて」
と言って火を避けて進みます。みんなティップに付いていくと、無事に向こうへ到達することができました。
一行はエメラルドシティの入口まで辿り着きました。革命軍の兵士が2人門のところに立っていました(山口暢香・高島瑞絵)が、木こりの金属のボディと斧を見ると抵抗せずに通しました。都のあちこちに革命軍の女性兵士がいましたが、やはり木こりを見ると抵抗しませんでした。一行は王宮に入ります。
「おかしい。こんなに簡単に通れるなんて。もしかして私たちは罠にはまっているのでは」
と、かかしは不安を感じました。
「何も心配することはない愚かな革命軍の連中はもう私たちに敗れてるよ」
と明るく木こりは言います。
玉座に行ってみると、そこにはジンジャー将軍が座っていました。
かかしは言います。
「勝手に玉座に座るのか。お前は反逆罪だぞ」
ジンジャーは笑って答えます。
「今は私たちがこの国の支配者です。あなたが言った通り、あなたたちが反逆罪になりますね」
「あれ〜?そうなるんだっけ?」
とかかし、
「うーん。法律的なことを言われると私も分からん」
と木こり。
やはり、こいつらダメだなとティップは思いました。
「ティップ、あんたこいつらの味方するの?」
とジンジャーが訊きます。
「そういう訳じゃ無いけど、ぼくは平和に解決して欲しいだけ。かかし前王を処刑するのはやめてほしい」
「ふーん」
とジンジャーは面白そうにティップを見ました。
その時、後ろから音も立てずに近づいたひとりの女性兵士・ナツメグ中尉(月城たみよ)が木こりの斧を奪ってしまいました。
「あっ、しまった」
斧が無くなると彼らはほぼ無力になってしまいます。
「全員捕らえろ」
とジンジャーが命じると多数の兵士が寄ってきて一行を捕らえようとします。しかしティップが持っていた、かんしゃく玉を投げますと爆発音に兵士たちが一瞬ひるみます。その隙に一行は逃げ出します。兵士たちに追われて一行はひとつの部屋に逃げこみました。兵士たちは無理せず、その部屋のドアを釘で打ち付け出られなくします。
「取り敢えず逃げた方がいいと思う」
とティップは提案します。
「でも閉じ込められたよ」
と南瓜男。
「うーん」
とティップは考えます。
かかしは頭に縫い付けてある王冠が重たくて頭が働かないから王冠を頭から外してくれと言いました。それでティップはかかしま頭に縫い付けてある王冠を外し、部屋の中に起きました。そして部屋の中のマホガニー製センターテーブルの足を使って南瓜男の足をまた作ってあげました。
ティップは2つのソファを並べて胴体とし、壁に飾ってあった鹿(antler)の首を頭とし、4枚の椰子の葉を羽根とし、箒(ほうき)を尻尾とした鳥?を組み立てました、これを物干し用ロープで縛って固定します。
「てもどこに逃げるの?」
「南の魔女・グリンダの所へ。助けてくれるかも知れない」
ティップはこの“ガンプ”に命の粉を振り掛けて生きている鳥にしました。そしてみんなでこれに乗って窓から飛び出し王宮から脱出したのです。
“ガンプ(Gump)”はどんどん南に向かって飛んでいきます。
ティップは脱出できたのでホッとして“命の粉”の瓶をそのあたりに転がしました。
「ティップ、大事な瓶が」
「あ、ごめんごめん,取って」
「はい。あれ?この瓶、底が二重になってる」
「え?」
確かに瓶の底の部分にも何か入れるところがあります。ティップはよく見えるようにランプを点けると、そっとそこの引出しを開けてみました。
丸薬が3つと、説明書が入っていました。
ニキディク博士の願い薬 (DR. NIKIDIK'S CELEBRATED WISHING PILLS)
使い方:
1錠飲む
17まで2ずつ数える
願い事を言う。
願い事はすぐ叶えられるであろう。
「2ずつ数えたら17にならないじゃん。17は奇数なんだから」
とかかしが言いました。これに対してティップは答えました。
「いや奇数だから到達できる。ふつう物を数える時は1から数え始める。だから 1,3,5,7,9, 11,13,15,17 で17に到達する」
「え?すごーい」
とかかしも木こりも感心しています。なんでこんな単純なことに感心するんだ?とティップは思いました。
(算数の勉強をしている人と何も教わってない人の差だと思う)
ガンプはどんどん飛んで行きましたが、なんだか見慣れぬ風景なども見ます。
「もしかしてオズの国の外に飛び出してない?」
「でもグリンダの住む場所はとても遠いですよ」
「でもこの子の飛ぶ速度も速いよ」
ティップは命じました。
「君が何かを見たらそこで止まれ」
するとガンプは両側に切り立つ崖のある平らな岩の上で停止しました。停止のショックで全員外に放り出されました。しかしかかしがクッションになったお陰で他の人は怪我をせずに済みました。でもガンプは岩に衝突して壊れてしまいました。
ここはコクマルガラス(黒丸鴉 jackdaw)の集団営巣地のようでした。かかしの身体はみんなを守ったために酷い状態になっていました。わらも飛び散っています。しかし、ちょうどカラスたちが留守だったのをいいことに巣作りに使用されていた多数の紙片を詰め込み、何とかかかしを修復しました。
「ガンプを修理しよう」
「どうやって?」
「願い事の薬を使う」
それでティップは願い事の薬を飲み
「1,3,5,7,9, 11,13,15,17」
と数えて
「ガンプの身体を元に戻して」
と願いました。
するとガンプの身体は修復され、また飛べるようになりました。
明らかに南に来すぎて、オズの国の外に飛び出してしまっていたので、ガンプに北に飛ぶように言いました。するとガンプは多数の街を越え、やがて何も無い砂漠地帯をひたすら飛びます。
「ここは多分オズの国・外縁にある広い砂漠地帯だと思う」
そしてやがて砂漠が終わると全てが赤い世界が現れました。
「やった!クアドリングスまで戻れた」
それでここからは木こりが道案内し、ガンプはグリンダの宮殿に着陸することができました。今度は2度目なのでガンプもソフトに降りることが出来ました。
ティップたちがガンプから降りると、グリンダ配下の兵士たちが彼らを取り囲みます。彼女らも全員女性です(グリンダの兵士:別記(*26))。
彼女たちのリーダー(川井唯 26)はすぐに、かかしと木こりを認識しました。それで彼らを宮殿に案内します。
「グリンダ様、お邪魔します」
と木こりが言います。
「ようこそ。あなたたちが来るのは分かっていましたよ」
とグリンダ(仁田友里 28 (*25))が言います。
それでグリンダはお茶を用意し、一行に勧めます。でも飲めるのはティップと木こりだけ!
(かかしは口が絵なので飲めない、南瓜男には飲食物を取る機構が無い)
(*25) 仁田友里は前回は北の魔女と南の魔女の1人2人をした。実は東の魔女(足しか映らない)と西の魔女もキャロル前田の1人2役だった。
(*26) グリンダの女性兵士を演じたのは下記28名である。
エレメントガード(4)槍田湖寿絵1986、望田寿子1999、宮城海夏1994、川井唯1996
ナイスエンジェルズ(4)樋口照実、佐原朋希、山本小夜、溝口初恵
フィフティースリー(4)横山一子、美波五月、樺島典江、仁藤由希
乙女地区(4)島本璃久1990、鹿本菜美1995、佐竹遙花1999、宮田輝代1997
白雪1200km(5)十勝萌子1989、五和真希1990、四谷恵美1991、三嶋道代1991、二見睦子1992
愛の十字架(4)鷹木礼子、真鍋亜矢、冨田瀬梨花、喜納満里
招き猫(3)平田留美1997、木下宏紀2002、谷口翼1998
招き猫の篠原君は女装が似合わないので免除。
自分たちの失敗は各々のサポートしているアーティストの責任になるので無茶苦茶モラールが高く信頼できた。ただし演技力は微妙なのでセリフや動きの少ないグリンダ兵に回ってもらった。
「でしたら話が早いです。エメラルド・シティが小娘の集団に占拠されたのです。そして私の王位も奪われました。取り返すのを手伝っていただけませんか?」
グリンダは落ち着いた声で言いました。
「エメラルド・シティは現在ジンジャー将軍たちのグループにより支配されています、彼女がエメラルドシティの統治者です。そこに私が介入する正当な理由はありませんよ」
「でもジンジャーは私から王位を簒奪したのですよ」
「あなたはどうして王位を手に入れたのですか」
「オズの魔法使いが居なくなってしまったからエメラルドシティの人たちに王になってくれるよう要請されました」
「オズの魔法使いはなぜエメラルドシティを統治していたのですか」
「先代の魔法使いが亡くなり、その後を頼まれたと言っていました」
「先代のオズの魔法使いはどうやって支配者になったのですか?」
「それ以前の王パストリア(Pastoria) から譲られたと聞いています」(*27)
「それが譲られた訳ではなかったようです。ですから王位の所有者はあなたでもジンジャーでもなく、 パストリアにあったのです」
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