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■春一(25)
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9月15日(木).
高田舞花と谷口愛佳が先月受けた模試の結果が返ってきていた。舞花は富大芸文(富山大学・芸術文化学部)と富山県立大がC判定になっていて自信を回復した。愛佳も金沢の中堅私立大にC〜D判定が出ていた。
「でも私立には行かせてもらえないだろうなあ」
「奨学金もらってバイトもすれば親からの支援無しでも何とかなると思うよ。取り敢えず高校1〜2年の復習とかしてみたら」
「そうだなあ」
2人は模試結果を担任に見せ
「おお頑張ったじゃん」
と言ってもらった、
9月20日(火)、藤尾広紀(旧姓青山)は元気な女の赤ちゃん(2718g) (*44) を出産した。陣痛が始まってから24時間近い、結構長い出産であったが、広紀は自身の母からは
「このくらい普通」
と言われていた。本人は
「もう死ぬかと思ったぁ」
と涙を流していた。
『霊界探訪』取材班は夫の藤尾歩が連絡してくれたので、幸花・明恵・真珠の3人でインタビューを取りに行き、赤ちゃんの映像、ベッドに寝ている広紀の映像を撮ってきた。
「凄く苦しんでるの見て大変だなあと思った。次も広紀に産んでもらおう」
などと歩は言っていた。
(*44) 父親の藤尾歩が女性(XX)なので子供は必ず女児(XX)である。Y卵子は成熟できないので減数分裂した直後に死亡してX卵子のみ残る。
実際に出産したのは広紀だが、彼は法的には男性なので、法律上女性である藤尾歩の名前で産婦人科を受診し、そのまま出産した。従って母子手帳・出生証明書にも父:藤尾広紀、母:藤尾歩と記載され、戸籍上にもそう記載されるはずである。
男性の出産という面倒な事態を避けるため、こういう便法を用いた。
戸籍上男性である広紀に産休をくれた副所長は偉い!
2022年9月22日(木).
オーストラリアでFIBA 女子バスケットボール・ワールドカップが開幕した。
若手主体の代表チームで臨んだ日本は、予選リーグでマリだけに勝ち、オーストラリア、カナダ、セルビア、フランスに負け、1勝4敗でまさかの予選落ちをした。
今回昨年のオリンピックで銀メダル取得に貢献した主力がほとんど外されていたことにマスコミなどからは批判の声が多く出たし、選手の中からも采配に疑問の声があがるなど、監督・チーム代表など首脳部を責める声が相次いだ。
日本バスケット協会は監督とチーム代表を解任した。また強化部長も辞任した。女子日本代表はゼロからパリオリンピックに向けて再出発することになる。
9月23日(金).
吉川日和は4回目の生理が来た。もう4度目になると
「ああ、また来たのか」
と思うだけで、もう日常になってしまった。
日和は夏休み明けから女子トイレを使っているのでナプキンの交換にも全く困ることはなかった。
9月24日(土).
梨原有明(槇原安里愛)は2度目の生理が来た。土日の間は自宅のトイレで汚物入れにナプキンを捨てることができた。月曜日(9/26)は困ってクラスメイトの女子に相談した。すると
「リアちゃんは女子トイレに入っていいよ。おいで」
と言って手をつないて女子トイレに連れてってくれた。おかげで無事交換することができた。
「でも生理来たのね」
「リアちゃん、おっぱい少し膨らんで来てるみたいと思ってた」
「リアちゃんはこれからもずっと女子トイレ使っていいと思うよ」
「むしろ梨原にはあまり男子トイレ使って欲しくない」
「梨原さんは体育の時の着替えも男子と一緒に着替えるのやめてほしいという意見もあるのだけど」
「リアちゃん、着替えの時2組の教室に来る?」
この学校では男子は奇数教室、女子は偶数教室で着替えている。
「そんな女子と一緒とか恥ずかしいー」
「男子と一緒に着替えられるとこちらが恥ずかしいのだけど」
「じゃ明日は試しに女子のほうに来てみてよ」
「え〜〜〜!?」
翌日、有明は女子と一緒に着替えたが、女子と一緒で何も問題も無いし、男子と一緒に着替えるのは大いに問題があることが判明した。
9月25日(日).
H南高校の女子バスケット部は、フラミンゴに高岡C高校女子バスケット部を迎えて練習試合をおこなった。ウィンターカップ予選は10月22日から始まるが、その1ヶ月前に矢作さんから
「高田妹も入れたチームと練習試合がしたい」
という申し入れがあったのである。
春貴としてはウィンターカップに高田晃を出すかどうかまだ悩んでいるのだが、向こうとしては当然晃が出てくるものとして、チーム強化の目安を掴みたいのだろう。地域リーグで死闘をした7月中旬からはどちらもレベルアップしているはずである。
春貴は晃に言った。
「矢作さんのご指名なんだよ。試合に出てよ。取り敢えず公式戦じゃないから、いいでしょ?」
「分かりました。出ます」
と晃も答えた。
試合会場にこちらの練習場を使うことにしたのは、向こうとしても敵情視察したいというのがあったのだろう。
「きれいな体育館ですねー」
と矢作監督は言った。
「6月に出来たばかりなんですよ。実は津幡町の火牛スポーツセンターの分室なんですけどね。これの建設をしていた時にうちのバスケット部が使っていた練習場を作業員の人がクレーンを倒して壊してしまって」
「あら」
「それでその練習場の代わりにここを自由に使ってと言われたのでありがたく使わせてもらってるんですけどね」
「へー」
「女子バスケット部は4月の段階では体育館の外に置いたゴール1個で練習してたんですけどね」
と愛佳キャプテンが言う。
「外?」
「でも春貴先生がウッドカーペット買ってくださって、そこでドリブル練習できるようになったんですよね」
「なんか悲惨な練習してるな」
「でも思いがけず総体予選で3位になったから、古い美術室を練習場にもらったんです」
「美術室って天井が低いのでは」
「ひたすらランニングシュートとドリブルの練習だけしてましたね」
「シューター班は体育館外のゴールで練習」
「でもその美術室が壊れて代わりといってここを使わせてもらえるようになって」
「わらしべ長者みたいだ」
「私たちもそう言ってたんです!」
「でもそれでみんなドリブルやランニングシュート・ミドルシュートとかの基礎がしっかりしてるわけだ」
「試合練習とかできませんでしたから」
「まともな練習場が無かったからひたすら基礎練習してたんですよね」
「確かにこのチームは基礎ができてると思ってた」
「基礎しかないですけど」
「ひとりひとりに課題を与えて、とにかくその練習ばかりさせてましたからね」
と春貴。
「やはり弱い所を克服させるべく?」
「いえ得意な所を伸ばすようにひたすらそればかりです」
「なるほどー!」
「だって苦手なの練習しても辛いじゃないですか。得意なのたくさん練習したほうが楽しいですもん」
と舞花が言っている。
これを聞いて「奥村先生は凄い指導者だ」と矢作先生は思った。
「H南高校が急に強くなった理由(わけ)の一端が分かった気がした」
と矢作先生は言った。
H南高校の男子部員が審判・T/Oとモッパーをしてくれた。
(モップ掛けが超適当!)
こちらは愛佳・舞花・美奈子・河世・晃という、最強布陣でスタートした。
向こうも7月からかなりレベルアップしていた。しかしこちらも夏休みの間、ほぼ毎日主力は“個人練習”の名目で練習していて各々がかなりレベルアップしている。それでこの試合は凄い接戦になった。矢作さんも今回はゾーンを使わなかった。両者ガチ勝負である。
最後は向こうのSG 鷹野さんのセンターラインからのロングシュートがブザービーターになって高岡C高校の逆転勝ちとなった。
普通ならブザービーターを決めたら歓喜の声があがり抱き合ったり、決めた選手をみんなが叩いたりするものだが、撃った本人が力尽きて大の字に寝転がってしまった。他の選手も座り込んだり伸びていたりする。負けたH南高校側も全員立てなくなった。
(女子だから大の字で、男子は太の字?)
物凄く消耗の激しい試合だった。
主審を務めた坂下君が整列を促し、頑張って立ち上がって両軍整列する。
「103対101で高岡C高校の勝ち」
「ありがとうございました!」
それで両軍ハグしあって健闘を称えた。H南高校のメンバーが泣いていたが、高岡C高校のメンバーも泣いていた。
矢作先生も春貴も腕を組んで選手たちを見ていた。
この試合はお互いとても有意義な試合となった。
千里の出産については『竹取物語』を配信した後で書きます。
9月28日(水).
高田晃に再び生理が来た。生まれて2度目の生理である。数日前から下腹部が痛かったので「もしかして来るかなぁ」と思ってナプキンを着けておいたら来た。生理用ショーツも着けている。
晃は女の子になっちゃった6月28日の後で、7月3日に生理が来ている。この生理は6月19日頃に黒衣魔女の体内で起きた排卵が引き起こしたものである。
しかしその後晃は7月20日に千里に“願い石”の呪いを解いてもらい、晃の体内に入っていた卵巣・子宮は本来の持ち主である黒衣魔女のところに戻り、晃は単に男性器が無いだけの状態になった(*45).
7月17日頃に晃の体内で起きたであろう排卵は7月末に黒衣魔女に生理を起こしたはずである。
(*45) 晃の男性器を取っちゃったのは“姫様”である。姫様は女子トイレを使っていた彼に声を掛け、女の子になりたいのなら、陰茎と睾丸を「卒業まで預かる」と言った。
姫様としては女子トイレを使っていたことに対して罰を与えたのではなく、むしろ親切心で女子トイレを使っても叱られない身体にしてあげただけである。もっと親切に完全な女の子に変えてあげようかとも思ったが、それは真珠に止められた。
この事件は元々晃の守護霊が、願い石の作用により晃が男性器を喪失する事態を避けるため、姫様に預かってもらえるよう仕組んだものである。願い石の霊集団により性転換手術されていたら、晃の睾丸は廃棄され、ペニスはヴァギナに作り変えられてしまって復元不能になっていた。晃の夢の中で、メイド服で登場したのが守護霊本人である。
守護霊としては、晃は女の子指向も元々持っていたので、本人が女の子になりたいと思うようになったらそれでもいいと思っている。。
呪いが掛かっていた時は卵巣・子宮もある女性体になっていたので女子としての試合出場資格があったか、呪いが解除されて女性器が無くなると、このままでは晃は性転換手術を受けた元男性と思われかねない。それで千里は彼の身体を“性的に未熟な女性”に変えてあげた。これで自分の男性器が戻って来るまで何とか乗り切る。
姫様が霊的に晃の男性器を預かっているので、千里が晃の性別軸を回転させて男に戻しても物理的な男性器は出現しない。つまり物理的には女にするしか無かった!
姫様は晃が高校を卒業する時に男性器を戻してやると言っているが、気まぐれで物忘れの激しい人なので全く当てにならない。でも晃は「戻してやる」という言葉を健気に!信じている。でも元々女の子になりたい気持ちも少しあった上に、2年半にわたり女性ホルモンに曝された後に晃が本当に男に戻りたいと願うかはかなり微妙な気がする。
そして晃はその後しばらく生理が無かったのだが、この身体が恐らくホルモン的に落ち着いて来たことから生理が始まったのだろう。
7.20 呪い解除/性別軸の調整 排卵起きず
8.17(+28) 排卵起きず
9.14(+28) 排卵再開
9.28(+14) 生理再開
晃は学校では本棟1階の多目的トイレを使っているので、そこにナプキンを捨てることが出来る。また放課後は他の女子と一緒に(女子)トイレを使うので、ナプキンの処理も問題無い。
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