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■春一(6)
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真珠は辺来の里神社に行って、姫様に抗議した。
「姫様ひどいです。邦生の誕生日は8月28日なのに」
神様に文句が言えるのは、きっと千里と真珠くらい。
「あ、そうだった?ごめーん。でも1ヶ月くらいいいじゃん。とにかくこれで邦生は男っぽくなることはなくなった。何なら完全な女に変えてやってもいいぞ」
「それはお断りします」
「でもこれで私自然妊娠できなくなりました」
「冷凍精液はあるのだろ?」
「それはありますけどね」
「結婚一周年の時に一晩だけ睾丸を復活ざせてやろうか」
「お願いします!」
「どっちみち、あの睾丸はほとんど死んでたぞ。あれでは生殖能力のある精子は生産できなかったはず」
「ああそうかも」
でないと、邦生があんなに女性的な外見であることは説明できない。
「スーパー精子が生産できて特大サイズでゴールド塗装のものに替えてやろうか」
スーパー精子って何?
「普通の睾丸でお願いします」
「んじゃあの死にかけの睾丸を何とか再生させるか」
「お手数ですが、よろしくお願いします」
※アクア(M)・花園裕紀・吉田邦生の比較(OXはこの順)
●喉仏XXX
●声:両両女
●おっぱい:OXO
但し裕紀も常時ブレストフォームを付けていてあるように見える。
●ちんちん△×O
アクアのは体内に埋没。
●勃起OXO
●たまたま:XXX
●陰裂OXO
●排尿位置:女男女
●膣内射精:OXO
●ヴァギナOXO
●子宮?×?
●卵巣?X?
つまり邦生の状態とアクアの状態がとても近い。アクアも邦生も誰かの意図で勝手に女性化されているが裕紀は(自然に?)無性化している。本人の性別意識はアクアも邦生も男性だが、裕紀は性別意識自体が曖昧である。
7月30日(土)。
アクアのアルバム編曲作業に参加していた南田容子と立花紀子は27日夕方に作業が終わった後、ひたすら寝ていたが、この日の午後、初海の運転するVolvo XC40 で、高岡大仏と海王丸を見せに連れて行った。
2人はお土産に「ますの寿し」をたくさん買っていた(南田容子はヴァンドール+1の5人分、立花紀子はFlower Sunshineの7人分)。
そして31日(日) 能登空港に連れて行き、熊谷行きのHonda-Jet
Redで帰した。
7月30日(土)。
この日の**テレビの深夜番組で金沢市某所の“願い石”のことが報道された。それでこれ以降、そこに行って石を削り取って来ようとする人が殺到することになる。
8月1日(月)。
奥村春貴は宝くじの当選金10万円(と勝手に思い込んでいる)を受け取ってこようと思い、パッソに乗って金沢に向かった。
夏休みに入ってすぐ行きたかったのだが、この日まで都合が付かなかった。
7/21(thu) 書類が溜まっている
7/22(fri) バスケ部練習日
7/25(Mon) 給料日。その後色々会議。
7/26(Tue) バスケ部練習日
7/27(Wed) 富山市で数学教師向けの研修があった
7/28(Thu) 高岡市で担任・副担任向けの研修があった。
7/29(fri) バスケ部練習日
夏休み中の先生たちというのは結構忙しいものである。
それでやっと今日有休をもらって金沢に出たのである。
氷見南ICから能越道(無料区間)に乗り、高岡北ICで降りる。県道32号を西に向かう。この県道は国道8号とほぼ並行していて、こちらのほうが一般に空いているので、道を知っている人は結構こちらに来る。
メルヘンおやべ交差点で国道8号(小矢部バイパス)に合流。そのまま、くりから(*13) バイパス、津幡北バイパス、津幡バイパスと走って金沢市内に入る。そして山環(金沢外環状線山側)に入り、鈴見ICから市街地に入る。そこから約10分で南町界隈に到達するので、裏通りの適当な時間貸し駐車場に駐めた。
(*13) 漢字で書くと“倶利伽羅”。“火牛戦法”によって人数的に圧倒的に少数だった木曽義仲の軍が平氏の大軍を壊滅させた“倶利伽羅峠の戦い”があった場所の近くを通る。
“倶利迦羅”の名前は、近くの倶利迦羅不動寺に基づき、そのお寺の名前はそこに安置されている倶利迦羅不動明王像(*14)に基づく。“くりから”とは、サンスクリットで“福徳円満の黒い龍”を意味するらしい。元正天皇の時代に始まる古刹だが、上記の戦いで焼失。後に再建された。
(*14) ご本尊は養老年間に、来日したインドの善無畏三蔵法師が敬刻なさったと伝えられるもので、3年に1度、ご開帳される。通常は御前立のお不動様を拝見できる。
春貴は道路を渡り、みずほ銀行に入る。番号札を取って待つ。やがて番号を呼ばれるので窓口に行く。
「すみません。これ10万円当たっているらしいんですが」
と言って宝くじを袋ごと出した。
「ご確認しますね」
と係の女性は笑顔で言って、機械に掛ける。女性は一瞬息を飲んだ。長く窓口係をしていても、こういう瞬間は何度も体験することではない。
「少々お待ちください」
と言って、女性は席を立ち、後方の奥の方にいる50代の女性に声を掛けた。その女性と一緒に窓口の所に来る。副支店長の名刺をくれた。
「お客様、応接室にご案内します」
「はい?」
なんか10万円くらいで大げさだなと春貴は思った。
応接室に入ると、コーヒーとケーキ!が出てくる。
「どうぞお召しあがり下さい」
と言われるので春貴はマスクを取って口紅を拭いてからコーヒーを飲み、ケーキを頂いた。副支店長はしばらく中座していた。春貴がケーキを食べ終わった頃、何やら大量の資料を持って入ってきた。春貴はマスクをした。
副支店長は言った。
「お客様、前後賞の1億円と6等300円が当たっています」
「え〜〜〜〜〜!?」
と春貴は驚愕した。
「あのぉ、10万円じゃ無かったんですか?」
「1億円です」
と言って彼女は説明した。
春貴が持っていた宝くじの番号は、82組136980-89 であった。今回のドリームジャンボの当選番号は 82組136990 だった。それで 136989 が前後賞にヒットしたのである。当選番号の下1桁が偶然にも 0 であったために、こういう現象が発生した。逆に言うと連番で買って1等を当てた人は、3億円+1億円×2=5億円ではなく、3億円+1億円=4億円だけ受け取ることになる。
そのほかに 136987 が6等の300円である!
そんな1億300円なんて夢みたいと思う。
そしてこれだけ資金があれば生徒たちにたくさんおごってあげられると思った。
(↑なぜそういう発想になるのか?)
副支店長は最初に、高額当選金の受け取りには1〜2週間掛かるということを説明した。また金額が大きいので現金ではなく振込で受け取ることをお勧めするというので、春貴はみずほ銀行に口座を作り、その口座で受け取ることにした。それで口座開設の書類を書いた。
その上で、“【その日】から読む本”という小冊子を渡される。そして宝くじが当たってから、気をつけるべきことをたくさん言われた。
・当たったことはどうしても話さなければならない人(基本的には配偶者のみ)以外には、親兄弟子供も含めて絶対誰にも言わない。
「私未婚なんですが」
「でしたら、どなたか秘密を守ってくれて絶対に信頼できる同性の御友人、お客様と利害関係の無い人、そしてお金に困ってない人に相談することをお勧めします。同僚や上司は概して不適格です。日常生活であまり関わりのない人がいいです」
春貴は、“同性”と言われて邦生の顔が思い浮かんだ。彼女きっと既に女性になってるよね?元男子だったというのまで同じだし(呉羽では頼りない気がした)。彼女なら絶対的に信頼できそうだ。銀行員で給料いいだろうし、結婚式で見たエンゲージリングは凄い大粒のダイヤ使ってたし、きっと経済的に余裕があるのだろう。そして日常生活ではほとんど関わりがない。
副支店長の注意は続く。
・仕事は辞めない。
・借金があったら最初にそれを全部返す。
・結婚資金や結婚してから生まれた子供の学資、自分の老後資金などを確保し、自分でも簡単には取り崩せない形にする。
・残りのお金の使い方は、焦らずに半年くらいゆっくりと考えて決める。
よくある投資詐欺などについても詳しく説明された。
副支店長とのお話はお昼近くまで掛かった。それで春貴は6等300円だけ受け取り、みずほ銀行を出た。
春貴は駐車場に戻り、車の中で邦生にメールしてみた。本人から電話が掛かってくる。
「ちょっと相談があるんだけど」
「今どこ?」
「金沢市内」
「だったらお店とかで会うのは感染も怖いし、人に聞かれるし、夕方うちに来ない?」
「まだあのアパートだっけ?」
「あそこからわりと近くのマンションに引っ越したんだよ。住所と緯度経度を送る」
「ありがとう。近くに駐車場あるかな?」
「時間貸しの駐車場はいくつかあるよ」
「じゃ夕方。何時頃がいい?」
「銀行は17時半で終わるから18時くらい以降ならOK」
「じゃ19時頃に」
「OK」
ということで、春貴は夕方、邦生の自宅に行くことにしたのである。
邦生から送ってもらった住所・位置情報を見て、イオンもりの里店から比較的アクセスしすいことに気付く。それでまずは駐車場の精算をしてから車を出し、そこに移動した。マクドナルドを買ってきてお昼御飯にする。
それから春貴は念のためアラームを掛けて仮眠した。
16時頃、目が覚める。イオンでトイレを借りて、お土産にミスドを買い、春貴は邦生のマンション近くに移動した。カーナビで目的地まで100mという所に空きのあるTimes駐車場があったので、そこに入れて駐車した。そして念のためまたアラームを掛けて後部座席で横になり、銀行でもらった飼料を見ていた。
18時半。起き上がり、アルコールウェットで顔、耳の後ろ、首筋、胸などを拭く。化粧水と乳液のあと口紅だけ塗って車を降りる。Google Map を頼りにマンションに辿り着いた。
「いいマンションに住んでるなあ。さすが」
ということで、マンションを見ただけで邦生への信頼感が高まる。
マンションの中に入り、7階にあがる。そして703号室のピンポンを鳴らした。
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