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■春一(2)
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「時代が下がってくると、一言主の神というのは、その名前から、ひとつだけ願いを叶えてくれる神様という信仰が生まれて、御所市(ごせし)の一言主神社には、願い事を頼みに来る参拝客が多くなる」
と真珠は解説する。
「でもひとつだけってのは悩むね」
「その人にとって本当に切実な願いだと思うよ」
「今夜トンカツ食べたいなんてのは駄目だよね?」
と初海。
「叶えてくれるかもしれないけど、ひとつしか願えないのに、そんな願いで良いのかという問題はあるな」
と幸花は言った。
「その“ひとつだけ願い事を叶えてくれる”というのは後から出て来た話なんだろうけど、元々はどういう神様なのかなあ」
と初海が言う。
「味鋤高彦根神(あじすきたかひこねのかみ (*3))の別魂(べつみたま)ではないかという説もある」
と真珠。
「あじ?」
と初海はこの神様を知らないようである。
「だいこく様こと大国主神(おおくにぬしのかみ)の息子で、えびす様こと事代主神(ことしろぬしのかみ)のお兄さんに当たり、別名・加茂の大神」
「そう聞くと何か偉い神様っぽい」
真珠は(メモを見ながら!)ホワイトボードに書いた。
大国主神(だいこく様)の子供たち
母=奥都嶋の田心姫(*4)
味鋤高彦根神(高鴨神社)別名:加茂大神
下照姫(長柄神社)別名:あかる姫(*5)
母=邊都宮の高降姫(*4)
八重事代主神(下鴨神社)えびす様(*6)
高照姫(中鴨神社)
「こうなってて、この四柱の神がセットなんだよ。葛城でこの4つの神社がダイヤモンド状に並んでいる」
「賀茂神社というと京都のを思うよね」
「そそ。でも賀茂神社のルーツは葛城(御所市)にあるんだよ」
「へー」
(*3) 味鋤高彦根神の“鋤”の字は本当は右の“力”が無い文字“鉏”だがJISに無い文字なので同音同意の鋤で代用している。
この神は高天原を裏切ったために処刑された天若日子(あめのわかひこ:“あまのじゃく”)と容貌がよく似ていたという。むろん味鋤高彦根神は大国主神の息子で地の神の代表格のひとりであり天の神である天若日子とは全く別の神である。似ていたのは他人の空似。
味鋤高彦根神は土佐神社にも祭られているが、その土佐神社の神が一言主神との説があり、それで両神は実は同じ神の別魂では?とも言われる。現在土佐神社では2つの神名を並記している。
一言主神が現れた葛城は元々味鋤高彦根神を中心とする加茂四神の本拠地である。
(*4) 田心姫と高降姫は宗像三女神(むなかたの3めがみ:宗像大社や厳島神社の神)の内の2人である。三女神の内のあと1人は実は大国主神の先祖である!神様の寿命は物凄く長いから、こういうことも起きる。
(*5) 下照姫(別名あかる姫)はその名前から“下が明るい”という連想で、後にお産の神様としての信仰が生まれた。本拠地である御所市の長柄(ながら)神社のほか、鳥取県の“ハワイ”にある倭文(しとり)神社などにも祭られている。実は上述天若日子の妻でもあった。
要するに天若日子は美女を与えられて大国主神側に寝返ってしまったので高天原に殺された(“返し矢”)。
(*6) 伝承に大いに混乱がある、えびす様こと事代主神(ことしろぬしのかみ)だが、筆者の研究ではここ葛城が誕生の地と考えられる。その後、奈良北方の岡田(岡田鴨神社:現在は京都府)に移動し、ここから木津川・淀川を通って三島の溝咋姫(みぞくいひめ)の元へ通われた(三島鴨神社・溝咋神社)。ふたりの間に生まれたのが、五十鈴姫で、神武天皇の皇后である。
つまり高天原系の神武天皇と国津神系の五十鈴姫が結婚したことで、おそらく当時日本の2大勢力であった天神・地祇が合体したのであり、そういう意味で神武天皇の意義は大きい。
記紀に記された血統を見ると、その後も事代主の子孫が初期の天皇家の重要な外戚として存在感を持っている。後に蘇我氏や藤原氏がしたのと似たようなことを葛城一族が行っている。結果的に事代主神(えびす様)は皇室の祖先神のひとつであり、それ故、御巫八神のひとつとして現在も宮中に祭られている。
(*7) 青山広紀は『霊界探訪』の元助手であるが、大学が夏休みの間に学費を少し稼いでおこうと思い軽作業のバイトに応募したら、なぜか行った所はオカマバーだった。美しく女装させられ、それで女装に目覚め、就職する時に女装で勤務したいと言ったら認められ、立派な女性社員になった。そして女性だけの部署に異動された。後、性転換手術も受けて完全な女性になり、同僚の女性と同性婚。そして1月に妊娠したのである。(正確には妊娠が発覚してから結婚式を挙げた)
↑以上は幸花の理解している内容であり、きっと事実とは少し?違う!
明恵と真珠の理解はこのようである(多分これも少し違う)。
青山君は元々女装に興味があり、そのために髪も伸ばしていた(*8) が、卒業して就職したら髪を切らないといけないし、最後の記念にと思い夏休みにオカマバーでバイトした。(*9).
するとプロのオカマさんたちの手で美しく女装させられた自分に陶酔し、そのまま卒業までオカマバーでのバイトを続けることにした。うまく乗せられて顔や足のむだ毛はレーザー脱毛し、女性ホルモンも飲むようになって、おっぱいも大きくしちゃった。
それで大学卒業を機会に“普通の男の娘”に戻るつもりだったが、彼が女性にしか見えないしバストもあるし、女性下着を着けているので、入社した会社ではほぼ女性社員として扱われ、女子トイレ・女子更衣室の使用も許可された。そして秋に発足した女性だけの部署に異動され、結局女装で勤務することになる。
それで2年ほど勤務していた昨年秋、青葉さんの新居にソーラーパネルを取り付けに行った時、偶然千里さんの1番さんと握手してしまい、本当の女の子になっちゃった!その時、青山さんの彼氏(FTM)も本物の男性になっちゃった。それで2人は男女逆転した状態でセックスして、青山さんは妊娠した。
でも1番さんが勝手に彼女たちを性転換したことに気付いた別の千里さんが2人を元に戻そうとした(*10)。それで彼氏の方は女に戻ったが、青山さんはその時点で妊娠中だったので、多分胎児保護のため性別変更が保留された(*11).
(*8) 髪を伸ばしていたのは事実。本人は散髪代節約のためと言っていたがシャンプー代が高くつくはずだから全然節約にならない。
(*9) さすがに軽作業に応募したらオカマバーだったというのは嘘だろうと明恵たちは思う。行って見ればオカマバーというのは分かるはずだ。それに彼は“軽作業”ができるほどの体格ではない。とても華奢だし、20kgの荷物を持てない。
(*10) ほんとにふたりの性別を元に戻そうとしたのは緩菜。千里4は千里2か3あたりが戻してあげようとしたのだろうと思っている。
(*11) 千里さんの話では、以前1番さんに勝手に性転換されて妊娠した人の場合、出産してから1年後に元の性別に戻ったらしい。多分赤ちゃんに授乳してあげるため。青山さんも恐らく同様の道を辿るものと思うと千里さんは言っていた。
「でも青山さん、性転換前にむだ毛のレーザー脱毛とか、喉仏の除去とかしておっぱいも大きくしてみたいなんですけど、男に戻ったらそれも元に戻ってしまいます?」
「大丈夫。適度に女性化させてあげるから」
「だったらいいですね」
適度じゃなくて完全に女性化されたりして。
「ところでまこちゃん、邦生ちゃんそろそろ完全な女の子にしてあげようか?」
「本人はいやだー。俺は男だぁと言ってます」
「往生際が悪いな。でも去勢手術は予約したんでしょ?」
「去勢は同意しました(と真珠は思っている)。多分本人もあまり男っぽくはなりたくないんですよ(多分半分くらいは当たっている)」
「男子はみんな25歳までに去勢すべきだよね」
「日本の人口が激減する気がします」
そんな話をしたのが5月くらいであった。
「ぼく9月からはスカートじゃなくてズボンで登校しようと思う」
と高田晃は姉に言った。
「なんで?せっかく女子生徒として学校が受け入れてくれたのに」
と舞花。
「だって、やはりぼくは男の子だもん。現状は一時的に女の子の身体になっているけど卒業する時に男性器は返してもらえるという話だし(←ほんとに戻してもらえたらいいね)、後で男の子に戻るなら、完全な女子高生生活をしてはいけないと思うんだよね。だから体育の時の着替えも女子更衣室ではなくて面談室とかで着替える。身体測定も美奈子ちゃんに頼んで個別測定にしてもらう」
「ふーん。それでも3年間女子高生したら、今更男の子には戻れないと思うけどね」
と舞花は言った(全く全く)。
「ところで10月のウィンターカップ予選にはもちろん出るよね?」
「パス。男子が女子の試合に出てはいけないよ」
「パスは許さん。絶対出てもらう」
7月23日(土)の午後、編集部のメンバーは氷見の“きつねうどん”に行って取材した。
事前の取材申し込みで支配人の三島美耶さん、店長の雨晴日室さんが来ていて、お話を聞くことができた、
お店に行って、まずはきつねうどんとお稲荷さんのセットを注文する。この時、真珠はマイ丼・マイ皿・マイ箸をストッカーから取りだした。この様子を初海がカメラでが撮影する、明恵もこの機会にマイ丼・マイ皿・マイ箸のセットを購入。テプラで“AKIE”というシールを作ってもらい貼り付けた。ほかの2人は紙の容器と割り箸である。
支配人さんが説明する。
「現在感染防止のため容器は全て紙の容器と割り箸を使っています。紙の容器も割り箸も間伐材を使用したもので元々エコなんです。使用後は容器はボイラーの燃料にしていますので、ゴミは全く出していません、でもリピーターの方にはマイ丼の使用をお勧めしています。丼自体は300円頂いていますが、毎回30円引きになります。マイ丼は砥部焼の磁器製でとても丈夫なんですよ。箸は輪島塗です」
(陶器はどうしても割れやすいが磁器は簡単には割れない)
「ストッカーから取り出す所は銀行の貸金庫のシステムと同じですね」
「はい。あれと同等のシステムを導入しています」
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