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■春一(17)
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※この物語はフィクションであり、出てくる地名・人名・会社名は全て架空のものです。“危ない”地区というのも架空のもので、そのような場所は実際にはありません。
今(2022年)から7年前。
2015年3月。遊佐真白は、何か得体の知れない困難に直面していた。しかし偶然出会った東京の占い師・中村晃湖さん、そしてほぼ同時期に父・貞治が知り合った川上青葉さんという40歳くらいと当時は思っていた(←笑)若い霊能者さん、年の離れた妹の村山千里さんが手助けをしてくれて、詳しいことは分からなかったものの、結局その3人の協力で真白も家族も危機を“一時的に”脱出することができた。
処理が終わった時、川上さんは言った。
「恐らく数十年前にここに封印されたと思われる式神のパワーを今回補強したので、そのパワーでこの家の中の人は一応守られています。でもこの土地の霊集団が物凄くて、この家はもって10年だと思います。5年後くらいには転居を考えたほうがいいです」
しかし家の経済的な問題もあったのだろう、実際の転居の話はその後、全く出ていなかった。それに合理主義者の母は霊能者とか占い師なんて、胡散臭いものと思っていた。
真白はその後、2015年4月から2018年3月まで、(自分としては)ごく普通の男子高校生生活を送った。文化祭で英語部の英語劇になぜか毎年女役で出演したのは、きっと人数の都合だろう。演じた役は、眠り姫を育てた7人の魔女のひとり、シンデレラの舞踏会に出席していた貴婦人、アラジンと魔法のランプで王女の侍女、と端役専門であった。
高校の合格発表の直後にキスしてしまった美里との関係はあの日ふたりで確認したように“友だち”という線を“あまり”飛び出さなかったつもりだ。
(↑きっと嘘だ)
キスも20回くらいしかしなかったし!(美里によると52回したらしい。半分は真白が寝ている間に勝手にしたものらしい!!)
でも周囲は2人はもう“できている”のだろうと思っていた感じもある。父は「ちゃんと付けてる?」などと言い、念のためと言って避妊具をくれた。
2人は「好き」とか言ったことも無かった。でも美里は
「うちの家、居心地良くなくてさ。ちょっと避難させて」
などと言ってよく真白の家に来ていた。当時真白は、
「美里の両親、仲が良くないのかなあ」
くらいに思っていた。美里の妹たちもよく友だちの家に行ってると言っていた。
美里はうちに来た日は、たいてい真白の部屋に泊まっていった。むろん布団は別々だし2つの布団は50cmくらい離していた。更に真白は(美里が夜中に勝手に真白の布団に侵入してくるので)2つの布団の間に衝立まで置いた。
「ここまでしなくていいのに」
「何かあったと誤解されたら困るし」
「それ今更だと思うなあ。でもこの部屋が凄く落ち着くのよ」
「以前ここに来た霊能者さんが言ってた。この部屋は女の子を育てるのに良い部屋だって」
「ああ、だから真白って女の子らしく育ったのね」
「別にぼくは女の子らしくはないつもりだけど」
「でもいつも一緒に寝てるのに私を襲わないし」
「人が聞いたら誤解するようなこと言って欲しくない」
「それに真白って男の子が好きだよね」
「ノーコメント」
美里は楽しそうに笑っていた。美里としては自分は“男性器の付いてる女友だち”という感覚なのでは、と真白は思っていた。だから将来男の子と付き合う時の練習をしているのではないかと。しかし真白は美里に“遊ばれながら”この美里を失いたくないという気持ちも少しずつ大きくなっていった。美里が本当の男の子の恋人を作ったら自分は耐えられない気がした。
美里はよく真白に避妊具を付けてみたりして遊んでいた。
「これ面白ーい。くるくると回転してぴったり装着できるって、よくできてるね」
「付けられるとなんか変な感じ」
「このまま私に入れてもいいよ」
「しない」
「やはり女の子に興味無いのね」
「そういうわけじゃないけどさ」
でもキスはしてほしいと言うのでキスしていた。
高校3年の時に〒〒テレビで『霊界探偵金沢ドイルの北陸霊界探訪』が始まる。
「あ、あの時の霊能者さんだ」
と思った。どうも以前この手の霊番組を担当していたものの最近ずっと休んでいた慈眼芳子の後任ということのようである。
「へー。こんな凄い霊能者さんだったのか」
などと思った。
真白の家を処理する時も連れていた妹の村山千里さんも一緒に出演していた。
2018年3月、真白と美里はどちらも金沢の同じ大学に合格し、4月からは実家を出て金沢市内で暮らすことになった。
2人は高校を卒業したら記念にセックスしようというのを、高校に合格した日に約束していたのだが、実際には大学の合格発表日まで保留していた。そして2人とも合格していたのを確認してから初めてのセックスをした。
その日、真白は美里に言った。
「結婚して」
「**君と結婚しなくていいの?」
と美里は悪戯っぽく言う。真白はそれには答えずに言う。
「美里のことが好きだから」
「私のことを好きだと言ってくれるのなら結婚してもいいよ」
「ありがとう」
と言って、真白は美里にキスした。
「でも逝くのに時間掛かったね」
「ごめーん」
「ま、真白は男性ホルモンほとんど無いから立たせただけでも偉いと思うよ」
「・・・・・」
2人は高校在学中1度もセックス“は”しなかったが、美里は日常的に!真白の性器に触っている。美里に触られても真白の男性器は必ずしも立たなかった。さすがに往復運動とかまでされると立ったけど。
「高校1年の時に精液を保存したから、それで子供は作れるけどさ」
と美里は言っていた。
美里はふたりが高校1年の時
「女性ホルモン飲み始める前に精液の冷凍をしてほしい」
と言い、真白は
「別に女性ホルモン飲むつもりはないけど精液の冷凍するのは構わない」
と言って、冷凍精液を作った。保管費用は真白の父が出してくれた。
父は女性ホルモン剤を渡して
「変な所から品質の悪いの買うよりはこれを飲みなさい」
と言った!
飲んでないけど(美里に欺されて飲んだ以外は)。
「ぼく別に女性ホルモンは飲んでないけど、男性機能が弱くなってるのは認める」
と、初めてセックスした時、真白は言った(*33).
高校3年間に顔や足のむだ毛は生えなくなったし、身体には女の子みたいな感じで脂肪が付き、丸みをおびた体付きになった。真白は身体測定も個別測定にされ更衣室も個室で着替えてと言われて男子更衣室使用禁止を言われた。
また中学生の頃まではあった喉仏も無くなってしまった。声のピッチもあがって、学校ではわざと低い声で話していたが(←無駄な抵抗を)、現在(2018.3) 真白の声はソプラノである。人気少女歌手・アクアちゃんの歌が原キーで歌える。
「走ると胸が揺れて痛い」
「ブラジャー着ければいいのに」
でも美里は真白の胸を揉むのが好きである。揉まれるから更に脂肪が付くのではという気もした(←多分3割くらい正解)。
真白は高校時代、水泳の授業では女子水着を着けるように言われた。
女子水着を着けた時にお股が目立つとみっともないよと美里は言って“タック”してくれたが、お股に目立つものが見られないことで別の誤解を招いた気もしないではない。
(↑全然“普通の男子高校生生活”してない。“普通の女子高生生活”の間違いでは?)
(*33) 真白がまるで女性ホルモンを飲んでいるかのように、いやそれ以上に女性化していったのは、多分青葉たちがこの家の防御壁を戻して、この家に封印されている“男の娘”式神のパワーを回復させたせい。真白の部屋は元々女の子用の部屋なので(後述)、そこの住人をせっせと女の子らしくしてくれていたのだろう。
真白に生理が来る日も近い?
「高校出たら女装生活するんでしょ?」
と美里は真白“に”入れながら聞いた。真白が気持ち良さそうにしている。
「別にぼく女装とかしないよ!」
「嘘つきには3本入れるぞ」
「やめてー。ぼくが壊れる」
「もうクローゼットはやめて女装で町を歩こうよ」
「やみつきになりそうで怖い」
「既にやみつきになっているというのに1票」
真白の部屋には多数の女物の服や下着がある。母は美里の服だと思っているようだが、父は女物の服に“2種類のサイズ”があることを認識していて、洗濯物はきちんと仕分けして各々の引出しに入れてくれている。サイズで区別できないものもほぼ正確に仕分けされているから凄い。各々の好みで見分けているようだ。
父は真白のことを理解しすぎている気がする。
真白用の女物の服というのはほとんどが、美里が買ってきたものである。自分用に買ったが好みに合わなかったものも押しつける。だから変なデザインのスカートとかは、たいてい真白のである。2人はウェストサイズがあまり変わらないのでスカートなどは共用できる。
(ピッタリフィットするTシャツなどは着られない。またショーツは美里はMで真白がLである(逆だったら怖い)。でもたまに間違って美里が真白のショーツを穿いていることもある)。
美里の制服も着られることを確認された。ついでに記念写真まで撮られた!更にその写真を女子の間で回覧していた。これはさすがに怒った。
「ごめーん。女子制服姿があまりに可愛かったから。でも真白が怒るの初めて見た」
「ぼくだって怒る時もあるよ」
でもお陰で卒業アルバムを作る時に
「真白ちゃんの写真、この女子制服で写ったの使う?」
などと制作委員の子に訊かれた。
「男子制服のでお願いします」
「遠慮しなくていいのに」
(↑やはり“普通の女子高校生生活だった気がする”)
初めてのセックスをした翌日、真白と美里は両親の前で言った。
●自分たちは結婚する約束をしたこと。
●金沢では同じアパートで暮らしたいこと。
両親は2人がこれまでも半分夫婦のような状態であったことも鑑みて
「結婚するまでは避妊すること」
「留年しないようにしっかり勉学に励むこと」
というのを条件に、2人の主張を認めてくれた。それで2人は金沢市内に共同で1DKのマンションを借りた。1DKというのは、正式に結婚する時は2DKに移りなさいという意味もある。
明日金沢に引っ越すという夜、真白の夢の中に“美里”が現れた。
「あのさあ、紛らわしいから美里の顔を借りるのやめてほしいなあ」
「そうか?だったら誰か別の人物の顔を思い浮かべろ。その顔にする」
真白は人気少女アイドル・アクアちゃんの顔を思い浮かべた。すると彼は美里の顔からアクアちゃんの顔に変化した。
「お前、面白い奴の顔を思い浮かべるな」
「そう?」
「アクアには物凄く強い守護が付いてる。俺でもかなうかどうか分からない」
「女の子の顔して“俺”とか言わないほうがいいよ」
「アクアって女の子じゃないだろう?」
「女の子じゃなかったら何なのさ」
「・・・・まあいいや。真白、ここを出て行くのなら、俺を・・・あ違ったボクを解放して一緒に連れて行け」
「嫌だね。お前は解放したら絶対悪いことする。解放はしない」
「お前のガードをしてやるだけだよ。お前を金持ちにしてやるぞ」
「そういう取引には応じないし、ぼくは別にお金持ちになりたいとは思わない」
「金要らないのか?」
「そりゃほしいけど、お前がすることなんて、絶対悪いことに決まってる」
「だったらそうだ。お前完全な女の子に変えてやろうか?子供も産めるようにしてやるぞ。女になりたいだろ?」
「ぼくは別に女の子になりたい気持ちはない」
「それは絶対嘘だ」
「それにぼく美里と結婚するし」
「美里はレスビアンだ。お前が女らしいほど喜ぶ。たぶんお前は美里の子供を産むことになる」
「精子は〜〜?」
「卵子同士合体させれば子供はできるはず」
「ほんとに〜?」
真白は言う。
「まあ本人も自分はバイだと思うとは言ってるね。だからぼくに性転換手術受けてもいいよと言ったけど、そんな手術受けるつもりは無いし、女の子になりたくも無い」
「絶対女になりたいんだと思うけどなあ。そうだ。だったらお前、有名になれるようにしてやろうか。政治家がいいか?学者がいいか?歌手とかがいいか?お前歌は上手いし、ピアノもフルートも上手いからきっと人気女性歌手になるぞ」
人気男性歌手じゃなくて人気女性歌手なのか。まあぼくも自分が男になれる気はしないけど。
「別に要らない。とにかくその手の取引には応じない。もうぼく夢から覚めちゃうからね」
「待ってくれ!お前が居ないと俺はここに存在してられなくなる。そうしたら多分この家は1年ともたないぞ」
「・・・お前と取引はしないけど、私と契約して私の眷属になるのなら連れていってやる」
「それでいい。真白の眷属にしてくれ」
「ぼくに絶対服従だよ」
「それで構わない。お前のガードくらいはするぞ」
「では壱越(いちこつ)、私の下僕(しもべ)となり、以降私に従え」
「なんでボクの名前知ってるの〜?」
「返事は?」
「はい、真白さんに従います」
「よし」
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