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■夏の日の想い出・ラブコール(24)
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目次 8
時間索引 #
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ネットフェスが終わった次の土曜、9月4日。郷愁村の空き地に、次の8人が集められた。
北里ナナ(アクア)、今井葉月、常滑真音、鹿野カリナ、水谷姉妹、水森ビーナ、夕波もえこ
集まった8人は異口同音に言った。
「雨で良かったね!」
熊谷地方は9月1日から4日連続の雨である。
今回集まったメンツは(新人の夕波もえこ以外)実は1月に根室市郊外で“氷の家”のCMを撮ったメンツなのである。今となっては、アクア・舞音・ビーナの3人が揃って時間の取れる日なんて、極めて希だが、この日は春から既にリザーブされていた。
実際アクアも
「このメンツが揃うのは凄いね」
と言っていた。
ビーナは『青い鳥』の撮影中だが、この日は抜けさせてもらっている。そして実は、撮影の方は、姉の松梨詩恩がビーナのボディダブルをしてくれていた!
襲ってくる森の木や動物と闘うミチルは実は松梨詩恩だが、2人が双子のように似ているので、気付いたのは熱心なファンに限られる。
「あの時のメンツで、私以外はみんなデビューしちゃった」
とカリナが言っているが
「カリナちゃんはきっと来年にはデビューできると思う」
と葉月が言う。
「そうですか?デビューできたら嬉しいけど」
「なんか今年は大量にデビューしましたね。もう何人デビューしたか分からなくなっちゃった(*4)」
と舞音が言っている。
(*4)この時点では10人:七尾ロマン・恋珠ルビー・常滑真音・甲斐絵代子(Ye-Yo)・中村昭恵・水森ビーナ・花貝パール・甲斐波津子・水谷康恵・水谷雪花。それ以外に、♪♪ハウスに出向した桜井真理子と安原祥子もいる。
それで今日は「氷の家」の続編で、“硝子の家”というCMを撮ろうという趣旨なのである。6月に“ビーナスの誕生”のエアコンのCMをやって、夏の間はそれかたくさん流れていたのだが、秋になるのでCMが切り替わる。実は今日撮影して、明日からこのCMは流れる予定である!
この郷愁村の“八犬伝村”そばにガラスの板のみで建てられた住宅ができていて、ここで松芝電機さんの多数の電化製品を使ってもらおうという趣旨である。氷の家では屋根に太陽光パネルを並べていたのだが、今回の“硝子の家”では、4日連続の雨で太陽光パネルが使えず、仕方ないので電気は近くの八犬伝村の施設から、臨時の電柱を建てて電線を引いてきた(雨の中ご苦労様です)。
ガラスの家も雨の中昨日建築している。本来なら雨なら延期したい所だが、延期した場合このメンツを再度集めることは数ヶ月先まで不可能になる。この建設作業してくれた人たちもご苦労様である。
実は松芝電機さん系列の建設会社・松芝ホームがする予定だったが、若葉の提言で松芝ホームの技師さんの指示のもと、播磨工務店のメンツに作業をさせた。彼らが雨の中、何十キロもあるガラス板を抱えて、ひょいひょい上に登っていき作業するので、松芝ホームの技師さんたちが「君たち凄いね!」と感心していた。
撮影されるメンバーは氷の家の時と同じ色の服を着ているが、今回はオーバーではなく、全員ノースリーブのワンピースである。もえこは赤を渡された。
ナナ:水色、葉月:バイオレット、舞音:ピンク、カリナ:オレンジ、水谷姉:薄茶色、水谷妹:ライトグリーン、ビーナ:黒、もえこ:赤
氷の家は結構寒かったのだが、今回9月上旬に温室!の中なので無茶苦茶暑い!だろうと全員覚悟していたのだが、雨のお陰で何とかなった。でも湿度が凄いので、エアコンでひたすら除湿を掛けたほか、除湿機も作動させた。
しかし当日は雷も鳴る天候で、メンバーはしばしば稲光や雷鳴にギクッとしながら撮影されている。
「今の近かったね。1kmくらいしか離れてなかった」
「何で距離分かるの?」
「稲光から雷鳴までの秒数を数える。それに音の速度300m/s(300メートル毎秒)を掛ければいい。今のは3秒くらいだったから距離は1kmくらいだよ」
「光の速度は?」
「光は1秒間に地球を7回半回るから、稲光は雷が発生した瞬間届いたと思っていい」
「へーそんなに速いんだ?」
どうも理科をちゃんと勉強してる子と、そういうのが全然分かってない子がいるようである。葉月とかビーナなどは「へー」と言っていた部類である!
なお、この“ガラスの家”には避雷針が付いているし、隣接する八犬伝村(平安村もそうだが)の、全ての建物にも避雷針が付いており、更にそれ以外にも樹木に擬態させた多数の独立型避雷針が建っている。それで“ガラスの家”の内部は避雷針に守られていて、雷に対してはほぼ安全なはずである。1kmくらいというのは、その避雷針のどれかに落ちた可能性もある。
なおCMには隣接する八犬伝村の建物もチラリと映っていた。芳流閣が格好良い!八犬伝のスポンサーも松芝電機さんなので、年末の大型時代劇の予告宣伝も兼ねている。
ガラスのテーブルの上でトランプ(七並べ・神経衰弱・ババ抜き)をしたが、今回もビーナがひたすら負けた。わざとやってるのではなく、マジでビーナはトランプに弱いようである(囲碁とかオセロは強いのに)。
なお参加者は全員(各々の服と同じ色の!)不織布マスクをしているし、テーブル中央及び横並びの各自の間にはアクリル板があり、そもそも千鳥に座っていて、各自の真正面には誰もいないようになっている。
椅子取りゲームをしたらビーナは最初に脱落した。最後まで残ったのが水谷妹で、その水谷妹に負けたのが夕波もえこだった。
室内ボーリングもしたが、ビーナはガーター連発して15点であった。上位は舞音が250点、アクアが198点で、この2人が1,2位となる。「売れてる人はボーリングも強い」とカリナが感心していた。(3位は夕波もえこ)
オセロのトーナメントをしたが、このような結果になった。
ナナ┓
夕波┻ナナ┓
ビナ┓ ┣ナナ┓
康恵┻ビナ┛ ┃
葉月┓ ┣ナナ
雪花┻雪花┓ ┃
舞音┓ ┣雪花┛
鹿野┻舞音┛
(3位決定戦)
ビナ┓
舞音┻舞音
ということで、北里ナナ(アクア)が金メダル、水谷妹が銀メダル、常滑真音が銅メダルを獲得した。
このオセロ大会の様子は、後日あけぼのテレビで放送された(松芝電機さん提供の無料放送)が、銀メダルの雪花(水谷妹)は
「準決勝で舞音ちゃんに負けて、ナナちゃんと舞音ちゃんの決勝になってたらヤラセだろうと言われると思って120%マジで戦いました」
と後で言っていた。
その舞音は
「雪ちゃんに気合負けした」
と言っていた。
だいたい雪花は1回戦で葉月を破っているのだから結構凄い。
3位決定戦(ビーナvs舞音)も凄くレベルの高い戦いで、終局した時どちらが勝ったか分かっていたのは本人たちだけだった(2枚差で舞音の勝ち)。勝った舞音は「私が後手だったからかも」と言っていた。
(オセロで先手・後手のどちらが有利かはまだ解明されていない。コンピュータによる解析で、4x4, 6x6の盤では後手に必勝手が存在することが分かっているが8x8盤ではまだ分かっていない。囲碁や将棋では先手が有利であることが経験則により確実で囲碁ではそのため後手が“コミ”というハンディキャップをもらう。将棋にも同様のハンディが必要ではと言われているがルール改訂の動きはない。実際プロのタイトル戦では勝負は振り駒で決まるとも言われる)
冬の氷の家でもやったネット碁を、最初、ビーナが9子置いて葉月と打ったが、ビーナが10分で投了した。
「置き石50個必要だったかも」
とビーナは言っていた。ビーナは帯広の中学校では、囲碁部の人と三子くらいで打っていたらしいが、葉月との実力差が凄まじかったようである。ナナと舞音も9子置いて打ったが、こちらも50手ほどで舞音が投了した(ナナはかなり手加減している)。
「置き石361個欲しかった」
と舞音は言う。
「碁盤が埋まっちゃうじゃん」
とナナ(アクア)が言ったが、舞音は
「いや361個置いても、きっとナナちゃんには負けます」
と言っていた。
葉月とアクアのネット碁は、囲碁がよく分からない他のメンツも熱戦が分かる凄い戦いだったが、最後は葉月が投了した。
「最初から全く勝てる気がしなかった。アクアさん益々強くなってる」
と葉月は言っていた。
「そんなに実力差ありました?」
とビーナも驚いていた。
ガラスの家の中に8つの個室(各自専用 *6)が用意されているので、各自適宜そこに入って、ジュースを飲んだりかき氷を食べたりしたが、ジュースを飲むシーンはCMに入ったものの、かき氷のシーンは放送されなかった。これは放送されるのが9月以降なので仕方ない。
でも中にはチキンやハンバーガー(*5)をもりもり食べてる元気な子たちもいた(舞音とかカリナとかもえことか水谷妹とか)。むろんしっかりCMで放送された。水谷妹がケトル(当然松芝製)でお湯を沸かして、松芝製の鳥さんタイマーで3分計り、カップ麺を食べてる所もCMには入っていた。
(この後、この鳥さんタイマーが馬鹿売れした:3分・5分・10分をワンタッチで設定できるボタン付きで便利)
カップ麺の銘柄はテープを貼って隠してあったが、水谷姉妹がCM出演している、日清カップヌードルの中の、麺の色合いから判断してポークストロガノフ味ではないかとファンたちは推測した。
(*5)チキンは出演者一同の全員一致でKFCのオリジナルチキンが用意された。ハンガーガーは賛成多数(4票)でマクドナルドのハンバーガー各種が用意された。ちなみに2位はロッテリアとモスが同数(2票)だった。
(*6) §§ミュージックの提言で各部屋ごとの換気がなされている。床下から排気するため、特製の“アクリルガラスのグレーチング”を持ち込んだら「これは面白い!」と松芝ホームの人が喜んで?いた。千里の草津工場で作ってもらったものである。
ドアには、各々のパーソナルカラーのマジックで絵が描かれている。描いたのは絵がわりと得意という夕波もえこ画伯である!
北里ナナ:ペンギン、今井葉月:キツネ、常滑真音:もちろん招き猫!、鹿野カリナ:鹿(まんま!)、水谷姉:ツバメ、妹:カナリア、水森ビーナ:タヌキ、夕波もえこ:イルカ
舞音が
「この招き猫ちゃん、可愛い!次のCDに使わせて」
などと言っていた。
なおトイレは隣の八犬伝村のトイレを使用する。一応ガラスの家の中にもトイレ自体は存在し、夕波もえこが中に入って(パンティを下げたりはせずにそのまま)座ってみせる図も撮影したが、むろんここでトイレをすることはない。何といっても外から丸見えである。
「男の子がいたら、立っておしっこしようとする図も撮影できるかも知れないけど」
と夕波もえこ。
「ここにはちんちんが付いてる子は居なさそうだね」
とアクア!
アクアのこの発言(放送には流れない)で、みんな「やはりアクアさん、ちんちんは無いのか」と思った。
ちなみにビーナはドキドキしていたが、葉月はポーカーフェイスである。
最後はこの各個室内で、ホットプレートで焼き肉をしたが、冬の時と同様、舞音とカリナが競うようによく食べていたし、夕波もえこもよく食べていた。
このガラスの家だが、翌日9月5日には雨があがったので、無人のガラスの家の上に太陽光パネルを乗せ、取り敢えず太陽光パネルの載ったガラスの家の映像を撮った。本当はこのガラスの家はあまり耐荷重が無いので、太陽光パネルは庭に並べるつもりだったが、雨ではどっちみちどうにもならなかった。
その後、家はすぐ解体された。何といってもガラスなので、耐久性はせいぜい48時間程度ということだった。それですぐ解体しないと危険らしい。若葉が「もったいないなあ」と嘆いていたが、これは仕方ない。
撮影に参加した子たちは「ほんと雨で良かったね」とみんな言っていた。
ローズ+リリーのアルバムの制作は、8月30日のネットフェスの後、少し休みを置いて、9月2日から再開した。再開後、最初に制作したのが、『鐘の恋文』である。
高校時代に書いてずっと発表機会のないままになっていた曲で、今回の制作にあたってし、結構手を入れてスコアを調整している。
(私の仮歌は8/27に出来ていたのだが、9/1になってからクラウドにあげて、七星さんに連絡した)
この曲は電気楽器を使う。この曲では恋人同士が鐘で連絡を取り合うという話なので、月丘さんにグロッケンシュピールを打ってもらった。高音部と低音部を使って呼び合うように音を入れてもらっている。
この曲には木管(フルート・ピッコロ・クラリネット)は入るが、金管・弦楽器はお休みである。木管セクションでは、フルートのうまい甲斐波津子に入ってもらい、風花はピッコロを吹いている。甲斐波津子は信濃町ガールズに入る前は学校で吹奏楽部に入っていて、たぶん若手のガールズの中ではいちばんフルートが上手い。今回吹いてもらったのでも、充分プロとして通じるレベルだと思った。
「でも波津子ちゃん、総銀フルートに変えたんだね」
「妹が買ってくれたんです」
「へー!」
甲斐姉妹は昨年は2人とも洋銀フルートを使用していたが、今年1月、波津子が絵代子に総銀フルートを買ってあげた。しかし今度は妹の方が姉に総銀フルートをプレゼントしたということらしい。本当に仲の良い姉妹だ。
PVは千葉県の勝浦漁港と九十九里浜で撮影した。
撮影のモデルになってくれたのは、西宮ネオンと三田雪代である。ネオンが既婚者なので、三田雪代のファンから嫉妬される恐れが無い。既婚者は便利だ。
江戸時代の漁師と村娘のような格好をしてもらい、ネオンは漁協の協力で、小型漁船に乗って沖合に出る。そして海上で鐘を叩くシーンを撮影する。
(「船酔いしました」と言っていた!)
そして、そこで撮影した映像を見ながら、九十九里浜の浜辺に立つ三田雪代が呼応するように鐘を叩くシーンを撮影した。
今回2人は恋人役を演じたのに、実は一緒に映っているシーンが全く無い!
実はこの曲は先にPVの大半を制作しており、ネオンと三田雪代が叩く鐘に合わせて私はこの曲のスコア上に、グロッケンシュピールの音を指定したのである。
なおPVでは楽曲のコーダで江戸時代っぽい和服を着た私とマリが鐘を叩くシーンも入っているが、これは最終的に楽曲が出来た後で演奏に合わせて叩いたものである。
9月6日(月)になって、百道大輔はコロナの治療が完了し、やっと退院することができた。入院は2ヶ月半ほどにも及んだ。PCR検査が2回陰性になっており、もう完全に治癒したのだが、治療でかなり体力を消費した(体重も8kg減ったらしい)こともあり、しばらく実家で療養するということだった。
私は政子に「お見舞いに行ったら?」と言ったのだが、「万一まだウィルス残ってたらいけないから行かない」と言う。
「そうなの?」
「逆に夏絵を預かった」
「誰だっけ?」
「大輔とリンナさんの子供(2018.8.3生 3歳)。大輔のお母さんが育ててたんだけど、万が一にも移したらヤバいというので大輔が退院する前に預かってきた」
「どこに居るの?」
と言って私は見回す。
「うちのお母ちゃんに預けた。だって私が子供の世話できる訳無い」
確かに賢明かも知れない!政子に預けたら、私が数日帰られなかったりしたらきっと子供たちが餓死する!
しかし政子のお母さん1人で子供3人の世話は大変すぎるので、私は自分の母に電話して、政子の家で子供たちの世話を手伝ってあげてと言った。母が行くと、恵美さんは「助かった。もう目が回りそうだった」と言ったらしい。
「そういえば。お兄さんの良輔さんの方はまだ退院できないのかな?」
と私は念のため政子に訊いてみた。
「ああ。大怪我して入院が延びたって」
「大怪我?何したの?ベッドから転落したとか?」
「酸素吸入中にタバコ吸おうとして大爆発」
「はあ!?」
「わりとよくある事故らしい」
「良輔さんって、馬鹿ということは?」
「大輔もそう言ってた。さすがの自分もタバコ吸おうとは思わなかったって」
「そもそも呼吸が辛いから酸素吸入してるのに。それに酸素に火を近づけるとか。普通、危険性が分かるよね?」
「ね?」
「でもどんな怪我なの?」
「顔をかなり火傷してる。彼女から、その顔ではもう浮気できないねと言われたらしい」
「うーん。良輔さんの普段の生活が分かるな」
「たぶん半年か1年くらいで火傷の跡はだいたい治るのではないかと」
「火傷は時間が掛かるんだよ」
「そして右耳の鼓膜が破裂したらしい」
「ほんとに大怪我じゃん!」
「左耳も最初は聞こえてなかったのが、一週間で回復したって」
「良かった」
「右耳は少し落ち着いてから手術して穴を塞ぐって」
「ほんとに大変そうだ」
「大輔にはこの機会にタバコやめなよと言った」
「うーん」
「どっちみち医者から2〜3ヶ月はタパコは我慢するよう言われたから年内は頑張ると言ってた」
「そう?」
私は禁煙はいいとして、別のものを求めないか、少し不安を感じた。彼は“それ”を断つために気を紛らわせる目的でタパコを吸っていたのである。
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