広告:まりあ†ほりっく 第4巻 [DVD]
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■夏の日の想い出・ラブコール(19)

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私とコスモスは、♪♪ハウスの白河社長を、四谷のオフィスに訪ねた。
 
「大変申し訳ないのですが、お願いがあります」
とコスモスは言った。
 
「ビーナちゃんの件かな?」
と白河さんはだいたい用件を予想していたようである。
 
「詩恩ちゃんが物凄く忙しくて、スタンドインが必要ということで、あの子を北海道から呼んだのに、本人自身が無茶苦茶忙しくなってしまって」
とコスモスは弁明する。
 
「誰が売れるかとか全く予想できないもんなあ」
と白河社長は理解を示す。
 
「水森ビーナは松梨詩恩のスタンドインから外そう」
と白河さんの方から言ってくれた。
 
「済みません」
 
「スタンドインは他の子でも行けるけど、ボディダブルが必要な場合はビーナちゃん使わせてよ」
「分かりました。それは今まで通り、ビーナのスケジュールボードに予定を直接書き込んでいただければ」
 
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「じゃそれお願いするのと、スタンドイン役はこちらから指名させてもらえない?」
「はい、いい子がいれば」
 
(なんか人身売買みたいだ)
 
「スタンドインは本人より前の時間帯で使うことが多いからさ、学校に行ってない子の方が助かるんだよ」
 
「確かにそれはありますね」
と言いながら、コスモスはだったら、三田雪代あたりをご希望かなと思う。現役信濃町ガールズで、唯一高校を卒業しているのが三田なのである。あの子は歌唱力もあるし(音域が必ずしも広くないけど)、身長も詩恩に近い。演技力は・・・どうだったっけ??
 

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ところが白河社長のリクエストは意外なものであった。
 
「佐藤ゆかちゃん、ちょうだいよ。あの子、松梨詩恩と同い年だし、身長も近いよね?」
 
コスモスは驚いた。必死で考える。
 
「え、えっと詩恩ちゃんと、佐藤ゆかはほとんど同じ背丈だったはずです」
 
ふたりが浴衣を着て並んでいるのを見たことがあるが、確かほとんど同じ高さだったという記憶があった。
 
「運転もできたよね?」
「はい。四輪もバイクも行けます」
 
実は松梨詩恩がバイクに乗るシーンは結構ある。詩恩といえばバイクというイメージが形成されつつある。詩恩ブランドのライダースーツまで売られている。
 
「だったら最適。佐藤ゆかはとにかく演技力がある。あの子も今若いガールズとかの付き添いとかよくやってるみたいだけど、スタッフみたいな使い方はもったいないよ。詩恩のスタンドインを1〜2年務めて、その間に演技の経験も積み、顔も覚えてもらって、本格的な女優の道を歩むというのは本人にとってもいいことだと思うんだ」
 
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コスモスは私と顔を見合わせる。
 
佐藤ゆかは実はたくさん予定が入っている!
 
「容子ちゃんに頑張ってもらうか」
「容子ちゃんの仕事はどうする?」
「付き添いの仕事とかは、亜蘭にやらせようよ」
「そうか。あの子は使える」
「配膳係は誰か適当な人を雇えばいい」
 
ということで、私とコスモスの短い会話で、当面松梨詩恩のスタンドインは佐藤ゆかを専任で当てることが決まったのである。
 

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佐藤ゆかには当面♪♪ハウスから直接指示を受けてほしいと、コスモスが直接彼女を呼んで頼んだ。
 
「あのお、今かなり若い子たちのサポートをしてるんですが」
「それは秋本亜蘭にさせようと思う。一応免許取って1年以上経ってるし」
 
秋本亜蘭は現在、配膳係のほかに結構な雑用をしてもらっているので、車でかなり走り回っており、運転経験(特に都内の運転経験)は充分である。亜蘭が使われているのは、やはり26歳で元歌手のひまわりより、20歳未経験の亜蘭の方が気軽に雑用を頼みやすいというのがあった。
 
「配膳係は?」
「誰か適当な子を雇う」
 
「あのぉ、リセエンヌ・ドオの活動は?」
「ごめーん。今、作曲家さんたちに余裕がなくて」
 
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これはオリンピックで青葉も千里もしばらく使えなかったので、本当に手が足りてないのである。
 

なお、若いガールズとかの付き添いをしてと頼まれた秋本亜蘭は大喜びで引き受けた、
 
「海浜ひまわりの従妹の海浜ひるがおです、と言って君もテレビ局とかの人に顔を覚えてもらうといいよ」
 
「それもしかして私の芸名ですか」
「これ名刺ね」
 
と言って、コスモスは彼女に《§§ミュージック・海浜ひるがお》と書かれた名刺を渡した。
 
歌手とかタレントとか、あるいはマネージャーとかも肩書きが書かれていない実に曖昧な名刺だ。しかし亜蘭は喜んでいる。
 
「すごーい!もう名刺ができてる!」
 
名刺印刷機があるので、このくらいは10分でできる。ちなみに“海浜ひるがお”という名前もコスモスが5分で考えた名前である!
 
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(最初「海浜あさがお」というのを考えたが、たまたま事務所に来ていた千里が「それ語感が暗いし、画数も良くない」と言ったので、ひるがおになった。“ゆうがお”でもいいが、両者の吉凶は微妙という。でも“ひるがお”は外格が良いから、タレントとしてはそちらがいいかもと千里は言ったらしい。外格は周囲の人から支援されることを表す)
 
海浜ひるがお 総29◎無限挑戦 地10×破滅誤解 人11◎成長大樹 外18○難関突破
 
海浜ゆうがお 総31◎円満順風 地12△天地波乱 人12△天地波乱 外19△不達挫折
 
海浜あさがお 総33○大河合流 地14△離散徒労 人13◎和合繁栄 外20□分裂統合
 
実はどれも微妙な名前だが、多分この子がタレントになることはあり得ないから、大きな問題はないだろう!?
 
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音痴でギターも下手、ピアノは弾けないし、リズム感も良くなく、滑舌も悪いので、使い道が無い!(でも本人は歌手志望)
 

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なお新しい配膳係は、募集を掛けて、稲田あかり・ひかり、という22歳(3月に大学を出たばかりらしい)の双子女子がホームページに募集広告を出した翌日に「一緒に雇ってください」と言ってきたので2人とも採用した。大学を出ても仕事がなく困っていたらしい。
 
しかし2人は着ている服も同じものだし、とても仲の良い姉妹のようだ。ついでにどちらがあかりで、どちらがひかりかは外見だけでは、全く見分けがつかない!
 
ついでに履歴書は1枚である。
 
「同じ日に同じ場所で生まれて、同じ学校に通い、運転免許とか秘書検定・簿記・MOSとかも同じ日に取りましたから、履歴は全く同じです」
と2人は言っていた。
 
「生まれが寛政10年って書いてあるけど」
「すみませーん。変換ミスです。平成10年です」
 
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寛政10年は後で確認したら1798年で本当に寛政10年生まれなら222歳ということになるが、222歳には見えない。たぶん平成10年生まれの22歳でいいのだろう。
 

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ひまわりは「増員は助かる」と喜んでいた。
 
稲田姉妹は、現在の住まいが(大学生時代に住んでいた)さいたま市のアパートということで、遠いので、臨時厨房の空き部屋に引っ越してきてもらうことになった。つまり、ひまわりのお隣さんになる。部屋は2つ用意できると言ったのだが「同じ部屋がいいです」というので、ひとつの部屋にベッドを2個運び込んだ。本当に仲のよい姉妹のようだ。
 
女子寮生の間で、しばらくは「あかりちゃんとひかりちゃんの見分け方」が話題になったが、最初に気がついたのは、水谷雪花だった。
 
実はあかりちゃんは右利きで、ひかりちゃんは左利きであった。小さい頃、向かい合って座ってたからこうなったと言っていた。双子にはありがちである。
 
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雪花も左利きなので、このことに気付いたのである。
 

天月和紗(桜木ワルツ)の妊娠という事態を受けて、どうしても人手が足りなくなるので、私たちは、アクア・葉月のマネージングのサポート役として、取り敢えずバイトなのだが、鐘崎絢水(かねさき・あやみ)ちゃんという子を採用した。
 
都内の国立大学に通う大学4年生である。
 
実は青葉から「雑用係でもいいから使ってもらえませんか」と頼まれたのである。青葉の2年後輩(1999年度生)らしい。
 
大学4年生なので、就活しなければならないのだが、ここまで面接10連敗らしい!それは彼女が男の娘だからである。
 
しかし私とコスモスは彼女と会ってみて
「君、ほんとに男の子なの?」
と訊き直した。
 
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「ええ。お恥ずかしいですが」
と答える声が男声である。
 
なるほどー、この容姿でこの声なら「面接10連敗」の意味が分かるというものだ。
 
「運転免許は?」
「大学1年の時取りました」
「運転経験は?」
「千葉市内に叔母が住んでいて、その叔母の車を借りてだいぶ練習しました」
「都内の道の運転経験はある?」
「はい。下道も首都高もだいぶ慣れました」
 
私とコスモスは顔を見合わせる。
 
「これプライバシーに関することだから、答えなくてもいいけど、去勢しているかと、女性ホルモンを使っているかを、もしよかったら教えて。誰にも口外しないから」
 
これはつまり女性と2人きりにできるかという問題や、更衣室の使用などに関わる。女性用更衣室に入れていいかどうかは、仕事での使い方上、大きい。
 
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「高校2年の時に、姉からお金を借りて、都内の病院で去勢しました。女性ホルモンもそれ以降ずっと摂っているので、今バストがBカップくらいあります。この件は他の人に言っても構いません」
 
「性転換手術はしてないんだよね?」
「あのぉ手術した方がよいのでしょうか?」
「いや、性転換手術なんて個人の自由たけど、今手術受けられて、何ヶ月か休まれたら困る」
 
「あ、そうですよね」
 
私とコスモスは顔を見て頷き合った。
 
「じゃ君、取り敢えず仮採用で。3ヶ月経って問題なければ本採用」
「ありがとうございます!」
 

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ということで、鐘崎絢水ちゃんを取り敢えず、葉月の送迎に使うことにしたのである。むろんある程度見極めるまではアクアの送迎には使えない!
 
彼女は出生名は「鐘崎絢人」らしいのだが、20歳になった時点で「絢水」に改名済みらしい。
 
「実は中高生の頃、生徒手帳の“絢人”の“人”という字に筆画を書き加えて“絢水”にしてたんです。公文書偽造になるけど」
 
「“人”に書き加えて“水”になる?」
「はい」
と言って、やってみせたが、確かに“水”に見える。やや字形が不自然ではあるが。
 
「良一を良子とか良美にしてた、みたいな人はよく居るけどね」
 
「みんな気持ちは同じですよね。でも改名を認めてもらったから助かりました。性別変えなくても改名だけでどこでも女としてパスするので凄く楽になりました。特に運転免許は性別が記載されてないから助かるんですよ」
 
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「うん。助かると言う人多い」
 
「同級生にお願いして、暑中見舞いや年賀状を“絢水”名義で送ってもらっていたので、永年使用が認められたんですよ」
 
「お友達に協力してもらえてよかったね」
「はい。いい友だちを持ちました」
 
彼女は高校は一応男子制服で通学していたものの、女子制服も所有していて、部活(茶道部)では、その女子制服や、女物の浴衣を着ていたらしい。
 
なお、彼女の身元保証人は、お母さんと、千葉市内に住んでいる叔母さんが署名してくれた。
 

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また彼女には、女声習得のため、ボイトレに通うことを勧めた。それで毎週1回、トレーニングに通うことにした。
 
むろん葉月は、彼女が男声で話していても、全く気にしない。
 

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2時間ドラマ『青い鳥』の撮影は、9月3日(金)から始まった。↓が主な配役である。実は当初の企画からかなり配役が変更になっている(コスモス承認済み)。
 
光/アンジェラ《主役》恋珠ルビー
ミチル《準主役》水森ビーナ
チレット《アンチヒロイン》坂田由里
チルチル 石川ポルカ
チロ 西宮ネオン
 
父 峰沢義紀
母 古賀紀恵
妖精ベリリューヌ/ベルランゴ夫人 入江光江
その他の精霊 信濃町ガールズ
祖父・祖母 中平弦太・室川紫織
夜の女王 峰沢義紀(二役)
樫(声)黒沢七郎
狼(声)中山大造
母の愛 古賀紀恵(二役)
 
金持ち・酒飲み 丸呑ワンダ・丸呑ジョージア
幸せの国の住人 ○○ミュージックスクールの生徒
未来の国の子供たち 劇団桃色鉛筆
時の番人 金居弘信
 
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シナリオを書き上げてみると、どう見てもチルチル・ミチルより光とチレットが目立つということになり、プロデューサー・監督・脚本家で検討したのだが、再度原作も読んでみて、結局青い鳥の主人公はどう考えても“光”であるという結論に達した!それでコスモスに打診した所、ルビーは“光”でよいということになり、ビーナは“チルチルより目立つミチル”ということで、準主役とする。(シナリオ上でミチルのセリフをチルチルより増やした)
 
そして何と言っても目立つ“ダークヒロイン”のチレット、それとついでにチロの配役は§§ミュージックさんにお任せします、と言われてしまった!
 
コスモスとゆりこが忙しい中、あらためて原作を読んでみた所、確かに光とチレットの目立ちようが凄いと納得する。
 
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チレットは目立つものの、汚れ役なので、誰を当てるか悩み、桜木レイアか花咲ロンドにお願いできないかと言っていた所、たまたま別件(常滑真音に関する打合せ)で事務所に来ていた坂田由里が言ったのである。
 

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「その役(チレット)、私にやらせてもらえませんか」
と坂田由里は言った。
 
「へー!」
「汚れ役だけどいいの?」
「全然平気です。意地悪な女を演じるの大得意です。私、根が意地悪だし」
「うーん・・・」
 
「私、3月頃から、舞音ちゃんの付き添い随分して、間近で彼女見てて、彼女の凄さにもう圧倒されて、とても同い年とは思えないくらい堂々としてるし。私も何かやりたい!という思いが募ってたんです」
 
「確かに舞音ちゃんも、朋ちゃんのこと気に入ってるみたいね。よく付き添いに指名している感じだし」
 
「ダークヒーロー上等です。目立つ役ならお金払ってもやりたいです」
「分かった。じゃ君にやってもらおう。でも演技力不足と判断されたら降ろされるかも知れないからね」
 
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「私、本質は性悪なのに表面的に優しい女演じるのは得意だから、青い鳥のチレットなら、私の地(じ)だと思います」
 
「うん。じゃ君を推薦しよう」
 

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夏の日の想い出・ラブコール(19)

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