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■夏の日の想い出・ラブコール(9)
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(C) Eriko Kawaguchi 2021-08-28
ローズ+リリーのアルバムでは、次に昔話シリーズで『湖より・愛のテーマ』を制作した。『白鳥の湖』をベースにしたものである。ビデオガールコンテストの作業が入る前の7月16日に私のエレクトーン弾き語り音源を完成させたので、クラウドに上げて七星さんに連絡した。
この曲では金管はお休みでヴァイオリンの四重奏を入れている。これにはいつものメンツである、生方芳雄・荒井路代にも入ってもらった。この2人は今年の春に音楽大学を卒業したが、経済活動が停滞している折、どこの楽団にも入ることはできず、私の口利きで、取り敢えず“信濃町バンド”に籍を置いている。日常的に厳しい健康管理をされているので使いやすかった。
生方芳雄は(多分ノーマルな)男性だが、伊藤ソナタや荒井路代とは長い付き合いだし、気心も知れているので、鈴木真知子からもほぼ女性と同列に扱われていた!(「お嬢さんたち」とか言われるのには慣れている)
取り敢えず彼は目の前で女性が着替えているのを見るのは平気である。ソナタたちも彼の前で平気で着替えるし、ファスナーをあげるのを頼んだりもする(生方は単に「気にしない」ようにしているだけで、翼のように女性不感症ではないと思う)。
また木管セクションにオーボエの音が欲しかったので、忙しい所申し訳なかったのだが、オーボエが吹ける谷口翼(招き猫バンド)に1日だけ女子寮に来てもらい、風花・美津穂と一緒に演奏してもらった。
この楽曲が完成したところでマリおよびメンバーは2回目のワクチン接種をおこなった。それで制作は一週間お休みとなる。
この曲もやはり物語仕立てのPVを制作した。
オデット・オディール:三陸セレン
ジークフリート:山本コリン
ロットパルト:高島瑞絵
王太后:大崎志乃舞
四羽の白鳥:鈴鹿あまめ・水谷康恵・水谷雪花・栗原リア
バレエ経験者で構成しており、実際にバレエの振付で踊ってもらっている。曲のクライマックスにセレンの32回転グランフェッテが入っている。
彼も過去に2度しか成功していないと言っていたが、5回目のトライで成功したので、その映像を使用した。どうしても成功しなかったら編集で32回転に見せようかと思ったが、成功したのでノーカットで32回転を見せることができた。実はこのメンツの中で黒鳥を踊ったことがあるのが彼だけだったので、彼にお願いしたという経緯がある。彼は実際にバレエ教室の発表会で黒鳥を踊った時は28回しか回れなかったらしい。
しかしそれでヒロインを演じるのが男子で、王を演じるのが女子になったのは偶然である!(マリの指示ではない)
それに山本コリンは164cmの長身なので格好良いジークフリートになった。コリンは、ジークフリートは一度やってみたかったと言っていた。彼女はソフトボール部のピッチャーをしていただけあって、体格がいいし腕力もあるので、体重43kgのセレンを楽々とリフトしていた。彼女は男役はくるみ割り人形でスペインの男側を踊ったことはあるらしい。
なお、この映像(特にセレンの32回転)を見てアクアFがかなり闘志を燃やしたようである。
アクアは昨年あたりから若い子たちが台頭してきて“次世代のスター”とか言われているのをかなり意識している。6年間この事務所をひとりで支えてきたアクアも今や、完全に追われる立場である。
7月17日(土).
§§ミュージックは所有している、あるいは(一部曖昧に)借りている飛行機を総動員して、北は北海道の江差(枝幸ではない)から、南は与那国島までに分散しているビデオガールコンテストの本戦参加者を親権者と一緒に熊谷の郷愁飛行場に連れて来て、“郷愁マンション”に入ってもらった。
そして18日朝から午後まで掛けて第2回ビデオガールコンテスト本選をこのマンションを舞台に実施した。審査は全て各部屋に設置したカメラを通してのリモートであり、参加者を一同に集めたりはしない。
審査が終了したのは午後3時頃であり、優勝者・上位合格者との契約の話し合いが終わったのは、午後7時頃である。
今回は優勝者の広中礼音(富山県)が男の子だった!というのが判明し、失格。彼は西宮ネオン同様、特別賞を与えることにした。
彼のその後の行動を見ていると、彼は“男の娘”ではなく普通の“男の子”のようで、本当に西宮ネオン路線のようである。ただ女装は平気っぽいし、スカート穿いている所を見ると充分女の子に見えてしまう。
彼は声変わりもまだなので、ゆりこが「声変わりしてしまう前に去勢してあげたい」と言っていたが、「変なこと唆して親権者と揉めたりしないように」と釘をさしておいた。でも彼が入居した男子寮の部屋には、信濃町ガールズの女子制服とか、女子下着の通販カタログなどを置いて来たようである(むろん男子制服も置いている)。
彼はスカートが置いてあるのに首をひねったようだが、フロントのユキさんが
「それ、ゆりこ副社長のジョークだから。スカート穿きたければ穿いてもいいけど、男子メンバーはたいていショートパンツ穿いてるよ」
と説明すると安心していた。
「ゆりこ副社長は、去勢しちゃおうとかもよく言うけど、それもジョークだから」
「あはは。去勢は勘弁してください」
彼は男子寮に入居してから、女性用生理用品の自販機などが置いてあるのに首をひねっていたようである!
なお男子寮でも、上田雅水(直江アキラ)・松元徳世(長浜夢夜)には6月から、女子寮生同様、生理用品は無料で渡すことにした(本人たちの好みのブランド・商品を聞き、それを用意してストックしている)。自販機を使っているのが誰かはよく分からないが結構補充が必要である。セレンとクロムは実は生理用品の自販機があるといいなと言った張本人だが、最近は自分でドラッグストアで堂々と買うと言っていた。
広中礼音の失格で2位の風谷リンゴ(北海道江差町)が繰り上げ優勝となった。彼女が間違い無く女子だったのでコスモスはホッとしていた。
彼女は“繰り上げ優勝”というのには不満だったようだが、それを受け入れ、第2代ビデオガールになった。彼女はデビューまでの間に礼音を追い抜いて、自分が真の1位になると誓っていた。
彼女との話し合いが終わった時点で12位以下の子の“親権者”に今回は上位入賞は果たせなかったが、希望すれば地方ガールズに無審査で入団できることを伝えた(優勝者が確定するまではこの作業ができない。上位が全員失格または辞退というのも論理的にはあり得るからである)。
全員が地方ガールズ入団を希望した。
その連絡をしている最中に14位の馬渡聖美さんは向こうから連絡してきたので、花ちゃんが彼女と直接話した。
・今回は残念ながら上位には入らなかったが、ボーダーラインに近かった。
・歌う時に、変な癖がある。“自分は歌がうまいと勘違いした人”にありがちな歌い方なので、そこを直さないと、信濃町ガールズの本部メンバーにも採用できないし、君の歌は上達しない。
・勝手なシンコペーションをせずに、正確なリズムで歌うようにしよう。指でビートを刻みながら歌ったりするとよい。
・音の出出しが一瞬遅れることが多い。正確なタイミングで発声を。
・当面ビブラートを封印して、正確な音程で歌うようにしよう。ビブラートは悪く言えば音程の不正確さを誤魔化す手段。ノンビブラート唱法では音程が少しでもずれていると(音感のいい人には)微妙に気持ち悪く聞こえる。正確な音程で歌うと声は楽器の音に溶け込んで自分ではあまり聞こえなくなる。それが音が合っている証拠である。
・息継ぎが多すぎる。もっと長く息をもたせられるように例えばロウソクの前で「あー」と長時間声を出し続けられるようにする練習とかを勧める。身体機能を高めるために早朝のウォーキング(走れるならジョギング)などをするのもよい。但しひとりでは危険なので、人通りの無い道は避けること。またできたらお母さんか誰かと一緒に2人以上でした方が良い。
・ダンスは充分上手いと思った。リズム感はいいと思うので歌も同じ要領で。
・身長に比べて体重が少なすぎる気がする。息がもたないのも体格の問題があるかも知れない。少なくともうちの事務所はダイエット禁止だし、10代で無理なダイエットをしていると、生理不順や貧血などを起こしてよくない。歌手は体力を問われる。特に売れっ子は朝から晩まで仕事があるので、体力が無いと務まらない。しっかり食べよう。
と言ったことを伝え、お手本とする歌手として何人か具体的な名前をあげた。
彼女は「分かりました。鍛え直してまた来年挑戦します」と言っていた。
花ちゃんは「この子きっと来年は優勝争いしますよ」と電話を終えてから言った。
その後、3位の池田芽衣(与那国町)、4位の四宮七菜(徳島県)、と11位までの子を順次呼びだして話し合い、この2人のほか、6位の鈴木春南(東京都)、10位の森田浩絵(福岡県)、11位の成瀬久美(愛知県)と契約した。そして6位の鈴木春南までは“即戦力”というのが大方の審査員の意見であった。ここまでは誰が優勝でも良いレベルだった。
「本当に今年はレベルが高い」
「やはりラピスラズリ効果だろうね」
「来年は常滑舞音効果で、もっとレベル高くなりますよ」
優勝した風谷リンゴを含め、7人と契約したので、男子寮に入れる広中礼音を除く6名を女子寮に入れることにする。この時点で、女子寮の2階には4人、3階には6人が住んでいた(1フロア8部屋)ので、ゆりこは、
・優勝者のリンゴちゃんは3Fに入れる
・2Fの住人で、地方昇格組であるため2Fに居るが高校生である酒井青花(大仙イリヤ)を3Fに移動させる。
・残りの5人を2Fに入居させる
という案を提示して了承された。
これで女子寮は2-3Fが満杯になる。
大仙イリヤの引越は、業者さんを呼ぼうかと言ったのだが、荷物少ないから何とかなると思います、と本人は言っていた。が、男子寮からセレンとクロムが手伝いに来てくれて、本棚などは彼らが持ってくれたので、スムーズに移動することができた。彼らがいないと結構大変だった。(業者を断ったのは“散らかりすぎてた”からかも)
イリヤが出た後の部屋のクリーニングは業者にさせた。
それで2Fに5人新入居できる状態になったのだが、5人の内の鈴木春南が実は男の子(この子は完全に“男の娘”)であることが分かり、彼女(彼?)の入居先は男子寮に変更された!
ゆりこは彼女に「女子制服で通学できる中学紹介しようか」とかなり唆していたようだが、本人は「まだ女子中学生をする自信がない」と言って男子寮を選択した。
でも転校手続きをしてから即女子制服を作ったようである!
彼女を男子寮の“女子エリア”である4Fに入れるべきか、ゆりこもかなり悩んだようであるが、電話でのやりとりだけでは彼女に睾丸があるかどうか判断できなかったし、本人は「18歳までは去勢したらダメと親から言われてる」と言っていたので、取り敢えず1Fに入れた。(春に入れた夢夜の場合は、本人が去勢していることを正直に申告したので最初から4Fに入れている)
しかしその後でも「やはり4Fでよかったかなあ」とゆりこは悩んでいた。
彼女は物理的にはまだ去勢していないかも知れないが、間違い無く女性ホルモンを飲んでいるようで、化学的には去勢済みなのは確実である。おっぱいもわりとあるし!
彼女は転入した中学ではすぐに更衣室を別途用意され、身体測定なども個別にすると言われたらしい。また髪の長さも女子の基準でいいと言われたようである。
(そもそも学生服着てても女の子にしか見えない)
彼女は男子寮内では登下校の時以外はいつも女子制服あるいはふつうの女の子の格好をしていて、セレン・クロムと3人で“女子中学生3人組”になっているようだ。
つまり男子寮1Fで、男の格好をしているのは礼音だけ!
ビデオガールコンテストが終わった後、優勝者および上位入賞者は、東京への引越準備などもあるので、その日のうちに各々の地元まで送り届けている。
12位以下の子たちは、その日は“ホテル昭和”に移動して宿泊してもらい、7月19日に各々の郷里に送り届けた。
上位入賞したものの契約は結ばなかった4人は、しばらく東京に留まって、他の事務所のオーディションも受けてみたいと言うので帰りの交通費だけ渡した。ただし各々のお父さんは仕事の都合ですぐ帰る必要があるということだったので、12位以下の子たち同様、4人とも19日中に地元に送り届けた。
結果的にホンダジェットに“1人で”乗ったお父さんもいたが、かなり恐縮していた!
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