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■夏の日の想い出・ラブコール(2)

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今から12年前、2009年8月、ローズ+リリーは“なんちゃって休業”中であった。私は和泉たちと一緒に伊豆で行われるフェスティバルに(KARIONとして)出演しに行っていて、恋人岬の近くで、偶然マリと遭遇した。それで急遽一緒にフェスティバルで歌うことになった。
 
この時期、まだマリは“リハビリ”中て、“ローズ+リリーとして歌う自信が無い”と言うので、名前は名乗らないことにした。紅川さんの好意で、§§プロのステージの秋風コスモスと川崎ゆりこの間に、5分間時間をもらい、何も名乗らずに出て行って1曲だけ歌ったのである
 
しかしマリはこの体験でずいぶん自信を回復させたようだった。
 

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「でもここ、どうして恋人岬と言うの?」
とマリは訊いた。
 
「昔、この付近に住んでいた漁師の男と村娘が、鐘を鳴らして合図していたらしいよ。船の上から鐘を3つ鳴らすと、娘も浜で鐘を3つ鳴らしていたんだって」
と私はさっき人から聞いた話をそのまま語った。
 
「向こうが2つ鳴らしたら、こちらも2つ?」
 
「結構お互いに何個鳴らしたらどういう意味とか決めてたかもね」
「きっとそのバリエーションが100個くらいあったんだよ」
「100個まではなくても10個くらいはあったかもね」
 
その話にマリは感動したようで、愛用のボールペン“赤い旋風”を使って『鐘の恋文』という詩を書いた。私はこの詩にすぐ曲を付けたのだが、あの後ずっとこの曲は使わないままになっていた。
 
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2021年6月17日(木).
 
この日は政子の誕生日だった。
 
私は午前中はマンションに居て、土曜日(6/19)におこなうビデオガールコンテスト二次審査を前にしてコスモス・ゆりこ・花ちゃんとメッセージ交換しながら、その準備を進めていたのだが、お昼近くになって誕生日のことを思い出した。
 
しまったぁ!誕生日のプレゼント用意してないと思い、マンションに詰めてくれている近藤妃美貴に頼んで、取り敢えずケンタッキー8本とホウルケーキ1個買ってきてもらった。
 
ちょうど妃美貴が戻ってきた直後に政子は起きてきた(政子はだいたいお昼すぎに起きてきて、夜?4時頃に寝る生活をしている)。
 
「マーサ、誕生日おめでとう」
と私が言うと、政子は
「誕生日じゃないよ」
と言う。
 
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「え?そうだっけ?」
と思って、私は慌ててスマホを見るが、確かに6月17日と表示されている。
 
「今年は6月17日は無いんだよ」
と言って、政子は壁のカレンダーを指さした。
 
17日の所が切り取られている!
 

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「だから今年はお誕生日も来ないし、私も年を取らない」
 
そういうことか!
 
「でもね。マーサ、年齢って誕生日に1つ増えるんじゃないんだよ」
「え?そうなの?」
 
「年齢の数え方については、民法(*1)に規定があって、前日が終了する時に1歳年を取ることになってる。だから、例えば6月20日に選挙の投票がある場合、投票日翌日の6月21日が18歳の誕生日という人まで投票権があるんだよ。20日のラストで18歳になるから」
 
「へー!!」
 
「だから6月17日が来なくても、6月16日が終了するのと同時にマーサは30歳になったんだよ」
 
「その30という数字を私の前で言うな」
 
「あはは。だから、17日をカレンダーから切り取っても無駄だったね。16日はもう終わっちゃったから」
 
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「くっそー!16日も一緒に切り取るべきだったか」
 
(*1)まず“年齢計算ニ関スル法律”第2項で「民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス」とあり、その民法143条にはこのように書かれている。
「週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する」
 

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「誕生日じゃないんだったら、チキンもケーキも要らない?」
「それは当然もらう」
 
と言って、政子はチキン6本(私と妃美貴が1本ずつ)、ケーキを6分割したうちの4/6(私と妃美貴が1/6ずつ)を食べてご機嫌であった。
 
(シャンパンも1本開けて、これは妃美貴は勤務中だからと言って遠慮したので、私がグラス1杯だけ飲み、あとは政子が飲んだ)
 

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この日の翌日6/18には「アクアの華麗なる淫乱生活」なる週刊誌報道があり仰天した。
 
しかし深夜にTKR松前社長と★★レコード町添社長が緊急に連絡を取り合い、全国の★★レコードの社員を動員してコンビニ・書店でこの雑誌を買い占め、この雑誌がほとんど一般の人の手には渡らないようにした。この買い占め作業には、千里の指令で全国の播磨工務店・フェニックスグループの社員、若葉の指令で全国のムーラングループの社員も動員された。
 
そして朝一番にアクアが記者会見を開いて、報道を一笑し、へたすればアクアのタレント生命に関わる事件を騒動になる前に潰してしまった。
 
このあたりのコスモスの決断と行動の速さに私は驚嘆した。それに合わせてすぐ動いてくれた町添社長・千里・若葉にも感謝である。千里も若葉も協力してくれた社員さんたちからこの雑誌を1冊千円で買い取ったらしいが、最終的には私がその代金を彼女たちに個人的に払った。会社の会計には乗せにくい費用である。雑誌自体は若葉と千里が各々の責任で全廃棄した(千里所有の工場でトイレットペーパーに生まれ変わったようである)。
 
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第2回ビデオガールコンテスト2次審査は6月19日(土)に行われた。
 
これは一次審査を通過し(親権者の芸能活動承諾書を提出し)た118名を一次審査の得点順に8個のブロックに振り分けている。この振り分け方は次のようにしている。
 
A 1 16 17 ...
B 2 15 18 ...
C 3 14 19 ...
D 4 13 20 ...
E 5 12 21 ...
F 6 11 22 ...
G 7 10 23 ...
H 8 9 24 ...
 
二次審査の参加者には事前に同一スペックのカメラ付きパソコンを送付しており、各々Wi-fi環境のある場所(自宅またはホテルなど)から、接続して審査員が見ている前でパフォーマンスしてもらう。
 
審査員は4グループに別れており、午前中にABCDを審査し、午後からEFGHを審査した。
 
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各ブロックの審査委員長・副委員長は下記が務めた。
 
AE コスモス社長・桜野レイア
BF ゆりこ副社長・花咲ロンド
CG ケイ会長・品川ありさ
DH ルンバ部長・高崎ひろか
 
山下ルンバ(花ちゃん)は5月付けで“§§ミュージック音楽部長”の肩書きを付与されている(でも無給!)。実を言うと、ゆりこが近い内に結婚したいと言っているので(実際7/24に結婚した)、むろん結婚しても仕事はそのまま続けるのだが、妊娠して数ヶ月休職したような場合に備える意味もあった。実際花ちゃんは2〜3年前から事実上会社のNo.3 (1=コスモス、2=ゆりこ) として扱われていた。
 
醍醐春海(千里)はこの日からNTCでオリンピックに向けてバスケット女子代表の合宿に入ったので今回はここに入っていない(別の千里なら出て来られると思うが)。
 
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昨年は桜木ワルツもメンバーにラインナップされていたが引退したので花咲ロンドが副委員長に指名された。「私売れてないのに」と言ったら山下ルンバが「私よりは売れてる」と言っていた。
 
品川ありさ・高崎ひろかは、過去に何度も審査委員は務めているが、副委員長は初めてで「私がそんな重要な役をしていいんですか?」と焦っていたが、「君たちは充分大物」と言っておいた。
 

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なお、審査結果は微妙な人を全員で検討したりもしたので、1週間後の6月25日(金)に参加者各自に論評付きでメールした。論評は副委員長が書いているが、結構言葉を選ぶし、特に落とした人には“次”につながるよう助言や励ましも書いたので、その論評を書くのにも1週間掛かったようである(お疲れ様である)。
 

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その日は、アクアの制作中のアルバム(仮題『Aqua Wind』最終的に『ダブルボイス』として発売)の制作に、雨宮先生が顔を出していて、唐突に昔話になった。
 
「じゃ、最初から居たのは上島先生だったんですか」
とコスモスが言った。
 
「そそ。5ピースバンドでさ。ギター・ベース・ドラムス・キーボード・ユーフォニウム」
 
「ユーフォが入るって珍しい」
「ファンレンの崎守英二だよ」
「あの人、ユーフォ吹いてたんですか?」
「崎守はギターも得意だけど、リーダーの小橋って奴が超絶ギターうまかったから、中学時代にブラスバンドで吹いてたユーフォに回った」
 
「なるほどー」
「その小橋がギター兼メインボーカルで」
「へー」
「(上島)雷ちゃんはキーボード」
「ああ」
「それがノーバンというバンドだったのよ」
 
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「その名前は初めて聞いた気がします」
とアクアが言う。
 
「そうだっけ?」
「何か言われがあるんですか?」
 
「最初の頃はみんな下手だっからさ」
「最初はそんなものでしょうね」
 
「お前ら、全然ノリが悪い。音が弾んでない。もっと弾めとか言われてさ。それで、弾まない→ノーバウンド→ノーバン、だよ」
 
「レッドツェッペリン(*2)と似てますね」
「ああ、似たような発想だよな」
 
(*2) ドラムスのキース・ムーンが「鉛の風船みたいに落ちてしまう (go down like a lead balloon) 」と言ったことばが元になっている。Lead balloon の balloonを飛行船 Zeppelin に置換してバンド名とした。最終的に lead (鉛)を Led に変えてLed Zeppelin としたが、これはlead(レッド)を「導く」という意味のlead(リード)と誤読されないようにするため。
 
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「でもノーパンじゃなかったんですね」
などとアクアが言うので、私も千里も思わず頭を抱えるが、雨宮先生から
 
「あんた、本当は女だってのバラしちゃうから」
などと言われている。
 
「それ今更な気がします」
とコスモスに言われて、話は先に進む。
 
「私は公園でサックス練習してたら雷ちゃんにナンパされてさ」
 
「その演奏に注目したんですか?」
とアクアは訊いたが、雨宮先生は言う。
 
「雷ちゃんって手が早いから、私気がついたら一緒にホテルに来てて」
 
「そっちのナンパですか!」
 
「やっちゃったんですか?」
とコスモスが尋ねる。
 
「私を裸にしてから男と知って驚いていた」
「うーん・・・」
「でも、男の子を誘ってしまったのは不覚だけど、ホテルに連れてきた以上最後までやるのが僕のポリシーだと言って、やられちゃった」
 
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「偉いのか何なのか」
「穴があったら入れたい、というのが男という生物だけど、雷ちゃんの場合は穴がなくても入れてくる」
「雨宮先生も大差無いと思うなあ」
と千里が言うので、私も
「同感」
と言った。コスモスは呆れている感じだ。
 
「じゃ恋人になっゃったんですか?」
とアクアが尋ねる。
 
「私と雷ちゃんが“した”のはその1度だけだよ。私はバイだけど、雷ちゃんは基本的にはストレートだから」
「ああ」
 
「でもバンドには誘われて、私が入ってサックスが入った6ピースになった」
「ユーフォがあるなら、サックスとかホルンとかもあった方がまとまる気がする」
「うん。その後、わりと観客集めるようになったんだよ」
「なるほどー」
 
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「それで注目されはじめた矢先に小橋が大学を退学になって郷里に帰っちゃってさあ」
「何したんですか?」
「授業料の滞納」
「あらら」
 
「充分な仕送りもらってたのに、全部バンドに注ぎ込んでたのよ。それで親からもう帰ってこいと言われて郷里に戻って親の経営する運送屋さんで働くようになった。その後、父親が病気で倒れて、もう10年くらい前に社長になったよ」
 
「へー」
 

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夏の日の想い出・ラブコール(2)

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