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■夏の日の想い出・ラブコール(21)
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(C) Eriko Kawaguchi 2021-09-10
その日、柴田数紀(水森ビーナ)が仕事を終えて、男子寮の自分の部屋に帰宅すると、詩恩姉(天羽飛鳥 *1)が来ていた。部屋の中で数紀のTシャツとショートパンツを勝手に穿いてくつろいでいる。
(*1)詩恩は両親が離婚した時に母に付いていったので、高崎ひろか(柴田邦江)・数紀と苗字が違う。ちなみに生まれ年度は、邦江1999 飛鳥2001 数紀2005.柴田純一郎と亜矢子の離婚は2003。純一郎が丹生と出会い結婚したのは2004.
「そうそう。9月4日は私が代役したげるから」
「ほんと?助かる」
「まあいつもお世話になってるしね。チルチルはやってみたかった」
「ミチル役だけど」
「・・・・チルチルは?」
「石川ポルカちゃん」
「うーむ・・・・・」
お姉ちゃん、何悩んでるんだろ?とビーナは思った。
「今夜泊めて」
と飛鳥は言った。
「いいけど、ドライバーさん呼べば女子寮に帰れるよ。呼ぼうか?」
「母ちゃんに叱られたから今日はこちらでほとぼりをさます」
「何叱られたの?」
「無断外泊」
「それでまた外泊していいの?」
「妹のところに泊まるのは外泊にならない」
「ボク、弟だけど」
「似たようなものよ」
「もしかして男の子のところに泊まったの?」
「ちゃんと避妊したから大丈夫だよ」
「セックスしたんだ!」
「そりゃ男の子の所に泊まったらセックスはするもんだ」
「すごーい。おとなー」
「数紀も20歳くらいになったら、彼氏できるよ」
「ボクできたら彼女が欲しいなあ」
「あんたレスビアンだっけ?」
「ボク男の子だよぉ」
数紀は女性不感症なので“彼女”ができる確率はとても小さいと思う。可能性があるとしたらレスビアン女子かも!?
「既にほぼ女の子になってると思うけど。そうだ、あんた、より女の子に近づけるように陰裂形成手術受けたら?」
「いんれつ?」
「割れ目ちゃんだよ」
「いらないよぉ。ボクちんちん無くしたくないし」
「別にちんちんは取らなくていいんだよ」
「そうなの?」
「陰嚢の皮膚を谷折りして糸で縫合して、グランドキャニオンを形成するだけだよ。侵襲が無いから痛みはすぐとれるし、タレント活動にも影響出ないよ。その手術してくれる病院知ってるから紹介しようか?」
「少し考えさせてください」
と数紀は焦って言った。割れ目ちゃんとかできたら、まるで女の子みたいじゃん!
「割れ目ちゃんが形成されたら、ちんちんはいつもその中に隠しておおけばいいんだよ。タックの必要性がないから、夏も蒸れなくていいよ」
「あ、その蒸れる問題は結構悩み〜」
「だったら手術しちゃえばいいよ。それに割れ目ちゃんの中にちんちん隠しておいて、こぼれてこないようにしっかり閉めておくのは、将来ヴァギナを作ってから、彼氏とセックスした時に、しっかり引き締めるのの練習にもなるよ」
引き締めるって何??
「でもそれ、睾丸はどうするの?」
「・・・・あんた、睾丸はもう取ってるよね?」
「取ってないよー」
「それはよくない。すぐ取ろう」
「いやだ」
『青い鳥』の撮影は続いていた。
森 (La Foret) のシーンに行く。
ここでもチレットは先行して、森の木々たち。動物たちに、人間の子供が青い鳥を探しに来るが、もし青い鳥を見つけたら、森の秘密も暴かれると脅す。それで森の木たちも動物たちもチルチルとミチルをやっつけようと待ち構えている。
それでチルチルとミチルがやってくるが、最初は木々たちは
「なんだ。子供じゃないか」
「だったら、放っとけばいい。どうせ青い鳥の所には辿り着けん」
と静観する構えである。しかしチレットがさんざん煽るので、とうとう木々たちも森の動物たちも戦闘態勢になる。
それでチルチルたちが近付くと、木々や動物たちが襲ってくる!
ミチルが話し合おうとするが、樫の木(声:黒沢七郎)は言う
「お前の父ちゃんには、俺の子供が600本、おじとおばが475本、いとこが1200本、嫁が380本、孫が12000本、切り殺された」
「ちょっと待ってください。確かに私たちの父は木こりですけど、1人でそんなにたくさん切れるわけないです」
とミチルは弁明する。
狼(声:中山大造)も言う。
「お前の父ちゃんには俺の両親も兄貴も、祖父ちゃんも鉄砲で撃たれた」
「うちの父は鉄砲とか使いません」
とミチルは言う。
しかし木々も動物たちも、ミチルたちの弁明を全く聞いてくれない。それで襲われるので、チルチルとミチルはやむを得ず棍棒を持って防戦する。チロや他の精たちもチルチル・ミチルを守って闘う。チレットまで仲間とみなされて襲われるので、やむを得ず狼や狐たちと闘う羽目になる!
最後は光の精が登場して、
「あなたたち落ち着きなさい」
と木々たちや動物たちに言うので、木々や動物たちも攻撃をやめ、一行は何とか森の外まで脱出することができた。
「どうしたんだろう?普段は、木々たちも動物たちも優しいのに」
と火の精が首を傾げていた。
チレットは自分まで襲われたことで、さすがにバツが悪そうな顔をしていた。
なお、森のシーンは襲ってくる木や動物はCGである(このシーンの撮影後、1週間がかりで制作されている)。また声も声優さんたちによるアフレコで、声優さんたちは撮影現場には来ていない。
この後、原作ではお墓のシーン (Le Cimetiere) があるが省略される。
幸せの宮殿 (Le Palais des Bonheurs) に行く。
ここでは最初“富める幸せ”と“酒飲みの幸せ”(演:丸呑ワンダ・丸呑ジョージア)が調子がいいのに乗せられて、チルチルとミチル以外の一行が全員、飲めや歌えの大騒ぎになってしまう。いつも喧嘩しているチロ(西宮ネオン)とチレット(坂田由里)まで肩を抱き合って、仲良く?おしゃべりしている。
(肩を組んでいるチロとチレット、火の精と水の精!?(夕波もえこ・薬王みなみ)以外は、全員ソーシャルディスタンスを取っている。そのためこのシーンは巨大なテーブルで撮影された。実は物凄く換気の良い、深川アリーナの大食堂を使用している。ここでは空気は上から下に流れ、横には流れないので、感染発生の可能性がほとんどない。ケイナとマリナの親族顔合わせ式:事実上の婚約式が行われた場所である)
チルチルとミチルが呼んでも、みんなこちらに来ない。
それで光(恋珠ルビー)がチルチルにダイヤモンドを回させると“富める幸せ”と“酒飲みの幸せ”の姿は消え、チロやチレット、飲み食いして騒いでいた他の精たちも我に返る。
子供たちがやってくる(○○ミュージックスクールの小学生の生徒たち)。本当に幸せそうな子供たちの様子にチルチルとミチルは心を癒やされる。さらにもっと大きな子たちが来る(○○ミュージックスクールの高校生の生徒たち)。ひとりだけ、遠くに居て(“愛の喜び”La joie d'aimer)、チルチルとミチルは
「君たちがおとなにならないと理解できないもの」
と言われる。
そして“母の愛”L'amour maternel(演:古賀紀恵−チルチルミチルの母と二役)と出会う。
「お母さん?」
「そうですよ。チルチル、ミチル」
「でも凄く若くてきれい!」
「子供を愛するお母さんは、みんな若くてきれいなのよ」
「どうしてそんなに若いの?」
「お母さんというものは子供が微笑む度に若くなっていくのよ」
「どうしてそんなにきれいな服を着てるの?」
「子供がお母さんにキスしてくれたりなでなでしてくれたりする度にお母さんの服はきれいになっていくのよ」
「でも普段はもっと汚い服を着てるのに」
「表面的なものだけを見てはダメ。物事は本質を見る必要があるのよ」
実はこのシーンがあるので、チルチルとミチルの母には20代の古賀紀恵を起用したのである。冒頭のシーンでは40代に見えるメイクだったが、ここは逆にまだ10代にも見えるメイクをしている。元々古賀さんは2-3歳、年下に見られることが多い。
その内“母の愛”はふと言った。
「でも、あなたたち、どうやってここに来たの?」
「光さんが連れてきてくれたんだよ」
とミチルが言う。
「光?」
光は顔をベールで隠して3人に近づく。
「私たちはずっとあなたを待っていたのに。どうして顔を隠しているの?」
と“母の愛”は言う。
「まだ時が満ちていないから。恐れも悲しみも全て消えた時、私はあなたたちのもとを訪れるでしょう」
と光は言う。
「でも私の子供たちに優しくしてくれてありがとう」
と言って“母の愛”は光を抱きしめた。
それで光とチルチル・ミチルは幸せの宮殿を去ったが、光の目に涙が浮かんでいるのをミチルはどうしたのだろう?と思った。
この“幸せの宮殿”では青い鳥は見つからなかったものの、(後半は)心癒やされる時間であった。
そして“未来の王国” (Le Royaume de l'Avenir)に来る。
ここはチルチルとミチルに光だけしか入れないので、他の子たちは外で待機になる。
ここに居るのはみんな青い服を着た子供たちばかりである(劇団桃色鉛筆に所属する子役さんたち)。
男女同じ服装なので、見ただけでは男の子か女の子かもよく分からない。
(生まれる前の子供たちという設定なので、そもそも中性的な雰囲気の子を集めている)
子供たちは「僕は生まれたら発明家になる」とか「僕は生まれたら惑星連合の王様になる」とか各々の夢を語る。ミチルたちは、自分たちの弟になる予定の子とも会った、
そして今夜生まれる子供たちが“時の番人”(演:金居弘信)に促されて船に乗る、まだ生まれる時ではない子供が乗ろうとするのは降ろされる。
船が出港した所で、時の番人がチルチルたちに気付く。
「誰だお前たちは?なせ青くない?」
光は2人に言う。
「絶対に返事をしてはダメよ。ダイヤを回して」
それで3人の姿は消える。
まばゆいばかりの世界にチルチルとミチル、それに光の3人だけがいる。
そのチルチルとミチルも眠っている。
そして1羽の小鳥(必ずしも青くない)が飛んできて、光の肩に留まった。
実はここは本物の鳥を使っている。更に光を演じているのはルビーではなく、この本物の鳥の飼い主である美高悦子さん(監督・美高鏡子さんの姉)である。実はいちばん慣れている子を使って撮影したので、色合いは仕方ない。
(原作では銀色なのだが、銀色の鳥は居ないかも)
それでこの鳥が飛んできて肩に留まるシーンは、光の後ろ姿で撮影している。その肩に留まった鳥を手に乗り移らせて撫でるシーンはルビーが鳥のロボット(実際に肩に留まった鳥と似た色合いに加工)を使って撮影している。
チルチルとミチルは光や多数の精霊たちと一緒に一軒の小屋の前に立っていた。チロとチレットが喧嘩してるのをミチルが「やめなさい」と言って止める。
「ここは?」
とミチルが光に尋ねる。
「そのおうちが分からない?」
「戻って来たの?」
「そうよ。たからそのドアを入りなさい」
「青い鳥、見つからなかった」
「どうかしらね。でももう時間だからベッドで寝るといいよ」
「妖精のおばさんに謝らなくちゃ」
「ベリリューヌは君たちが頑張ったのをちゃんと見てたよ」
それでチルチルとミチルは光や精霊たちに「またね」と言ってドアをくぐった。
(原作ではここでパンや火の精たちが別れを惜しむのだが、監督は脚本家と話し合い、敢えてその場面は入れないことにした。“続編”の需要が出た場合に備えたものである。それで別れの挨拶も原作の"Adieu"−永遠の別れではなく“またね”−フランス語なら"Au voir"にしたのである)
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