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■夏の日の想い出・ラブコール(4)
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時間索引 #
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あけぼのテレビは7月から海外のいくつかのネットテレビ局と番組制作で相互協力をすることになった。
コロナにより国境を越えての移動がひじょうに困難であり、また不要不急の移動は社会的に批判される状況にあることから、どこの国の放送局も海外での取材がしにくい状況にある。そこでお互いに協力して、他国の放送局のための番組を制作しようということにしたのである。
今回、あけぼのテレビが提携を結んだのは、下記の2局である。
ドイツのシュトゥットガルト(Stuttgart)を本拠地とするシュテフレスネッシャーTV(Staeffelesrutscher TV)
スペインのグラナダ(Granada)を本拠地とするラランブラTV(la Alhambra TV)
シュテフレスネッシャーTVとの交渉は、若葉の彼氏(夫)でシュトゥットガルト在住の紺野吉博(クレールの和実の元片想いの相手でもある)がまとめてくれた。
またラランブラTVとの交渉はグラナダに住んでいる千里の友人?(千里本人ではないのか??)がまとめてくれた。
いづれの場合も、こちらは日本在住のドイツ人・スペイン人のレポーターを使い、あけぼのテレビの撮影スタッフが、日本国内の風光明媚な場所を紹介したり、お花などが咲きほこる様子などをレポートする。
ドイツ・スペインのテレビ局でも、ヨーロッパ在住の日本人を起用して、向こうの風物をレポートする。
どちらの場合も、できるだけ不要な移動は避け、他地域のレポートは各々その近くに住んでいる人に取材を依頼する方式とする。結果的にスマホで撮影したような映像になる場合もあるが、それは仕方ないと割り切る。
ここを割り切れるのがやはりネットテレビですよね、と双方の幹部さんとの直接電話会談でも話した。
ちなみに、こちらはアルト社長はあまり外国語は得意ではないが、コスモス(副社長)と坂口専務が英語・ドイツ語・フランス語を話せるし、松浦常務がスペイン語を話せるので、それで直接向こうと話している。
(千里や丸山アイ・若葉はドイツ語・スペイン語・フランス語などOK。この3人はかなり多くの言語を話せる)
取り敢えず“ドイツレポート”・“スペインレポート”の名前で土日の夕方の時間帯に放送を始めたら、結構好評であった。
私は6月いっぱいはアクアのアルバムの制作、ビデオガールコンテストの準備、アクアの写真集、常滑真音の写真集、などに関する作業を進めていたのであまり時間が無かった。
マリはその間、彼氏(百道大輔)と会ったり、松浦紗雪さんたち“アクアFC幹部会議”(Zoomによるリモート会議)に参加したり、ファンの方から頂いた日本各地のグルメなどを食べたりして過ごしていたようであった。
月末の水曜日、暇そうにしてるので
「彼氏とデートしてきてもいいよ」
と言ったら
「大輔コロナに罹った」
と言う。
「嘘!?」
「先週の金曜日にライブハウスで演奏したらしいんだけど、そこがクラスターになっちゃったらしくて、大輔自身PCR検査で陽性。バックバンドの人たちからも2人陽性が出たらしい」
「あらぁ」
と言ってから、私はマリに尋ねた。
「マーサ、彼と最後に会ったのは?」
「水曜日なんだよ。日曜日も会う約束してたけど、常滑舞音ちゃんのドラマの再放送見てて、会いに行くの忘れてて」
「うーん・・・」
「念のためと言われてPCR検査されたけど、陰性だったよ」
「それすぐ私に言ってよ」
「ごめーん。念のため一週間くらい出歩かないでと言われたからずっとうちに居た」
先週の水曜日に会って、その後会ってないのなら、万一その日に感染していたとしても、これだけ経っていれば、たぶん大丈夫だろう。私はワクチン接種済みだが、政子にも打っておいた方がいいかな?と私は考えた。
「でもおかげで2年くらい大輔とは会えない」
「2年ということはない。治れば会えるよ。彼の様子はどうなの?」
「なんか入院してるらしいよ。お母さんも会えないらしい」
「それやばいんじゃないの?」
「やはり男だし、煙草も吸ってるし、血糖値も高いと言ってたから、重症化したのかも。たばこやめて、男もやめとけば良かったのに」
などと政子は言っている。
「しばらくは電話のやりとりだけで我慢するしかないね。彼自身も不安だろうし、電話で励ましてあげなよ」
「それが電話にも出られないらしくて」
「それマジやばいじゃん!」
「でも軽症と言ってたよ」
「お医者さんの言う軽症・重症と私たちの感覚の軽症・重症はまるで違うからね」
マリの話ではさっぱり状況が掴めないので、私は大輔のお母さんに直接電話して状況を尋ねてみた。その結果、基本的には“軽症”だが酸素吸入が必要な状況であること。しかし若いのでたぶん命には別状はないだろうというお医者さんの話らしい。ただ感染力が強いので面会などはできない状況であること。電話で話すのもかなり体力を消費するので、できるだけ控えているということを確認できた。
私は、マリの気分転換をさせるためにも、ローズ+リリーのアルバム『ラブコール』の本格的な制作に入ることにしたのである。
伴奏と歌は別録りにしてくれとレコード会社からも言われている。更に最近イギリスで猛威をふるっているインド発祥の“デルタ株”が日本にも既に上陸している可能性を考え、今回は基本的に次のような制作体制で臨むことにした。とにかく“人を集めない”というのを徹底する。
これは§§ミュージックのアーティストの制作についても6月から適用している方法と同等である。
(1)楽曲が完成した時点で、私がエレクトーンの弾き語りで歌う。
(私のマンションの防音ユニット“音楽室”を使用する)
(2)この歌を聴きながら、スターキッズで伴奏を制作する。この時点で七星さんにお願いして充分練ってもらう。
(参加者:Gt.近藤 B.鷹野 Dr.酒向 Sax.七星 Vib.月丘 KB.詩津紅)
この作業は近藤さんの自宅の離れに作られている練習室(元々防音)でおこなう。ここに本格的な録音機器を持ち込んだ。録音は有咲の部下で23歳の桃子さんが行う。若い耳でしっかり録ってもらう、
(3)この歌に私とマリの歌を載せる。これは私の責任で十分に練り上げる。どうしても直して欲しいところがあったら(2)に差し戻し。これはマンションの防音室を使用する。ここにもプロ仕様の録音機器を持ち込んだ。この録音は有咲自身が担当する。
(4)木管の追加。(Fl.古城風花 Cla.上野美津穂)女子寮使用
(5)金管の追加。(Tb.宮本 Tp.香月)香月さんの御自宅使用
(6)弦楽器の追加。(Vn.鈴木真知子・伊藤ソナタ)真知子の自宅使用
(7)コーラスの追加。(鈴鹿あまめ・長浜夢夜)女子寮使用
録音作業は女子寮はサンシャイン映像制作のスタッフに依頼。香月さんの自宅は香月さんの奥さん(ヴァイオリニスト)に依頼。真知子の自宅は真知子の妹さん(女子大生でやはりヴァイオリニスト)に依頼した。2人ともわりと機械に強い。それにヴァイオリニストは一般に耳がいいのである。
↑で(5),(6)は曲によっては入らないものもある。
(入らない場合もギャラは支払う。というより今回は取り敢えず7〜9月はこのメンツに“直接”サマーガールズ出版から月89万967円(源泉徴収後ジャスト80万円 890967x0.1021= 90967)のギャラを払う固定制としている(事務所を通さないのでコーラスの2人は満額受け取れる)。時間を気にせず納得いく所まで練ってもらうためである。仕上がり具合は基本的に七星さんか風花がリモートでチェックする)。
制作期間中、風花は(赤ちゃん付きで)女子寮の本棟2階に泊まり込む。夫は放置である!
「性転換して女の子になったら、こちらに同居してもいいよ」
などと風花は言っていたが、彼氏は性転換まではしたくないようである!
(女装はだいぶさせられていたが:たぶん女装にハマったと思う。取り敢えず女装外出は平気になったようだし「スカート同士のセックスは楽しい」とか「お化粧って楽しいね」とか言ってたし、足の毛は剃る習慣になったらしいし)
風花は花ちゃんの部屋に泊まり込み、花ちゃんは女子寮の空き部屋に移動している。
風花が女子寮に泊まり込んでいるので、恵比寿の私のマンションには妃美貴(1995生:詩津紅の妹)が毎日詰めてくれて秘書代わりをしてくれる。妃美貴が忙しい時には、ハルちゃんかアキちゃん(私にはこの2人が区別つかない)が代わりに入ってくれる場合もある。この2人は現在大学3年生である。2人はファミレスか何かのバイトでもしているのか夜間は忙しいらしいが、昼間はだいたい入れるらしい(学校はどうしてるんだ?)。彼女たちはどうも松本葉子の一部でもあるようである。
長浜夢夜は作業がある日は男子寮からシャトルバスで移動してくる。
「女子寮にお部屋を用意ししようか?何ならそのままこちらに住んでもいいよ」
と言ったのだが、
「女の子になったら考えます」
と言っていた。
既に女の子になっているのでは?という疑惑があるのだが!
基本的に各場所に録音できる環境を作って、できるだけ移動せずに制作ができるようにする。実は香月さんの御自宅(一戸建て:正確には奥さんの実家)に私が個人的に費用を出して防音環境を作ってもらった。宮本さんは2人の子供とマンション暮らしなので部屋数に余裕が無かった。
(スターキッズは鷹野さんと詩津紅以外は全員既婚である)
鈴木真知子の自宅は元々地下にヴァイオリン練習室がある(蘭若アスカの自宅と同じ仕様)。そこにやはり録音機器を持ち込み、伊藤ソナタさんにそこに来てもらうことにした。ソナタさんは「ここすごーい。いい環境ですね」と感心していた。
ちなみにマリは長浜夢夜ちゃんの性別には気付いていないようで、普通の女の子だと思っている。彼女が実は男の娘であることをマリに知られると、あれこれ詮索されそうなので、本人にも性別については触れずに女の子のふりをしておくよう言ってある。
ところでどう考えても本来取れる有休日数を遙かに超えて、休みを取り、ローズ+リリーの音源制作やライブに参加していた近藤詩津紅であるが、とうとうめでたく(?)首になった!
実際問題として、コロナの影響で詩津紅が勤めていた会社も営業成績が落ちており、コストカットに努めていたものの、今年はリストラに追い込まれてしまったというのが実情である。希望退職者を募集したようだが、詩津紅は上司に呼ばれ、結局この希望退職に“自主的に”応じて辞表を提出。割増しの退職金と夏のボーナスまでもらって退職した。
それで彼女はスターキッズの正式メンバーに加えることにした!近藤さんや月丘さんたちも
「君は数年前からうちのメンバーだと思ってた」
と言って歓迎してくれた。
それで詩津紅は「バイトでピアノを弾いているOL」から「女性プロピアニスト」になったのであった。
もっとも詩津紅をスターキッズの正式メンバーにするには“時間”が必要だったというのもあった。初期のスターキッズでは月丘さんがピアノを弾いていたが耳のうるさい人からしばしば私は指摘された。
「このピアノ弾いてる人、専門のピアニストじゃないでしょ?もっと上手い人紹介しようか?」
実際月丘さんは、当時のスターキッズの中で最もキーボードがうまかったから弾いてもらっていただけで、彼は本来はヴィヴラフォンやマリンバが専門の打楽器奏者である。しかし私は彼を解雇するにはしのびなかった。それで「この曲にはヴィヴラフォンの音が欲しい」と言って、彼にヴィヴラフォンを弾いてもらい、するとピアニストが居なくなるので「今回は代わりに友人の詩津紅にピアノを弾いてもらいます」と言って、詩津紅に弾かせたのである。
だから当初、月丘さんは明らかに詩津紅がピアノを弾くことに不満を持っていた。結構近藤さんには文句を言っていたようだ。それを時間を掛けて「ピアノは詩津紅または美野里」という既成事実化を図った。
そのために時間が必要だったのである。
特に美野里のビアノ演奏には月丘さんも「参った」という顔をしていた。詩津紅は美野里ほどではないが、充分ピアノの専門家並みに弾く。
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