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■春退(24)

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1分ほど沈黙が続いた後で貴司は言った。
 
「ねえ、千里、最後に1度だけセックスしない?」
 
それに対して千里は3秒ほど間を置いてから答えた。
 
「しない」
 
貴司は言う。
「自分が悪いのにこんなこと言うのも何だけど、千里のことは自分としてもどうにもすっきりしなくて、だから最後に1度だけセックスして、決着をつけたいんだ」
 
しかし千里は言う。
「うん。決着なんか付けられたくないからセックスしない」
 
「うっ・・・」
 
「だって私にとって貴司は自分の全てだもん。そんなのに決着つけられる時って、私が死ぬ時しかあり得ないよ。だから絶対に清算なんかしてやらない。だから今日はセックスしない」
 
「千里・・・・」
 
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「次私が貴司とセックスする時は、私が再度貴司と結婚する時だろうね」
と言って千里は微笑む。
 
貴司は言った。
「悪いけど、僕、阿倍子と別れることはないよ」
「うん。いいよ。貴司が阿倍子さんと一生添い遂げたら、私は来世の貴司と結婚するから」
 
貴司はしばらく考えた。そして答えた。
 
「分かった。じゃ今日はセックスしないことにしよう。でも千里、君のために言う。誰かいい男を見つけて結婚してくれ」
 
「言われなくても結婚するよ。薄情な貴司のことなんか忘れて、もっと誠実な男性と結婚するよ」
 
「君の幸せを祈ってる」
「私も貴司と阿倍子さんと京平の幸せを祈ってる」
 
「京平か・・・・」
 
「良かったね、貴司。京平は2015年に産まれる予定だったけど、私が産むのなら、その時期はたぶんアジア選手権とかで、とても子供なんか産んでる時間が無いもん。阿倍子さんに代わりに産んでもらってよ」
 
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貴司はその時は、阿倍子が不妊症であることをとても千里に言えなかった。
 

「あ、そうだ。これあげるね」
と言って千里は祝儀袋を取り出して貴司に渡した。
 
「千里のバッグからは実に色々なものがでてくるな」
と貴司はマジで感心して言った。
 
「お母さん(保志絵)に郵送しようかと思ってたんだけど、直接会えたから今渡しておく。さすがに私、貴司の結婚式に出席する訳にはいかないしね」
 
「こんなのまで用意してくれたんだ。ありがとう」
と言って貴司はそれを受け取るが重いし、異様に厚い!
 
「わ、これ凄く重いんだけど」
「ああ。千円札で入れといたから」
「面白いことするね!」
「ただの嫌がらせよ」
 
「でもありがとう」
と言って貴司は祝儀袋を開封する。そして顔をしかめた。
 
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「なんか銀行の封がしてある」
「100枚で1束だよ」
「2束あるけど」
 
つまり20万円もある。
 
「10束くらいにしようかと思ったけど、祝儀袋に入らなかったんだよねー」
「こんなにもらっていいの?」
 
「だって私のいちばん大事な人の結婚だもん」
 
千里の言葉がとげとげしいが、千里のせめてもの嫌がらせなのだろう。それで貴司は何も言わないことにした。
 
「分かった。僕も千里の結婚式の時は御祝儀あげるよ」
「倍返しでよろしく」
「あはは、じゃ千円札400枚で」
「期待してるよ」
 
その夜、ふたりは婚約破棄以来、初めて一緒に寝た。但し「一緒に寝る」だけで何もHなことはしていない。ふたりで洋服を着たまま、ベッドに入り、並んで寝ただけで「タッチ」もNGという約束だった。帝国ホテルの最上級の部屋のベッドだけあって、とても気持ちが良かった。
 
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なお、ふたりはこの日は洋服を着たまま一緒に寝たのだが、次回からは「洋服がしわになる」という《技術的な問題》で下着をつけた状態で一緒に寝るようになる。
 

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はっと目が覚めた。
 
2年前、そして3年前の出来事が、まるで昨日のことのようだ。なぜ自分と千里はこんな迷い道に入り込んでしまったんだろうと悔やむ。2012年の春くらいに結婚式を挙げておけば、こんなややこしいことにならなかったろうに。千里にも悲しい思いをさせることはなかった。ただあの時は自分も千里も日本代表の活動で忙しすぎたんで挙式は年末になんて言ったんだよな、というのも思うが、それがまるで言い訳みたいだ。
 
ただそういう展開だった場合、阿倍子はきっと自殺してしまっていたんだろうな、というのにも思い至った。
 
しかし、今日、3年ぶりに千里とセックスしたことで、取り敢えず今回のアジア選手権で不完全燃焼になっていた心の中がすっきりしたような気分でもあった。
 
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隣で千里が目を覚ます。
 
「おはよう」
「おはよう」
 
と言ってキスを交わす。
 
「なんかアジア選手権のもやもやが消えちゃった」
「貴司は頑張ったと思うよ」
「それでセックスさせてくれたの?」
「うん。優勝はできなかったけど、あれだけ頑張ったらご褒美あげなくちゃと思ったから」
「ありがとう」
 
「でもこれ無かったことにしようね」
と千里。
「そうする」
と貴司。
 
「私たちは貴司が私との婚約をあまりにも唐突に一方的に無情にも破棄して以来、セックスは一切していない」
 
「わざわざ僕の罪悪感をつつく言い方するなあ」
「当然。私がどれだけショックで落ち込んだと思ってるのよ」
「ごめーん」
 

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「まあいいよ。私は京平が生まれたことで、貴司の妻の座に復帰したつもりだから。貴司の法的な妻は阿倍子さんかも知れないけど、真の妻は私だと思っている」
と千里は言った。
 
貴司はドキっとする。
 
そうだった。2年前、阿倍子との結婚式の直前に千里と会った時、千里は自分と再度セックスするのは、ふたたび千里と自分が結婚する時だと千里は言った。自分は今また千里と結婚してしまったのだろうか。
 
そして、貴司は「例の問題」も確認したくなった。
 
「やはり京平を作った卵子って千里の卵子なんだよね?」
「まさか。私が男の娘だって知ってる癖に」
「それが大嘘なんじゃないかという気がしてならないんだけど」
「私は間違いなく2012年までは男の子だったよ」
 
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「それだけは嘘だ。もし仮に千里が元々は男の子だったとしても、性転換したのは2006年か、あるいはひょっとしてと思っているのは2004年、千里が中学2年の時」
 
「そうだね。2004年に私、初めて自分のお股を貴司に見せちゃったからね」
「・・・・ちんちんなんて無かった」
 
「あれはちょっと取り外していただけだよ」
「そんな簡単に取り外せるんだっけ?」
 
「取り外せるよ。やり方知らないの?右に2回ひねってから左に5回ひねって、更に右に10回ひねった後、左に20回ひねって・・・」
「ちょっと待って。20回もひねったら、ねじ切れちゃう!」
「その程度でねじ切れるなんて鍛え方が足りないな。取り敢えず貴司のおちんちん取り外してあげようか?」
「いい!もう取り外したくない!」
 
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「うふふ。簡単に取り外せたら便利なのにね。そしたら貴司のおちんちんも必要に応じて取ったり外したりして、普段は私が預かっておいて、他の女とは絶対にセックスはできないようにできるのに。まあ阿倍子さんにだけは貸してあげよう」
 
「取ったり外したりって同じことでは?」
「あ、取ったり付けたりの間違い」
 
「実際僕は千里以外とセックスできないんだけど」
「そうだね。奥さん以外とセックスしたら大罪人だよ」
 
「でも思えば千里って、中学や高校の頃、よく、おちんちん忘れてきたとか、置いて来たとか言ってたよね」
「私におちんちんなんてあるわけないじゃん」
「やはり千里って生まれた時から女の子なんだよね?」
「まさか」
 
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「だけどさ」
と言って貴司は自分のおちんちんが「しばらく消失していた」ことを話した。千里は大笑いしていた。
 
「そのおちんちんを取って行った私って、きっと貴司の良心なんだよ。アジア選手権の間、向こうの女とHなことできないようにちんちんを封印したんだよ、きっと。女買ってる選手いなかった?」
 
「それは禁止令が出ていた。ホテル側にも、選手から照会があっても絶対に斡旋しないでくれと釘をさしてあった。だけど僕、向こうでドーピング検査を受けて、その時に係官にもちんちんが無い所を見られているんだけど。そして検査表見たけど、男性ホルモンの濃度が物凄く低かった。睾丸が無いからこの数値なんだろうと思った」
 
「ふーん。でも貴司は男性ホルモンが低い方が浮気しなくていいかもね。私もたいがい貴司の浮気を潰すのに疲れてるんだけど、いい加減にして欲しいなあ。なんなら去勢手術してくれる病院紹介しようか?去勢してストイックにバスケに打ち込む貴司って魅力的かもよ」
 
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「やだ。そうだ、例の万年筆は千里の所に戻った?」
「うん。戻ったよ。ありがとう」
と言って、千里はバッグの中から例の銀色の万年筆を取りだして貴司に見せた。
 
「ねえ、千里。僕の奥さんに復帰したのなら、またセックスしてくれる?」
 
全くこの男は〜!と千里は思ったが、まあいいかとも思う。こちらにとってもその方が都合がいいし。
 
「じゃ最終予選でオリンピック行きを決めたら、セックスしてもいい」
「分かった。頑張る」
 
と貴司は何だか張り切っていた。
 
その後、千里と貴司は服を着た上で、またホテルの部屋の中でたくさんシャドウバスケットをした。なお千里は例によってこの部屋の真下の部屋も一緒に借りている。
 
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「勝てない〜!千里また上手くなってる」
と貴司が嘆く。
 
「貴司は練習不足だよ。もっともっと練習しなよ。浮気している時間に練習すれば貴司はもっと伸びるよ」
と千里は言う。
 
「朝練とかしてる?」
「してない」
「朝早く起きてジョギングしたり近くの体育館とかでドリブルやシュートの練習すればいいよ」
「それは頑張ってみようかな」
 

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その後ふたりは交代でシャワーを浴びてシャドウバスケットで掻いた汗を流した後で、また例によってお互いちゃんと下着をつけてからベッドに並んで寝た。Hなことはしないことにしているものの、この時間が千里はとても好きだ。貴司もこの「並んで寝る」のは心の充足を感じると言ってくれている。
 

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「貴司、そろそろ行かなきゃ」
という千里の声とキスで目を覚ました。
 
反射的にあそこに手をやり、男性の象徴が存在することを確認してホッとする。ほんとにあれは夢だったのだろうか??
 
「うん」
と言って貴司は起き上がる。それでベッドから出て服を着ようとした時に電話が掛かってきた。
 
「はい」
「ええ・・・。写真集ですか!?」
 
千里は何の話だろうといぶかった。
 
「分かりました。それは構いませんが、でもオリンピック切符逃したのに。ええ。もちろん来年の最終予選は代表に選んでもらったら頑張りますよ」
 
そんなことを言って貴司は電話を切った。
 
「写真集って?」
「僕の写真集を作りたいんだって」
「へ〜!」
 
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「でも恥ずかしいよ。オリンピック予選で負けたばかりなのに」
「今度の最終予選で勝てばいいんだよ」
「うん。勝つつもり」
 
と言う貴司に千里はキスをした。
 

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その時、今度は千里の携帯にメールの着信がある。千里が見てみると桃香からである。
 
《千里〜。今夜遅くなるの〜?お腹空いたよぉ》
という文面を見て千里は吹き出した。
 
「どうかしたの?」
「私のペットちゃんがお腹をすかせてるみたい」
「ペットなの!?」
 
そんなことを言った時、貴司は、千里が持っている携帯に金色のステンレス・リングがついていることに気づいた。
 
「それ付けてくれているんだ?」
「私はまた貴司の奥さんになったから付けるよ。貴司と会う時だけだけどね」
「僕も千里と会う時は付けようかな」
「ふーん。捨ててないんだ?」
「捨てる訳がない。実は会社に置いてる」
「ふふ・・・」
 
交代でシャワーを浴びてから、新大阪行き最終新幹線に乗る貴司をキスで送り出す。
 
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「そうそう。運動して少しお腹空いたでしょ?これ用意してたの。新幹線の中で食べて」
と言って千里は手作りのおにぎりを5個渡した。
 
「そ、そうだね。あんなこともしたし」
「うん。シャドウバスケット楽しいよね」
「あ、そっちか?」
 
貴司が部屋を出て行った後千里はひとりごとのようにつぶやく。
 
「まあ恋愛って要するに餌付けだよね〜」
 
そして千里は大きく伸びをする。
 
「でもとうとうセックスしちゃった。ごめんねー、桃香。今夜サービスするからね」
 
それで千里は今夜は桃香の好きなビーフストロガノフでも作ろうかなと思い、レシピを頭の中で再生しながら買物メモを書き始めた。
 
普段はオージービーフだけど、たまには国産黒毛和牛でも買っていってあげようかなあ、などと千里は考えていた。
 
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