広告:放浪息子(9)-BEAM-COMIX-志村貴子
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■春退(14)

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それで15人でお寿司を食べたが、女子高生集団の破壊力はなかなか凄まじい。マリと食べ比べをしようとして「負けたぁ!」などと言っている子もいる。ケイが積み上げられた皿を眺めて悩んでいたので青葉が「冬子さん、私も少し出しますよ」と言ったが「いやいや気にしないで」とケイは言った。ケイはカードで払ったが、その伝票を見てまた悩んでいるようだった。
 
しかし美味しいお寿司をお腹いっぱい食べたからか、スタジオに戻ってからのみんなの演奏はひじょうによくなっていた。
 
「あんたたち、美味しいものを食べると演奏まで美味しくなるんだな」
と七星さんが少し呆れていた。
 
それでこの後は順調に収録が進み、8時には無事収録を終えた。念のため3回収録して、あとで比較していちばん良いものを生かすことにした。
 
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「良さそうな所をつなぎ合わせるんですか?」
「いや、私たちは基本的にそういうことはしない。つぎはぎはつぎはぎでしかないよ。まるごとの演奏をそのまま使わないと、魂に響く音楽にはならない」
 
とケイは言っていた。
 

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青葉たちが高岡のスタジオでローズ+リリーと一緒に『Flying Singer』の音源制作をしていた9月12日、千里は朝から夕子・麻依子に竹宮星乃、下田監督・矢峰コーチ・立川さんと江東区内の和風ファミレスで待ち合わせ、とりあえず今回の会社設立の件について話し合った。
 
この件についてこれまで聞いていなかった星乃は驚く。
 
「基本的には今まで同様、趣味の範囲で活動するけど、まあプロ契約する人があってもいいかなという姿勢」
「まあそれならいいかな」
「勤めている会社の就業規則に反しないなら、プロ契約していなくても例えば1試合3000円とかの手当を出してもいいと思う」
「おっ、それは美味しい。それってトーナメント勝ち上がればたくさんお手当もらえるよね?」
「うん、そういうことになる」
 
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7人は会社の名前、事務所の場所、などについても話し合う。
 
「専任の事務スタッフが必要だよね?」
「それは必要だと思う」
「それ、誰か江戸娘なりローキューツのOGでやってくれる人がいたら使えないかな?」
「うん、いい人がいたら、それでもいいと思う」
 
(40 minutesのメンバーの半分くらいがこの2チームのOGだが、40 minutes自体はまだ設立されてから2年しか経っていないので「OG」は発生していない。幽霊部員は存在する)
 
「一応役員は、立川さんが社長、千里が会長、私が副社長でいいかな」
と夕子が言う。
 
「それって出資額の順?」
「出資金は大半を千里が出す。私は100万くらい」
と夕子。
「私も100万しか出せないです」
と立川さん。
 
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「100万出せるあんたたちが凄い」
と星乃。
 
「でもキャプテン・副キャプテンが役員に入るのも悪くないかもね」
「いや、私たちは主将・副主将はやめようかと」
「え〜〜!?」
 
「まあそれで、来年の主将はステラ、副主将は私がやろうかという話なのよ」
と麻依子が言う。
 
「ちょっと待て」
と突然指名された星乃。
 
「ステラちゃん、主将向きの性格だと思うし」
「みんなを笑いでリラックスさせる」
「私が主将やったら、お笑いチームになりそうだ」
「それでもいいかもね」
「勝利は追及せずに、お笑いを追及する」
「それってけっこう集客力が出るかも」
「むむむ。でも、あんたたちなんでキャプテン・副キャプテン辞める訳?」
 
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「私は子供産みたいのよ」
と夕子が言う。
「私は悪いけど、別のチームに移籍する」
と千里。
 
「うっそー」
 
この話は下田監督には言っていたのだが、矢峰コーチはこの時初めて聞いて驚いていた。
 
「今年は自分のレベルアップのために、日中毎日レッドインパルスの練習に参加させてもらっていたんだけど、やはり正式にこちらに加入しないかと誘われて、私もまだ迷ってるんだけど」
 
「いや、それは移籍すべき」
と星乃も言った。
 
「みんな、そう言うんだよ!」
と千里。
 
「いつ移籍するの?」
「移籍する場合は来年の4月付け」
「まあそれが面倒も少ないよね」
 
「ユニバーシアードで世界ベスト4になって3P女王取って、更にアジア選手権でも大活躍してオリンピック枠獲得。こちらも3Pが亜津子さんに続いて2位。これだけの選手、どこも欲しがるよ」
と星乃。
 
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「だから2017年正月のオールジャパンでは私たちの40 minutesが千里たちのレッドインパルスを倒してやろうかと」
と麻依子が言う。
 
「おお、それで頑張ろう」
と星乃も笑顔で言った。
 
「その前に千里を入れた40 minutesで今度のオールジャパンでレッドインパルスを倒そうとも言っていた」
と夕子。
 
「よし、来月の社会人選手権、頑張ろうか」
と星乃は張り切る。
 
40 minutesは10月31日〜11月1日に鳴門市で開かれる社会人バスケット選手権に出場することになっている。この大会で3位以内に入ればお正月のオールジャパン(皇后杯)に出場することができる。
 
「でも運営的にはこちらに残るわけね」
「そうそう。40 minutesの運営会社会長で、レッドインパルスの選手」
「それは構わないんだっけ?」
「レッドインパルス側もバスケ協会も特に問題無いと言っている」
 
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「まあまさかライバルチームになることはないだろうと思っているんだろうね」
と麻依子は笑いながら言う。
 
「万一問題にされたら、ケイが持つことになるローキューツの株と交換しようかという話もケイとはした」
「ローキューツも運営会社設立?」
「そうそう。あちらはあちらで進んでいる。ケイが超多忙だから、その件については、雨宮三森先生が実質進めている」
 
「なんか大物の名前が出てきた」
「千里の先生でもあるんでしょ?」
「そうそう。私とケイは元々雨宮先生の姉妹弟子なんだよ」
「へー」
 
「それって男の娘仲間?」
「ああ、雨宮先生は男の娘をコレクションする趣味がある」
 
「でも弟子ってサックスとか習ってるの?」
「いや、千里は作曲家でもある」
「醍醐春海という名前で、KARIONとかゴールデンシックスとかに曲を提供している」
「すごーい!」
 
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「40 minutesの活動資金は千里が作曲で稼いだお金」
「知らなかった! あれ?ソフト会社に就職したというのは?」
「あれは不幸な巡り合わせというか」
「実際、全然会社には行ってないよね?」
「退職願い何度も出してるんだけど、受け取ってもらえないんだよ」
「あれま」
 
「でもローキューツもレッドインパルスのライバルになったら?」
「その時はマリに株を買い取らせようという話もした」
「なるほどー」
「お金持ちは利用するに限る」
「良い言葉だ」
 

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この場で2時間ほど話し合っている内に、他の40 minutesのメンバーがぱらぱらと集まってくる。この日は40 minutesが全日本クラブ選抜で優勝した祝賀会を昼食会を兼ねてすることになっていたのである。
 
「みんな好きな物頼んでね」
「もしかしておごり?」
「その選抜を欠場した誰かさんのおごり」
「おお、それはおごってもらおう」
 
40 minutesに所属しているメンバーのだいたい7〜8割が集まった感であった。選抜を実際には欠場した子でも都合が付けば来てくれているが、逆に家庭や仕事の都合、子供の行事の都合などで欠席しているメンツも多い。
 
「あれ?館長さんがいる」
という声があがるが
「4月からうちのチームのスタッフになってくれることになっているんだよ」
と千里が説明する。
 
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「おお、それはよろしくお願いします」
 
キャプテンの夕子が乾杯の音頭を取って祝賀会は始まった。堅苦しい挨拶は抜きで、まあ食べようということで適当に御飯やおやつなどを取り、和やかに会は進む。
 
かなりみんな満腹してきたあたりで、キャプテンの夕子から運営会社を設立してプロチーム化する話を出すが、やはり不安の声が多い。
 
「実はその運営会社の社長を立川さんにお願いしようと思ってね」
と夕子が説明した。
「ああ、それで今日来ておられたんですね」
 
「でも参加できる時に参加する今のスタンスが気に入っているんだけどな」
「うん。だからそれは今のままでいい」
「子供の参観とか、バイトとかあったら大会であったも遠慮無く休んで良い」
「もちろん子連れで練習に出てくるのもOK。誰か適当に見ていてくれるし」
 
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「それにチームがプロであっても、選手が全員プロである必要はない」
「なるほどー」
 
しかし中折渚紗などは前向きである。
「私、今の職場はサービス残業が多くて、もう転職しようかとも思ってたのよね。こちらでお給料出してもらえるなら、プロになってもいい」
と彼女は言う。
 
「リト(渚紗のコートネーム)のレベルなら、まあ細かい数字は交渉次第だけど、税込みで月30万出せると思う」
と千里が言う。
 
「リトで月30万か・・・・」
 
と言ってみんな腕を組む。彼女のレベルでそのくらいの報酬ということは、みんな自分なら幾らもらえるかというのが概ね想像できるだろう。
 
「税込みだから源泉徴収して27万、そこから住民税・国民健康保険・年金を払えばまあ22万くらいかな」
 
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「そんなに引かれるんだっけ?」
「お勤めの人は自分の給料明細見てみなよ」
 
「私は安くてもプロになりたい」
と雪子が言う。
 
「今年ユニバーシアードに参加してヤング日本代表にもなって、レベルの高い人たちに揉まれて、凄くやる気が出てきて、むしろやる気が余っちゃって。プロになった場合、練習場所はどうなります?」
 
「今使っている**体育館より小さいんだけど、去年学校が統合されて閉鎖されている元LL小学校の体育館をボロいままでもいいから安く借りられないかと区と交渉している」
と千里が言う。
 
「区側は維持費だけ掛かっていたから取り壊そうと思っていたらしいけど、有料で借りてくれるなら、貸してもいいかなという雰囲気。金額次第と思う」
と麻依子が言う。
 
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「毎日練習できるなら、凄く嬉しい。もうバイト辞めちゃおうかな」
と雪子。
 
「でもプロになったらWリーグに加盟するんですか?」
「Wリーグになるには色々条件があるんだよ。組織だけの問題ではなく経営的に採算がちゃんと取れているか、観客はどのくらい入っているか、地域に支持されているかなどなど。だから行くとしても5〜6年後かもね」
 
「Wリーグに行ったとしてどの程度の成績になりますかね」
「まあ今の陣容でもWリーグ中位くらいはキープできると思う」
と夕子。
「そんなに行けます?」
「うん。君たちは充分強い」
と下田監督。
 
「千里抜きで全日本クラブ選抜で優勝したんだから、クラブチームとしては圧倒的な強さだと思う」
と中嶋橘花が言う。
 
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「そうそう。来年も千里はオリンピックの方の活動であまり参加できないだろうし、千里を首にしてもやっていけるくらいの強さだな」
と若生暢子が言う。
 
「うん。ほんとにみんな強くなった。だから私は選手としては辞めさせてもらおうかと思って」
と千里が言った。
 

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「え〜〜〜〜〜!?」
とみんなから驚きの声があがる。
 
「千里は来年は選手から外れて、40 minutesに関しては運営会社会長に専念ということかな」
と夕子。
 
「マジで辞めるの?」
と暢子から訊かれる。
 
「みんな、ごめん。実は今年は自分を鍛えるのにレッドインパルスの練習にも毎日参加させてもらっていたんだけど、向こうから正式に加入しないかと誘われていて」
と千里はみんなに謝る。
 
しばらくみんな沈黙していたが、やがて橋田桂華が言う。
 
「実は、千里はそうなっちゃうかも知れないねと何人かで話していた」
 
「だから2017年正月のオールジャパンでは、私たちの40 minutesが千里のレッドインパルスを倒してやろうよ」
と星乃が言う。
 
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「ああ、それはいいかも」
 
「その前に2016年正月のオールジャパンでは、千里も入っている40 minutesが千里が加入する前のレッドインパルスを倒す」
 
「ローキューツに居た子にとっては2012年正月のオールジャパンのリベンジだな」
と麻衣子が言う。その時、千葉ローキューツは準々決勝でレッドインパルスに敗れている。
 
「今度のオールジャパンに出られるんだっけ?」
「今度の社会人選手権で3位以内に入れば出られる」
 
「よし、頑張ろう」
 

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