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アクアの初アルバムに収録するのは最終的に12曲となった(実際には14曲録音したのだが、2曲は営業的な観点から外し、作曲者にことわって他の歌手−桜野みちる・川崎ゆりこ−に回させてもらうことにした)。
アルバム発表時の並べ方では下記のようになる。
Water Side
『ウォータープルーフ』上島雷太
『翼があったら』マリ&ケイ
『ライオンと少女』針谷童夢
『夢見るコレジエンヌ』紅型明美
『半分少年』Ya!Ye!
『The Young and the Freshness』霧島鮎子・上野美由貴
Beach Side
『朝食ラーメン娘』ヨーコージ
『ロックバンドの少女』XAMFUS
『水辺のニュムペ』karion
『走って告りに行こう!』Golden Six
『憧れのピーチガール』松浦紗雪・藤崎亜夢
『テレパシー恋争』ゆきみすず・東郷誠一
上記はアルバムの並べ順なので、実際の制作順は結構違う。
最初に作ったのはゴールデンシックスの作品『走って告りに行こう!』。作詞作曲のクレジットは Golden Six だが、実際には花野子が歌詞・曲ともに書いたものを千里が調整している。この曲の伴奏もゴールデンシックスが務めた。
(この時点ではまだエレメントガードはヤコ・エミを中心に編成することを決めただけで、メンバーを探している最中だった。昔のサイドライトの他のメンバーはもう音楽業界から引退していて復帰の意志は無いということだった)
この曲の演奏をしたゴールデンシックスのメンツは下記である。
Gt.リノン B.ミソラ金剛 KB.カノン Dr.キョウ Fl.タイモ(千里) 割れ目木鼓.ハナちゃん
ハナちゃんは「あんた色々できそうだね」とカノンから言われて金色の六芒星のバッヂを渡され、“ゴールデンシックスと愉快な仲間たち”のメンバーになってしまった。
実際彼女はギター、ベース、ドラムス、キーボード、フルート、クラリネット、トランペット、ホルンができる。でもヴァイオリン族は苦手らしい。
ハナちゃんが演奏しているのは、割れ目木鼓という変わった楽器である(私物)。木鼓は「もっこ」と読む。英語ではSlit Drum(スリットドラム)という。木の中身をくりぬいて空洞を形成した楽器で、くりぬく時に空けた細長い穴(スリット)があるので、スリット・ドラムという。
「この子の性別は女の子だよね」
などと言って、川崎ゆりこからドツかれていた。
この木鼓を木製のバチで叩くとカッカッカッという感じの甲高い音がする。
「女の子を棒で叩くって凄い楽器だね」
などと発言したら、ゆりこが睨んでいた!
ともかくも、この楽器で廊下や階段を走っている様を表現するのである。
木鼓は中国南部・東南アジア・南部ポリネシアなどに分布する楽器で、地域により形や演奏法にも色々なバリエーションがある。南米やアフリカにも類似の楽器がある。日本の木魚!やタヒチのトエレも割れ目木鼓の一種である。ハナちゃんが所有しているのは彼女のお父さんが自作したもので、伐採後10年乾燥させた薩摩ツゲを使用している。
ツゲ(柘植)は硬く伸び縮みが少ないので、古くは笛の材料として使用されていた。
なお、強度を増すため一部福岡産の檜(ひのき)も使用しているらしい。
お父さんは10個くらい試作した中のひとつを彼女に渡していたのだが、音源製作に使用すると聞いて、自作の木鼓の中でいちばん出来のよいものを車に積んで佐賀県の実家から、はるばる運んで来て、「以後これを使いなさい」と言って進呈してくれた。
この木鼓は長さ1m近くもある巨大なもので(柘植でこのサイズのものは多分かなり高価)、穴が3つ空いていて各々ドミソになっているという変わった木鼓である。音高微調整のための“子板”付きである。
重さは15kgほどあり、腕力のあるハナちゃんなら何とか運べるが、愛心などは持てなかった(スポーツ少女の利美やありさは楽々と持ち上げた)。アフリカには2つ穴の木鼓もあるらしいが、3つというのは自分が作っているもの以外にはないかもとお父さんは言っていた。
この曲のPVでは数人の女子(§§プロの練習生の中学生)とダンスの練習をしていた体操服姿のアクアが、ふと思い立ったように立ち上がり、走って行く所から始まる。アクアは校庭を走り、廊下を走り、階段を駆け上がり(どこを走るかでハナちゃんが打つ木鼓の音程が変わる)、最後は屋上に出て、後ろを向いて立っている人物に声を掛ける所、そしてその人物がこちらを振り向こうとしている所まで、それでアクアが何か言った所までで構成されている。
このPVを撮るためにアクアは廊下や階段を5−6回走らされた。
(その前に西湖は10回走らされた!)
なお屋上に立っていた人物は顔も映っていないし、体操服姿なので性別も不明である。それでこのPV公開後、アクアは男の子に告白したのか、女の子に告白したのか?というのでかなり議論になった。
「アクア様は女の子に告白したんだと思うな」
「アクアは男に告白したのかも知れない」
と男女のファンから妄想に満ちた意見が出ていた。
(実をいうと、この屋上に立っていた人物もアクア自身である)
『憧れのピーチガール』はアクアの“ファンクラブ会長”松浦紗雪が作詞し、いつも松浦作品に曲を付けている藤崎亜夢が作曲したものである。この曲も伴奏はゴールデンシックスがしてくれた。
ビーチで遊んでいる水着の女の子に男の子たちだけでなく、女の子たちからも視線が集まっている、という感じの歌である。それなら“ビーチガール”なのではと思うのだが、“ピーチ”にしたのは、女の子が桃ジュースを飲んでいるから!?と説明されている。
(本当は「桃のようなお尻」だったのを検閲!が入って、桃ジュースにされたのでは?とファンの間では噂された)
このPVは夏の内に撮影しようということで、アクアの代わりにピーチガールを演じる同い年の米本愛心が、桃色のビキニの水着を着け、本当に桃ジュースを飲みながらビーチを歩いている所に、多数の男女が振り向いてそちらに注目する、という構成になっている。愛心はお友だち(月嶋優羽)とビーチボールを投げて遊んだり、パラソルの下で数人の女子(§§プロの関西周辺の練習生)とやはりジュースを飲みながら楽しそうにおしゃべりしていたりする。アクアは最後の最後にアロハシャツとホワイトスラックスという格好でサングラスを掛けて愛心たちがいるビーチを見つめているシーンで登場するのみである。
この撮影は和歌山県の加太海水浴場で実は早朝に撮影した。映っているのは全員前日集めたエキストラである。前日の夕方和歌山市内で、★★レコードの名前で、誰のアルバムのPVかは伏せたまま「ホテル1泊夕朝食付き・水着支給・ギャラは無し」の条件で募集。男性(の水着が着られる人)100名・女性(の水着が着られる人)150名で締め切った。水着は自前のものを着てもよいものとした。
翌朝5時にバス5台に分乗してビーチに移動。起きられない、気が変わって水着姿を曝したくない、毛の処理に失敗した!などの理由で脱落した20名を除き230名で撮影を行った。ビーチを歩いたのが無名の米本愛心なので、みんな新人のアイドルかな?などと思っていたようだが、最後の最後に海の家の中からアクアが出て来たのに参加者たちが気付くと、凄い騒ぎになった。
しかし実際にはスタッフの顔を見て、§§プロの人たちが混じっていることに気付き、こんなに巨額の予算を掛けているのならアクアの撮影なのでは?と想像していた人がどうも20-30人居たようである。実は、わざわざ費用を掛けて参加者をホテルに前泊させたのも情報漏れが起きてエキストラ以外の見物人が殺到し撮影不能にならないようにするためであった。
エキストラは日本語が分かるなら国籍不問、中学生以上(未成年は親の同意が必要)・年齢上限無しとしたら、中国人5名・アメリカ人男性とフランス人女性1名ずつも参加した。また63歳の(日本人)女性も居た。この人はビキニの水着を着ており、若い参加者が驚いていた。物凄く引き締まったボディで多くの人は40歳くらいだろうと思っていたようである。国際大会にも出たことのある元スポーツ選手だと言っていた。
なお、男性の水着が着られると申告した女性は居なかったが、女性の水着が着られると申告した男性は2人居て、2人とも自前の水着を持参した。1人はビキニ姿を披露して、もうひとりワンピース型の女性水着を着た人から
「おっぱい大きくしてるんですか?」
と訊かれ
「してないよ。私女房いるし。これは偽装」
と言うので、「すげー!」と感心されていた。
協力してくれた230名には発売後大手CDショップの店頭でアクアの実際のアルバムと引き替えできるクーポンカード(偽造防止のためIC入り、追加料金を払ってDVD付きアルバムとの交換も可能)を配ったが、このクーポンカード自体にプレミアムが付いてオークションに出品され高騰したのはさすがに§§プロ側の想定外だった!
実際230枚のクーポンの内交換されたのは半数程度で、他の人たちは記念に保存しているものと思われた。
なお、松浦紗雪は後に、
「『ぜひアクアちゃんにビキニの水着を着せてビーチを歩かせましょう』と提案したんだけど、ダメですと言われて、代わりに研修生の愛心ちゃんがやってくれました」
とコメントしていた。
ネットでは「紗雪さんの意見に賛成!」という声が圧倒的だった。
『ロックバンドの少女』は"XAMFUS"名でクレジットされた作品。神崎美恩作詞・浜名麻梨奈作曲の歌をXANFUS全員で練っている内に、元々の曲とは似ても似つかぬ曲になってしまったので「これはもうXANFUS作詞作曲でいい」と浜名が言い、このようなクレジットになった。
とても元気なダンスナンバーである。この曲の音源はXANFUS自身の伴奏で、充分練習した後、最後は(アクアの歌も含めて)一発録りで収録された。
この曲のタイトルはアクアが選出された『ロックギャル』コンテストの名称を焼き直したものでもあるが、1937年公開の伝説的な映画『オーケストラの少女』も意識したタイトルである。
深夜ベッドで寝ていた女性(演:秋風コスモス)が何かの気配に目覚めて階段を降りて行くと、家のリビングでロックバンドが演奏していたので、それを見て驚く、というストーリー仕立ては『オーケストラの少女』のクライマックスのパロディになっている。
撮影に使用した豪邸はセットである! 豪邸であるかのように装うのに贅沢な壁板を使用し、螺旋階段などはわざわざロートアイアンで作らせたのでほんとに豪邸のように見える。セットの製作費は800万円で、制作を指揮したのは、毛利五郎の上司である雨宮先生である。
「この螺旋階段、このまま壊すのはもったいない」
という声もある。
「ほんとによくできてるわね。誰か自宅に装備しない?安く売ってあげるわよ」
「装備できるような自宅がありません!」
雨宮先生は海外合宿中だった千里に電話して
「あんた、豪邸の建てかけを何ならこれを建てた土地込みで2000万円で買わない?」
と言ったが、千里は
「その2000万円は先生が私に払ってくださるんですよね?」
と答えたので、雨宮先生は電話を切ってぶつぶつ言っていた。
(このセットの壁板は建設中の新しい§§プロ研修所に転用された)
さて『ロックバンドの少女』で演奏しているバンドの構成は、ボーカル:アクア、ギター:米本愛心、ベース:ハナちゃん、キーボード:天月西湖、ドラムス:佐藤ゆか、となっていてビデオでは各々本当に演奏している。コスモスが驚いた以降の演奏はこのバンドである。クレジットは
Vo.Aqua Gt.Aco B.Hana KB.Seiko Dr.Yuka
となっている。
楽器を演奏した4人の中で、愛心・ハナちゃん・ゆかはXANFUSのメンバーから
「君たちうまいね」
と言われたが、西湖についてはXANFUSのキーボード担当ノワールが
「負けたぁ!」
と言っていた。
「あんた、この腕があれば、ピアノのコンテストで入賞できる」
と浜名麻梨奈が言ったが
「昨年、**コンクールの関東大会で準優勝しました」
と西湖がいうので
「さっすが!」
と浜名が声をあげていた。
「私、小さい頃から母に『女の子はピアノくらい弾けた方がいい』と言われてレッスンに通っていたんですよね」
と西湖が言うので、数人腕を組んで考え込む。
「よし、全員お揃いのセーラー服を着て演奏しよう」
と音羽が言い出す。
「ああ、それいいですね」
とハナちゃん。
「あのぉ、僕もセーラー服ですか?」
と西湖が訊くが
「当然」
と言われて着せられる。
「アクアもセーラー服を着よう」
と音羽は言ったが、同席していたコスモスが拒否した。
ちなみにタイトルは『ロックバンドの少女』だが、実際にロックバンドで歌っているのはアクアなので、ビデオが公開された後、
「つまりアクアは少女ということでいいんだよね?」
「何を今更」
「アクア様が少年なわけない」
とネットの意見はいつものようであった。