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■娘たちの卵(22)

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9月22日(月).
 
G峠の問題の神社の周囲に掘られた8ヶ所の穴に“立山森の輝き”が植樹された。この作業には魚重さんの頼みで青葉も立ち会った。それで万一の雨に備えて置いていたプラスチック製の帽子と、プラダンは青葉が自分で回収した。
 
雨はあの後、山のこの付近には一度も降らなかった。周囲に雨が降ってもここには降らなかったのである。
 
この日は旧暦8月29日で2日後は朔である。青葉は植樹が黒分(満月から新月までの期間)の内にできて良かったと思った。白分(新月から満月までの期間)は物事を成長させる。黒分は物事を収束させる。
 
植樹が終わってから、今度は先日目印にパイプを差していた所を掘ると本当に豊かな地下水が湧出した。
 
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「これは凄い。本当に湧出しましたね!」
と魚重さんは驚いているようであった。あの時千里は2mくらいと言っていたが、実際には1.5mほどで地下水に到達した。
 
取り敢えずここには水道の蛇口を取り付け「飲めません」の札を付けておいたが、後で水質検査をすると飲んでも大丈夫な水質であることが分かった。
 
「トンネルの怪異の方はその後いかがですか?」
「全く起きていません。どうもあれで解決したようです」
「それは良かった」
 
怪異が実際に消えたこと、そして青葉たちが言ったように半月間雨が降らなかったこと(実際には千里は1週間は雨は降らないと言っただけだが)、そして言った通りの場所から地下水が湧出したことで、魚重さんは完全に青葉たちの処置を信用してくれたようであった。
 
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湧出した地下水は神社の手水舎とトイレの手洗いに利用し、排水はここまでの道を舗装した所に沿って設置するパイプに流して冬季は融雪に使用し(北陸では水で道路の雪を融かす方式が一般的)、融雪装置を使用する必要の無い夏季には500mほど下にある池に導くことになった。既に舗装(アスファルト)は3割できているのだが、工事は神社そばに作る予定の駐車場まで含めて冬になる前に終わらせると言っていた。北陸は冬になると道路工事は困難になる。
 
なおこの水は飲んでみると結構美味しかったので、最終的には「名水」として評判になり、汲みに来る人まで出るようになった。
 
青葉のアドバイスで旧神社に通じる道はわざと土砂などを積み上げ、進入できないようにした。あちらには「変なものが暴れないように」と称して自作(作ったのは彪志)の祠を置かせてもらった。が、実は青葉の後ろに居候している《姫様》の別荘にするのである。ここは昼間は新幹線の通過でうるさいので、夜間だけ行くと《姫様》は言っていた。
 
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実際これまで数日に1度起きていたトンネルでの怪異も半月にわたって消えているので、あちこちに飛ばされていた運転士さんたちも新幹線乗務に職場復帰させる予定らしい。
 

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千里は昨年のLFBのシーズンでは、12人のロースターの中でだいたい10番目か11番目くらいの選手の扱いだったのだが、昨年よく頑張り、スリーポイント成功数でリーグ5位になる活躍もあって、今季はだいたいチーム内で7-8位くらいの選手の扱いになっていた。昨年千里と一緒に昇格したシンユウがスターターのボーダーラインで「スーパーサブ」として使われている。今年はカナリア諸島出身のカーラもトップチームに上がってきた。
 
シーズン開幕は10月15日である。
 

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9月18日から21日までは世界選手権に出る女子Aチームが東京NTCで合宿を行い、22日にトルコへ出発した。世界選手権は9月27日から10月5日までトルコのアンカラで開催される。
 
アジア大会に参加した女子Bチームは一次リーグは免除で、準々決勝からの試合になった。その準々決勝でインドに勝ち、準決勝で韓国と当たったが、これに敗れてしまう。そして三位決定戦では台湾に勝ち、日本はこの大会3位となった。
 
この問題について日本国内では選手選考に問題が無かったか?と協会を批判する声があがった。もっともこの時期日本バスケットボール協会は混乱の極致の状態にあり、その批判の声を受け止めることさえできない状況だった。
 
FIBAから指定された回答期限があと1ヶ月に迫る中、bj側との話し合いは全く進展していなかった。そして日本バスケ協会の一部には「締め切りまで待って、その後FIBAの指示に従えばよいのでは?」という信じがたい意見まで浮上していた。
 
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アジア大会で男子の方はこちらも一次リーグは免除で2次リーグからの参加となった。グループF(日本・カタール・クウェート)で日本はカタールに敗れ、クウェートには勝ったもののF組2位で3次リーグに進む。ここで日本はイランに82-59で負け、中国に72-79で勝ち、モンゴルに70-96で勝ち、G組2位で決勝トーナメントに進む。そして準決勝で韓国と当たるがこれに敗れ、3位決定戦に回ってカザフスタンに勝ち、最終3位でこの大会を終えた。
 
男子の方はまあまあの健闘であった。
 

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9月27日(土)に帰国した貴司は、阿倍子から「お母さんの病状説明を一緒に聞きに行って欲しい」と言われ、名古屋で落ち合うことにする。27日は新横浜のいつものホテルに千里と一緒に泊まり、28日の午前中に名古屋に移動。お昼すぎに新幹線で大阪から出てきた阿倍子と会う。そして病院に行き、医師の説明を受けた。
 
貴司は、この人がひょっとしたら阿倍子の実父かもという人か、と思いながら医師の説明を聞いた。言われると顔の作りが似ているような気もしないではない。
 
正直「病状説明」と聞いて、かなり状態が悪いのではと覚悟していたのだが、むしろ以前より良くなっているということだった。特に腎臓が奇跡的に機能回復してきていることから、塩分の禁忌が無くなったらしい。透析も7月からは月1度にしたという。
 
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それなら通院でもいい?でも退院した場合、どこに置くことになるのだろう?と貴司は悩んだ。
 
「そう遠くない時期に退院出来ます?」
と阿倍子は訊いたのだが
「それなんですけど、退院なさった場合に、誰か食事の管理ができます?」
と医師は逆に阿倍子に質問した。
 
「カロリー計算しないといけないんですよね?」
「はい。そうです。お母さんの場合、1日のカロリーを1300kcalに抑える必要があります。それを越して食事をした場合、命の保証をしかねます。ご家庭ではきちんとカロリー計算した食事を規定量守って与えるとともに、お菓子などを含めて全ての食品を鍵の掛かる棚に保管すること。冷蔵庫も施錠すること、お母さんを絶対にひとりにはしないことなどが必要です」
 
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「冷蔵庫の施錠ですか?」
「ホームセンターなどにキットが売ってますよ」
「じゃそれ買ってくるかな」
 
「でも母は、すぐ買い食いするんですよ」
「病院ではそれを看護師たちにもヘルパーたちにも強く言い聞かせて、絶対に余分なカロリーを取らないようにさせています。自販機とかでジュースを買えないよう、財布も通帳も私がお預かりしています」
 
まあボーイフレンドが管理してくれるのなら問題無いだろう。
 
「私、自信無い」
「僕も仕事の関係でほとんど家に帰られない状態だからなあ」
 
「だったら、まだ当面入院しておいてもらいますか」
「すみません。個室代はずっと払っていきますので」
 
多人数いる病室に入れると、他の入院患者から食べ物をもらったりするので、個室に入れているという事情もある。
 
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それで病院を出るが、何だか物凄い雨である。タクシーを呼んで名古屋駅へと言ったのだが
「お客さん、新幹線なら停まっていますよ」
と言われる。
 
「え〜!?」
 
何でも台風が接近していて名古屋直撃コースらしい。
「バスとかも運行を見合わせているみたいだから、どこか泊まった方がいいです」
 
それで貴司は何度か泊まったことのある栄(さかえ)のホテルに電話してみると幸いにもツインの部屋が取れた。
 
「運転手さん、栄の**ホテルへ」
「分かりました」
 

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それでホテルに行きチェックインするが、着替えが無いことに気付く。
 
「スーパーにでも行って買って来よう」
と言って出かける。雨もかなり強くなってきているが、ホテル近くのコンビニで傘を買い、それを差してスーパーまで行く。何とか着換えを買うことができた。
 
「お腹も空いたね。お総菜でも買っていく?」
「それよりどこかで一緒に食事したいな」
「だったら、さっきサイゼリヤの看板があったね」
「あ、サイゼリヤ好き」
 
それで買物の荷物を抱えたままサイゼリヤに行くことにした。お店は混んでいたものの、空席があるので、そちらに向かう。ところが途中で阿倍子が濡れた床に滑ったのか、転んでしまった。変な所を打ったようで阿倍子は立てないようである。
 
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「阿倍子さん、阿倍子さん、大丈夫?」
と声を掛けるが、何だか痛そうである。
 
その時、近くのテーブルで食事をしていた女子高生がこちらに来て、阿倍子を抱えて立たせてくれた。阿倍子もいったん立つと何とかなるようである。
 
「ここに座らせなよ」
と別の女子高生も席を立つので、最初に助けてくれた女子高生と貴司とで協力して何とか阿倍子を席に座らせた。
 
「ちょっと見せてください」
と言って、女子高生が阿倍子のスカートをめくり打った場所を見ている。
 
「ストッキング下げていいですか?」
「はい」
 
どうも内出血しているようである。別の女子高生がマキロンを持っていたので患部に掛けて取り敢えず消毒する。そして最初に席を立った女子高生はそこに自分の手を当てて、目を瞑った。
 
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「何か痛みが取れていく感じ」
と阿倍子が言う。
 
「この子はヒーリングの達人なんですよ」
と別の女子高生が言った。
 
「へー!」
 
それで実際5分もすると、阿倍子はだいぶ楽になったようである。
 
「嘘みたいに楽になりました」
と阿倍子。
 
「あとはふつうの湿布薬を貼っておけば明日の朝くらいまでには完全に痛みは取れますよ」
と女子高生が言う。
 
「助かりました。あ、私こういうものです」
と言って貴司は自分の名刺を彼女に渡した。
 
「あ、どうもです。名刺を切らしておりまして」
などと彼女は言っている。
 
「私たちは通りがかりの富山県の女子高生ということでいいかな」
と別の子が言った。
「まあ男子高校生じゃないよね」
「富山からいらしたんですか?」
「そちらは大阪からいらしたんですか?」
などと言っていた時、貴司が渡した名刺を覗き込んだ、女子高生の1人が
 
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「あ、あなた、バスケット日本代表の細川貴司選手ですよね?」
と訊いた。
 
「はい。でも社員選手なんで、バスケット選手という肩書きの名刺は作ってないんですよ」
と貴司は答える。
 
「サインもらえませんか?」
と女子高生が言うので、
「いいですよ」
と言って貴司もサインに応じ、彼女の手帳にサインを書いてあげた。
 

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青葉は実はこの日名古屋近くの町でコーラス部の大会があり、出てきていたところを貴司たちと同様、台風で足止めを食らい、高岡に戻れなくなって1泊することにしたのである。そして夕食を取りにサイゼリヤに来ていて貴司たちと遭遇した。
 
青葉は最初見た時からそのカップルの男性の方に見覚えがある気がしていたのだが、美津穂が「バスケット日本代表の細川貴司選手」と言ったことで、ハッとした。これこないだちー姉が写真を見せてくれた「10年付き合った彼氏」じゃん。
 
この人がちー姉の思い人か!そしてこの女性がその不妊治療をしている奥さんか。
 
こないだ、ちー姉は自分に奥さんの体外受精が成功するように手伝って欲しいと言った。それに対して、青葉は会ったことのない人をリモートでメンテすることはできないと言った。すると千里は「それまでに会えるようにする」と言った。
 
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そして、今自分は細川さんと奥さんに会っている。治療もしたので青葉の手はこの奥さんの固有データを覚えた。
 
これって偶然の遭遇じゃない訳??
 
チラット後ろに意識を持っていくと《姫様》が楽しそうにしている。
 
要するに、このような遭遇が起きることをちー姉は予測していたから、あの時「会えるようにする」と言ったのか。ちー姉って予定調和が凄すぎるよ!
 

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2014年9月27日から10月5日までトルコのアンカラで行われた女子の世界選手権。
 
日本はグループAで、ブラジル・チェコ・スペインと同じ組であったが、この予選リーグで日本は全敗。予選敗退という悲惨な成績に終わった。U20アジア選手権とぶつかり選手を分割した2010年の大会でも10位だったのに。
 
あの時活躍した高梁王子は今回召集されていない。
 
今年の日本女子代表チームはAチーム・Bチームともに不本意な結果となった。
 

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2014年10月5日および11日に千葉県バスケット秋季選手権(総合予選)で、ローキューツは優勝して、関東総合へ駒を進めた。
 

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娘たちの卵(22)

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