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■娘たちの卵(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-12-09
 
青葉が千葉市内に建立した玉依姫神社の御札授与所は、最初は土日だけ開けるつもりだったのが、夏休みは平日でも参拝客が多く、取り敢えず夏休み中は毎日開けないかという話になった。
 
しかし毎日開けるとL神社では人手が足りないので、結局フェニックストラインで縁起物の販売をすることにし、そのついでに御札などを求められた時もそちらの販売員が「神社の嘱託」として対応することにした。
 
ここで販売する縁起物としては祠の前に置いた招き猫と同じ常滑焼工房の招き猫、千里がだるまを買った高崎のだるま製造元のだるま(量産品)、それに招き猫のストラップである。これも常滑焼の製造元さんに相談したら「いいよ。作ってあげるよ」と言われてひじょうに品のあるミニ招き猫ができあがった。これらの縁起物には、フェニックストラインのロゴ(炎鳥)と
 
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《千葉市花丘玉依姫神社/監修:千葉市L神社》
 
と書かれたシールを貼付または添付することで、L神社と合意した。これらは8月の上旬から販売されることになった。
 
(翌年にはこれにシーサーも加わることになる)
 

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そしてこの販売員として、千里は暇そうにしていた40 minutes(元Rocutes/晩餐館)の後藤真知を雇うことにしたのである。
 
彼女はあまり女らしくない性格だし、空気を読むのが苦手な面もあって、過去に何度か短期間仕事に就いても人間関係に疲れて辞めてしまっていたようである。それで
 
「ひとりで勤務できるのなら問題無い。やるやる」
 
と彼女は張り切っていた。
 
なお土日はL神社の巫女さんも来てくれるので2人勤務になるが、短期間なので大きな問題は無いようである。
 
彼女は通勤用にスズキのGSR250Sを衝動買い!して、江戸川区の自宅から通勤してくることにした。
 
要するにこの神社が交通機関から見放された場所にあるので、車かバイクでもないと通勤不能なのである。更に真知の場合自宅から最寄り駅まで20分歩く必要がある。
 
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「10回払いで買っちゃったんですけど、10ヶ月以上お仕事ありますよね?」
「うん。最低1年は続けるよ」
と千里は笑顔で言った。
 
通勤費(ガソリン代+高速代)は全支給するので高速を通って30分ほどである。千里は《げんちゃん》に頼んで、道路側の物置を少し拡張してGSR250Sを置けるように改造してもらった。
 
辛島さんは「女性ひとりで勤務していて変な客とか来たら」と心配したのだが、実際に真知を引き合わせると「杞憂だった」と言った。
 
身長178cm 握力50kg(公称)の彼女を襲おうと思う男はそうそう居ないだろう。
 
「もし襲われたら相手の睾丸握り潰してやりますよ」
などと彼女は言っていた。実際彼女はスティール缶を握りつぶしてしまうので本当は握力60kgくらいあるのではという気がする。
 
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それに万一の時はたぶん《姫様》が助けてくれるんじゃないかな?と千里は思った。真知は《姫様》にかなり気に入られたようなのである。
 
もっとも、彼女が毎日ここに詰めてくれるようになった後、テレビのロケに来た谷崎潤子は
「美人男の娘巫女さんがいると聞いてやってきたのですが」
などと言っていた!
 
真知は巫女ではないので、巫女さん同様の衣裳ではあるが緋袴ではなく松葉色の袴を穿いてもらうことにしていたのだが、秋に伊勢の神宮で研修を受けてきて、L神社の巫女さんとしても認定され、秋以降は緋袴を穿くようになった。
 
(伊勢に行った時「あのぉ、男性の巫女さんは困るんですけど」と言われたらしい!)
 

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「ところでお客さんが居ない時間帯は暇じゃない?」
と千里は彼女に訊いた。
 
「ああ。ゲームやったり、あるいはドリブル練習とかしてるから大丈夫ですよ。ボール1個、倉庫に置いてるし」
「だったらバスケットのゴール設置してあげようか?」
「あ、嬉しいかも」
 
それでスポーツ用品店で壁に取り付けるタイプのバスケットゴールを買って持って行ったのだが・・・。
 
「天井が低い」
と千里は呟いた。
 
「ユニットハウスだし」
と《りくちゃん》が言う。
 
「これ天井の高さどのくらい?」
「2.5mくらいじゃない?」
と《せいちゃん》
 
(実際に《たいちゃん》と《りくちゃん》で計測してみたら258cmあった)
 
「バスケのゴールって3メートルくらいだっけ?」
「10フィート。メートル法で言えば3.048m」
と《こうちゃん》
 
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「足りないじゃん」
「床を掘ろうか?」
と《こうちゃん》が言う。
 
「できる?」
「一晩でやっちゃるよ」
「じゃよろしく〜」
「OK。青龍、玄武、やるぞ」
「俺たちも手伝うのかい!?」
 

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3人はそれで何だか議論しながら設計図を引いていたようだったが、千里に尋ねた。
 
「あのさ。倉庫の床を掘っても狭いじゃん。社務所の下を掘ってもいい?」
「社務所が使えなくなるじゃん」
「社務所の床はちゃんと使える状態で、その下にバスケできるだけの空間を作っちゃう」
「社務所がちゃんと使えるならいいよ」
「よし、これで行こう」
 
3人は地下室の壁や天井にするための鉄筋コンクリートの枠を別の場所で2日掛けて作ったようである。いわばプレキャスト・コンクリートである。それができた所で、夜中に社務所と倉庫を“ちょいとのけて”、その下に深さ7mもの空隙を作ってしまった。そして漏水処理用の設備も作り込んだ上で、別途作っていたコンクリート・パネルを床・壁に填め込んでボルトで固定する。サービスで小型のエレベータまで組み込む。最後に天井のコンクリート・パネルを乗せてまた固定し、その上に社務所の建物を再度乗せたのである。
 
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社務所と地下室の行き来は小型エレベータを使うか、40段の階段を昇り降りするかである。この階段の上端は参拝客からは見えないように衝立で隠しておく。
 
かなり大規模な工事だったはずだが、彼らは(事前にコンクリートパネル作りなどの準備をしていたとはいえ)これを1晩でやってしまったのである。
 
《こうちゃん》によると『山を崩したり川を堰き止めたりするほどではないけど』楽しかったらしい。それを聞いて千里はこの子たちにも娯楽が必要なんだなと思った。もっとも《げんちゃん》と《せいちゃん》はその後丸2日寝ていたようである。
 
なお最初はコンクリート剥き出しだったが、これじゃ危ないよと千里が言って壁と天井には防音板、床にはフローリングを貼り付けてもらったが、接着剤のシンナーの臭いが抜けるのにヒーター・扇風機・換気扇を掛けっ放しにして、さすがに一週間掛かった。
 
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なお、地下室はどうしても周囲の土から漏れ出してくる水分があるし、雨が降ったら大量の水が出るので、ポンプで吸い上げてタンクに貯め、雨水を集めたものと一緒にトイレの洗浄水として使用するようにした。こういう工作は《せいちゃん》が得意である。
 
この地下室は1.5間×4間(2.7m×7.2m)で、床から天井まで7mあり、バックボードの上に3mほどの余裕がある。このバックボードを《せいちゃん》はリモコンで回転できるように改造したので、斜めや横からゴールに迫る時の練習もできる。真知は完成した地下練習施設!?を見て
 
「すごーい!秘密基地みたい!」
 
と言って面白がり、ここでたくさん練習をしていたようである。なお、ここに居ると社務所に人が来ても気付かないケースも考えられたので、敷地内または駐車場に人が来たら通知音が鳴ってモニターにも表示されるように《せいちゃん》が工作してくれた。それで人が来たら小型エレベータで社務所内まで上がり、ワンピース型!のかぶるだけで済む巫女衣裳を着てにこやかに応対するのである。
 
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「だけど人間に頼んだら数百万円掛かることをしてもらったし、何か御礼しなくていい?」
 
と千里が訊くと、《こうちゃん》が言った。
 
「だったらさ、市川ドラゴンズの連中にアパート用意してやってくんない?」
「そんなの御礼でなくても言えばいつでも用意してあげたのに。今までどうしてたの?」
 
「だいたいみんなあの界隈の山の中で洞窟とか見つけて過ごしていたんだけど、なんか山中で工事やってんだよ」
「ああ。たくさんトラックが出入りしてたね。何作ってるんだろ?」
「ゴルフ場か、メガソーラーか知らないけど工事の音がうるさい。実は工事の発破で崩れてしまった洞窟もあって」
「大丈夫だった?」
「平気平気。仕返しにトラック5台壊しただけ」
「それ人は死んでないよね?」
「ああ。それは大丈夫。俺たちは抑制的だぜ」
 
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「じゃ、何か適当な土地を探さないとね」
「実は探してある」
「へー」
「見てくれる?」
「OKOK」
 

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千里は新幹線で姫路まで行き、実際に市川町内のアパート候補地というのを見に行った。
 
「既にアパート建ってるじゃん」
「素敵だろ?」
「餌食べ放題だね」
「うん。普通の人間は入居出来ない」
 
「じゃ不動産屋さんに連れてって」
「OK」
 
それで千里は市川町内の不動産屋さんに行き、そのボロアパートを土地ごと現金500万円で買い取った(実際土地だけの値段)。
 
不動産屋さんは甘地駅とかイオンとかでよく千里を見掛けているようで、笑顔で取引に応じてくれた。
 
「崩して家でも建てられます?」
と訊いたが
「ボロアパートでもいいからすぐ入居したいと言っている知人がいるので、その人たちに住んでもらいます。時期を見て建て替えるかも」
 
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「そちら会社か何かやっておられるんですか?いつもご主人と仲が良さそうと思って見てますよ。ただ、あそこ、最後の住人が出てから3年くらい無人だったんですよ。言わずに売って後から問題になるとまずいから言いますけど、幽霊が出るという噂で」
 
「入居するのが山伏の集団なので、多分あっという間に幽霊は居なくなります」
「おお!それは凄い!」
 

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貴司たちは8月4日から6日まで合宿を続け、8月7日朝に羽田から台湾に向けて出発したが、千里はこれを空港で見送った。
 
羽田8:50-11:30松山
 
この日に、女子代表の最終的なAチーム・Bチームのメンバーも発表されたが、今回はどちらにも海外のメンバー(羽良口・高梁・村山)が1人も入っていない。大丈夫かなあと千里は不安を感じた。
 
男子が龍良無しでは苦しいのと同様、日本も高梁王子無しではかなり厳しい。
 
バスケット協会は6月に麻生太郎が会長を辞任した後、NBLのトヨタ自動車出身の人が会長に就任し、bj側とリーグ統一に向けて話し合いをしているようだったが、話し合いは空転している雰囲気だったし、そもそも会合が成立しない事態も起きていた。
 
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FIBAが指定している回答期限は10月末、あと3ヶ月しか無い。
 

千葉県八千代市で行われているインターハイ。
 
千里は結局N高校のチームにほぼ付き添い、千城台の体育館で、たくさん福井英美との手合わせもした。結局この期間は千里はスペインの方はお休みにさせてもらい、貴司とデート(精液採取)した8月3日以外はずっとチームに付いていた。
 
旭川N高校は1回戦・2回戦・3回戦と快勝していったが、8月5日の準々決勝で愛知J学園とぶつかり、接戦を演じたものの3点差で敗北した。
 
しかし最終的に福井英美はこの大会のリバウンド女王に輝いた。得点でも2位という大活躍で、いきなり全国区の選手になった。
 
そして英美はU-18日本代表候補に緊急追加招集されることになった。8月25日からU-18第2次合宿のフランス遠征が控えているので、すぐにパスポートを作ってくれと言われ、お母さんに電話して必要な書類を揃えてもらうように言っていた。
 
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