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■娘たちの卵(2)

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7月20日、龍虎は、彩佳・宏恵・桐絵の3人に付き添われて関東予選に出て行った。
 
その時点で各ブロックの予選を勝ち抜いた17名の合格者が決まっている。
 
予選は一般公開されていないのだが、出場者1人につき3人まで付き添いができるので、その枠を利用する。同じ場所で東京地区予選、関東地区予選が続けておこなわれ、東京地区予選も座席に空きがあれば入れるということだったが、龍虎たちがわりと早く行ったので、全員入ることができた。
 
ステージ上に審査員が並んでいる。立川ピアノ、日野ソナタ、秋風コスモス、ロックシンガーの堂本正登、漫画家の酒元ミル九、シックスティーンの編集長、§§プロ社長、という紹介があった。酒元ミル九は昨年から誠英社の少年雑誌に掲載され始めた作品が中高生男子に大人気となっている。まだ19歳の若い作家である。23歳の秋風コスモスを入れていることなどを見ても、若い感覚を取り入れようとしているのだろう。
 
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各審査員が何点を付けたか、そもそも合計何点だったかも非公開である。公開すると、厳しい点を付けた人が恨まれるかも知れないし、正直な採点をしにくいからだろうと彩佳は思った。
 

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まずは東京予選が始まるが、すっごい可愛い子ばかりである。
 
「すげー!」
「ハイレベル!」
といった声を龍虎たちはあげていた。
 
彩佳は、音を外す子がひとりもいないのが凄いと思った。本当にちゃんと歌える子を採ろうとしているようだ。それなら龍虎はかなり有利だぞと思う。
 
「こんなに可愛いくて歌の上手い子ばかりなら、ボクは無理っぽい気がする」
と龍虎は言うが
「自信持ちなよ。龍も充分可愛いし、歌はこれまで見た範囲では龍よりうまい子はいなかったよ」
「そうだっけ?」
 
と言ってから龍虎はふと言った。
 
「でも東京予選に出てきたの、女の子ばかりで男の子がいなかったね」
 
彩佳たちは素早く視線を交わす。
 
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「男子でうまい子がいなかったのかもね」
「なるほどー」
 

東京地区予選の合格者4人が発表され、全員退場した後、観客もいったん入れ替えられてから関東予選が始まる。
 
参加者は12名である。関東7県+長野から17名以上は合格した人がいたはず(彩佳が埼玉3位だったので)だが、自分も含めて5人以上が親の同意書をもらえなかったのだろうと彩佳は思った。この中から3名ほどが本選に進む権利を得ることになる。
 
課題は3分間の歌唱と1分間の自己アピールである。二次審査の時は予め指定されていた20曲の中から1曲その場で指定されて歌うというのだったが、今回は各自3曲を伴奏音源付きで用意しておき、その場で3曲の中の1曲を指定されて歌うことになっている。龍虎は彩佳の勧めで
 
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ローズ+リリー『夜宴』
遠上笑美子『魔法のマーマレード』
しまうらら『ギター・プレイヤー』
 
を準備することにし、伴奏音源については彩佳が川南に
「誰かこういうの作れる人知りませんか?」
と訊いたら
「あ、それなら専門家がいるから任せて」
と言って、数日で作ってきてくれた。龍虎はその音源を聴いて
 
「すごーい!かっこいい!」
と思い、その音源を流しながらたくさん練習して、今日の本番に臨んだ。
 

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龍虎は12番の番号札をもらった。
 
1番の子から順にパフォーマンスをしていくが、伴奏音源に関しては、ピアノあるいはエレクトーンのようなもので演奏したものを使っている子と、CDから切り出したと思われる音源を使っている子がいた。今回は二次審査と違って、途中で審査を打ち切ることはない。歌唱と自己アピールを全員最後までやらせる。
 
11人のパフォーマンスが終わり、龍虎の番となる。
 
「12番、田代龍虎です。よろしくお願いします」
と挨拶すると
「では、しまうららさんの『ギター・プレイヤー』を歌って下さい」
と指定される。
 
龍虎が係の人に伴奏音源を入れたCDを渡すが、その間に彩佳が龍虎の所に走り寄り、愛用のギター Yamaha LS56 を渡す。
 
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審査員たちが「おぉ」と声を挙げて笑顔になった。
 
それで龍虎は伴奏音源が流れる中、実際にギターをピックで弾きながら『ギター・プレイヤー』を歌った。3分間あるので特徴的なギターソロも生で演奏する。そこだけで思わず会場から拍手が来る。
 
伴奏音源は2:50にまとめられているので、そこでジャン!というギターの音とともに歌唱を終了する。ストップウォッチを持っていたスタッフが、その数字を審査員たちに見せている。感心している風の審査員が多い。
 
実は伴奏がちゃんと3分以内に納められている参加者は少なかったのである。時間オーバーして注意されたり、短すぎたりする例が続出していた。
 

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自己アピールの時間となる。
 
龍虎はギターを彩佳に渡すと、いきなりバク転をした。
 
審査員たちがどよめく。
 
「自己アピールではまず自分に注目を集めろ、と知り合いのお姉さん(川南)から言われたので、バク転をしてみました」
 
と龍虎は言った。
 
「私は背も低いし、腕力とかも無いですけど、歌とお芝居がとっても好きです。もしタレントさんになれたら、歌って踊れるアーティストになりたいと思います。今毎週ピアノとヴァイオリンにバレエを習っています。ピアノは昨年の関東**コンテストで3位に入りました。ヴァイオリンはスズキのメソードを高等部まで終了しています。バレエでは眠れる森の美女の青い鳥とフロリナ姫、くるみ割り人形の、スペイン・アラビア・中国、更に金平糖の精とかも踊りました。そういった力を基礎として、実力のある歌手・俳優になれたらと思います」
 
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龍虎のメッセージは出てきたところから0:59で終了した。これもストップウォッチで測っていた人が、それを審査員に見せていたが、みんな驚いていたようである。
 
これは彩佳たちにストップウォッチで計測されて何度も練習し、文章の量も調整した結果である。ただ0:56で終わるつもりが3秒長くなってしまった。無論その程度の誤差が出ても1分をオーバーしないように0:56でまとめていた。
 
「ありがとうございました。席でお待ち下さい」
と進行係の人に言われた。
 

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審査員たちがいったん別室に入るが、1分ほどで出てきた。ほとんど議論が無かったことをうかがわせる。
 
「合格者は12番・田代龍虎さん、10番・****さん、7番・****さん。以上3名です」
 
と読み上げられると、彩佳たちが「やったぁ!」と叫んだ。
 

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14時から、全国の合格者24名のフロック予選の時の歌唱がビデオで披露された後、面接が行われる。龍虎たちは会場近くのマクドナルドでお昼を食べてから戻ってきたが、これは本当に意思再確認が中心なので、1人5分ほどの短いものということであった。
 
龍虎は最初に名前を呼ばれた。
 
「本選に参加しますか?」
「参加します」
「本選で優勝したら、うちの事務所と契約しますか?」
「します」
 
質疑は実質それだけで終わってしまった!
 
「ギターもうまかったね。だいぶ練習した?」
「はい。この曲は発表された時から『かっこいい!』と思ったので、たくさん練習していました」
「でも凄くいいギターを持って来たね。お父さんか誰かの?」
と訊かれて、龍虎は突然涙があふれてきたので、面接者(紅川社長)が驚く。
 
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「どうしたの?」
「済みません。取り乱して。実は父は私が小さい頃亡くなっていて、あのギターは父の友人だった人からプレゼントされたものなんです」
 
「そうだったの!苦労してるね。あ、それで君の保護者欄の名前・・・」
「実は私は里子なんですよ。田代龍虎は通称で、戸籍上は長野龍虎なんです」
「ああ、そういうこと」
 
この時紅川は《長野支香》という名前を見て、どこかで見たような名前だなとは思ったものの、まさかワンティスの長野支香だとは思いも寄らなかった。
 
「保護者欄に名前を書いてくださった叔母は仕事が忙しくて、出張とかも多いので、小学2年生の時から、私は今の両親のもとで暮らしているんです」
「ああ、それでかなぁ。君、凄くしっかりしていると思った」
 
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「ありがとうございます」
 
「そうそう。君が使用した伴奏音源もすごくよくできていたね」
「あれは古い知り合いのお姉さんが、そういうの作るのうまい人がいるから、と言ってちょうど3分以内に収まるように作ってくださったんですよ」
 
「ああ、それで。セミプロか何かなのかな」
「そのあたりはよく分かりません」
「いや、時間も余韻を入れて3分以内になるように作られていたし、出来がプロ級と思ったからね」
 
「何か人脈の多い人みたいです」
「へー。それは凄いね」
 
そんな話をしていたので、龍虎は結局10分くらい面談していた。
 
龍虎はそれで解放されてたくさんの記念品をもらい、彩佳たちと一緒に帰ったのだが、龍虎の後は、ほとんどの子が本当に5分くらいで終わったようである。7〜8分掛かったのが、九州代表の川内峰花と北海道代表の柴田邦江だった。主宰者側としては龍虎を含めてこの3人が大本命である。
 
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7月22日(火).
 
アジアカップから帰国した貴司を迎えて常総ラボで週末を過ごした後、千里は22日の(日本時間)夕方、東京の帝国ホテルに行った。この日は、冬子と政子、千里と蓮菜、和泉・美空・小風、それに★★レコードの氷川さんが会食することになっていたのである。
 
先日政子が「帝国ホテルのディナー、私も食べたかった!」と言ったので、冬子の提案で、蓮菜が参加出来る日を選んで設定した。それに「葵照子・醍醐春海ペアにはお世話になっているし、一緒に」と和泉が言ってKARIONのメンバーも加わった。
 
ちなみに費用は★★レコード持ちである。
 
でなければ政子と美空という最恐ペアを帝国ホテルなどには連れて行けない!
 

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千里と蓮菜はDRKの活動のことから説明を始め、Lucky Blossomのこと、雨宮先生との関わりなどを話した。それに冬子が情報を補足していく。
 
・DRK (Dawn River Kittens) に千里・蓮菜・美空が所属していた。
・∞∞プロの谷津貞子がDRKをスカウトしようとするが、勉強が忙しいので、私たちよりいいバンドを見つけられる場所を教えますと千里が言って占い、谷津はラッキーブロッサムを見つける。
 
・そのフロントマンが鮎川ゆま。
・ラッキーブロッサムの編成のことで千里が呼ばれ、ゆまの先生である雨宮三森がその場にいたことから、雨宮と千里の関わりができた。
・その縁で千里は雨宮からの紹介で作曲の仕事をすることになる。
・雨宮が「醍醐」「葵」という名前を付けた(照子・春海は自分たちで名乗る)。
・DRKの中で結果的に1本釣りされたのが美空で、KARIONの前身メテオーナに参加した。
・DRKの大半のメンバーが高校を卒業した後、北海道・東京・大阪で各地域に行ったメンバーがDRKの後継バンドを結成したが、その中で唯一生き残っているのがゴールデンシックス。
 
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・鮎川ゆまと冬子(ケイ)は、ドリームボーイズのダンサー仲間
・鮎川ゆまと近藤七星は大学の同級生
・千里(醍醐春海)の妹が青葉(大宮万葉)
・青葉は鮎川ゆまにサックスを習っている。
・千里、鮎川ゆま、ケイは皆、雨宮先生の弟子
 
「ゆまさんって、色々な人とつながっているんですね」
「今頃はくしゃみしてますね」
 
「結果的にはKARIONもDRKの流れを汲むユニットと言える訳か」
「メンバーだった美空ちゃんが参加していて、メンバーだった葵・醍醐ペアの曲をしばしば歌っているから、充分DRKの遺伝子を持っている」
 
「メテオーナの元メンバー2人がチェリーツインに参加してるけど、このユニットには、蔵田先生、雨宮先生、それに私が関わっている」
と千里。
 
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「その2人が抜けた後、メテオーナは千代紙と合体してKARIONになった」
「ホントに複雑に絡み合っている」
 

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話は盛り上がり、美空と政子の食も進み、ふたりの食べっぷりに蓮菜は驚くというより、呆れていた。
 
「美空ちゃんや政子さんにディナーをおごる時は、その前にラーメンでも食べさせておこう」
と蓮菜は言ったが
 
「あ、ここに来る前にまぁりんとふたりでラーメン3杯ずつ食べてきたよ」
と美空が言ったのには、もう絶句していた。
 

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娘たちの卵(2)

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