広告:俺、オンナのコになっちゃった!?-3)-KATTS-DISTANCE-ebook
[携帯Top] [文字サイズ]

■娘たちの卵(19)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

そんなことを話していたら、防音室内でフルートの練習をしていた政子に電話が掛かってきたようである。楽しそうに話していたが、やがて防音室から出てくる。
 
「雨宮先生、千里、いらっしゃーい。冬、私出かけてくる」
「今から出かけるの?」
「美空がさ一緒にジンギスカン食べに行かないかって」
「ああ。美空と一緒か」
「美空のお姉さんが車で迎えに来てくれるらしい」
「月夜さんが一緒なら安心だ」
 
「いいんじゃない?行っておいでよ。新宿かどこか?」
「札幌だって」
「北海道の?飛行機あったっけ?」
「21時が最終らしい」
 
今から行けばぎりぎり間に合うだろう。
 
「じゃ泊まりになるね?」
「うん。明日の最終便で帰ってくる」
「了解〜」
 
↓ ↑ Bottom Top


それで政子はまもなく迎えに来た美空たちと一緒に出かけて行った。それを見送って雨宮先生が言った。
 
「ケイ、醍醐、私たちも何か食べに出かけない?」
「それもいいですね。何食べますか?」
「復活した宮崎牛のステーキを食べに」
 
「それって、まさか宮崎に行くんじゃないですよね?」
「もちろん宮崎に行く」
「でも飛行機ありましたっけ?」
 
「宮崎行きは19:05が最終です」
と千里が携帯の時刻表を見ながら言う。
 
「福岡行きは?」
「20:00です。これも今からでは間に合いません」
「新幹線は?」
「博多行きは18:50が最終です」
 
「明日にしますか?」
と冬子が訊いたのだが、雨宮先生は言った。
 
「よし。車で行こう」
「え〜〜〜!?」
 
↓ ↑ Bottom Top

「でも先生、ウィスキー飲んでおられる」
「そうそう。私はアルコールが入っているから運転出来ない。だから千里運転して」
 
千里は大きく息をついて答えた。
「分かりました」
 
名古屋往復のあと一晩掛けて成田から大阪までドライブして、高岡まで更に移動したかと思ったら、今度は東京から宮崎かい!今日は何て日だ?千里は《こうちゃん》を見たが、彼は平気そうでOKサインをしている。彼は5日くらいは不眠不休で運転出来ると言っていたもんなあと思う。
 

↓ ↑ Bottom Top

雨宮先生は
「あいつらも連れて行こう」
と言って、上島に電話した。
「あ、今そちらに来てるんだ?だったらちょうどいい。一緒に東京駅まで来てよ」
などと雨宮先生は言っている。
 
一方冬子は八重洲口のトヨレンに電話してエスティマ・ハイブリッドを借りる予約をした。それで上島たちにも東京駅八重洲口のトヨレンまで来てもらうことにした。
 
冬子・千里・雨宮の3人は恵比寿駅から山手線で東京駅に移動した。上島と龍虎も1時間ほどでやってくる。今日は偶然上島の所で打合せをしていたらしい。龍虎は千里を見ると驚いたような表情をした。千里は笑顔で手を振り、運転席に座る。
 
冬子が助手席、上島と龍虎が2列目、雨宮先生が3列目に乗って、車は出発した。カーナビに設定した目的地は雨宮先生のリクエストで鹿児島神宮(別名正八幡)である。
 
↓ ↑ Bottom Top

「龍ちゃん、ご無沙汰」
と運転しながら千里が龍虎に言う。
 
「こんばんは、千里さん。上島のおじさんから何か作曲家関係の集まりと聞いたのですが、千里さんは誰かの関係者ですか?」
 
「うん。私は醍醐春海とか鴨乃清見の名前で作曲しているんだよ」
と千里が言うと
「え〜〜〜!? 鴨乃清見って千里さんだったんですか!?」
と龍虎は驚いている。
 
3列目に座っている雨宮先生が助手席の冬子に向かって言った
 
「まあそういう訳で、ケイ、この子が高岡と夕香の遺児、長野龍虎だよ」
 
この紹介に冬子は大いに混乱したようである。
 
「高岡さんと夕香さんの子供って、今度デビューする息子さんだけじゃなくて、娘さんもいたんですか?」
 
↓ ↑ Bottom Top

「違う違う。この子がその息子だよ」
「ちょっと待ってください。女の子ですよね?」
「男の子だよ」
「え〜〜〜!?」
 
「まあ、この子がトイレの場所を訊いたら、100人中100人が女子トイレの場所を教えるね」
と千里は言っている。
 
「ごめーん。てっきり女の子だと思っちゃった」
と冬子。
 
「そういう訳で、龍虎、これがローズ+リリーのケイだよ」
と上島。
 
「ケイさん、初めまして。長野龍虎と申します。よろしくお願いします」
と龍虎はきちんと挨拶して頭を下げた。
 
「ローズ+リリーのケイです。龍虎ちゃん、こちらこそよろしくお願いします」
と冬子も言った。
 
「芸名とかは考えておられるんですか?」
「それはまだ。名前は僕が付けてあげてと紅川さんからはこちらに投げられているんだけどね」
と上島。
 
↓ ↑ Bottom Top


そういう訳で5人を乗せたエスティマは深夜の東名を走っていった。少しお腹が空いたという話になり、足柄SAでトイレ休憩するとともに、千里が適当に食糧を買ってきた。ここまで千里がずっと運転していたので冬子が
「少し代わろうか?」
と言ったものの
「平気平気。冬こそアルバム制作で疲れてるでしょ?寝てなよ」
と千里は言った。
 
「ところで質問です」
と雨宮先生が言った。
 
「今休憩した時、みんな男子トイレに入った?女子トイレに入った?」
「へ?」
 
「醍醐は?」「もちろん女子トイレですけど」
「ケイは?」「同じく女子トイレです」
「雷ちゃんは?」「男子トイレだけど」
「じゃ龍虎は?」「えっと・・・」
 
「ん?」
 
↓ ↑ Bottom Top

見ると龍虎はまた顔を真っ赤にしている。
 
「いや、その男子トイレに入ろうとしたんですけど、『君、こちら違う』と言われて追い出されちゃって」
「あぁ・・・・」
「で、どうした?」
「ごめんなさい。女子トイレを使いました」
 
と言って龍虎は俯いている。
 
「まあ、それは龍ちゃんが幼稚園の頃からの日常だね」
と言って千里は笑っていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

夜も遅いので、みんなすぐに寝てしまう。全員寝た所で千里も《こうちゃん》に運転を任せて意識を眠らせた。ちなみにこの頃《きーちゃん》は千里のインプレッサを運転して、富山県から東京に向けて走っていた。
 
千里が目覚めたのはもう朝である。雨宮先生が日出直前に鹿児島神宮に到着したいというので、途中の溝辺PAで休憩、時間調整して、その後は冬子が
「運転代わるよ。千里は少しでも寝てて」
と言って運転席に就き、5:51に鹿児島神宮の駐車場に入った。
 
みんなで拝殿まで歩いて行き、5:57の日出と同時にお参りした。
 
雨宮先生は、今回の旅は実は7年前の宿題を果たしに来たものだと説明した。7年前に大西典香の『Blue Island』を制作した時に“霧島神宮”に行ったつもりが、本当は霧島神宮は5つに別れているので、他の4つにも行っておきたかったのだという。
 
↓ ↑ Bottom Top

「で僕と龍虎が同行した理由は」
と上島が訊くが、
「ついでだね」
と雨宮先生は言った。
 

鹿児島神宮の後は、その霧島神宮に行くが、ここで一行は千里の知り合いの沙耶という女性と遭遇する。千里は彼女を「この人が霧島大神様です」と紹介したが、冬子たちは理解できないようであった。女性神職さんか何かと思ったようである。彼女は全員を昇殿させて祈祷をしてくれた上で、千里に笛の演奏を聞かせてと言った。それで千里がフルートで瀧廉太郎の『花』を吹くと、龍虎がそれに合わせて歌を歌った。その美しい歌声に、龍虎の歌を初めて聞いた冬子や雨宮も、そして沙耶も感動している様子であった。
 
「素敵な演奏だった」
 
「きれいだったね。ケイさんもそちらの美少女中学生も歌声が素敵」
と沙耶は言っている。
 
↓ ↑ Bottom Top

「そちらも歌手さんですか?」
と沙耶が尋ねる。
 
「まだデビュー前なんだよ。来年の春くらいにデビュー予定」
「名前は?」
「まだ芸名は決まってないけど、本名は田代龍虎ちゃんという子」
 
「へー。リュウコか。そのまま芸名でもいい気がする。でもこれだけ可愛いくて歌も上手ければ売れるだろうね。国民的美少女って感じだよ」
と沙耶が言う。
 

↓ ↑ Bottom Top

「いや、この子、女の子に見えるけど、男の子だから」
 
「うっそー!?」
と沙耶は驚いている。
 
「女の子になりたい男の子?」
「いや、普通の男の子。別に女の子になりたくはないらしい」
 
「そうなの?あんた男になるにはもったいないよ。私が女の子に変えてあげようか?ちゃんと赤ちゃんも産めるようにしてあげるよ」
「ボク、別に女の子にはなりたくないですー」
「遠慮しなくてもいいのに」
と沙耶が言っているので、千里は
「よけいな親切はしないように」
と言っておいた。
 
「あれ?あんた小さい頃に大きな病気したでしょ?」
と沙耶は言った。
 
「はい。幼稚園から小学1年生に掛けて2年くらい入院していたんです。その入院中に千里さんと知り合ったんですよ」
と龍虎は答える。
 
↓ ↑ Bottom Top

「ふーん。。。。」
と言って沙耶は龍虎を見ていたが
 
「ちょっと貸して」
と言うと、龍虎の服をめくってお腹の所に手を当てた。
 
龍虎は突然女の人に直接触られて少しドキドキしているようだ。
 
「これでいいと思う」
と5分ほどした所で沙耶は言って手を放した。
 
「ありがとう」
と千里が言う。恐らく医師も見つけられないような微少な病変の素を治してくれたのだろう。それはひょっとすると40年後に龍虎の生命を奪うはずのものだったかも知れないと千里は思った。
 
「まあ特別サービス」
と沙耶。
 
「余計な親切はしなかった?」
と千里。
 
「してない、してない」
と沙耶は言ったが、何か怪しいなあと千里は思った。
 
↓ ↑ Bottom Top


霧島神宮の後は“御池(みいけ)”が美しい、霧島東神社(きりしまひがしじんじゃ)、狭野神社(さのじんじゃ)、霧島岑神社(きりしまみねじんじゃ)、東霧島神社(つまきりしまじんじゃ:読み方注意)とまわった。この5社が元々の“霧島神宮”の末裔なのである。そのあと山之口SAで休憩した。
 
ここでトイレに入ろうとした時、龍虎はまたトラブっている。
 
男子トイレに入ろうとして「あんた違う」と言われて、女子トイレに入るハメになっていた。それで雨宮先生から
 
「龍虎、あんた女装していた方が問題が小さい」
と言われ、スカートを穿かされることになる。
 
「ズボンでも女の子に見えていたけど、スカート穿いたら、誰も男の子とは思わない」
と冬子が感心するように言っていた。そして雨宮先生は
 
↓ ↑ Bottom Top

「あんた、この後は女子トイレを使いなさい。でないと揉め事多発」
と言っていた。
 

その後、青島に行って青島神社に参拝。更に鵜戸神宮まで行った。
 
拝殿でお参りしてから裏手に回ると「お乳岩」という所がある。雨宮先生が
 
「ここ、おっぱいが大きくなる岩よ。あんたたち触って行かない?」
と言ったが、
 
「私は今のサイズで充分なので」(冬子)
「これ以上大きくなると試合に差し支えるので」(千里)
「僕は胸を膨らませる必要はないから」(上島)
 
と言って誰も触らない。それで雨宮先生が
 
「龍虎は、触ってみない?」
と言ったら、
「はい」
と言って、触っている!
 
「やはり、あんたおっぱい大きくしたいのね?」
「え?この岩触ったらおっぱい大きくなるんですか?」
「あんた話聞いてなかったの?」
「どうしよう。おっぱい大きくなっちゃったら」
と言いつつも、龍虎は困ったような顔ではなく、期待するような顔をしているので冬子と上島が顔を見合わせていた。千里も雨宮先生も苦笑している。
 
↓ ↑ Bottom Top

絶対今のは話を聞いていたのに、聞いていなかった振りをして触っている!
 

↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 
娘たちの卵(19)

広告:チェンジH purple (TSコミックス)