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ふたりが一緒に部屋に戻ったので
「あれ?一緒だったんだっけ?」
と美那から言われる。
留実子は、女湯の中で遭遇したとバレたらまずいかなと思い
「いや出口で一緒になったんだよ」
と言うが、その後の話から、結局千里が女湯に入ったことはすぐバレてしまう。
「千里、女湯に入れるんだっけ?」
と美那が驚いたように言ったが、蓮菜は言った。
「みんな今更何言ってんのさ。修学旅行でも宿泊体験でも、千里はみんなと一緒に女湯に入ったじゃん」
「あれ〜〜?そういえば一緒に入った記憶がある」
と美那。
「確かに女湯の中で千里とおしゃべりしていた」
と恵香。
「何かそのあたり記憶が混乱してる人いるよねー」
と玖美子も言う。
「なぜ今までそんなこと忘れてたんだろう?」
と恵香・美那は不思議がった。
それでともかくも、この件に関しては、恵香と美那は記憶の封印が外れたのであった、
でも留実子は、修学旅行の女湯の中に千里いたっけ?と考えて、まだ封印が掛かったままであった!(留実子が他の子たちと離れた場所で入浴していたせいもあると思う)
7月26-27日(土日)は留萌最大の夏の祭典・るもい呑涛(どんとう)まつりが開かれた。青森の“ねぶた”に似た、多数のあんどん(行灯)が運行され、“ねぶた”同様、多数の“はねと”が踊る。
これに合わせて観光客も大勢来て賑わう中、千里たちは27日、模擬試験を受けた。
会場は、町中の賑わいを避け、市郊外にある留萌市立F中学校の校舎である。受験しているのは中学3年生が圧倒的で全体の7割くらい。1年生は全員1つの教室に収納された。ソフトボールや剣道で見知った顔もあり、会釈しあった。
基本的には中学3年生向けの問題なので、千里にはさっぱり分からない問題も多かったが、国語や英語は学年とあまり関係無いので結構解答できた。それに漢文は中国語として読めるし!!
「中国語として読める」というのは、蓮菜も言っていた。玖美子があんたたち凄い!と言っていたけど。
模擬試験が終わった後の7月28-31日(月〜木)、千里(R)と玖美子は、剣道の合宿を行った。2人だけでは、やりにくいので沙苗も参加させる。そして指導者役として、1月のN小合宿にも顔を出してくれたN小S中出身の女子大生・道田大海(ひろみ)さん(四段)を頼んだ。
道田さんには「交通費・宿泊費に加えて指導料に3万円でどうでしょうか?」と打診したのだが「指導料とか要らん」と言い、更に交通費も「どうせ実家に戻るし」と言って、結局、合宿所の使用料のみを千里と玖美子が負担する形で参加してくれた。道田さんは「タダで飯が食えるのは良い」などと言っていた。
1月のN小の合宿でも使用した新聞社の研修施設を使う。4人で1つ部屋を借りて泊まり込みで、朝から晩まで剣道漬けである。
朝はジョギングのあと素振り100回。その後、午前中は主として筋トレや足さばきの練習をする。お昼を食べた後、切り返しをして、面打ち・小手打ち・胴打ちの様々なパターンの基礎練習をする。
「剣道は基本が大事だから」
と道田さんは言い、千里たちも大いに同意した。
切り返しは、道田さんを含めて4人でローテーションして相手を変えながら練習したが、沙苗と初めて相対した道田さんは
「君強そう」
と言っていた。
午後3時にはおやつを食べて休憩する。そして午後の後半は実践的な試合形式の練習をした。これは道田さんは審判役で、千里・玖美子・沙苗の3人で“1本勝ち抜け”方式で対戦する。実力が近い3人だからできる練習形式である。
「こら。ちゃんと声を出せ」
「残心が残ってない。打った後も気を抜くな」
と道田さんの声が飛ぶ。
1本が決まったら道田さんが「面あり」とか言う代わりにベルを鳴らすので、それを合図に交替である。しかし3人で対戦していると、休む間もなく次の対戦をするから、なかなか体力を消費する練習形式であった。
「でも沙苗ちゃん強いね。新人戦ではこの子を大将にしていいんじゃない?」
「すみませーん。私、出場資格が無いので」
「何?実は20歳だとか?」
「しかし君たちは3すくみだな」
とも道田さんは言った。
「玖美子ちゃんは沙苗ちゃんに勝率がいい。沙苗ちゃんは千里ちゃんに勝率がいい。千里ちゃんは玖美子ちゃんに勝率がいい」
「だからこの勝ち抜け方式がうまく回るんですよねー」
と玖美子は言った。
「玖美子ちゃんはやはり基礎練習をもっとして筋力を鍛える必要がある。筋力が付いたらもっとスピードが付いて勝てる。沙苗ちゃんは精神的に脆いみたいで、やられそうになったらすぐ諦めてしまうから本当に決められてしまう。精神面を鍛えた方がいい」
と道田さんは、各々の弱点を見抜いて言った。
「これが玖美子ちゃんなら、最後の最後まで回避行動をするから相手の1本がきちんと決まらない」
「それは玖美子の強さなんですよね。打たれても1本にならない」
と千里も言う。
「千里は?」
「千里ちゃんは手抜きをしなければもっと勝てる」
「ああ、見抜いてますね」
と玖美子。
「相手の力量に合わせて対戦してる感じなんだよね。だから君は強い人の間で揉まれたら、本当に強くなるだろうね」
とも道田さんは言った。
「まあ道大会はいい練習場になるでしょうね」
と玖美子は言った。
練習は18時で切り上げ整理運動・お互いにマッサージ一(沙苗と千里が組み、玖美子は道田さんと)してから、19時頃食堂に行って夕食を取った。夕食は18-21時の間に食べに行けばよいことになっている。ご飯とお味噌汁のお代わりは自由なので、沙苗以外!はお代わりして食べた。
「ちゃんと食べないと、おっぱい大きくならないぞ」
などと沙苗は道田さんに言われて
「はい!」
と答えて少し恥ずかしがっていた。
食事が終わった後は4人でお風呂に行った。千里が沙苗の手を握ってあげていたので、沙苗も勇気を出してみんなと一緒に女湯で入浴した。
「玖美子ちゃんも千里ちゃんも、結構胸が発達してきている」
と道田さんが指摘するが、道田さんのバストはたぶんDカップくらいある。
「だからしっかりしたスポーツブラを着けてないと、動きが止められる感じになるんですよー」
「まあバストは液体だからな」
「あ、そう思います!」
そんな会話をしてると、沙苗は恥ずかしがって下を向いている。
「まあ沙苗ちゃんのバストは周回遅れのようだけど、こういうのは個人差があるから、きっと中学卒業までにはもっと大きくなるよ」
「はい!」
「実は私も中学時代はみんなから絶壁と言われてたんだよ」
と道田さんは言う。
「とてもそんな風には見えません」
と千里・玖美子。
「私の名前、大きな海と書いて“ひろみ”だからさ、字面(じづら)だけ見たら男名前にも見えるじゃん。それでよく『大海(たいかい)君は男の子だろ?男湯に行った方がいいよ』とか、友だちにからかわれていたよ」
などと、道田さんが言うと、沙苗はますます俯いてドキドキしたような顔をしている。
「まあお股に触れば、ちんちん付いてないから女というのは疑い無いですけどね」
などと行って玖美子は沙苗のお股に触った!
沙苗が思わず「きゃっ」と小さな声をあげるので、道田さんは
「可愛い!」
と言っていた。
実を言うと、今回の合宿で沙苗を“女湯デビュー”させるため、千里は合宿前の27日、沙苗の自宅に行って“入浴指導”をしたのである。
そもそも沙苗は“タック”を知らなかったので、まずこれを教えてあげた。ペニスを後に曲げた状態で陰嚢の皮膚で両側からペニスを包むようにし、中央を接着剤で留めて行くと、ペニスは接着した皮膚の下に隠れ、左右の皮膚を接着したものが陰裂に見えるので、ほんの10分ほどで、女性の股間のように見える状態に変化する。
この方法の最大のメリットは、それ以前から多くの人がしていた“潜望鏡”方式と違い、タックしたまま排尿ができるので、長時間、何日も継続してタックしたままにしておけることである。(但し血行を阻害し内臓を圧迫するのでよくないと医師は警告する)
「こんな画期的なちんちん隠しの方法があったなんて!(*10)」
と沙苗は感動していたが、お母さんも
「本当にもう手術しちゃったみたい」
と感心していた。
(*10) タックが女装者の間でわりと知られるようになったのは2002年にニフティの某フォーラムのホームページを利用して、やり方が写真付きで公開された頃からである。正確には写真はフォーラムのホームページ上にあったが、サイト自体は外部のサイトであった(そのフォーラムに協力してもらったと書かれていた)。
ただしそれ以前にも1998年頃に、医療用ホッチキス!でお股を綴じた写真を公開していた人もあった(物理的に縫ってるから痛いと思う)。幅広の絆創膏を使う方法、更にその進化形として演劇などで使う皮膚用接着剤を使う方法が知られるようになったのは、ちょうどこの物語の時期頃からである。
「これどのくらいもつの?」
「これはおしっこする度にどうしても弛むんだよ」
「ああ」
「おしっこの後はよくよく拭くことが大事。それでも1日に1回くらいは補修が必要。でも補修してれば1ヶ月程度は持つよ」
「すごーい」
「テープで留める方法もあるけど弱いし、ヌードになれない。接着剤がいいけど、これけっこう美しくまとめるのが難しいんだよ。たくさん練習した方がいい」
「練習する!」
と沙苗も言っていた。
「だけど去勢は済んでいたんだね」
「それ不思議なんだけど、気付いたら無くなってたんだよ」
「へー。そういうこともあるんだ?」
「今掛かっている病院の先生にはこっそり闇の手術を受けたんだろうと思われちゃったけどね」
「叱られた?」
「ううん。ただ『だったら君はもう後戻りはできないね』と言われた。後戻りするつもりはないけど」
「そのあたりの覚悟が曖昧なまま、身体の改造始めちゃう人は多いよね」
と言って、千里はそれ自分のことじゃん、と思った。女になる覚悟ができてないというのは、しょっちゅう蓮菜から指摘されている。
おっぱいを確認するが、沙苗は
「千里ちゃんからもらってる女性ホルモン剤のおかげで今バストがAAAカップくらいまで来た」
と言っていた。
「私ホルモン剤とかあげてたっけ?」
「いつもくれてるじゃん!」
「あれ〜?」
この手のできごとは、いつものことなので千里も気にしない!
今沙苗の家に来ているのは剣道部をしている千里R(Red)。でも沙苗に女性ホルモン剤(エストロモンとDB-10)を渡しているのは、実は千里G(Green)である。Gの存在は小春やミミ子も気付いていない。千里が3人も入り乱れていると、1人くらい余分に居ても分からない。
沙苗のバストを実測してみると、アンダー72cm トップ76cm だった。これならAAA75という感じである (AAAはトップとアンダーの差が5cm). 実際には沙苗は2サイズアップのブレストフォームを着けているので A75のブラジャーで合う。
「このブレストフォームは凄く精密だから、これでお風呂に入ってもバレないよ」
「そうかな」
「元々乳癌で乳房を切除した人が日常生活を送りやすくするために開発されたものだからね。違和感があったらまずいんだよ」
「そっかー」
「よし。これで銭湯に行こう」
と千里が言うと
「え〜〜?」
と沙苗は声を挙げた。
沙苗が市内の銭湯なら顔見知りの人に会うかもというので、お母さんに頼んで深川市まで車で運んでもらい、結局、スーパー銭湯にお母さんも含めて3人で入った。かなりビビっていたが、千里がずっと手を握ってあげていた。むろんスタッフさんから怪しまれたりすることも無かった。沙苗はむしろ小学生の頃は男湯に入ろうとして咎められたことが数回あると言っていた。
「咎められたから女湯に入ったのね?」
「えーっと・・・」
と言って、彼女は言葉を濁した。
しかしこの銭湯体験で、沙苗もだいぶ度胸が付いたようであった。
そして4日間の合宿で毎日女湯に入ったことから、沙苗も女湯は完全に平気になってしまうのである。
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女子中学生・夢見るセーラー服(20)