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■女子中学生・夢見るセーラー服(7)

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5月7日(水).
 
千里(千里R)と玖美子は午後が公休扱いになり、市民病院に行った。中体連から“健康診断”を受けてくれと言われて行ったのである。でも2人とも
 
「健康な“女性”であるかどうかの診断だよね〜」
 
などと言って出かけた。2人は4月26日の中体連留萌支庁剣道大会で女子の上位に入賞したので、性別確認検査の対象になったようである。ちなみに男子は特に性別確認検査はされないので、沙苗はこの検査は受けない!
 
病院に行くと、まずはトイレでおしっこを取って提出。検査室で体重・身長・トップバスト・アンダーバスト・ウェスト・ヒップを測られ血圧測定の上で採血された。
 
そのあとCTを撮りますと言われてCT室の前まで行ったら、そこにR中の木里さんと前田さんもいたので手を振る。彼女たちも同様の検査を受けに来たようである。
 
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「私、男だと言われたらどうしよう」
などと前田さんが言っている。
 
「前田さんなら、男になっても上位に食い込むと思うなあ」
と玖美子。
 
「私、男になっちゃったら村山さんと対決できなくなるから、万一男だと言われたら性転換手術受けよう」
などと木里さん。
 

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「昭和30年代頃は、女子選手として活躍していた人が『あんた男』と言われて女子選手としての資格を剥奪され、それまでの全ての成績・記録を抹消されるケースが多かったらしいですね」
 
「あの時代は戦争の影響もあるんですよ。ちょうど戦時中に生まれた人たちが昭和30年代にスポーツ選手として活躍する年齢になったんだけど、男の子だと兵隊に取られちゃうからというので、本当は男の子なのに、女の子として出生届を出したケースがけっこうあったんですよね」
 
「だったら本人も自分は本当は男だって分かってますよね」
「それを言い出せなかったんでしょうね。女として暮らしてきてるから」
「性別を変更するって大変だもん」
 
「でも中には完璧に無知だった人もいたみたいで、ある選手は大会前の健康診断で『生理はいつありましたか?』と訊かれて『生理って何ですか?』と聞き返して大騒動になったらしい」
 
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「さすがに今の時代は、たとえ男でも、20歳前後になって生理を知らない人は居ないでしょうね」
 
「昔はまともな性教育とか、してなかったから、そんな人もいたんでしょうね」
 

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千里たちはCT検査の後、婦人科医の診断を受けたが、今回は千里は体型の目視検査とお話だけで、内診台にまでは乗らなくて済んだ。千里Rは4/20に生理が来たばかりなので
「前回の生理は?」
という質問には
「4月20日の日曜日に来ました」
と答えることができた。
 
玖美子と前田さんも内診台には乗らなかったらしいが、木里さんは乗せられたということで、「恥ずかしかったぁ!」と言っていた。
 
全員「開封無効」の診断書をもらって病院を後にしたが、4人とも夏の大会でもちゃんと女子の部に出て来たので「あんたは男」という診断になった子は居なかったようである。
 
なお他に、C中の井上さんとF中の桜井さんもこの日に留萌市民病院で検査を受けたらしかったが、千里たちとは遭遇しなかった。
 
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5月8日(木)にS中1年生は実力テストが行われた。午前中に英語・社会・数学、午後に理科・国語が、変則時間割で実施された。
 
授業範囲から出題される中間期末と違って、実力テストは中学1年生程度の一般的な学力をチェックするものなので、授業だけで勉強している子より、塾や通信教育をしている子、本当に学力のある子が有利になる。
 
千里たち“勉強会”グループは1月以降、小学校の学習範囲をずっと復習してきていたので、みんなわりといい点数を取れた。学年全体での順位も各自に通知されるが、玖美子が1位、蓮菜が2位、田代君が3位で、勉強会グループがBEST3を独占した。小学校の時は最下位争いをしていた千里と恵香も、千里が80人中40位、恵香も43位で、2人とも物凄く成績を上げていることが分かる。
 
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更にこのグループは、外人の子たちといつも会話しているので、最低でも英語はペラペラに近く、その英語の点数の良さが総合点を押し上げていた。
 

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実力テストの翌日5月9日(金)には校内マラソン大会が開かれた。
 
道道1048号(留萌小平線:この道の先に神居岩公園がある)上に設定した折返点までを往復してくるコースで、男子は5km, 女子は3kmである。男子たちの中には
 
「今日だけ女子になりたい」
などと言っている子たちがいた。
 
セナなど
「君はマラソン大会の前に性転換しておけば良かったのに」
などと言われていた。
 
それでセナは男子の方に参加するが、千里や沙苗は女子の方に参加する。
 
所要時間は、男子は15-40分、女子は10-30分くらいだろうとみて、男子が10:00に出発した10分後10:10に女子がスタートした。つまり男女のラストがどちらも10:40くらいに帰ってくるだろうという計算である。
 
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男子のトップは13分で帰って来た(23km/h)。陸上部の3年生である。さすがである。女子が出発したほんの3分後のゴールであった。女子のトップは陸上部の3年生と1年生の留実子!が激しいトップ争いをして、10:19 (20km/h) にゴールした。胸一つの差で陸上部の子が優勝し、陸上部のメンツを保ったが、ゴール後、僅差で2位の留実子とハグしていた。
 
セナは男子として参加しているが、そんなに足が速いほうではない。どんどん他の子に離されていくものの「マイペースで走ろう」と開き直ってちゃんと最後まで持続可能なペースで走って行った。
 
何とか男子の折返点まで到達して帰り道になる。1kmほど走り、女子の折返点まで戻って来た時、千里と蓮菜・沙苗が一緒に折り返す所に遭遇する。
 
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「男子の折返点まで行って来たんだ?」
「一応男子に分類されてるし」
「私、女の子ですー、みたいな顔してここで折り返せば良かったのに」
「男子と一緒にスタートしてるし」
 
「私はここで折り返していいのか、やや罪悪感がある」
と沙苗が言うと
「まだ女子化教育ができてないな」
と蓮菜は言っていた。
 
「でも、るみちゃんは『男子はスタートしたぞ。お前何やってる?』と言われてた」
「あはは、あの子は毎日5回は性別間違えられるよね」
「30回くらいと思う」
 
などと会話を交わしてから「また」と言って、彼女たちを置いて先に行く。
 
ところが1分半くらい走った所で千里が恵香・小春と一緒に向こうから来るのに遭遇するので、セナは仰天する。セナが驚いているのを見て恵香が訊いた。
 
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「どうかしたの?セナちゃん」
「いや、さっき村山さんを抜いた気がしたのに」
「幻でも見たんじゃない?それと“女の子同士”なんだから、名前で呼んでいいのに」
「そ、そうだね」
と言葉を交わしてすれ違った。
 
そして更に3分ほど走ったところで、女子2人組がゴールに向かって走っているのに追いつく。抜こうとしたら、その中の1人に捉まる。
 
身体をハグされて、胸まで触られ
「今日はノーブラなの?」
と玖美子に言われた。
 
(玖美子のバストを背中に感じてドキッとする←セナはまだ男を廃業していない)。
 
「セナ、私たちの後(うしろ)に居たの?」
と千里が訊く。
 
「男子は遠くまで行くから・・・って、なんで村山さん、ここにも居るの?」
「私がどうかした?」
「折返点の所で村山さんに会って、さっきも村山さんとすれ違ったのに」
「だったら、この後、私たちと一緒に走るといいね。これ以上私に遭遇することは無いよ」
と言われて、セナは千里・玖美子と一緒に、あれこれ話しながら走って、3人一緒にゴールしたのであった。
 
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そしてセナは、千里や玖美子同様、20:41というタイムを書かれた赤い紙の記録表を渡された!(男子は青い紙)
 
「女子の紙をもらっちゃった」
「この機会に性転換しよう」
「どうしよう?」
 
「悩むなら、取り敢えず去勢したら?」
「そうそう。男性化を停めなきゃ」
「よく女の子になっちゃった夢を見る」
「明日からセーラー服で学校に出ておいでよ」
「持ってないよぉ!」
 

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セナ速度10.00km/h 到着予定時刻=10:30
↓旅人算の計算結果
蓮菜8.18km/h 遭遇10:21:00 位置1499m(折返) 到着10:32:00
恵香6.20km/h 遭遇10:22:21 位置1275m(往路) 到着10:39:02
玖美8.70km/h 遭遇10:25:23 位置_769m(復路) 到着10:30:41
 

 
 
↑は一定速度で走った場合の計算だが、セナは実際には玖美子に捉まり、彼女たちと一緒にゴールした。
 
セナは本当は5kmを30:41で走ったので9.78km/hだが、女子の記録表をもらったので3kmを20:41で走ったことにされた。これだと8.70km/hということになる。でも順位は男子としての順位より上になった!
 
大会後「女子の記録表が4枚多く出てる。なぜだろう?」と先生が首をひねっていた(千里が2人多いのと、小春とセナの分)。ちなみに男子は予定より1人少なかった!
 
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「男子のは花和さんの分では?」
「あ、そうかも」
 
実際には留実子はちゃんと女子の記録表をもらったので、留実子の所では人数は、ずれていない!
 

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4月下旬からずっと休んでいた鞠古君が5月12日(月)になって、やっと学校に出て来たのだが、衝撃的なことを言った。
 
「俺、チンコ切ることになった」
 
びっくりするクラスメイトたちに彼は説明した。ペニスに腫瘍ができていて、切除が必要だが、かなり根元に近い部分にあるため、結果的にその先を全て切除することになる。また腫瘍が拡大しないようにするのと、再発防止のため女性ホルモンを投与する必要があり、睾丸があると男性ホルモンを分泌して病気を悪化させるので、睾丸も除去しなければならないというのである。
 
「だからチンコの大半を切って、睾丸も取って少なくとも2-3年、女性ホルモンの注射をすることになる」
と彼は言った。
 
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「そしたらほとんど女になるのでは?」
「少なくとも男ではなくなるな。胸も大きくなるだろうし」
 

その日の放課後、千里が体操服に着替えて、バスケのウォーミングアップをしようとしていたら、留実子が泣いているのに気付き、千里は声を掛けた。
 
「鞠古君から何か言われたの?」
「別れてくれと言われた」
「なんで?」
「チンコも金玉も無くなって、女性ホルモンも注射されて、自分はもう男ではなくなってしまう。だからぼくの恋人ではいられないと言われた」
 
千里は言った。
「るみちゃんは、鞠古君のちんちんが好きだったの?」
 
留実子は少し考えてから首を振った。
 
「ぼくは知佐本人が好きだ。知佐のチンコが好きなわけじゃない」
 
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「だったら、るみちゃんは鞠古君の恋人でいられると思うよ。それにちんちんがあるかどうかなんて、性別とは関係無いことだよ。鞠古君の心が男であるのなら、たとえちんちんが無くなっても男だよ」
 
「言われてみたら、そういう問題って千里やぼくが一番分かっているべきことだった」
 
「だったら、彼に言いに行こうよ。自分は鞠古君のちんちんが無くなっても鞠古君本人が好きなんだって」
 
留実子はしばらく考えていたが、
「千里の言う通りだ。知佐に好きだって言いに行く」
と言った。
 
でも留実子は千里に付いてきてくれないかと言ったので、千里は彼女に付いていくことにした。
 

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