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■女子中学生・夢見るセーラー服(18)

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7月18日(金)、S中では1学期の終業式が行われた。これから約1ヶ月間の夏休みに突入する。
 

7月19-20(土日).
 
留萌市内の2つの大きな神社、Q神社とR神社で例祭が行われる。小さな神社であるがP神社でも、同じ日程で例祭が行われる。
 
Q神社やR神社では多数の出店が出て賑やかであるが、毎年P神社では出店は2〜3軒である。でも今年はN小学校のこども会が焼きフランクフルト屋さんを出したのが結構好評だった(こども会は良い収益があがり活動資金を得たもよう)。
 
P神社では、初日早朝、日の出とともに、神輿と宮司さんを乗せた船が港を出て沖合まで行き、神を迎える儀式をする。戻って来た神輿は町内を練り歩き、午前9時頃、神社に戻る。ここで純代(高1)と広海(中2)が舞を奉納した。C町とN町の町内会長さんが玉串奉奠をする。
 
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10時頃、幼稚園〜小学校低学年の女の子たちによる巫女舞が奉納される。例年、外人さんの子供たちが入った舞になるので、いつも新聞社が取材に来てくれる。彼女たちに指導していたのが、千里や蓮菜たちで、自分の子供の晴れ舞台を見守るような、ハラハラドキドキ感があった。
 
小さな女の子たちによる巫女舞の後は、今度は幼い男の子たちにより、お魚を奉納する儀式がある。その後12時からは神居酒造から提供された甘酒の振る舞いがあり、午後は一般のイベントはお休みに入る。
 
但し、拝殿では12時、14時、16時の3回、中学生5人による巫女舞が奉納される。今年これを舞ったのは、広海(リーダー)・千里・蓮菜・穂花・沙苗!である。最初は美那がやる予定だったが、沙苗が羨ましそうな目をしていたので譲った。ただし、一週間がかりで練習させている。(なお恵香は龍笛係)
 
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夕方からは大人の氏子さんたちによるお神楽が奉納された。
 

P神社の例祭に千里Yが出ていた日、Q神社の例祭には千里Bが参加していた。
 
初日の朝9時、神輿(みこし)の担ぎ手が集まった所で宮司が神降ろしの儀式をして、神霊が神輿に宿る。そして神輿は留萌市街地を一周した後、いったん神社に戻る。ここで龍笛・太鼓が鳴り響く中、巫女舞が奉納される。この巫女舞に千里Bは参加した。龍笛は寛子さんが吹き、太鼓は里恵さんが叩いている。この手の神事には、香取巫女長や細川さんなど、年上の巫女さんたちは参加しない。
 
巫女舞は循子さんを要(かなめ)にして、和世さん・千里がその後に並び、更にその後にバイトの巫女さん(地元の高校生)が3人並ぶ形で行われた。つまり千里は3番目の位置で舞った。「私もバイトさんと同程度しか練習してないのに」と思うが、開き直るしか無い。
 
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でも後で上手かったといって褒められた!
 
巫女舞の後、宮司が貢ぎ物を神殿に供える。そして今度は保志絵さんが龍笛を吹いて、それに合わせて宮司が祝詞を奏上した。それから神社庁からの使者(献幣使)が献幣を行い、祭詞を奏上する。
 
その後、氏子さんたちによる御神楽が15分ほどにわたって奉納され、更に旭川Q神社から来た男性8人(龍笛・篳篥・笙/楽太鼓・鉦鼓・羯鼓/琵琶・箏)による雅楽の奉納があった。
 
宮司と献幣使が玉串を奉奠し、初日の儀式は終わる。
 

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初日の午後には様々な芸能が奉納される。
 
留萌人形浄瑠璃の上演、留萌黒潮太鼓の上演が行われる。その後は、ほぼ素人カラオケ大会と化し、地元の人たちが自由にステージにあがって、民謡・演歌などを歌っていた。千里たちは、頒布所で、お守りやお札の販売をしていた。境内および鳥居前の道路には30-40個の出店が並んでおり、P神社とは違うなあと思ったが、町外れの集落の小さな神社と町中の神社では差が出るのは仕方ない。
 
千里は中学生なので18時で開放されて帰宅したが、夜22時から神輿が運行されて、S中そばにある御旅所に入ったはずである。
 

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7月20日(日).
 
翌日朝7時半頃、自宅に電話が掛かってきて、千里Bが取った。玲羅は電話を取った姉の髪を結んでいるヘアゴムの玉の色が青なのに首を傾げた。ついさっきまで黄色い玉だった気がするのに!?
 
「私、Q神社の香取と申しますが、千里さん、いらっしゃいますか?」
という声は香取巫女長である。
「おはようございます。本人です」
 
「つかぬことを訊くけど、千里ちゃん、あんた今生理じゃないよね?」
「生理は先週月曜日に来たので、今は大丈夫です」
「よかったぁ。申し訳無いけどタクシーか何か使っていいから、至急神社まで来てくれない?実は寛子さんに急に生理が来ちゃって。神事の龍笛を吹く人が居ないのよ」
「分かりました。すぐ行きます」
 
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千里が母に言うと、母は自分の車でQ神社まで送ってくれた。それで社務所に駆け込む。到着したのは7:40くらいである。
 
「ほんとに申し訳ないけど、9時から神事があるから、それまでに、神楽の笛を覚えて欲しいのよ」
「頑張ります」
 

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それで生理が来てしまって、神事に出られない寛子さんから神楽の笛を直接習い、千里は普段使っている龍笛で吹く。
 
「あんた、ほんとに覚えが早い」
と寛子さんが感心している。10分ほどもある曲を千里はほぼ1発で覚えてしまった。
 
香取さんも
「凄い。ここまで吹けたら全く問題無い」
と言う。
 
それでも寛子さんは細かい点を指摘し、千里はその部分を吹き直した。
 
8:45
 
「もう時間が無い。御旅所に向かって」
「はい」
 
それで千里は保志絵さんが運転する車に乗り、御旅所に向かった。
 

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9:00
 
御旅所で、宮司、千里、里恵さん、が所定の位置に就く。
 
里恵さんの太鼓に続いて、千里の龍笛が鳴り響く。
 
その瞬間、宮司と里恵さんがピクッとした気がした。私、間違えた?と思うものの、開き直るしかないので、覚えている通りに吹いていく。
 
しかし千里の笛が始まった途端、早朝から御旅所に詰めていた神輿の担ぎ手だけでなく、様々な作業をしていた人たちまでピタッと動きを停め、笛の音を聴いた。宮司の祝詞が始まる。
 
約10分間の祝詞の間、里恵の太鼓と千里の龍笛が続くが、その間皆その雰囲気に呑まれて何も作業ができなかった。ただ幾人か、チラッチラッと上空を見上げる人の姿も見られた。
 
そして祝詞がクライマックスに達したとき、まるで祝砲でも撃つかのように雷鳴が鳴り響いた。
 
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祝詞が終わり、太鼓と龍笛も終わる。
 

みんなまるで呪縛から解かれたかのように動き出し、またしゃべり出す。
 
「今日の巫女さんの笛はすごく気合が入っていたね」
などと話している人もいた。
 
宮司さんまで千里に
「村山さん、凄い笛を吹くね。一瞬僕の方がたじろいだ」
などと言う。
 
「済みません!」
 
「いやとんでもない。物凄く気持ち良く祝詞をあげることができたよ」
と宮司さんは笑顔で言った。
 
9:20
 
神輿は御旅所を出て、長い坂を下り、国道に出る。そして留萌の市街地に入った。そこから約1時間掛けて市街地を練り歩き、10時半頃に神社に戻る。
 
宮司は神輿と一緒に市街地を歩いたが、千里と里恵は御神輿が出た後、保志絵さんの車で直接神社に戻って御神輿の帰還を待った。
 
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神輿が戻ってくると、里恵さんの太鼓と千里の龍笛に合わせて巫女舞が奉納される。千里が抜けて1人足りないので、経験者の若菜さんを急遽呼び出して加わってもらっている。この巫女舞の龍笛も、神輿の帰還を待つ間に急遽寛子さんの指導で覚えたものである。
 
本番で千里が吹き始めた時、循子さんや、千里の代わりに3番目の位置に入っていた若菜さんがピクッとするのを見た。例によって少し不安になるが、開き直るしかない。そして巫女舞のクライマックスで、突然雷鳴が響いた。
 
「晴天の霹靂(せいてんのへきれき)か?」
「いや、これぞまさに“神成り(かみなり)”、神のお成りだよ」
 
巫女舞の後は、雅楽の演奏があり、宮司の祝詞があって、その後はしばらく神事はお休みになる。境内では、増毛の国稀酒造のお酒がふるまわれ、また旭川Q神社・留萌Q神社・稚内Q神社の三社のみで頒布されている縁起物“連雀笛”を限定500本頒布する。これはずらっと人が並んでいたが、30分ほどで売り切れてしまい、並んでいたのに買えなかった人が残念がっていた。
 
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その後、弓道の模範演技、剣道の演舞(刃を落とした真剣使用)、アイヌ舞踊の奉納などが続き、J小剣道部の児童たちによる剣道試合も行われた。千里が知っている顔も何人かあった。そのあと、ちびっこ相撲大会、浴衣の女の子たちによるカルタ大会も行われた。
 
夕方、再度巫女舞が奉納された後、神上げの儀式が行われて、Q神社の例祭は終了した。神事はこの後、もう少しあるらしいが、千里たち中学生は18時で解放されて帰宅した。
 

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さて、千里Yの方は、P神社の例祭に参加している。
 
祭り2日目は、午前中に神輿がまた町内を巡り歩き、神社に戻った所で純代と広海の舞が奉納される。
 
午後からは神前で芸能が披露される。旭川A神社から招いた雅楽の楽団による演奏に続き、留萌人形浄瑠璃の上演、留萌黒潮太鼓の上演と続く(浄瑠璃と太鼓のチームは昨日Q神社で奉納した、ついでである!)。そのあと地元幼稚園児の楽器演奏、N小吹奏楽部の演奏、地元の民謡家による民謡歌唱・舞踊披露などが続く。トリはソーラン節の大合唱と踊りで締められる。
 
その後、中学生5人による巫女舞が再度奉納され、おとなの氏子さんたちによる木遣り歌の奏上後、宮司が笛の音に合わせて祝詞を奏上することになっていたのだが、ここでちょっとしたトラブルがあった。
 
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龍笛を吹くのは恵香なのだが、その恵香が指を押さえている。
 
「どうしたの?」
と純代が訊く。
 
「私、今トイレ出る時に、うっかり自分が出る前にドアを閉めてしまって、指を挟んじゃって」
「そんな千里みたいなことを」
などと美那が言っている。
 
うーん。みんな私のこと理解してるなと千里は思う。
 
「笛吹ける?」
「30分くらい置けば」
「今奏上されている木遣り歌が終わったらすぐ昇殿しないといけないから10分も無いよ」
 
「そんな時は千里の出番だな」
と小町が言った。
 
「千里、笛吹けたんだっけ?」
「うん。少し練習した」
「でもこの祝詞奏上の笛分かる?」
「毎年聴いてるから分かると思う」
「だったら千里が吹いて」
「それしかないか」
 
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純代が翻田宮司のところに行き、恵香が指を痛めたので大事を取って千里に吹かせたいと言ったら、宮司は快諾した。
 
それで千里がこの祝詞奏上の時の笛の曲を頭の中で再生していた時
「千里」
という声がする。
 
ふと見たら小春である。
「小春〜。あんたがこの笛吹いてくれない?私、不安だよぉ」
「私は実体が無いから無理」
「今出てるみたいなエイリアスは?」
「エイリアスでは神事が務まらない。この笛あげるから、私が付いていると思って吹いて」
と言って、小春は1本の龍笛を渡した。
 
「なんか高そうな龍笛なんだけど」
「お祭りとか、特別な祈祷の時はこの龍笛を使って。普段の祈祷では今千里が使ってる花梨の龍笛でいい」
 
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「分かった」
 

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