広告:ここはグリーン・ウッド (第5巻) (白泉社文庫)
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■女子中学生・夢見るセーラー服(3)

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4月21日(月)には、沙苗が登校開始後はじめて剣道部に顔を出した。
 
実はこの日は26日(土)に行われる中体連の参加申し込みの締め切り日であった。
 
沙苗は千里・玖美子と一緒に、女子更衣室で、セーラー服から白い道着・袴に着替えて、体育館に行った。この時、玖美子は千里の髪を留めている髪ゴムの玉の色が今日は黄色なんだなと思った。授業中は赤だった気がするけどとも思う。
 
(実はRは生理2日目だったので、部活をせずに帰ってしまった。それで玖美子が千里を探していた所にYが出現したので、連れて行ったのである。千里Yも沙苗の部活初日というので付き合った。なぜか自分の道着が黄色いスポーツバッグに入っていたし!)
 
「ずっと休んでいましたが、今日から参加させて下さい」
と沙苗は、女子の部長・3年生の藤田さんに挨拶する。
 
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「うん。病み上がりだし、あまり無理せずに楽しんでいこうね」
と藤田部長は言った。
 

この時点で、顧問の岩永先生としては、沙苗は女子の部に出場資格が無いし病み上がりだが、女子代表メンバーの練習相手としては結構いい相手になるのでは、くらいに考えていた。
 
沙苗は、最初藤田部長(初段)が
「どのくらいするのか手合わせさせてよ」
と言ったので、手合わせした。
 
すると沙苗が1分で2本取って勝った。
「強ぇ〜!」
と藤田さんが驚くように声を挙げた。
 

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玖美子が
「なんか凄く強くなってない?」
と千里に言った。
 
千里は珍しく!マジな顔で
「性別問題がクリアになって迷いが無くなったせいだと思う」
と答えた。
 
沙苗は田辺さんとも手合わせするが、30秒で決着。武智さんもかなわない。
 
玖美子が出ていく。玖美子は沙苗がきれいな型で攻めて来るので、それを先読みして、けっこういい勝負(に見える)をしたが、3分で2本取られて負けた。
 
(剣道の試合時間は小学校高学年〜中学生は3分)
 
「全然かなわなかった」
と玖美子は試合後、千里に言った。傍目(はため)にいい勝負をしているように見えても、実際には玖美子の攻撃は全く通じず、玖美子は必死で沙苗の攻撃をかわしているという状態だった。これが分かったのは玖美子本人と千里くらいである。
 
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千里が出て行く。
 
激しい打ち合いになる。千里はこの子、間違い無く木里さんより強いと思った。それで多少本気を出す。
 
その物凄い対決に、男子たちも練習の手を休めてこちらを見ていた。
 
「すげー」
「これって道大会の上位レベルでは?」
などという声も出る。
 
1分ほどで沙苗が面で1本取ったが、千里が2分ほどの所で返し胴で1本取り返す。しかし試合終了間際、沙苗の小手が決まって、沙苗の2本勝ちとなった。
 
「すごい勝負だった」
と見ていた男子たちが言った。
 
「原田もすごいけど、村山もかなり強くなってないか?」
と男子の鐘江部長が言った。
 
「考えてみたら小学生で1級取った者同士の勝負だもんなあ」
と竹田君(1年・2級)が言っていた。
 
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千里は今日は“わりとマジ”だったからなあと玖美子は思った。千里は本気全開になることはまずない。それは相手が相当の力量の人でないと相手を殺してしまいかねないからだ。玖美子は千里がスコップで、通路を遮っていた厚さ1mほどもある氷を1発で割るのを見たことがある。それは腕力で割ったのではなく“気”で打ったようにみえた。千里は腕力は大したことないが、あの“気”で面を打ったら、相手が相当できる人でない限り即死しかねない。
 
でも今日の千里は20%くらいパワーを開放していたように見えた。普段の千里は、男子相手なら5%程度、女子相手でもせいぜい10%程度である(手抜きモードだと1-2%程度!)。
 

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「原田さん、僕と手合わせしてよ」
と鐘江さんが言った。
 
それで手合わせすると両者1本ずつ取った所で時間切れとなった。
 
「原田さんの勝ちだな」
と顧問の岩永先生は言った。
 
「ええ。僕は完璧に負けてました」
と鐘江部長も認めた。
 
「原田さん、男子団体戦の先鋒をやってくれない?」
と先生は言う。
 
「はい、頑張ります!」
と沙苗は明るく言った。
 
それで男子のオーダーはこのようになったのである。
 
先鋒・原田(1年)1級
次鋒・古河(2年)2級
中堅・中村(3年)1級
副将・児島(3年)1級
大将・鐘江(3年)初段
 

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ところで体育館であるが、この学校にはメインの体育館と、それができる前から使っていた、古い小さなめの体育館がある。小体育館の方はバレー部と体操部が使っており(床面は一度グラインダーで削り塗装し直した)、メイン体育館の方は、南側半分をバスケット部が使用し、北側を剣道部、柔道部、卓球部、バドミントン部が共用している(実際は卓球部は壇上)。その南側でバスケットの練習をしているのは男子ばかりである。
 
「女子バスケット部って無いんだっけ?」
「存在はするらしいけど、練習してるの見たことない。人数も5人居ないらしいよ」
「試合に出られないじゃん」
「大会の時は助っ人を頼んで5人で出るらしいけど、今の所大会15連敗らしい」
「へー。15連敗って2年くらい勝ってないとか?」
 
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「千里、バスケットの大会はノックアウト・トーナメント(*1)なんだよ」
「ノックアウト?」
「負ければ終わり。だから15連敗というのは、15大会連続で1回戦負けということ」
 
(*1) 日本では単にトーナメントというと、甲子園の高校野球大会のようなノックアウト方式のトーナメントを指すことが多いが、英語の tournament というのは、本来は、基本的には1人の勝者を決める方式の大会のことであり、例えば大相撲の場所のようなものもトーナメントである。
 

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「1年に大会っていくつあるの?」
と千里は訊いた。
「春の大会、秋の大会、新人戦の3つかな」
 
「つまり5年も勝ってないの〜?」
「それ以前については情報不明」
「うーん。そういう部活もあるのね〜」
などと話していたら、校内放送の始まる合図の音がする。
 
「1年1組の田代さん、職員室まで来てください」
という放送であった。
 
玖美子にはそのアナウンスをした声が千里の声に聞こえた。
 

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千里は放送委員だから、アナウンスをするのは全く不思議ではない。一昨日は給食の時間に、ディスクジョッキーをやって、ひたすらワンティスの曲を流していて、軽妙なトークで好評だった。
 
放送委員なら、生徒呼び出しのアナウンスくらいするだろう。
 
ただ、玖美子が気になるのは、目の前にも千里がいて、自分と話していることである。千里自身は今の放送には気付かなかったようである。
 
(放送をしたのはB、玖美子の隣にいるのはY)
 
「まいっか」
と玖美子は思った。
 
「どうかしたの?」
「千里、型の練習しよ」
「いいけど、くみちゃんは、いいかげん寸止めをマスターして欲しい」
 
そういって、2人は防具を外し道着と袴だけで、木刀を持って向かい合った。
 
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ところで、1組の女子生徒でN小では2組だった尚子だが、沙苗の件がけっこう騒動になっていたので、ほぼ忘れていたが、千里についても、戸籍上は男の子だけど、実質女の子で、既に“沙苗同様”性転換手術も終わっていると認識していた。
 
しかし先週一週間、身体測定・レントゲンに、体育の時の着替えなどで千里の下着姿を見て、かなりバストが大きくなってきているので、女性ホルモンをずっと摂っていて、それで発達してきているのだろうと思っていた。
 
ところがである。
 
21日(月)、部活が終わった後、更衣室で偶然千里と一緒になった。
 
その時、見たのである。
 

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「千里ちゃん、胸が無い」
「え?私が遺伝子的には男の子なの、知ってるくせに」
「だって、こないだ見た時はバストあったじゃん」
「ああ。あれはパッドだよ」
「うっそー!?」
 
「でも、ちんちんは無いから、女子更衣室の使用は見逃して」
「いや、千里ちゃんが男子更衣室に入っていこうとしたら、叩き出されるだろうからいいけどさ。でも女性ホルモンとか飲んでないの?」
 
「飲んではいるけど、やはり本物の女の子ほどは発達しないのよね〜。高校に進学するまでには、Aカップが余らない程度のおっぱいは欲しいけどね」
「ああ、色々大変ネ」
 
などといった会話を交わした。ちなみにこの日の千里は黄色い玉の髪ゴムを付けていた。
 
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それで尚子を震源として、女子たちの間に、千里は男子だったので、今の所は胸は無いので胸にはパッドを入れているけど、女性ホルモンを飲んでいるので、その内おっぱいは膨らんでくるかも、という情報が流れることになった。
 
「じゃ、うちのクラスは性転換した元男の子の女子が2人いるのか」
などと言われていた。
 
蓮菜はその噂に気付いたが、別に実害は無いだろうと思い、放置しておいた!
 
それに蓮菜としては、千里本人を含めてどうも千里の性別に関して記憶の混乱している人が多いので、初期段階では「千里は女子化中」ということにしておいた方が、本人も気楽だろうと考えたのである。
 
だいたい千里は(たぶん)性転換手術を受けて、戸籍上の性別も女に直したのに、女として生きていく覚悟が足りない!というのを以前から蓮菜は感じていた。あの子も高校くらいからは完全女子高生生活をするんだろうけど、中学の3年間はモラトリアウムでもいいかなというのも考えていた。
 
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また中学3年間、千里に関する情報と沙苗に関する情報はわりと混線し、その結果、千里と沙苗はお互いを隠れ蓑にして、精神的に楽に“女子化中中学生” (On the way Junior High School girl) 生活を送ることができたのである。
 

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さて、4月7日(月)から始まった新学期に、千里は一週間遅れの14日(月)から、沙苗は11日遅れの18日(金)から学校に出て来て、いづれもセーラー服で通学するようになったのだが、(学生服で通学していた)鞠古君が沙苗と入れ替わるように22日(火)から休んでいた。
 
同じバスケ部で彼と仲の良い田代君に訊いてみると、
 
「なんか病気が見つかったらしくて、留萌の病院では手に負えないというので旭川の病院に掛かっているらしい」
という話であった。
 
「じゃ入院しているの?」
「今の所は入院してない。だから鞠古とお母さんは、旭川のホテルに泊まり込んで病院に通ってる」
「それも大変だね!お金かかるだろうし。でもそれなら、私や沙苗みたいに、すぐ命にかかわるような病気ではないのね?」
 
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「詳しくは聞いてないけど、なんか腫瘍が見つかったらしい。手術の必要があるんじゃないかという話」
 
「腫瘍?それやばくない?」
「良性で命に関わるものではないとは聞いた」
「それならいいけど」
 

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4月22日(火)は1-2時間目に、1年生の心臓検診が行われた。クラス単位で男女別に呼び出され、心電図を取る。検査は1組男子→1組女子→2組女子→2組男子→3組男子→3組女子と、男女の交替を少なくする順序で行われた。
 
千里は前の席の小春に言われて、ちゃんと女子の順序で保健室に行った。保健室に入ると、制服とブラウスに靴下を脱いで待機する。カーテン衝立の向こうでキャミソールとブラジャーを脱ぎ、ベッドに横たわって、両手・両足首に1つずつ、胸に6個の電極を着けられ安静にして測定してもらう。
 
終わったらブラジャーとキャミソールを着けて退出する。
 
測定は出席番号通りで、千里は小春(測定できるのか?)の次、尚子の前で測定された。
 
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千里は下着姿で尚子と普通におしゃべりしていたが、尚子は昨日千里が胸はパッドだよと話していたことは、きれいに忘れていた。もっとも“この”千里はそんなことを話した記憶は無い!
 
それで尚子は自分が下着を外しながら、千里が胸に電極を付けて測定されているのを普通に見ていた。パッドならそこに電極を付けて心電図の測定などできないはずであるが、そこまで尚子は考えていない。
 
なお、沙苗は“諸事情”により、1組男子の後、1組女子の先頭で測定してもらった。沙苗が使っているブレストフォームは着脱に時間がかかるので、沙苗はこの日ブレストフォーム無しで登校してきて、心電図検査の後、面談室でブレスト・フォームを接着した。
 
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ちなみにこの日の千里は赤い玉の髪ゴムを付けていた。
 
_外陰 卵巣 胸P玉
赤 女_◎_○××
青 女_△_○××
黄 女_○_×△×
白 男_×_×○○
 
(黄のペニスは萎縮しており、陰唇内に隠しているので女湯に普通に入れる。このペニスには排尿機能は無く、通常の女性の位置に尿道口はある。青は小春の左卵巣をもらっているので少し女性ホルモンが分泌されている。黄の卵巣はまだ未熟だが小春の右卵巣ももらっているので多少の女性ホルモンはある)
 

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女子中学生・夢見るセーラー服(3)

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