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さて、千里Rはカノ子の車の所まで行き、買物の荷物を持って車に乗った。それで車を出そうとしたら、カノ子が
「あ、ごめんなさい。ガソリンが残り少ない」
と言う。
「給油して帰ろう」
と言って千里は樋口一葉さん(5000円札)を渡す。
「ごめんなさい。千里さんが買い物してる間に給油しておくべきだった」
「まあそういうもんだよ。気にしない気にしない」
それでカノ子はショッピングセンター内のGSに行き、給油し始めた。
Rは自分も降りてカローラの給油を見ていたが、その給油が終わってカノ子が精算している時、14:11頃、突然何かが自分に飛び込んだような感覚があり。Rはその勢いで車体にぶつかり倒れてしまう。結構大きな音がする。
「大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫」
と言ってすぐ起き上がる。
何?今の?
自分の身体にあちこち触ってみるが特に変な感じもしない。今の何だったんだろう?と思うが、大丈夫そうなのでそのまま車に乗った。それでカノ子の車は発車していった。
Rが去った直後、千里Uが出現した。青い携帯が鳴っているので電話を取る。
「はい、村山です」
と答える。
次の瞬間、千里Uは何かがぶつかって来たような強いショックを受けて倒れてしまった。携帯が転がる。
「村山君!?」
と電話の向こうで叫ぶ声がする。倒れてしまった千里Uはすぐ起き上がり、応答した。
「村山です。済みません」
「こちら宇田だけど、どうかしたの?」
「何かカマイタチのようなものと衝突しましたが、村山千里は正常運転しています」
(千里の正常運転ってかなり危ない気がするのだが)
「大丈夫?」
「大丈夫のようです」
「あ、それでね。実は花和留実子さんに出してもらった願書に署名が“花和”と苗字しか署名されてなくて」
「ああ、ありがちです。あの子、自分の名前が凄く女っぽいので、それを書くのが嫌なんですよ」
「ああ、なるほど」
「でも書かないわけには行かないから、大抵最後に書くんですよね。それをうっかり忘れたんだと思います」
「なるほどー。彼女というか彼というか、男名前とかはあるの?」
「彼の友人数名しか知りませんが“実弥(さねや)”と言うんですよ」
「へー。いっそそれを学校での登録名にする?」
「それをやると、あの子は見た目が男にしか見えないから、生徒手帳の名前まで男名前だったら、絶対女子の試合に出してもらえません」
「あっそうか!」
「だから今回は単純な書き忘れだと思います、本人割り切ってはいますから、言えばちゃんと書くと思います」
「わかった。いやそれを訂正してほしくて連絡取ろうとしたんだけど、あの子も携帯持ってなくて、しかも家がかなり経済的に厳しいとかで携帯が持てないという話で。それで自宅に掛けたんだけど、繋がらなくて」
「あそこの家の電話はまずつながりません。借金取りの督促に怯えてるんです」
「ああ、そういうことか」
「花和への連絡は私に下さい。家が近所ですから、必ず伝えますから」
「分かった。じゃこの書類の署名の件、連絡してくれる?できたら明日中に処理したいんだけど」
「はい。明日にも本人を旭川に行かせますよ」
「分かった。よろしく」
千里は電話を切ってから考えた。
「私、細川さんと一緒に買物に出たのに、ここで何してるんだろう?」
そこに今度は細川さんから電話が掛かってくる。
「はい、千里です」
「千里ちゃん!あんた無事?」
「よく分かりませんが無事のようです」
「あんた今どこに居るの?」
「えーっとここはジャスコの駐車場のようです」
「ここに乗ってきた車の位置分かる?」
「はい、分かると思います」
「じゃそこ行って。私も行くから」
「はい、行きます」
それでいったん電話を切った。それで千里Uが車のほうに向かう。千里VはUがこちらに近づいて来ているのを見て(正確には、こちらに近づいてくるセーラー服の女の子が千里であると気付いて)、いったん司令室に戻った。
千里Uは車の位置に戻ると、車の傍に大きな買い物袋が4つあるのに気付きそれを手に持つ。
そこに細川さんが走って来て
「千里ちゃん、良かった。無事みたいね」
と言って抱きしめた。
千里がジャスコに来てからのことを全く覚えていないようだったので保志絵は困惑したものの、怪我等はしていないようなので、そのままQ神社に帰ってから、千里には今日はこのまま帰るように言った。
それで千里Uは15時前に退出し細川さんにタクシー代をもらったので、タクシーで家の近くまで行った。留実子の家の前で降ろしてもらい、願書の署名のことを伝える。
「しまったぁ!確かに名前を書き足し忘れた気がする」
「サーヤ、明日の朝一番に旭川に行って来なよ。バス代あげるから」
と言って、千里は留実子に野口英世さん(*31) を3枚渡した。
「済まない。借りる」
「いいけど、明日はセーラー服着て行きなよ」
「それやると、ぼく男子トイレにも女子トイレにも入れないんだけど」
「困ったね!」
つまり留実子はセーラー服を着ても、女子トイレに入ると痴漢として逮捕される。でも男子トイレに入ると「女の子が男子トイレを使ってはいけない」と叱られる。
「ならセーラー服持ってって現地で着替えるかな」
「それでもいいだろうね」
「千里は最近男子制服着てないね」
「私が男子制服とか着る訳無い」
「徹底してるな」
なんで私が男子制服とか着るんだろう?とこの千里は考えていた。
(*31) 野口英世の1000円札は2004年11月1日にそれまでの夏目漱石の千円札に代わって発行された。
お餅と茹で小豆を買って新早川ラボに戻った千里Rは、カノ子にも手伝ってもらって、大きな鍋(一緒に買ってきた)にお湯を沸かし、茹で小豆を入れ、少し砂糖も加えて、ここにお餅を大量投入。ぜんざいをたくさん作った。
ぜんざいはどんどん売れた。お餅を8kgも買ってきたのに、今日来ている18人でペロリと食べてしまった。
今日来てる人:
S2 羽内如月、月野聖乃、御厨真南、清水好花、潮尾由紀
S1 ノラン、エヴリーヌ、カレン
R2 田詩歌、大島晴枝
R1 山倉綾耶、中村桃実
その他:道田(道場主)、千里、沙苗、マナ、カノ子(管理人)、小鴨(雑用係)
カノ子と小鴨はそんなに食べないから他のメンツで1人500g(10個)くらい食べた計算になる。マナみたいに比較的少食の子もいるからきっと700-800g食べた子も何人かいる。ちなみに千里は白い道着を着け、前髪パッツンの子(マナ)を見て「これ誰だったっけ?」などと思っている。
「やはり女子だけだから、本音の食欲でいけますね」
「まあいいことだね」
「運動したらカロリー補給ですよね」
「そだね。汗も掻くしね」
ここはオンドルが入っているので、みんなどんどん汗を掻く。それでシャワーを浴び、お茶とかスポーツドリンクを飲んだりしていた。女ばかりといっても、さすがに裸で素振りする子はいない。でも道着のまま暖かい床で気持ち良さそうに寝てる子もいた。
S中もR中もスーパーパワーを持っていた3年生が抜けて、へたすれば地区決勝まで行けないというので、かなり稽古に熱が入っていた。
一応稽古は18時で終了ということでみんな帰って行った。
「たくさん練習したからお腹空いたね」
「帰って晩御飯食べなきゃ」
などとみんな言っている。
あれだけぜんざい食べて?
今日はRも1〜2年生を結構指導してあげたので、疲れたぁ!と思った。
床に寝転がって大の字になり、もうこのまま消えちゃおと思った。
が
「嘘〜!?なんで消えれないの!??」
14:20頃、千里Uが近づいてきたので司令室に戻った千里Vだが、そこに千里Gがいるので、びっくりした。
「どうしたの?」
と千里Vが訊く。
「それはこっちのセリフ」
と千里Gが言う。Gはかなり焦ったような顔をしている。
「でもビクトリアが無事っぽいから安心した」
「私何か無事じゃないことあったんだっけ?」
「ビクトリア、なんか変な感じとかしない?」
「そう言われると何か変な感じがする」
「どんな感じに変なの?」
「なんか身体が無くなったみたいな感じ」
「うん。身体が無くなってる」
「うそ!?」
Timeline
1300 ▽_P神社で餅不足。Yとサクラが買いに出る
1305 ●_早川ラボで鏡開きおねだり。Rとカノ子が買いに出る
1320 ●_Rがジャスコ到着
1330 ★_Q神社で餅不足。細川とUが買いに出る
1340 ▽★YがJ町バス停でUと接近して消滅。星子が代理。
1345 ●_VがRに呼びかけるがレジ未済なので動けず
1350 ★▼UがRに接近して消滅。Vが代理。
1355 ●_Rがお店を出る
1410 __父が入ってくる
1411 ▼_Vがガラス扉に激突。
1411 ●_給油待ち中のRに肉体が合流
1412 ●_Rがジャスコを離れる
1412 ★_宇田先生からの電話にUが出現して取る。Uに肉体が合流。
1415 □_Gが東海から呼び戻される
1418 ★_Uが細川さんの電話を受ける
1420 ▼★Uが車に近づいてきたのでVが司令室に帰還
Gは緊急事態なのでA大神が東海地方某所から召喚して呼び戻した。Gは最初
「もしかしたらVは重大な事態になったかもしれない」
と言われ、青くなったという。
「私どうかしたんだっけ?」
「Vちゃん説明をよく聞いて慎重に発言してね。安易なジョークは言わない」
とGは言った。
「うん」
A大神が見ていたこと、そしてGに話してくれたのはこのようなことである。
・ジャスコ店内で父の姿を見たVが急に走り出した。
・目の前に透明のガラスドアがあるのに気付かず、Vはそこを通り抜けてしまった。
Vと一緒にあった千里の肉体がガラスにぶつかり、倒れた。
・千里の身体からまず1枚剥がれて、ちょうど駐車場の車の所に居たRとぶつかりその中に吸収された。
・他の肉体はそのまま倒れていて、119されようとしていた。
・電話で呼ばれて千里Uが出現する。すると残っていた肉体はUの所に飛んで行き、Uとぶつかってその中に吸収された。
・緊急事態の発生にA大神が千里Gを呼び戻した。
・電話を終えたUが細川さんの車に戻ろうとしてVに近づいたのでVは指令室に戻った。
「もしかして・・・千里の肉体って私の所にあったの?」
「そうだけど、知らなかったの?」
「知らなかったぁ!」
「だって初代・子牙さんがVちゃんの“身体”に自分の術を記録したんでしょ。それならVちゃんが肉体を持ってなきゃ。刻めるわけない」
「え〜〜!?そうだったのか!??」
「だからVちゃんは肉体と離れてめでたく思念だけの存在になった。これまでのGRBYと同じ状態。つまりVちゃんはリアルの人間からエイリアスに進化したんだな」
「それ何か変わるんだっけ?」
「特に変わらないと思うよー。肉体なんて付け足しだし。ビクトリア、生きてるよね?」
「生きてるつもりだけど」
Gはホッとしたように頷いた。
「今の瞬間Vちゃんは普通のエイリアスになった。それまでは曖昧な状態だった」
「え?」
「そこのモニターにもVちゃんが生きてると言った瞬間ヴァイオレットのランプがしっかり点いた。それまでは点滅していた」
「気付かなかった!!」
「A大神の話ではエイリアスと肉体の合体は2度起きたという。大神の推定では一番表面にあるRの肉体が剥がれて飛んでってRのエイリアスと合体し、残りの肉体が千里Uのエイリアスと合体したのではないかということだった」
「千里ってお正月のかまぼこみたいな奴っちゃな」
「全く全く」
「でもそうなると?」
「今日起きた事件はつまりVちゃんがうっかり自分の肉体を落としたから、それをRとUが拾ったということだね」
「私、なんてうっかり者なの!?」
「まあ千里らしいけどね」
とGも少し余裕が出たようである。
「RとUは肉体を持ったことにより、今後は消えることはない。これまでのVちゃんみたいに」
「そうか、私は肉体があったから消えなかったのか」
「私にもVちゃんが消えないのは謎だったけど、そういうことだったんだね」
「UからY1, Bs が分離して行動している時は?」
「消える可能性あるね。多分私にもVちゃんにも消せる」
「へー」
Vは考えた。
「もしかして私消えることできる?」
「ワイルドカードの私のそばにいても消えないから誰かに消されることはない。たぶん私と同位だからお互いに消さないのだと思う。でも自分で消えようと思ったら消えられるかもね」
「消えてみたーい」
「安定するまではやめといたほうがいいと思う」
「そうする!」
「でも千里の肉体っていくつもあったのね?」
「RBYWの4つのエイリアスに対応する4つの身体があるんだろうなとは思ってた」
「なんでそういうことになったんだっけ?」
「私が説明しよう」
と言って、A大神のエイリアスが示現する。
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女子中学生・冬のOOOグラス(20)