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12月24日(土).
クリスマスイブなので千里(U)と貴司は、千里が神社を終えたあと、17時くらいにジャスコで待ち合わせてデートしようと約束していた。
貴司は24日の“10時”に同じ高校の1年生女子A子と駅前でデートの約束をしていた。
つまり1日に2件デートをしようという魂胆である。昼間は千里は神社で年末は忙しくしているだろうから、よまやデートを邪魔されることもあるまいと思っていた(全く懲りない人である)。
千里の神社でのご奉仕が普通なら15時までなのに約束を17時にしたのは、神社の仕事は忙しくて予定通りには終わらないかもしれないというのと、1回目のデートが少し時間掛かった場合の用心を兼ねている。
貴司は9:45に駅前まで来て待っていた。彼は時間にルーズで遅刻の常習犯だが、こういう時はマメである。やがて10:05くらいになって
「ごめーん。遅くなった」
と言って彼女が駆けてくる。
「いや、ぼくも今来た所」
と笑顔で言って彼女のほうに歩み寄ろうとした時。
2人の間に割り込むように髪の長い女性が入ってくる。A子は最初、たまたまそこを通ろうとした通行人かと思った。しかし彼女はどかない。貴司は呆然としている。
「どいてよ」
「向こうへ行きたいならどうぞ。私は今から貴司とデートだから」
「あんた誰よ?」
「貴司のフィアンセだけど」
「貴司君、フィアンセがいたの?」
とA子は尋ねたがその答えは、貴司の顔を見たら明らかだった。
「酷い人ね。フィアンセがいるのに、私をデートに誘ったの?」
「ごめん」
「分かった。私、帰る」
と言ってA子はバス停のほうに行く。
「貴司、バス代くらいあげなよ」
「うん」
それで貴司はA子を追いかけ、
「ほんとごめんね。これバス代」
と言って、A子に1000円札を渡した。
「んー。まあもらっとくかな。じゃね」
と言って彼女は可愛く手を振って、結局商店街のほうへ去って行った。
「千里、神社の方はいいの?」
「神社より、悪い浮気者に制裁を加えないとね」
「ごめーん」
「罰としてもう貴司は去勢しなきゃだめかな」
「勘弁してよー」
「じゃ何かお昼おごってよ」
「うん」
「どう思う?」
と千里Gは千里Vに尋ねた。
今駅前で貴司とデートしている千里の所には青いランプがひとつ点いている。それに対してQ神社でご奉仕している千里のところは青1つと黄2つのランプが点いている。
「邪魔されると分かってて他の女の子とデートの約束をする貴司はほんと学習能力無いね。ほんとに去勢しようか。グレースが許可するなら私去勢してくるけど」
などとVは言っている。結構怒っている。
「まあ貴司は20歳まで男性能力を維持できない気もするけど、それよりこの2人の千里だよ」
「浮気阻止に出て来たのは間違いなくBs (Blue strong) で、Q神社に残ったのはBw+Y1+Y2 だろうね」
「やはりそうだよね」
「合体千里の中から、Y1は電話で呼び出される。Bsは貴司君の浮気で出てくるんだな」
Q神社でご奉仕している映子は、また千里の腕時計のベルトの柄が変化しているのに気付いた。朝一緒に仕事を始めた時は、最近はめていることの多い星条旗柄のベルトだったのだが、お昼頃ふと見ると、全体的に黄色が多いものの、ところどころに★の集団があり、まるで星条旗のストライプの部分が抜け落ちたかのような絵柄になっていた。
「よく分からないけど気分で着替えてんのかなあ」
と映子は首をひねっていた。
デートしていた貴司と千里(Bs)はマクドナルドでお昼御飯を食べながらバスケットの話で盛り上がっていた。貴司はバスケットの話なら何時間でもできるし、それを千里が熱心に聞いてくれるのでとても楽しい。(多分こんなに熱心にバスケの話を聴いてくれる女子はめったにいないと思う)
結構混んできたので11時頃にはお店を出て町を散歩する。留萌地方は22日まではかなりの雪が降っていたのだが、昨日は小降り、今日は完全に雪が止んでいた。しかし道路にはかなりの積雪がしており、足元には気をつけて歩く必要がある。
「しかしどこもお店はいっぱいだなあ」
「クリスマスイブだもんね」
そのうち貴司は言った。
「Q神社の駐車場は除雪してる?」
「してるよ」
「そこで1on1しない?」
「しようしよう!」
こんなのを喜ぶのは千里くらいである。
それで2人はQ神社に向かったのである。
「どうする?Q神社に行っちゃうよ」
とVは言った。
「いいんじゃない?どちらが消えるか楽しみだ」
とGは答えた。
「確かに」
「この場合どちらが消えても何とかなる気がする」
「ああ」
やがて2人はQ神社の裏口から入る。
その時、巫女控室でお勉強!をしていた千里 (U-b=Y1+Bw+Y2)がふっと消えた。
他の巫女さんたちは千里はトイレにでも行ったのだろうと思っている。
「Uが消えるのか!」
「BがUに吸収されるかと思った!」
とGとVは驚いていた。
それで千里B(Bs)はそのまま巫女控室に行き、動きやすい服装に着替える。この時千里の手(正確には腕時計)を見て、映子が首をひねっていた。
千里Bsが駐車場に行く。千里が着替えている間に貴司はいつもの部屋に行き、バスケットボールを取ってきた。
それで2人でいつものように練習を始める。
貴司と千里の対決は千里が1年生の頃は圧倒的に貴司の勝ちで、貴司はかなり手加減をしていた。しかし千里が2年生になった頃から千里はかなり強くなり、貴司は本気で千里と対戦するようになった。そして今年になってからは千里がマジで貴司に勝つことがあるようになり、夏前の頃には千里がマジで3〜4割貴司に勝つようになって真剣度が上がった。
しかし8月頃、急に千里は弱くなった。全然貴司に勝てなくなったので、貴司はまた少し手加減するようになった。でもその後急速に千里はまた動きがよくなり、最近はマジの対決で時々貴司に勝てるようになってきた。毎日、花和君・鞠古君と3人で濃厚な練習をしているらしいので、きっとそれで強くなってきたのだろう。
8月になぜ急に弱くなったのかはよく分からなかったが、貴司はあまり物事を深く考えるたちではないので、気にしないことにした!
30分くらい練習していた時、細川さん(貴司の母)が来た。
「あ、いたいた。千里ちゃん、占いのお客様」
「はい、今行きます。貴司、ごめんね」
「ううん。楽しかったよ。じゃまた」
「うん、また後で」
ここで千里B(Bs)は一般的な挨拶として「じゃ、また」と言っている。しかし貴司は、元々この日は夕方から千里とデートの約束をしていたので、夕方また会えるものと思って「また後で」と言った。
千里Bsは汗を掻いていたので、潔斎も兼ねてシャワーを浴びた。そして洗濯済みの下着を身につけ、巫女服に着替えた。それで占いの客のところに行った。
「お待たせしました」
このお客が2時間かかった!!
それで相談が終わると
「疲れたぁ!」
と言って千里(Bs)は消えちゃった!
「あれ?千里ちゃんどこ行った?」
と細川さんが探している。
GはA大神に言って(Bsが疲れているだろうから)千里Bwを休眠場所から転送してもらった。
ランプは青青黄黄の4つ点いている。つまり出現したのは(フルバージョンの)千里Uである。
「4人セットか」
「私が転送したのはBwだけなんだけどね」
「それにあと3人がくっついてきたのか」
映子はさっぱり分からないと思った。
この日の千里の腕時計のベルトの柄は頻繁に変わった。
朝見た時
11時頃
運動しやすい服に着替えに来た時
占いが終わった後帰るまで
「何か気分で変えてるのかなあ」
などと映子は思った。
千里UはQ神社での仕事を終えると、巫女控室で少し大人っぽいワンピースに着替え、カラーリップなども塗った。
「おっ、デート?」
などと言われながら、神社を出てJ町バス停まで行くと、バスでジャスコまで行った。待ち合わせ場所のクリスマスツリーの場所に貴司がいる。千里が首を横に曲げる会釈をする。
貴司はドキッとした。
可愛い!
昼間もマクドナルドでおしゃべりしてそのあと一緒にバスケをしていただけに胸がキュンとなり、ついでに股間の物体が熱く堅くなるのを感じる。“やり”たーい。千里は言えば絶対やらせてくれる。彼女が性転換手術済みで女性としてセックスできる状態なのは確実だ。でも、場所が確保できない!、というのが貴司の悩みの種である。
(親公認でしばしば一緒に泊まっている蓮菜・田代は別としても、留実子・鞠古やマナ・菅原が何とかしてセックスの場所を確保しているのに貴司が場所を確保できないのは、やはり貴司は頭が悪いのだと思う)
「ごめんねー。待った?」
「ううん。僕も今来たところ」
「でもさすがイブは人が多いね。どこ行こうか」
「取り敢えず少し歩こうよ」
「そうだね」
「昼間のデートの続きのおしゃべりしよう」
千里の顔が曇る。
「貴司、昼間誰とデートしたのよ?」
「え!?千里とデートしたじゃん」
「私は今日は1日神社でご奉仕してたよ。神社に来てないなあと思ったら、浮気してたのね」
「ちょっと待て。千里、冷静に話し合おう」
「もう知らない!よりによってクリスマス・イブに浮気するなんて」
と言って、千里は帰る態勢である。
「ちょっと待って、千里、ね、そうだ。今から旭川に出ない?」
「こんな時間から旭川に出てどうすんのよ。帰って来れないじゃん」
「だからお泊まりデート」
「ふーん。昼間デートした子ともお泊まりしたんだ?貴司きっと養育費で苦労するよ。じゃね」
と言って、千里は走って帰ってしまった。
「なんでこうなるんだよー!自分がデートしといてそれ忘れるなんて!」
と貴司は納得できない思いで、人混みに紛れてしまった千里が行ったほうに向かって言った。
「どうする?」
と千里VがGに訊く。
「まあどうせ、春になって千里が旭川に出たら2人は自然消滅だろうし、今壊れてもいいんじゃない?」
とGはテキトーに答える。
「そうかもね」
とVも言った。
実際には貴司は夜千里(U:ほぼBw)の携帯に電話して弁明した。自分は確かに普段はしばしば浮気していることをあらためて謝る。その上で、今日は確かに昼間に千里とデートしたし、今日は千里以外の女の子とは決してデートしてないと主張した。そうはっきり言われると、千里(Bw)も自信がぐらつく。自分がしばしば大事なことを忘れていることがあるのは認識している。
貴司はお互い今日のことは保留にして、良かったら明日あらためてデートしないかと提案した。それで千里も今日のことはお互い不問として明日あらためてデートすることに同意したのである。
「貴司君頑張ったね」
「彼も浮気して振られるのはいつものことだろうけど、納得いかない別れ方はしたくなかったのかもね」
とGとVは言った。
なおこの日千里Uは村山家ではなく旧早川ラボに帰った。ムシャクシャしてて家に帰りたくなかったからである。それでVが代わりに村山家にケーキとチキンを持って帰ったが、19時過ぎには「疲れたから寝るー」と言って奥の部屋に入った。そのままW町の家に戻った。姉が奥の部屋に入ったので玲羅は「私も寝るー」と言ってそちらに移動したが、千里の姿はない。
「夜中にお姉ちゃんが居ないのはいつものことだもんねー」
と思いながら、布団の中でゲームをしていた。
旧早川ラボには、ミッキーがケーキとチキンを持って行ってあげた。
「ありがとう」
「まあ今日はぐっすり寝てまた明日頑張ろう」
「そうだね」
W町の家ではGがケーキとチキンを用意して待っていたので、Vが戻って来たところで「お疲れさん」と言って、星子と3人でささやかなクリスマスパーティーをした。
一方千里Rはカノ子と協力して大量のフライドチキンを作ったら、清香が20本くらい食べていた。ケーキもラウンドケーキを買ってきて8等分したらそのうち6切れを清香が食べた(千里とカノ子が1切れずつ)。
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女子中学生・冬のOOOグラス(12)