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そのできごとは夢だったのか現実だったのか、仮名Mは自分でもよく分からない。
彼はその日、(男子)更衣室で着替えていた。体操服の上下を脱ぐが下着も汗を吸ってる。彼は念のためあたりを見回すが、今更衣室には誰も居ない。彼はボクサーパンツを脱ぎ、その下に穿いているショーツを交換する。ボクサーも新しいのを穿く。アンターシャツを脱ぎ、その下のブラジャーも交換する。
その時
「え?」
という声があるのでギョッとしてそちらを見ると同じクラスの菅原君が居る。
「きゃー!見られちゃった!」
と彼は焦った。
「佐藤君。女の子だったの?」
などと言われる。
「え、えーっと」
何と言い訳すればいいんだろう。
「僕、前から君のことが気になってたんだ。佐藤君がもし女の子だったら恋人にしたいなあって。でも男の子を好きになっても仕方無いと思ってずっと我慢してたんだ」
うーん。こういう場合、どう対応すればいいんだろう?
「やはり君、女の子であることを隠すのにわざと頭を丸刈りにしてたんだね」
うーん。女の子に間違われないように丸刈りにしてたんだけど・・・
「君が実は女の子なのだったら、僕は自分の気持ちを抑える必要無かった」
えーっと、こういう時はどうすれば・・・
その時、彼はなぜ自分がそういう行動を取ったのか自分で理解できない、
気がついたら彼は菅原君に抱き付き、唇にキスをしていた。
これで菅原君の理性の“たが”が吹き飛んでしまった。
菅原君は彼を押し倒した。
胸を触られる。
「おっぱいが大きい」
「そんなでもないよー」
その時彼はかなり女の子っぽい声が出ていた。
「そんな可愛い声も持ってるんだ。やはり普段は性別がバレないように低い声を使ってるんだね」
などと言われる。
本人は今の声、どっから出て来たんだ?などと思う。
お股を触られる。
「やはり女の子なんだね」
「お願い。秘密にして」
「いいよ!ぼくたちだけの秘密だね」
菅原君の大きくなったペニスを感じる。
「しちゃいけないよね?」
などと菅原君が訊く。彼が“否定疑問形”で尋ねたのでマナは“しないで”という意味で頷いた。でも菅原君はマナが頷いたので“していい”という意味に取った。
ボクサーを脱がされる。その下にショーツを穿いているのが分かる。
「そうか女の子下着を見られないようにカモフラージュらこれ穿いてたのか。でもボクサーだと、お股に膨らみが無いことも一目瞭然だよ」
あ、そういえばそうかも。
ショーツを脱がされる。え?しちゃうの?ぼくしないでと返事したつもりなのに。
菅原君は自分のズボンとトランクスも脱いだ。
菅原君のちんちんが凄く大きい。男の子のちんちんってこんなに大きいんだ?なんか20cmくらい無い?ぼくが男の子だった頃、ちんちんがこんなに大きくなったことはない。やはりぼくは男の子としては不完全だったんだろうなと思う。菅原君は今にも“しよう”という態勢である。
「待ってこれ着けて」
と言って、マナは自分のスポーツバッグに手を伸ばし、その内ポケットからキルト生地の生理用品入れ(なんでこんなのが入ってるんだ?)を取り出し、その中から避難具(なぜこんなものがある?)を取りだして菅原君に渡した。
「あ、ごめん。そうだよね。するなら着けろだよね」
と菅原君は言い、開封して自分のペニスに装着した。
でも全然長さが足りない!
「全部覆われてないけど大丈夫かなあ」
「液の出てくるところが覆われてたらきっと平気」
「あ、そうだよね」
と言うと、彼は
「入れていいよね」
ともう一度訊いた。
今度はマナも「いいかな」という気分になっていたので
「うん」
と答えた。
それで菅原君はマナに入れて来た。
最初に小さな痛みがあった。でもそのあと物凄く気持ちいい感覚がある。
わあ。。。これがセックスの快感なのか。これ経験したら絶対くせになる、とマナは思った。
マナはぼーっとして菅原君の“運動”を受け入れていたが、20-30回の運動の後、突然マナに体重を預けてきた。
重たい!
どうも射精まで行って力尽きた感じだ。そうだよね。女の子は寝てればいいけど男の子は凄い運動するもんね、などと思う。
菅原君は一瞬意識が飛んだようだ。でもその後彼は
「ごめん」
と言った。
「なぜ謝るの?」
「自分の気持ちが抑えられなくてしてしまった」
「私もちゃんと同意したよ」
「あ、そうだよね」
「服を着よう。人に見られたらまずい」
「うん」
それでマナも菅原君も服を着て、何事もなかったかのように退出した。
この事件は夢にしては仮名Mも菅原君もどちらもちゃんと覚えていた。でもリアルの出来事にしては色々辻褄の合わないこともある。
・学校の更衣室はたくさん出入りがあるはずなのに、あの時他に誰も来なかった。
・誰も居ないのを確認して下着を交換したはずが、菅原君が居た。
(菅原君のほうは誰もいない更衣室で着替えていたはずが、マナが居たと言っている。女性の下着姿を目にして一瞬間違って女子更衣室に入っちゃったかと思ったらしい)
・あるはずの無い生理用品入れや避妊具があった。
それで結局,現実なのか夢なのか、よく分からないのである。
胡蝶の夢??
なおマナは、その後、100円ショップで同じ模様の生理用品入れを見て、思わず買った。また避妊具は『無いと絶対ヤバい』と思い、買うのが恥ずかしかったけど、本当にナプキン・パンティライナーと一緒にドラッグストアで買った。生理用品入れにはナプキン1枚、パンティライナー1枚と避妊具2枚を入れておいた。
ちなみにマナはまだ生理は経験していない。
12月10日(土).
クリスマスまでまだ半月あるが、今年はこの日に市のクリスマス・イベントが行われた、千里Uはこのイベントに合唱同好会の一員として参加する。合唱同好会の活動には1学期まではRが“時々”参加していたのだが、2学期以降はRが高校進学の関係で忙しくなったこともあり、Gたちの誘導で千里T→千里Uが参加していた。
去年は松原珠妃が来訪して凄い騒ぎになったのだが、今年来訪したのは、篠田その歌(しのだ・そのか)ちゃんという今年デビューしたばかりの子である。合唱同好会のメンツでも知っている子と知らない子がいたのだが、ファンクラブがどうも北海道中の会員に呼びかけたらしく、当日市民体育館の前は長蛇の列になっていたので驚く。
「そんなに人気ある子?」
「熱狂している子はあると思う」
「へー」
ともかくも中に入り、昨年と同様2階席で待機する。
(2階席は出演者だけが入れる)
1回目の登場。なんか凄い熱狂的な拍手と歓声の中、その歌ちゃんが入ってくる。クリスマスなのでサンタガールの衣裳である。伴奏者として白いドレスの少女が入ってくる。
「あの伴奏者若いね」
「中学生みたいな感じ」
「同じ事務所の後輩なのかもね」
先輩だったりして。
それでそのピアノ伴奏する中学生?の少女がMCも兼任で『ポーラー』、『シリウスな君』、『オリオン』という3曲を歌った。わりと上手い子だなあと千里は思った。
J小の吹奏楽部の演奏があって、次が千里たちの番である。セナのピアノ伴奏で、一青窈(ひとと・よう)の『ハナミズキ」』、ポルノグラフィティの『メリッサ』を歌った。
そのあと最後まで見ようと2Fに移動して、地元バンドの演奏や商工会の女声合唱団の演奏を見ていた。そして・・・
観客の祖入れ替えが行われる!
押し寄せて来たファンが多すぎて入れ替え制になったようである。客が入れ替えられるのを見ていた時、
35-36歳の女性(*21)が青い顔でこちらにやってきた。
「S中学合唱部の人たち?」
「同好会ですけど」
「あなたたちのピアニストさん、篠田その歌の曲弾けない?」
「何かあったんですか?」
「実はさっき、篠田その歌のファンが楽屋に押し寄せて。今回低予算だったのでガードマン付けてなかったもんだから」
「まさか、その歌ちゃん怪我したんですか?」
「いやそれはピアニストも務めた付き人の女の子が身を盾にしてかばってくれたから何とか無事なんだけど」
「そのピアニストの子が怪我したとか?」
「実はそうなのよ。軽い打撲で、数時間休んでれば治るだろうということなんだけど」
「それで今ピアノが弾けないんですね?」
(*21) 後にラッキー・ブロッサムなどのマネージャーも務めた谷津貞子である。この当時29歳である!この人はだいたいハプニングに弱く、何度も冬子に助けられている。この時も冬子がとっさに、その歌をロッカー!に押し込んで自分は前で頑張っていたので、その歌は無事だった。
「商工会の合唱団のピアニストさんにも訊いてみたんだけど、そういう若い子の歌は知らないと言われて。むしろ中学生の子たちなら知らないだろうかというので、こちらに来てみた」
「そういう話なら千里だな」
とみんなが言う。
「え〜〜〜!?」
と本人。
「この子、一度聞いた曲なら弾けるんです」
「それは凄い」
「初見にも強いし。譜面ありますか?」
「ある」
「だったら弾けるはず」
と映子は言う。
「じゃお願い」
と言ってマネージャーさん?は千里を連行するように連れていった。
楽屋の前には体格のよい男性が2人立っている。事件があったので急遽市の職員かなにかを立たせたのだろう。
マネージャーさんはその人たちに会釈して千里を連れ、楽屋に入った。
「この人が弾けるそうです」
とマネージャーさん。
「良かった」
と中学生の女の子。腕に湿布薬を張っている。
これが実は冬子と千里の本当の初対面だったのだが、この時のことは2人とも忘れてしまっている。
「譜面を下さい」
「これです」
と言って、少女は『篠田その歌・楽譜集』というシンコーミュージックの楽譜集を渡した、
「この3曲を演奏します」
と目次に赤いマーカーが付けられている。該当ベージにはポストイットも付いている。
楽屋にその歌は居ない。どうもステージでクリスマスツリーの点灯式をしているようである。そのあと、その歌の歌である。
「えっと・・・譜読みしないの?」
とマネージャーさんが訊く。
「譜読みしないほうが、うまく弾けることが多いので」
と千里が言うと
「面白い子ね!」
とマネージャーさんは言ったが、中学生のピアニスト(冬子)は頷いていた。
ああ、この子もきっと私と同じで初見のほうがうまく弾けるんだと千里は思った。
「伴奏者さんとMCさん出てください」
と進行係さんがいう。
それでその白いドレスの少女と一緒に出て行く。千里は合唱同好会で歌った後のセーラー服である。
ドレスの少女がMCをしている。やがて合図があるので千里は1曲目『ポーラー』の前奏を弾き始める。少し不安そうな顔をしていたその歌が千里のピアノの音を聞くと頷くようにして客席に向き直る。そして前奏の終わりと共に、彼女の(実は)出世作『ポーラー』を歌い始めた。
MCの少女は、その歌と会話しながら観客を笑わせたりしている。事件の直後なのに少女は何事もなかったようにおしゃべりしている。そして少女は言った。
「じゃ次の曲行きましょうか」
その歌(そのか)は言った。
「では『カシオペア』です。聞いてください」
千里はギョッとした。そんな歌は第1部では歌わなかったぞ。慌てて楽譜集の目次を見ると収録されている!
MCの少女も驚いたようで何か言おうとした。多分修正しようとしたのだろうが千里が左手の親指と人差し指でOKのサインを送ると頷いていた。何よりその歌はもう歌おうという姿勢に入っている。
それで千里は完璧な初見で『カシオペア』の前奏を弾き出した。その歌が歌う。千里のノリのいい伴奏に、その歌は気持ち良さそうに歌っている。そして物凄い拍手があった。
その歌もお辞儀をする。
「でも今回は、その歌ちゃん北海道とんぼ返りだね」
と少女が言う。
「そうなんですよ。今朝羽田から飛んできて。でも明日は横浜で仕事があるから明日朝一番の便で帰らなきゃ」
実はその1日空いていたところに留萌の仕事をねじ込んだのである。
「でも旭川空港に降りた時、大雪山の雪景色があまりにも美しくて感動しました。それから車で留萌に入って、留萌で新鮮なお刺身をいただいたんですが、お魚美味しいですねー。留萌が大好きになりました」
などとその歌は言っている、
「では最後の曲に行こうか」
「え〜〜!?」というお約束の観客の声。
「では最後の曲『魔法の扉』です」
とその歌は言った。
千里はOKサインを送る。少女も頷いて下がった。
それで千里の前奏に続いてその歌が(実はデビュー曲の)『魔法の扉』を歌い出す。
千里は伴奏しながら、この曲は16-17歳のアイドルに歌わせるような曲だなと思った。『ポーラー』や『カシオペア』、それに第1部で歌った2曲は20代のおとなの歌手に歌わせるような曲だったが。
千里はあらためて、その歌(そのか)を見て「ふーん21歳か」と思った。
実はその歌は1984年生まれなのだが、当時年齢をサバ読んで1986年生まれということにしていた。それでデビュー曲は可愛い歌が用意されたのである。しかし結局は『ポーラー』以降のおとな歌手の路線で売れていくことになる。
しかし当時のファン(10代後半の男子が主)にはこの『魔法の扉』や後に出した『青い写真』などのアイドル路線がうけていた。
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女子中学生・冬のOOOグラス(8)