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夕食は貴子の眷属・安芸百合がビーフシチューを作り、小糸がそれとご飯を給仕した。
(岩永先生や公世母は「やはり料理人も居たか」と思っている。これでこの家には最低4人の使用人がいることになる。掃除婦もいるかも、と思っている)
「ご飯が美味しい」
「ふつうの“きらら397”です。まだこちらのお米に慣れてないので、取り敢えず北海道のお米を普通に使ってます」
(実はサハリンが道具や着替えを持って来た時に一緒に持って来た)
「きららだったんだ!」
「ルクルーゼで炊いているから、炊飯器で炊くより美味しいかも」
「ああ、やはり炊飯器では限度があるよね」
「美味しい料理で売ってる飲食店の多くがご飯は炊飯器任せなのは困ったものですね。厚手鍋か釜で手炊きするべきですよ」
と貴子は言っていた。
寝る場所だが、公世の母は公世に割り当てられた部屋で一緒に寝て、岩永先生は玄関傍の空き部屋で寝た。この部屋は多分深川と姫路の連絡役になるミッキーが使うことになるだろう。
なお小糸は千里の部屋で寝た。サハリン・安芸百合は“離れ”(全体図でannexと書いた所)で寝た。
「さあ、そういう訳で、みんなセンター試験に向けて頑張ろう」
と千里(実は金色:Gが徴用した)は女教師のコスプレ(でもカチューシャが金色)でホワイトボードの前に立って言った。
前橋と七瀬にはセーラー服を着せた。九重・清川と南田兄弟にもセーラー服を着せようとしたが
「こんな格好で出歩いていたら痴漢として逮捕されます」
と言うので、彼らは上はセーラー服だが、下はズボンにした。スカートもあげたのだが「変な道にハマったらいけないから」と前橋に渡していた。
「勾陳さんは手遅れだよな」
「あの人は1年以内に強制性転換させられるか痴漢として死刑になるかだな」
「さて、救いようのない変態さんは置いといて、みんな中学1年の数学の問題からだよ」
「こんな所から始めて、1月のセンター試験に間に合うんですか?」
「10日で1学年分ずつあげていけば間に合うね」
「ひぇー」
11月8日の朝、姫路の新居。
やはり安芸百合が作り、小糸が給仕する朝御飯を食べる。そのあと貴子さんによくよく挨拶して、サハリン運転の車で丘を降りて行ったら麓に神社があることに千里たちは(正確には千里以外は!(*5))気付いた。
(再掲:この団地の図)
今までは北側のコンビニの横の道路から出入りしていたのでここに気付かなかった。今回初めて南側の道路から幹線道路に出ようとして神社に気がついた。鳥居が幹線道路から5mほど入り込んだ所にあるため、幹線道路からはこの神社に気付きにくい(50年くらい前の道路の線形改良のためこうなったらしい)。
「ここの地主神様にもご挨拶しなければ」
と公世母が言うのでそこの駐車場に駐める。
(*5) 千里は“神社センサー”の能力があり、近くの神社の方位とおよその距離が分かる。だから最初からそこに神社があることは意識していた。千里は他に“自販機センサー”や“コンビニセンサー”もある。しかし“トイレセンサー”は持ち合わせていない!
神社センサーを持つ人はわりと居る。
ここも“K神社”と書かれている。千里は神社の作りを見て「ああ、ここはK神社の遙拝所か」と思った。K大神自身が興味深そうに見ている(実際のぞいておられたので“この”千里は、このかたがK大神か、と判断した。先日挨拶したのは千里V)。
ここは鳥居や狛犬の雰囲気からどうも100年以上前から建っているようである。
・・・と千里が思ったら「この遙拝所は明治5年(1872)に建てられたんだよ」とK大神様が教えてくださった。133年経っていることになる。
お参りしてから引き上げてきていたら、バッタリと越智総次さんと遭遇する。越智さんは道着を着て竹刀を持っている。
「越智さん!」
「村山君、木里君、工藤君」
と向こうも驚いているようである。
「君たち姫路に来たの?」
「実は私たち3人とも来年の春から、姫路市内のH高校に進学することになったんです」
「3人とも?」
「はい」
「それは凄い」
「越智さんにもご挨拶に行かねばと思っておりました」
「君たちもしかしてこの近くに住むとか」
「そうなんです。橘丘新町に実は天野貴子さんが家を建てたんで、そこに下宿します」
「おお、天野さんも姫路に来たんだ!だったら毎朝ここの神社の錬成会に来なさい。私がここの師範に任命されたから」
「わあ」
「もうこちらに引っ越してこられたんですか」
「いや。完全に引っ越すのは子供が高校卒業してから」
「そう言っておられましたね」
「今は旭川と姫路を毎月往復している」
「大変だ」
「ジェット機が欲しい感じ」
「ジェット機。いいねぇ。村山さんお金があったら飛行機1台買ってくれない?神戸空港から旭川空港まで飛行機で飛べたら楽」
「では宝くじに当たったら」
「景気のいい話だ」
宝くじで飛行機買えるんだっけ?(*6)
実際には越智さんはほとんど姫路に居て、奧さんがまだ子供と一緒に旭川に留まっているようである。子供が高校を出たら奧さんもこちらに移動するということのようである。
「ここの錬成会は師範をしていた高校の先生が今年の春に明石に転勤してしまって、春から不在だったらしい。それで私が新たな師範になってくれと頼まれた」
「もしかしてこの神社と関わりが」
「妻の従兄が宮司をしているんだよ」
「へー」
「ぼくの家は姫中町だよ。ここから4kmくらいかな」
「へー」
越智さんは来年の春から、姫路市内で、警備会社の部長さんになるらしい。どうも現在既に月に15日(三週)くらい出社しているようだ。
パチンコ屋さんの社長!?になってくれという話もあったらしいが、給料の安い警備会社の部長のほうを選んだ。元警視となると、欲しがる会社はわりと多いらしい。
(*6) BeachJet400 (三菱MU-300. 2007以降はHawker400) とかの中古なら多分この時期に3億円くらいで買えたと思うので、宝くじで買える。しかし維持費が結構かかるはず。
この飛行機の燃費は425kn(787km/h)の速度で 345 kg/h. 神戸空港と旭川空港は直線距離で約1200kmなのでフライト時間はジェット気流を考慮しない場合1.52h となり、消費燃料は524kg=655L. 航空燃料価格を仮に70円/L とすると\45,860 となって片道の燃料代は(往復平均)4.6万円である。
2005年当時の新千歳−伊丹の航空運賃は 35600円である!
また自分で操縦するのでなければ高給取りのパイロットを雇う必要がある。MU-300 (Hawker400) はパイロットが2人必要である。他に駐機代や機体整備の費用も見ておく必要がある。
ともかくも3人および岩永先生はこの日の朝の稽古に参加することになった。3人とも神社の(女子)更衣室を借りて道着に着替え、防具も着けた。
男子で凄く強い本木(もとき)君という高校生がいて、千里・清香・公世の3人と手合わせする。むろん千里たちが勝ったが、今日は軽い手合わせなので双方本気では無かった。でも彼は
「強ぇー。君たち日本女子のトップスリーかも」
などと言っていた。
「この3人、今年の中学全日本選手権で1位と2位だから」
と越智さんが言う。
「ほんとにトップスリーか!」
と驚いていた。
彼も千里たちが姫路に引っ越してきたら、ぜひ頻繁に手合わせしたいと言っていた。
千里・清香・公世たちは、11月8日午後から留萌に戻った。
姫路(サハリンの車)伊丹空港15:00(ANA777)16:50新千歳空港(岩永先生の車)留萌
しかしこれで推薦入学組はほぼみんな行き先が決まった。
なお、サハリンは千里たちを送ってからいったん姫路に戻り、空(から)のトラックを運転して舞鶴に行き、11/8深夜のフェリーに乗る。そして11/9 の24時近くに留萌に帰着。取り敢えず早川ラボに駐めて休んだ。
留萌地方では11月8日夜から、みぞれが降り、9日には一時雪に変わった、10日からは本格的な雪が降り始めた。
今年は大雪の年で、新潟では12月22-23日に雪のために大停電が発生することになる。
鶴野先生は公世が帰ってきた翌日11月9日(水)、公世を最後まで熱心に勧誘してくれていた旭川L女子高に、工藤は行き先が決まったのでと、お断りの電話を入れた。
「どこに決まりました?」
「実は村山と、R中の木里さんをまとめて取ってくれた姫路のH高校に工藤も一緒に行くことになったんです」
「姫路ですか!(道外でホッとしている)しかしあの3人がまとめて入ったら、H高校は来年のインターハイの優勝候補になるかも」
「そうなればいいんですけどね。それでちょっとお願いがあるんですが」
「はい」
「L女子高さんはうちの原田には興味を持っていただけないかなと思いまして。」
「ああ、団体戦に出てる子で強い子がいると思ってました。なぜか全力で試合してない気がしましたが」
「実はちょっと事情があって」
と鶴野先生は沙苗について説明する。
・彼女は出生時は男児と思われ、男として出生届けが出された
・だから実は中学1年までは男子剣道部にいた。
・しかし女性になりたいという強い意志を持ち、それが認められ、中学には女子生徒として入学することが学校にも認められ女子制服で通学を始めた。
・小学4年生の時から女性ホルモンを飲み始め、睾丸は中学に入る前に除去した。つまり男性思春期を全く経験していない。
・中学1年の新人戦からは女子の部に出ることを認められ。その後、女子剣道部の一員として活動している。
・本人はあまり強すぎたら女性剣士としての自分の資格に疑問を持たれてしまうと考え、公式戦では(多分)7割の力で戦い、あまり勝ちすぎないようにしている。
・その後、体内に小さな卵巣・子宮が存在することが判明し、実は半陰陽であったことが判明した。生理も始まった。それで医師の診断書を元に法的な性別を女性に変更した。
「じゃ今は法的に女性なんですね?」
「そうなんです」
「陰茎はあるんですか?」
「ペニスは生理が始まったあと自然消滅したらしいです。排泄は女性の場所から出ます」
「自然消滅ですか!」
「たぶんホルモンの影響なんでしょうね」
「ああ。だったらうちの学校に入るのに何も問題はありません」
一度彼女の実力を見たいということだったので、翌日(11/10)のお昼過ぎに本人とお母さんを連れてL女子高を訪問した。向こうの顧問の先生と教頭先生が会ってくれた。
最初本人抜きで、鶴野先生と沙苗母だけで向こうの先生方と話す。
沙苗の内申書、全国模試の成績表、医師の診断書、戸籍謄本、更には本人のオールヌードの写真、そして現在の股間の写真までお見せした。
「うちに入るのには全く問題ありませんね」
とシスター姿の教頭先生は断言した。
そのあと沙苗も入れて色々話したが、向こうの先生たちは沙苗の雰囲気を気に入ってくれたようである。
「あなた、普通の女の子じゃん」
と教頭先生は言っていた。(教頭先生は修道会に勧誘したくなったのを我慢した!)
話し合っている内に夕方になったので、武道場に行く。剣道部員が来ている。沙苗は部員たちと手合わせしてもらった。
最初に1年生の子が出てくるが、沙苗の圧勝である。
3年生の部長さんが出てくる。沙苗はかなり本気を出した。結果2−1で沙苗の勝利である。
「強ぇ〜!」
「原田さんは実は今回の全日本中学剣道大会・男子の部で準優勝した工藤公世の事実上の練習パートナーだったんです。本人も出ていたら女子の部でBEST16くらいにはなった可能性があります。もし本気出したら」
という鶴野先生の言葉には沙苗本人が苦笑いしている。
「強いわけだ!」
「でも女子の部に出られるんですよね?」
「出られます。むしろ2度と男子の部には戻らないという宣言をしています。ただ本人はなかなか本気を出さないんです」
「ぜひうちに来て欲しい」
という多数の声。
それで沙苗は旭川L女子高に進学することになり、沙苗も留萌を離れることになったのであった。
沙苗が留萌を離れると聞いて、P大神も留萌Q大神も残念がっていた。
沙苗は特にQ大神には旭川から帰った翌日11月11日、訪問して詫びた。
「私の女性性器を成熟させていただいて、本当にありがとうございました。でも諸事情で旭川に行くことになりましたので」
「でも今年はまだお留守番できるな?」
「はい?」
「今日の夕方から出雲で神様会議だから今年も留守番頼む」
「ひぇー」
ということで今年も旧暦10月10日夕方-17日(新暦11月11日夕方-18日)、沙苗はQ神社で神様のお留守番をしたのであった。
また留萌Q大神と旭川Q大神の話し合いで、千里(U)は旭川Q大神がもらうが、沙苗は留萌Q大神がもらうことになった。だから沙苗は来年もたぶんこの時期には留萌でお留守番をすることになる。
11月11日(金).
公世は試験代わりに出してと言われていた小論文を書き上げ、H高校宛てに郵送した。(ちゃんと自分で書いた。ただし弓枝にかなり添削された)
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女子中学生・冬のOOOグラス(3)