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11月12日(土).
深川の新司令室に地下室を造る作業、そして1階の根太(ねだ)と床板を交換する作業が終わった。
千里Gは、作業をしてくれた参吾と三郎を姫路に移動させ、今度は姫路の立花元町の新司令室の改造をしてもらうことにした。
留萌に駐めていたトラックをサハリンに深川に持って来てもらい、大工道具や工具の類いを積み込んでもらった。一部余った材料なども積み込んだ。そしてサハリンに新千歳空港まで送らせ、2人は飛行機で伊丹空港に送る・・・つもりだったが、参吾が
「お姉ちゃん。あんたひとりで運転するのは辛いよ」
「襲ったりしないから3人交替で運転してかない?」
というので結局3人で交替で運転して小樽−舞鶴のフェリー経由で姫路に移動した。
3人は11月13日24時頃、姫路に到着した。
トラックは立花元町のほう(司令室)に付けた。
ここには、2人が寝泊まりできるユニットハウスを置いている。これはメーカーから買って、トレーラーで運んできて、ここに置いておいてもらったものである。
改造方針だが、こちらが深川より大規模な改装になった。
東側の庭を潰してここにプレハブ部品を繋ぎ合わせ家を拡張し仕切りを変更する。
(Before)
(After)
その前に、傷んでるっぽい屋根の改修をする。だいたい焼夷弾の直撃を受けた所の穴が空いたままである。
更に焼夷弾もそのまま御鎮座遊ばした!!!!!
「自衛隊に連絡したほうがよくない?」
「平気平気。雷管(*8)抜いちゃえば爆発しませんから」
と言って抜いてくれる。
これが漫画ならここで爆発するのだが、幸いにも爆発せず、焼夷弾はこの2人がお持ち帰りになった。ワイルドセブンごっこ(*7) をするとか言ってたが、危ない遊びで無ければいいがと千里Gは心配した(*9).
(*7) 原作では“ココナッツゲーム”と言及されている。とっても危ない遊びなので、良い子はマネしないようにしましょう。
(*8) 雷管と信管は似ているが、安全装置や遅延装置の付いているのが信管で付いてないのが雷管である。爆弾や銃弾は雷管である。銃弾が信管だったら、引き金を引いてから数秒後に発射される!手榴弾のは信管である。手榴弾が雷管だったらピンを抜いた瞬間爆発するので、抜いた人は確実に死亡する!
(*9) 3往復したところで眷属のリーダー“シネ”さん(*10)に叱られて取り上げられた。
(*10) シネは「死ね」ではなくアイヌ語で1のこと。アイヌ語で1-10は次のようにいう。
1.シネ 2.ツ 3.レ 4.イネ 5.アシクネ 6.イワン 7.アルワン 8.ツペサン 9.シネペサン 10.ワン
つまり6,7,8,9 は10-4, 10-3, 10-2, 10-1 と言っているようである。
さて屋根の“改修”をするつもりだったのだが・・・
「千里さん、これは屋根を交換しないと駄目ですよ」
「じゃお願い」
傷みきって“透水性のよい”屋根瓦を撤去。その下の野地板も腐っているので撤去。野地板には昔は普通の木材(バラ板)を使っていたのだが、今回は耐火性のある木片セメント板(壁の化粧板などにも使用されているもの)を使用する。これに防水性の高いアスファルトを浸透させたルーフィング(下葺き材)を敷き、耐久性の高いジンカリウム鋼板(*11)の屋根を載せた。瓦屋根に比べてぐっと軽くなったのでその上に太陽光パネルを載せても平気である。
「深川では太陽光パネル載せませんでしたね」
「あれは家の作りがちゃちだから、そんな重たいもの載せたら家が潰れる」
「ああ、確かに柱が細かったもんなあ」
この作業が終わったところで深川の家と同様、1階の天井・2階の床を外してしまう。これまでは2階の床が、雨漏りから1階を守っていたようである。
姫路の家の工事では手間の半分がこの屋根の改修(というより交換)だった。
(*11) ジンカリウム鋼板とは
a.鋼板に、Al 55%+Zn 43.4%+Si 1.6%の合金をメッキし
b.表面に自然石の粉末を吹き付けた(*12)
ものである。
ジンカリウムの語源が不明だが、あるいは Zinc Alminium からか? ちなみに亜鉛(zinc)のみでメッキした鋼板は“トタン”(*13)である!
基本的には金属屋根なのでとても軽い(瓦屋根の7分の1)が、表面が石なので耐久性がステンレス並みに高い。しかもステンレスに比べて静音性が高い上に日差しによる退色が無いのが特徴。ただ金属屋根の泣き所で夏は暑く冬は寒いので、別途対策が必要。またステンレス同様、加工性が悪いので施工業者に技術が必要。
今回は作業しているのが、鉄骨を軽く手で曲げ、鋸無しで金属板を切断しちゃうし、 溶接機無しで、手でギュッと押さえつけただけで金属同士をくっつけてしまう人たちなので全然問題無い。
しかし2tトラックは、廃材を破棄する場所へ運ぶのに大いに役立った。
(*12) ジンカリウム鋼板で自然石の吹きつけまでしてないものは“ガルバリウム鋼板”と呼ばれる。1972年にベスレヘム・スチール社が開発した。亜鉛メッキの“トタン”に比べて、亜鉛とアルミニウムの合金でメッキしたことで耐久性が大きく向上したがそこにシリコンを混ぜたのが、オリジナリティなのだろう。ガルバリウムの名前は、蛙の電池の実験で有名なルイージ・ガルヴァーニから来ている。
(*13) “トタン”の語源は不明らしい。ポルトガル語由来とかヒンディー語由来とか言われる。トタンとよくごっちゃにされる“ブリキ”は鋼板に錫(すず)でメッキしたもの。こちらはオランダ語の blik からきたものという。
屋根の作業が終わった後、地下室を作り、2階への階段のあった所に地階への階段を造る、
(上に行くものが無くなり、代わりに穴が出来て下に行くものができる)
1階の床板・根太(ねだ)もボロボロだったので全交換した。根太は江差ヒバ、床板は白樺を使用したが、ミンタラ木材さんから提供された製材を使用している、床板の上に畳は敷かず、防音性・断熱性のため二重床板にして、カーペットを敷いた。
今回の加工賃は深川で100万円、姫路で150万円(うち半分が屋根代)かかっているが、全部A大神に借りた!
しかし参吾さんたちは姫路での作業も半月でやってくれて、11月末までには姫路の司令室も使える状態になった。
前述のように、参吾さんたちには作業中、家の傍に置いたユニットハウスで寝泊まりしてもらい、食事はサハリンが毎日運んでいた。ほかにお小遣いも渡していたが、
「姫路の魚も美味しいですね」
「姫路の酒も美味しいですね」
などと2人は言っていた。彼らは九重たちみたいな無茶な飲み方はしない。
彼らに深川の家の改造を先にしてもらったのは雪のシーズンになる前に北海道側の改造をしたかったからである。
新早川ラボに練習に来ている、如月や詩歌たちから
「新人戦に向けてたくさん練習したいので、練習場をもうひとつ増設したりできませんよね」
という要請があったので、千里Rは九重たちに指示して、拡張してもらうことにした。
「君たちなんでセーラー服とか着てるの?」
「千里さんが着せたんじゃないですかぁ!」
「あ、ごめんごめん」
きっとGあたりの趣味だなと思った(実はAである)。
それで彼らに設計図を書かせたが
「あと柱を2本追加して。強度が足りない」
と言って修正させた。
「強度が分かるんですか」
「見れば分かるじゃん」
と千里Rが言うと九重と清川が顔を見合わせていたので、千里は何だろうと思った。
千里Rはこの機会に元の建物部分にも鉄骨の柱を追加させた。ここで今のより太い鉄骨を指定した。
↓拡張後の新早川ラボ(再掲)
(千里や清香はここの地下で暮らしている)
材料費は床に使う江差ヒバは本来300万くらいかかるところを千里Gの人脈でわずか50万円で仕入れた。壁などに使うミズナラは、南田兄の顔でタダらしいのでありがたくタダで使わせてもらい、九重たちの作業の手間賃は「日本酒5-6升」ということで母里酒造の日本酒を6本あげたら2日で拡張してくれた。既存部分の柱追加もそのあと1日でやってくれた。
Gの人脈の製材所というのは、深川司令室や姫路司令室の材料を供給してくれた、前述のミンタラ製材所である。
しかしお化粧させても女に見えない気がするこの4人がボトムはズボンとはいえ、セーラー服を着て作業しているのはやや不気味だった。如月は
「何かの罰ゲームですか?」
などと聞いていた。
なおここの屋根は元々はスレート屋根だったが、傷んでいたので今年春にトタン屋根に交換させている。ここは元々どこかで倉庫として使われていた建物である。今回拡張した部分もトタン屋根を載せた。
見た目があまり良くないトタンを使ったのは予算が厳しいこともあるが、元々のスレートだと重すぎて現在の造りでは持ちこたえないと判断したのもあった。トタンならスレートの3分の1の重さだ。
きっと元々の倉庫は、構造設計をきちんとしてなかったのだろうとRは思った。(あるいは設計図を守らなかった手抜き工事)
11月14日(月).
天野道場の土地について市役所の方から
「年内に明け渡してほしい」
との連絡があったので、千里Vは、玄武と青龍に命じてそこに“置いて”いるユニットハウスを、取り敢えず旧早川ラボの所に移してもらった。更に基礎・配管・便槽なども撤去して完全な更地にしてもらった。むろん汲み取りをしてもらってから便槽は撤去する。夏なら雑草が生えるのを防止する黒いシートを張るところだが、11月だからいいだろうということでそのままにした。
それで市のほうには、
「空きましたから自由にどうぞ」
と連絡し登記移転に必要な書類も郵送しておいた。
そこまでの作業が終わったところで旧早川ラボに持って行ったユニットハウスは元々そこに置いてあった管理人室(これも元々はユニットハウスの部品)と繋ぎ合わせてもらった。
結果的にこの家は2DKになることになる。
10月31日以降、道場の建物を使用してバスケット練習をしていた留実子たちは
「あ、管理人室が大きくなってる」
と言った。
中を見た千里は「ああ、あのふたつの家が合体したのか」と感心した。
「セックスするならそちらの部屋でしていいよ。見ないから」
「いや自粛しておく」
実際には鞠古君のペニスがまだ挿入可能なところまで堅くなってくれないようである。なお2人は鞠古君のペニス切断手術の前に1回だけセックスしているので、留実子は処女ではない。
11月14日(月).
第7$$丸の保険金が下りて500万円ほどが支払われた。
しかしそれで岸本さんと武矢は200万ずつを受け取り、ふたりとも船員さんたちのお給料を払うために借りていた借金は完済することができた。それで津気子にしても岸本さんの奧さんにしてもホッとした。
11月15日(火).
紀宮清子内親王殿下と黒田慶樹氏の結婚式が帝国ホテルで行われ、清子殿下は皇族の身分を離れられた。
11月17日(木).
千葉県の一級建築士・姉歯秀次(以下A)が、大量の高層建築物の構造計算書の偽造をして耐震強度を偽装していた事件が発覚。Aが作成した構造計算書に基づき建築された多数のマンションで弱い地震でも倒壊する恐れがあることが判明し、大パニックが起きる。
この事件では当該建築士は不動産会社や建築会社からの圧力で偽造したと主張。耐震強度の偽装がされていた物件は21にも及んだ。この事件に関しては組織的犯罪か疑われたものの、裁判ではAの個人犯罪とされた。ただし彼に耐震偽装させていたとされた3つの企業(ヒューザー・シノケン・木村建設)の社長も起訴され、いづれも有罪判決を受けている。また発注していた会社のひとつ、ヒューザーは破産・消滅した。またヒューザー物件の検査を行っていたE社も随分批判された。
この事件ではAが、高級車を何台も買い、また妻以外に愛人を囲ったりしていたことが暴露され、世間の目は極めて冷たいものになった。
この事件ではAに耐震計算を依頼していた設計事務所の社長、およびA自身の妻が自殺している。
この事件をきっかけに全国で耐震強度の再調査が行われ、大量の耐震偽装が発覚した。
この事件の後、耐震計算をするソフトは偽装が困難なように改訂され、また耐震設計専門の資格が創設されるなど、対策が進んだ。
制度の改正は翌年夏頃までに行われたが、千里はこんなに法制度が改定されたら、あのいかにも潰れそうな針間工務店は仕事が無くなるんじゃないかと心配した。しかしかえって増えたらしい!!広沢の設計はそれまで「建材使いすぎ」と言われていたのが逆に「あんたの所の設計は安心だ」と言われるようになったという。
千里は「せめてあの建物は直そう」と言って、“大学生になった”九重たちに余っているユニットハウスを持っていきポンと置かせて、荷物もお引っ越しさせた。それで少しは“見た目の信頼度”は上がった。またそこの工務店の雑用などもさせて広沢の負担が軽くなるようにした。
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女子中学生・冬のOOOグラス(4)