広告:ここはグリーン・ウッド (第1巻) (白泉社文庫)
[携帯Top] [文字サイズ]

■女子中学生・冬のOOOグラス(19)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

1月8日(日).
 
一般的な鏡開きは1月11日ではあるが平日なので、留萌Q神社では今年は1月8日の日曜日に、鏡開きでぜんざい(*28) を振る舞うイベントが行なわれ、長蛇の列ができていた。町外れのP神社でもやはりこの日にぜんざいの振る舞いをした。それでどちらの神社もお客さんが多く、巫女さんたちは大忙しであった。
 
Q神社には千里Uが朝からご奉仕に行っていた。一方のP神社は1月3日まではRがご奉仕していたが「疲れたー。もう消えるー」などと言っていたので4日以降は千里Y1を電話で呼び出して!午後だけ勤務させていた。Rは午後は本当に消えるのではなく、新早川ラボで寝ているようである。
 

↓ ↑ Bottom Top

(*28) “ぜんざい(善財)”と“おしるこ(お汁粉)”の違いについては実に色々な説がある。1990年代頃に誰かが言い出したのは
 
・関東では汁の少ないのがぜんざいで、汁の多いのがおしるこ
・関西ではつぶあんがぜんざいで、練りあんがおしるこ
 
ところが複数の人がこの説について追加調査したところ、事態はそう単純ではないことが判明している。上記の説については多数の反論が出ており、同じ関東・関西でも地域?などによって、この区別通りにいかないケースが多数報告されている。
 
ぜんざいとおしるこの区別について、一般的に言われるのは下記のようなことである。
 
・白玉を使うのがおしるこ、餅を使うのはぜんざい
・練りあん(*29) を使うのがおしるこ、粒あん・小倉あん(*29) がぜんざい
・汁気の多いのがおしるこ、あんこがたくさん入ってるのがぜんざい
 
↓ ↑ Bottom Top

・おやつで食べたらおしるこ、ごはんとして食べればぜんざい!
・おしるこは飲み物!、ぜんざいは食べ物
 
お餅を使っていても小餅ならお汁粉という説もある。また丸餅ならお汁粉で切り餅ならぜんざいという意見もある。また“こしあん”については、練りあんと同類とみなしてお汁粉だという意見と、つぶあんの同類とみなしてぜんざいだという意見がある。餅を焼いて入れるか鍋の中で煮るかの差だという意見もある。
 
またそもそもぜんざいとおしるこは同意語という意見もあり、両者の区別は人による!としか言いようが無い。
 

↓ ↑ Bottom Top

(*29) こしあん又は“潰しあん”に茹で小豆を加えたものを小倉あんという。つぶあんに似てるが、あずきの形がはっきりしているのが特徴。粒あんはたいてい崩れていて形が必ずしも残っていない。
 
なお“潰しあん”とは、小豆の形が残らないように完全に潰すが裏漉ししないので皮か残っているもの。
 
練りあんとは乾燥あんこ(さらしあん)を水で戻したもの。見た目は漉しあんに似ているが、生のあんこを裏漉しした漉しあんより“こな”っぽさが強い。昔は練りあんを使用したお菓子が結構あったが近年は、生あんに切り替えているメーカーが多い。家庭でも昔は練りあんが良く使用されたが最近はビニールのパックに詰められた生あんが簡単に入手できるのでそれを使う人が増えた。
 
↓ ↑ Bottom Top

昔は小豆を茹でてあんこを作るのが大変だったから、水で戻すだけで済む練りあんが使用された。しかし現代では“水で戻すのが大変だから”そのまま使用できるパックに入った生あんが使用されるようになった経緯がある。小規模なお菓子屋さんやパン屋さんでも、パックの生あんを使うところが増えている。
 

↓ ↑ Bottom Top

さて、この日起きたことは複雑なのだが、順を追って見て行く。この日、千里Gは東海地方某所に行っていてVがひとりで指令室を見ていた。コリンはGに付いていっていた。ミッキーとサハリンは姫路に行って清香と公世のサポートをしており、こちらの補助は星子しかいなかった。
 
(ミッキーは留萌にいたのをコリンが東海のGによばれていったので、代わりに姫路に行った)
 
13時過ぎ、P神社で事態は発生する。
「お餅が足りないみたい。小豆と紙の容器・割り箸も。誰か買ってきて」
と客が多いので出て来てくれている浅美さんが言う。
 
「私が行って来ましょう」
と善美が言ったものの“おとなの巫女”が浅美ひとりになるのは不安がある。それで
「悪いけど千里ちゃん行ってきて」
と言って1万円札を2枚出す(あとでちゃんと精算する)。
 
↓ ↑ Bottom Top

それで千里(Y1)は荷物持ちに小5のサクラを連れてバスで市街地に向かったのである。
 
司令室の千里Vはやばいなあと思った。市街地にはQ神社で千里Uがご奉仕している。しかしYが行くと思われるスーパー・チューオーはQ神社から200mほど離れている。
 
「接触は起きないかな・・・起きないことを祈ろう」
 
この子はいつも適当である(ある意味千里らしい)。
 

↓ ↑ Bottom Top

それから間もない13:05頃、新早川ラボで稽古をしていた1〜2年生たちの間からこんな声が出る。
 
「今日はP神社もQ神社もR神社も鏡開きしてたよ」
「おぜんざい食べたいね」
 
それで如月が、わざわざ地下で仮眠している千里(R)のところに行って
 
「千里せんぱーい、おぜんざいが食べたいです」
と言った。
 
「ああ、鏡開きだもんね」
 
それで千里(R)は新管理人のカノ子に言って車を出してもらい、ジャスコまでお餅とあんこ、メラミンのお椀に竹箸、そして大きなお鍋!を買いに行ったのである。お留守番は沙苗と道場主の道田さんにお願いする。
 

↓ ↑ Bottom Top

13:20頃、千里Rとカノ子がジャスコに到着する。そして買物を始めた。
 
そして13:30頃、今度はQ神社でも
「お餅と小豆が足りなーい。誰か買ってきて」
と香取巫女長が言った。
 
「私が行ってきます」
と細川さんが立ち上がる。
 
「お願い。餅は20kgくらい買ってきて。小豆も沢山。紙カップと割り箸もね」
と言ってまた表のほうに行く。
 
細川さんは千里(U)に
「千里ちゃん、貴司来てた?」
と訊く。
「まだですけど」
「全くあの子、肝心の時に役に立たないなあ。千里ちゃん、荷物持ちに付いてきて」
「はい」
 
それで細川さんと千里Uが出て行く。
 
「あ、やばくない?」
と司令室の千里Vは思った。
 
もうすぐYが市街地に到着する。もし同じスーパーに行ったら・・・と思ったら細川さんたちはジャスコに行くようでる。でもジャスコにはRが行っている。どちらかで接触が起きそうな気がする。
 
↓ ↑ Bottom Top


「あっ、そっちの方角はやばい」
 
細川さんは神社の駐車場でミラジーノに千里と一緒に乗ると、神社の北に向かった。神社の北方にはJ町バス停があり、その近くにスーパー・チューオーがある。そのバス停には今、千里Y1とサクラが乗ったバスが接近中である。細川さんはそこの交差点を右折してジャスコ方面に向かうつもりのようだ。
 
この2人の接近の場合、先日のVの怪しげな“原子分子理論”ではY1のほうが消えることが予想されていた。
 
「星子さん、セーラー服着てクリーム色のコートを」
「はい」
 
それで彼女に3万円入りの財布も渡す。
 
バスが到着して乗客が降り始めた時に、細川さんの車が交差点に到達した。
 
Yが消えた!!
 
↓ ↑ Bottom Top

Uに吸い込まれるように消えた。
 
「やはり!」
 
Vの“原子分子論”による予測通りである。
 
「星子さん、P神社のYの代理を」
 
「えっとP神社側というと」
「サクラちゃんと一緒にP神社の追加のお餅と茹で小豆、紙カップ・割り箸をチューオーに買いに来た」
「分かりました!」
 
サクラはキョロキョロしている。自分より先に降りたはずの千里がその辺りに見当たらないのである。そこにVに転送された星子が姿を現す。
「サクラちゃん、ごめんごめん」
と星子はサクラに声を掛け、スーパー・チューオーに入っていった。
 

↓ ↑ Bottom Top

さて細川さんと千里Uを載せたミラジーノは郊外にあるジャスコ留萌店に向かっていた。細川さんが近くにもスーパーがあるのにわざわざ遠くまで行ったのは近所で調達していると参拝した後チューオーに流れてくる客も多いので、なんか近場で調達してるように思われるとありがたみに欠けるからである。
 
さてそのジャスコには新早川ラボの鏡開きのためお餅を買いに来たRが居る。Rには早く帰ってほしいと思ったのだが、難しい問題が起きていることに気付く。
 
つまり留萌市街地からジャスコまでは一本道なので、Rが今すぐ帰途に就いてもRの乗った車とUの乗った車はどこかですれ違う。その時まず確実にUが消える。
 
13:45、VはRに直接呼びかけた。
 
↓ ↑ Bottom Top

「ロビンちゃん、今そちらにアーシュラが近づいてるんだよ。Q神社で足りなくなったお餅の補充に細川さんと一緒に」
「それ向こうが消えるよね?」
 
「うん。だからロビンちゃん、車で帰るんじゃなくて瞬間移動で帰ってほしい」
「え〜?待って、会計してからでないと万引きになっちゃう」
「うーん・・・」
 
困ったことに、Rはひとりで買い物しているのである。カノ子は人が多くて疲れるだろうからといって車で休ませている。
 

↓ ↑ Bottom Top

それでRが会計の所に行くのだが、日曜なのでここに長蛇の列ができている。
 
「ああ、間に合わない」
 
Rがレジの列に並んでいる内に細川さんと千里Uの乗った車が到着してしまった。そして千里Uはふたりがジャスコ店内に入ったところで30mルールで消滅した。
 
「あぁぁぁぁ」
 
取り敢えずロビンに直信する。
「アーシュラが消えちゃった。何とかするからロビンはできるだけ早く、普通にカノ子さんの車で帰って」
「分かった」
 
それでVはやむを得ないので自分がUの消えたポイントにジャンプした。
 
これで司令室は空(から)になった。
 

↓ ↑ Bottom Top

「あら、千里ちゃんどこに居たのよ?」
とキョロキョロと千里を探していた細川さんが言う。
 
「すみませーん」
 
それで千里VはできるだけRと距離を保つようにして行動した。VとRの組み合わせではどちらかが消えることはないが、だからこそ誰かが間近に2人の千里を同時に見てしまう危険がある。
 
細川さんと(Bを装った)Vが買い物をしている間にRはレジを済ませ、13:55頃店外に出てカノ子の車に乗る。Vはホッとした。これで何とかなると思ったのだが、これが大きな油断であった。
 

↓ ↑ Bottom Top

買い物が終わり、レジも通って帰ろうとしていた時、14:10頃、千里Vは入口から5-6人の男性が騒ぎながら入ってくるのを見る。その中に武矢の姿がある。実は自動車教習の時間の合間にジャスコに来たのである。ここは自動車学校から直線距離では1km程度しか離れていない。
 
千里はセーラー服姿である。これを父に見られると話がややこしくなる。
「すみません。先に車に行ってます」
と細川さんに言うと、別の出口に向かって走り出した。これが14:11頃である
 
千里Vは出口を見てそのまま走り抜けた。その時、なんか
「ゴン!」
という大きな音が立ったのは何だろうと思った。が荷物はちゃんと持ってるし、大丈夫かな?と思い、そのまま車の所まで走って行き、細川さんを待った。
 
↓ ↑ Bottom Top

ここで再度確認しておきたい事実。
 
千里Yと千里Vはあまりよく目が見えない!
 
千里Yは視力検査等受けると、検査表のランドルト環が見えなくてもどちらが空いてるか“分かる”ので検査の数値は視力1.5 などと出る。でも実は全然見えてない。見えるかどうかの基準では0.1の環でも実は調子次第では見えないこともある。Vも同様である。
 

↓ ↑ Bottom Top

一方細川保志絵は
「千里ちゃんどうしたの?」
と言って後を追う。そして千里が出口の“透明なドア”に激突!して大きな音を立て、倒れるのを見る。
 
「千里ちゃん!」
と言って駆け寄る。
 
千里が激突したドアはその衝撃で開いたり閉まったりして揺れている。そばにいた女性が完全に開けた。
 
保志絵は千里が意識を失っているようなのでビックリして
「千里ちゃん」
と声を掛ける。脳震盪などを起こしていてはいけないので身体を揺すったりはしない。
 
「なんか凄い音したね」
と男の人が声を掛ける。
 
「俺も実はここぶつかったことある」
「透明すぎるのも困ったものだ」
「特にこのガラス、アンディフグ加工とか何とか(*30)言って曇りにくい加工がしてあるらしいんだよね」
 
↓ ↑ Bottom Top

「すみません。119番を」
「よし」
と言って、その男の人が携帯電話を取り出す。
 
が、
 
彼は動作をやめた。
 
「女の子どこ行ったの?」
「あれ〜〜!?」
 
千里の姿が見えないのである。かき消すように消えてしまった。
 

↓ ↑ Bottom Top

(*30) きっとアンティ・フォグ(Anti-fog)加工の間違い。フォグといえば霧だが(mistより濃いもの)ガラスが曇ることもフォグという。
 
アンディ・フグ (Andy Hug 1964-2000) は格闘家。細身の身体で強敵を倒すので、日本では物凄い人気だった。「かかと落とし」で有名。日清「強麺(ごうめん)」のCMにも出ていた。
 
fog/mist/haze は、だいたい日本語の霧(きり)靄(もや)霞(かすみ)の感覚に近い。ただしヘアスプレーなどから出るものはミストという。
 

↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 
女子中学生・冬のOOOグラス(19)

広告:akazumoms-耐熱ウィッグ-特注上質-キレかわセミロング-フルウィッグ-クシ、ネットつき)-ダークブラウン