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8月8日(月).
紀美・貞美はこちらの中学(S中)に正式に転校することにし、真理さんから書類を送ってもらってコリンが保護者代理になる形で手続きをした。
それと同時にふたりをジャスコ内の制服を作っているお店に連れて行き、採寸してもらって、S中学の制服を頼んだ。
「あ、セーラー服なんですね」
「紀美ちゃん、詰め襟の学生服着たかった?」
「そうだなあ。詰め襟よりセーラー服のほうが可愛いから、この中学では女装で通おうかなぁ」
「お姉ちゃん、女装すれば女子中学生で通るからセーラー服にしなよ」
お店の人はたぶんジョークと思ってくれた!
転校の書類を見て、紀美たちが大阪に住んでいたことをコリンは知った。やはり藤子さんの所にいたんだろうなと思う。でも千里には報告してない。千里はそんなことに興味を持たないだろう。
(コリンとミッキーは本来千里Rの眷属である。星子はGの眷属。小春は本来Yの眷属だが、現在YがBと合体していることでBに従っている。小町と小糸はこの後、結局Vに従うことになる)
紀美は来年は留萌市内のS高校かK高校に進学するつもりである。紀美は頭はいいのでK高校に合格しそうである。K高校は女子生徒が少ないので、紀美は男子生徒を多数侍らせる“女王様”になるかも!?
8月8日(月).
貴司は、その日部活が休みだったので、ジョギングでQ神社まで行き、いつものように倉庫部屋で漫画を読んでいる。キリのいいところで巫女控室まで行き、千里を呼び出してもらう(直接中には入らない:巫女さんは着替えている最中の可能性がある)。
「千里、もし時間が空いてたら、バスケ練習しない?」
「貴司、なんか凄い久しぶりだね。元気してた?」
久しぶり??だって10日くらい前にも手合わせしたじゃん1?それとも何かで怒ってる??
(11日前の7/28に手合わせしたのはG)
千里がジャージに着替えてくるので神社の駐車場に行き、1on1をするが、千里は貴司に全然勝てない。いつもは2割くらい突破するのに。
「本調子じゃないみたい。呑涛まつりとかで忙しかったから疲れてる?」
「うーん。何か思うように身体が動かない感じ(←寝過ぎたせい!)」
「やっぱり疲れが溜まってるのかな。ごめんね。今日はこのくらいで上がろうか」
「うん、ごめんね」
それで社務所のほうに戻ろうとする。
えっと・・・千里キスしてくれないのかな。いつもはここでキスしてくれるのに。
(いつもキスしているのもG)
「千里キスしない?」
「え?キス〜?恥ずかしーい。また今度ね」
え?恥ずかしい!?だっていつもキスしてくれるのに。やべー。何かで怒らせたかな?貴司はあの件だろうか、あちらの件だろうか?と悩んだ。
8月10日(水).
千里GとVは千里Bに少し“リハビリ”をさせることにした。それで千里B(+Y)がQ神社の巫女控室で待機している時、コリンがそこに行って言った。
「千里、あんた夏休みの宿題まだ全然やってないでしょう。これ新学期が始まるまでに片付けてよね」
と言って、未着手の宿題をドーンと置いた。
「これ全部やるの〜?」
「だってあんた全然してないんだもん」
「こんなにたくさん、できないよー」
「まあ頑張ってね」
「ひぃー」
「ああ、宿題してるところ全然見ないなと思ってた」
と近くに居た映子も言った。
その日、千里がQ神社でのご奉仕を終えて、とぼとぼとバス停に向かう。そこに再度コリンが現れる。
「千里さぁ、自宅に帰ったら、たくさん家事しないといけなくて、落ち着いて勉強できないてしょ?だから集中して勉強できる場所を提供するから」
「そういえば私、しばらく家に帰ってない気がする」
「そちらは何とかなるからこちらにおいで」
「うん」
それでコリンはジョギングで、元天野道場があった場所に来た。
「ここのおうち自由に使っていいから。これここの鍵」
「誰のお家?」
「天野貴子さん」
「きーちゃんか!彼女にもしばらく会ってないなあ。元気してる?」
「うん。元気元気。貴子さんの家なら遠慮いらないでしょ」
「うん。じゃここで勉強頑張る」
「冷蔵庫に食料入れておいたし、鍋とかも一応揃ってるから御飯は適当に食べて。用事があったら、小春ちゃん呼べばやってくれるだろうし」
「そうだね」
「じゃ宿題頑張ってねー」
と言ってコリンは家を出てから、Gに転送してもらって、C町の自宅(小春の家の隣)に帰宅した。
それで以降、千里B(+Y)はここで夜は寝て、朝になるとQ神社に行ってご奉仕し、終わるとこの家に帰って宿題を頑張るというパターンになる。両者の間は2kmほどあるが、この“最弱の千里”でもジョギング10分程度で到達できる。
もっとも千里Bは1年以上学校の勉強をしてなかったので、かなり苦労していたようであった。英語や国語、それに元々得意な数学は何とかなるが、理科や社会は「分かんないよー」と言っていた。
一応ここには中学1〜3年の教科書・参考書や辞典類を置いている。調べ物をするのに使える、ネットに接続できるパソコンも置いている。ネット接続は京ぼん(AH-K3001V 2004.5発売) (*48) を使用している。
(*48) この京セラ製PHSを使うと定額制でパソコンをネットに接続することができた。それまでPHS/携帯自身から定額制でネットを利用できる端末はあったものの、PHSを通してパソコンを定額制でネットに接続できるのは、この端末が初めてで、パソコンを持ち歩く人たちの間で爆発的な人気を得た。この年の11月には、三洋からも同様のサービスが利用できる洋ぽん(WX310SA)が発売された。
元々 Air H゛Phone (日本無線製 AH-J3002V) という端末があった。H゛は“エッヂ”と読む(Hに濁点が付いたもの)。これはDDIポケットのPHSで、初めてインターネットに対応した端末で、これが愛用者の間で、エアエッヂ・フォン→アヂフォン→アジポン→味ぽん、と呼ばれた。京ぽんはこの系統に属する端末で京セラ製ということで“京ぽん”と呼ばれた。
お盆期間中、8月12-15日はお寺だけでなく神社も忙しいが、善美は先週の呑涛まつりの時と同様、無難に神社の仕事をこなした。元々彼女がソフトな性格なので、純代・広海などの高校生巫女たちとも、中学生・小学生の子たち仲よくしており、明るく勤務していたので、宮司も菊子もほっとしていた。
なお、8月5日以降にP神社でご奉仕した千里は実際には星子である。P大神には「事情があってしばらくお寄りできませんが、用事がありましたらすぐ参りますので」と千里Yの振りをした千里Vが、お断りしている。
8月12日(金).
札幌でパーキングサービスのライブがあり、司と雅海はまたパトロールガールズの一員として参加した。前日の11日に高速バスで札幌に出て来て前泊。12日の朝集まってお昼からの公演で踊った。
これまでは前日の夕方に貴子さんに女の子に変えてもらい、公演後の夕方に男の子に戻してもらっていたのだが、今回は2人とも最初から女の子なので、事前の性別変更の必要性は無かった。
でもライブ終了後に2人がホテルで休んでいたら貴子さんが2人の部屋に出現した。
「Hey girls, Do you wanna keep being cute girls from now on, or you wanna be dirty boys again by all means ?」
「ぼく法的にも女の子になっちゃったんです。だからずっと女の子のままでいいです」
と雅海は言った。
「へー。意外と早い展開になったね。司ちゃんは?」
「ぼくは今性別変更の申請中だけど、これが認められたら法的にも女子になります。だからぼくも女の子のままでいいです」
「ふーん。君は最初から女の子になりたいんだと思ってたよ」
と貴子さんは言う。
まあスカート穿いて道を歩いてたら、そう思われるかもね!
「じゃ2人とも性別変更しなくていいのね?」
「はい」
と2人は答えた。
「でも法的な性別を変更して学校でも女子生徒になった上で実はこっそりちんちんを持ってるというのも魅力的じゃない?」
などと貴子さんは誘惑する。
「ちんちんなんて邪魔なだけだから要りません」
「ちんちん付いてたらおしっこの出方が凄く変だから、いいです」
と2人は言う。
「了解了解。性別以外のことでも何か助けてほしい時は気軽に呼んでね」
「分かりました!」
「おっぱいからミサイルが撃てるとか目からレーザービームが出せるという改造も受け付けるけど」
「それ人間辞めてる気がします」
8月12日(金).
夕方、武矢たちの船は帰港したが、このあと1週間、お盆休みで休漁する。次の出港は、8月22日(月)である。
この日も玲羅は自分で新しい炊飯器を使って御飯を炊き、また神社で熊カレーをたくさん買って帰って来た。武矢は満足そうにカレーを食べていた。
「千里は?」
と武矢は訊いたが、母は
「何か学校の研修で旭川に泊まり込んでるみたいよ。帰って来るのは多分22日」
と言っておいた。
しかし玲羅は「お父ちゃんが一週間家にいるなら私はずっと神社に居よう」と思った。なお、遅くなった場合は善美さんが送ってくれるはずである。
武矢はこれまでは休みの時は「温泉行こう」とか「泊まりがけの旅行に行こう」とよく言っていたのだが、今回はそういうことを言わなかった。ただ何度か岸本さんや福居さんの所に行き、何か話していたようである。
8月12日(金).
この日から3日間、S中のバスケ部は市内のお寺を借りて合宿を行った。これには剣道部の波頭由紀、バレー部の風野真鈴・広瀬治実の1年生3人も参加してくれる。初日学校の正門の所に集合して、これからジョギングでお寺に向かうよ、と言っていたら、正門の向かい側にあるQ神社の御旅所から千里が出てくる。
数子は千里に声を掛けた。
「ねぇ、千里。これから3日間、バスケ部の合宿するんだけど、千里参加しないよね?」
「バスケ?そういえばもう何ヶ月もしてないなあ」
何ヶ月もしてないって、半月ほど前に一緒に練習したじゃんと思う。
「だいぶ身体動かしてないから足手まといになるかもだけど、やろうかな」
「歓迎歓迎」
それで千里は御旅所に戻ってジャージに着替えてきたので、一緒にお寺までジョギングした。
(スポーツブラを含む着替えを転送したのはG)
それで練習を始めるとやはりスリーは絶好調である。さっすが!と思う。千里のスリーを初めて見た1年生3人がびっくりしてる。
特に剣道部の波頭由紀は
「千里先輩って、剣道だけでなくバスケもこんなにうまいんだ!」
と感心して見ていた。
ただ“この”千里はあまりスタミナが無いようで、しばしば休んで、アクエリを飲みながら同様に休んでいる雪子とおしゃべりしていた。雪子が時々首を傾げる仕草をするのは何だろうと数子は思った。
夕方紅白戦をやると、千里の入ったBチームが千里のスリー炸裂で勝った。
数子は言った。
「ホントに千里凄いよ。千里がもし大会に出てくれたらR中に勝てると思うんだけどなぁ」
「大会はいつ?」
「・・・9月10日だけど」
「じゃそれまでに私ももう少し身体を鍛えるよ。なんか長いこと休んでたせいか全然身体が動かないや」
も、もしかして、この千里は試合に出てくれる千里か!?嬉しー!!本当にR中に勝てるかも!!!
司令室ではGとVが悩んでいた。
「これどうなってんの?」
「Q神社に出現してるのとは別のBみたいね」
とGは言った、
この日、いつものようにQ神社にはBとYのランプが付いていた。つまりB+YはQ神社にいた、それにも関わらずQ神社に出現した“別の”?B+Yが数子に付き合ってお寺まで移動し、合宿1日目に参加したのである。こちらにもBとYのランプが点いていた。
「腕時計が違うね」
とVは言った。
Q神社に出現している千里は、黄色地に青い水玉というより正確には星模様の腕時計をしている。しかしこの千里は青と黄の縞模様の腕時計をしていたのである。
「でもBはこれまでも何度か同時に2箇所に出現したことがある」
「でもYも一緒だよ」
「つまりBだけでなくYも2人に分裂したのかも」
「え〜〜!?」