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■女子中学生・夏祭り(19)

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「なんか無理矢理1位・2位を決めた感じだった」
「男子の決勝も控えてるから延々と延長戦やるわけにも行かなかったしね」
 
「去年はここで清香が変な冗談言って表彰式が1時間遅れた」
「いやあ、あれは参った参った」
 
去年はここで清香が「手術して女になった甲斐があった」とジョークを言ったのを運営の人に聞かれ、本当に女かどうか徹底的な医学的検査を受けるはめになり、その結果が出るまで表彰式が保留されたのである。
 
「そういえば清香は中学卒業したらどこの高校に行くの?」
と千里は何気なく訊いた。
 
「札幌あたりの剣道の強い学校に行きたいんだけどね」
「やはり強い所に行きたいよね」
「強くないと団体戦に出られないからね」
 
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高校の大会はインターハイ以外、団体戦の大会ばかりである。
 
「でも問題は私の頭で通りそうな高校など無いことだな」
「あぁ」
 
清香に「円の面積は?」と訊いたら「底辺×高さ÷2?」と答えたから、かなりやばい。答えは半径×半径×円周率。底辺×高さ÷2は三角形の面積。だいたい円の底辺とか高さとかどこよ?
 
「千里はどうすんの?」
「私も旭川あたりの高校に行きたいんだけどね。公立には少し届かない感じだから私立に。L女子高とか考えてる」
「ああ、あそこはインターハイに出たことあったな」
「うん。施設はぼろいけど強い(*43)」
 
(*43) L女子高の武道場は2007年に“廃屋と間違えられて”放火される。
 

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「でも私立は授業料高いのが悩みだよね」
「それは私も悩んでる。うちの父ちゃん貧乏だし」
「清香のお父さんってお仕事は?」
「漁船の船長」
「凄い」
「でも最近不漁みたいでさ、収入がかなり減ってるから私立行かせてもらえないかも」
「うちは機関長だけど、こちらもかなり漁獲高が落ちてるみたい」
「なんかスケソウダラさんがみんなロシアの領海に行っちゃったみたいで」
「そうなんだよねぇ。やはり地球温暖化の影響なのかなぁ」
 

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「でもさ」
と清香は言った。
 
「可能なら千里と同じ学校に行きたいな」
「あ、それは思う」
「千里がL女子高考えてるなら、私もそこにしようかな。あそこ私立にしては割と安いよね」
「そうそう。同じ系列でも札幌L女子高は下校時間にベンツやロールスロイスが並ぶからクラウンとかでは恥ずかしくて迎えに行けないって学校だけど、旭川や北見のL女子高は庶民的な学校」
と千里。
「うちも旭川までなら、父ちゃんも出してくれるかも知れない」
と清香。
 
「だったら一緒に同じ学校に行けたらいいね」
「うん。何なら結婚してもいいくらい」
「女同士で結婚できないと思うけど」
「いや最近は女同士で結婚する人もあるぞ」
「まあ確かにそうだけど」
 
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この子、ビアンっぽいよな、というのは前から感じていた。FTMが微妙に混じったビアン?男になりたいとよく言ってるし。
 

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そして男子の決勝が行われる。
 
公世も桐生君も既に全国大会行きの切符を手にしている。試合前、多数のギャラリーが熱い戦いを期待して見守る。
 
しかし・・・
 
公世は10秒で桐生君から2本取り、あっけなく決着が付いた。
 
2本目取られた桐生君がボーッとしていた。
 

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表彰式の後で、廊下に出てから桐生君が公世を呼び止めて言った。
 
「この大会で何とか工藤さんに勝ちたいと思ってたんですが、全然かないませんでした。全国大会までにまだまだ鍛えます。もし本選の頂点で対戦できて、工藤さんに勝てたらデートしてください」
 
彼は1月の大会の時、公世に勝てたらデートしてほしいと言ってたのである。
 
公世は言った。
「ぼくはあまり男の子に興味はないけどね。でも桐生君、1月には負けた富士君に勝ったじゃん。進歩してるよ」
 
「そうですね!ありがとうございます」
 

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S中の控え場所に引き上げて行きながら、玖美子が言った。
「あそこでキスしてあげれば、彼はきみちゃんの下僕と化してたのに」
「ぼくは男とキスする趣味は無い」
 
「司ちゃん、野球部引退した途端に男子からラブレター殺到してるらしいよ」
「・・・・・」
「きみちゃんもきっと男の子は“よりどりみどり”」
「いやだー!男と結婚したくなーい!」
 
玖美子はこの子の男性器、9月まで残ってないだろうなという気がした。
 
今もあるんだっけ?一昨夜見た時はお股に割れ目ちゃんがあるような気がしたけど。ほんとにちんちん隠してただけなのかなぁ。
 

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千里や公世たちも帰りは学校のバスに乗せてもらった。清香と柔良は安藤先生の車。所沢君は広井先生の車に乗せてもらった。それで全員7月31日の内に留萌に戻った。
 
例によって千里Rは学校に着くと「疲れたぁ」と言って消えてしまったので、ミッキーが荷物をコリンの家に持ち帰った。
 
「コリンさんのお友達でしたっけ?」
と今は女の子になっている源次(源子?)が訊く。
 
「うん、たちを食べたりはしないから安心してね」
「あのぉ千里さんはまだ帰ってこないのでしょうか」
「このあと三重県に行くからねー。8月20日過ぎまでは帰ってないと思う」
「あぁ」
 
8月22日頃まで待てというのはコリンからも言われていたことである。
 
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8月1日(月).
 
P神社の宮司の孫娘・翻田花絵(1981生)は来月に予定している結婚式の準備のため留萌を発ち、札幌の婚約者の所に向かった。事実上の同棲開始である。婚約者は花絵を迎えに来て、高級和菓子など出して宮司に丁寧な挨拶をしていた。
 
なお、花絵の父(翻田宮司の息子)民弥は札幌に住んでおり、2人はこのあと両親の所にも挨拶するはずである。
 
(両親も札幌に居て、札幌の大学に通っていた花絵がここ1年半ほど曖昧な形で留萌に滞在していた(住民票も移してないらしい)のは多分失恋したせいではと蓮菜や恵香などは噂していた)
 
しかしこれでP神社には常駐のおとなの巫女が居なくなった。何かの時は、産休中の巫女長・望田梨花(1977生)、一応非常勤巫女の肩書きを持つ、杉本浅美(1975生 一児の母)も手伝ってくれることにはなっているものの、とても不安な状態になった。
 
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8月1日(月).
 
七尾善美は札幌のホテルを早朝チェックアウトすると、道央道を走って旭川まで行く、午前中に雪の美術館・優佳良織工芸館を見学。また“青葉”で“正油らぅめん”を食べた。
 
これで北海道の三大ラーメン制覇!
 
函館の塩・札幌の味噌・旭川の醤油
 
(ついでに室蘭のカレー:本当は苫小牧が発祥の地)
 
そのあとは今度は道央道の上りに乗り、深川留萌自動車道に分岐。秩父別(ちっぷべつ)PAで休憩した。
 
トイレ(もちろん女子トイレ)に行こうとしてその入口に向かっていた時、24-25歳の女性とすれちがった。女性が何か落としたので
「落ちましたよ」
と声を掛けたが、女性は気付かないようである。善美は女性が落とした細いものを拾うと、彼女の方へ走り寄る。しかし彼女は同い年くらいのスカートを穿いた男性(?) (*44) と手を繋いで赤いモコに乗るとその車はさっと発進してしまった。車は上り、深川方面に行った(*45).
 
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善美が拾ったものを見ると、龍の飾りが付いた髪留めである。
 
「仕方ない。あとで警察に届けるか」
と思って善美はその髪留めを自分のバッグに入れた。
 
そしてそのあと自分がトイレに行っている間にきれいに忘れてしまった!!
 
トイレの後、車に戻る。そしてBMW-miniのエンジンを掛けると呟いた。
 
「さあいよいよ留萌だ!」
 

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(*44) スカートは穿いていたが、善美には男性に見えた。女装なのかファッションとしてスカートを穿いているのかはよく分からなかった。でも彼は男子トイレから出て来た気がする。
 
(*45) 秩父別PAは上下線のPAが兼用になっている。ここは無料区間である。だからここを使ってUターンすることもできる。料金は深川西・本線料金所で精算する。
 

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8月1日(月)の午後、千里Vのピッチに着信がある。このピッチの電話番号を知っている人はひじょうに少ない。表示を見ると2代目子牙こと五島照子の孫、七尾善美である!
 
初代子牙:四島画太郎(1874)の息子が四島貞徳(1899).
その子が照子(2代目子牙 1922)その夫が五島次郎。
その子が和子(1947)。その夫が七尾茂男。
その子が織羽(1971), 康成(1975), 善美(1977)。
 
(善美に“弟”は居ない!)
 
「こんにちは、千里ちゃん。今留萌に来てるんだけど、もし時間あったら会えない?」
「いいですよ!」
 
それで千里Vは駅前のマクドナルドで七尾善美と会ったのである。
 

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「照子さん、亡くなられたんですか!」
と千里は驚いた。2月にはあんなに元気だったのに。
 
「なんかあっけなかった。死に際には私だけが間に合った」
 
千里は少し考えてから言った。
「それで善美さんが“3代目子牙”に指名されたんですね」
「何で分かるの!?誰にも言ってないのに」
 
「そのくらい分かりますよ」
「あんたやはり凄い子だね。でも本当は“3代目”は誰か能力のある人に渡すべきものだと思う。祖母の今際の際(いまわのきわ)に私しか居なかったから暫定的に私に伝えられたものだと思う。そうだ千里ちゃん、3代目子牙を名乗らない?千里ちゃんは初代が全ての技を伝えた人だもん。3代目を名乗る資格があると思うなあ」
 
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善美はそんなことを言ったが、千里は苦笑いするかのようにして答えた。
 
「善美さんも、いい加減猫かぶるのやめたほうがいいと思いますけど」
 
「えー?何のことかなあ」
と言ってから善美はVと顔を見合わせて笑った。
 
「だいたいそんな強い子を連れていて、素人のふりは無いですよ」
「この子が見えるの〜〜!?」
「見える人は凄く少ないでしょうね。この場に居ない“呼び出し型”の眷属だから」
 

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善美は思った。
 
ひと目見た時から思ってた。やはりこの子は本当に凄い子だ。千里ちゃんはもしかしたら、祖母の葬儀に来ていた小学生の少女と同じくらいの力を持っているのかも知れない。あの少女も長い髪をしていた。そして全てを見透かされた気がした。
 
あの少女は言った。
「この度は大変でしたね、3代目子牙さん」
と。
 

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「でもこちらへはご旅行ですか」
と千里Vは善美に訊いた。
 
「金沢・七尾・佐渡・出羽三山・恐山と回って、大間から国道フェリーに乗って。北海道に入ってからは、函館・室蘭・札幌・旭川と回ってここに来た」
 
「へー、出羽三山に恐山って凄いですね」
「月山から湯殿山への道を歩いたよ」
「凄い!あそこを通ったんですか!?」
「千里ちゃん歩いたことある?」
「自分で歩いたことは無いですが、鶴岡の知り合いに話を聞いたことあります。凄い所のようですね」
「その数時間の記憶が抜け落ちてるんだよ」
「ああ、ありそう!」
 
「なんか松尾芭蕉も歩いたと言ってたけど、たぶん昔の人は今の人より体力あるよね」
「松尾芭蕉は湯殿山から月山へ歩いたらしいです。その方が難易度が高いと聞きます」
「ひゃー。私はまだ楽なコースを歩いたのか」
 
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「地元の先達(せんだち)のガイド付きですよね?」
「偶然知り合ったんだけど、あの人はベテランの女修験者だと思う」
「ああ、出羽の女修験者の団体って凄いらしいですね」
「私勧誘されちゃった」
「善美さん見たら勧誘したくなりますよ」
 
2人は、善美をナビゲートしてくれた人と、千里に話を聞かせてくれた人が同一人物とは夢にも思っていない。
 

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「この後は、稚内に行かれます?それとも道東ですか?網走とか知床五湖・風蓮湖とか、釧路湿原とか硫黄山・洞爺湖にオンネトーとか」
 
道東は北海道旅行のメインコースである。
 
「いや、しばらく留萌に居ようかなと思って」
「ああ、バカンスを楽しむには留萌は、わりといい所かも知れないですね。ここ結構お魚美味しいし。休暇はいつまでですか?」
 
「会社クビになっちゃったから、永久かな」
「え〜!?そしたら次のお仕事は?」
 
「しばらく心を休めてから考えようかなと。実はね。月山から湯殿山まで一緒に歩いた人から言われたんだよ。あなたこの後、行く場所決めてないのなら、北海道に行きなさいって。それで北海道と聞いて、私は千里ちゃんに一度合わなければならないと思った。そして留萌に来てみたら凄くいい場所だからきっと私はここに住むことになるんだと思った」
 
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千里は少し考えた。
 
「でも留萌って仕事無いみたいですよ。これまでは何の仕事なさってたんですか」
「観光バスの運転手」
「すごーい!バスガイドさんじゃなくて運転手なんだ!」
「女は強くなくちゃね」
「そうですよね!賛成!」
 
「まあタクシーかバスの運転手とかできないかなとも思ってるんだけど、取り敢えず安い民宿か何か知らない?」
と善美は訊いた。
 

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女子中学生・夏祭り(19)

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