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8月5日(金).
早川ラボの合宿が続いていたが、千里と沙苗は抜け出して文化センターにやってきた。吹奏楽の大会に出るためである。
さてRはフルートを持って出て来たものの、実は全く練習していない!でもきっと“誰か”が代理で練習してくれているだろうからきっと自分もできると思っている。なお沙苗は1回だけ練習に顔を出したらしい。
しかし実は千里同様に今日初めて顔を見せたというメンバーが5人もいた!「これだけ初めての子がいたら、私間違っても大丈夫だよね?」という妙な安心感を感じる。
それで大会が始まる。参加校は昨年はC部門4校、B部門3校であったが、今年はB部門が更に減って2校のみ、R中とS中だけだった。
「なんかうちの学校もC部門に行くのは時間の問題だなあ」
「全部C部門になったりして」
「それ5年後にはそうなりそうな気がする」
「そもそも留萌支庁大会が無くなって、宗谷支庁・上川支庁とまとめられたりして」
「それも凄くあり得る!」
最初にC部門の学校5校の演奏がある。千里はその間に廊下に出て、譜面を見ながら音は出さずにずっと指使いだけ練習していた。まるでたくさん練習していたみたいに、ちゃんと指が動くので「すごーい!誰かさんありがとう!」とGに直信する。Gも苦笑いしている。
やがてS中の番になる。千里たちは課題曲の『パクス・ロマーナ』と自由曲の『エル・ミラージュ』を演奏した。なんとかノーミスで演奏することができて「私たち天才ね」などと言い合った。
結果は金賞だった。今年はB部門に参加した2校がどちらも金賞だった。道大会にはR中が進出する。
吹奏楽大会に出た映子(吹奏楽部員である)は千里に
「一緒にQ神社行こう」
と誘ったが、千里(R)は
「Q神社で何かあるんだっけ?ごめん、悪いけど私剣道の練習があるから」
と言って沙苗と一緒に帰ってしまう。
それで映子は
「千里ちゃん、呑涛まつりの間、神社に来てくれないのかなあ」
と思いながら神社に戻る。
するとそこに千里(Bw+Y1)がいて
「映子ちゃん、助かった。こちら忙しくて忙しくて」
と言っているので、どうなってんだ?と思った。
8月6-7日(土日).
留萌最大の祭典“るもい呑涛(どんとう)まつり”が行われた。これは青森の“ねぶた”に似たお祭りである。
“ねぶた”に似た“あんどん”が町を練り歩き、多数の“はねと”が踊る様子は本当に青森の“ねぶた”に似ている。
P神社もQ神社も直接このイベントには関わってないものの、留萌に人があふれるので、その余波で参拝者も増える。
Q神社では映子や千里Bが大忙しで、手が足りなくて小春もお客さんの案内や御札類の頒布の作業に借り出されていた。
一方P神社では妊娠中を押して出て来た梨花が頒布やおみくじなどをしてくれる一方、恵香や玲羅、高木姉妹もフル稼働で頑張っていた。善美が
「新人なんです。巫女長さん、よろしくお願いします」
と挨拶すると
「こんな田舎の寂れた神社に来てくれるって奇特な人ね!」
と言ってた。
梨花は東京で失恋でもして、こんな田舎まで流れてきたのかなと思ったようであった。
(花絵の件にしても、女が田舎に来てると「失恋かな」と思われるのは困ったもの)
8月7日(日)、呑涛まつりの最中だが、千里・沙苗・公世・清香、由紀・詩歌および弓枝は、瑞江の運転するセレナで旭川に向かった。瑞江は昨夜来て、天野道場に泊まっている。
(席は助手席:公世/2列目:千里・沙苗・由紀/3列目:清香・詩歌・弓枝)
このあと、全国大会の直前まで旭川で合宿である。この合宿には「ぜひまた参加したい」と言って、竹田君と所沢君も参加するが2人は千里たちとは別行動で高速バスで出ていくことになっている
旭川に着くと、おやつをたくさん買ってから貴子の家に入る。
「玖美子ちゃんも柔良ちゃんも受験勉強か。どこに行くの?」
と貴子は訊いた。
「2人とも札幌の南高校を狙ってるらしいです。そこから東大を目指すとか」
「凄いなあ。玖美子ちゃん頭良さそうだもんねー」
千里たちがウォーミングアップして練習を始めた頃に、竹田君たちが来た。
「お早うございまーす」
と言って道場に入ったら、また清香が裸で素振りしている!
竹田君と所沢君が後ろを向いて
「ごめんだけど、木里さん、服着て練習してよ!」
全くである。
千里は“カーテン”を閉じた。
実は清香が度々裸で素振りしている問題で!道場にカーテンを付けてもらったのである。
道場は奥側を千里・清香、中央を公世・沙苗、入口から見て手前側を竹田・所沢が使用するようにする。そして中央の練習場と手前の練習場の間の高さ2mの所にカーテンロープを設置して、可愛い花柄のカーテンを閉められるようにしたのである。
これだと清香がシャワーを浴びた後、裸で素振りしていても、その姿が竹田・所沢の目に入ることは無い。女子たちは道場に出入りする時は、竹田・所沢が練習している所を通るが、竹田・所沢は特に用事が無い限り奥の方に来ることはないので、清香の裸を見ることもないだろうということなのである。
しかし清香が裸で練習するせいで、数万円の費用がかかった!
ここでの練習は午前中は、3kmのジョギング(公世だけ10km)の上で、体操・柔軟体操、腹筋・腕立て伏せなどの後、“おやつタイム”を経て午前中は素振り、ラダー、切り返しなどの基礎練習をする。
午後から各々のパートナーと組んで掛かり稽古である。
これは基本的に15分稽古したら5分休憩して水分などを補給するパターンである。もっとも清香は水分だけでなくコリンが用意してくれた鶏の唐揚げをたくさん食べていた。
「やはりたくさん運動したら蛋白質を補給しないと」
などと言っている。
「オナニーでも蛋白質を排出するし」
などとも言っていたが、清香もしかして射精するの?
15分稽古のあと5分休憩というのを3組が5分ずつ時間をずらして実行すると20分間の間に練習場が開いてる時間帯が3つの練習場で合計15分発生する。そしてこの空いてる練習場を使って、詩歌と由紀が練習していた。ふたりは5分単位で練習場を移動しながら稽古を続ける“さすらいの剣士”である。
この切り換え時間が分かりやすいように、練習場には5分単位で、ヴィヴァルディの『春』、パッヘルベルの『カノン』、モーツァルトの『トルコ行進曲』、ベートーヴェンの『エリーゼのために』が流れるようになっている。
だから
千里・清香は『春』で始めて『エリーゼ』で休む。
公世・沙苗は『エリーゼ』で始めて『トルコ』で休む。
竹田・所沢は『トルコ』で始めて『カノン』で休む。
由紀・詩歌は『カノン』で第3、『トルコ』で第2、『エリーゼ』で第1に行き、『春』で休む。
ただし1時間(3サイクル)回したら、全員休んでおやつを食べるというようにしている。この時間に1回交代の当番がモップで床掃除をする。もちろんおやつを食べた後で掃除をする。
このおやつタイムの時間(何分休むか)は適当で、充分休んだかなというところでまたサイクルを始める。概して午後1番は短め、夕方は長めになりやすい。
「なんかおやつタイムが多い」
と所沢君が言っていたが
「女の子仕様ですね」
と詩歌か答えていた。
この日の午後には越智さんが来て指導をしてくれた。
「そうか。村山さん、木里さん、工藤さんは全国大会に2年連続出場か。今年こそ優勝したいね」
と笑顔で言っていた。
「竹田君・所沢君も今回は惜しかったけど、高校進学後のインターハイ目指して基礎から頑張ろう」
と言って前回指導した時には特に注意しなかった点を色々注意してくれた。
夕方には、公世・竹田・所沢の3人でジョギングに出た。ここで公世の伴走は弓枝だが、竹田・所沢の伴走は由紀である。今回由紀は自分の練習よりも千里たちのサポートをするのがメインで来てくれている。だから彼女は参加費無料である。また全員の服を洗濯したり干したり取り入れたりも由紀がやってくれる。
(誰も由紀を男の子とは思っていないが、物凄くひょっとすると男の子かも、ということで竹田・所沢の服も扱わせている)
コリンは主として食事を作るほか、買い出しも担当する。
ここでは練習場が3つあるので、前述のように、千里−清香、公世−沙苗、竹田−所沢、(由紀−詩歌)で練習し、由紀が洗濯物を干したり、またジョギングの伴走に出ている時は、沙苗が詩歌を指導してあげている。弓枝は全体を巡回している。
なお今回の部屋割はこのようになっている。
No.2 公世・弓枝
No.3 千里・沙苗
No.4 清香・詩歌
PfRoom 由紀
この組合せは、由紀が着替えていても誰もそれを見ることはない!という組合せなのである。なお竹田・所沢は前回同様、イナバの物置である。地下にあると結構涼しくて良いらしい。
8月8日(月).
千里たちが旭川に移動したし、お祭りも終わったので、九重たちは早川ラボの移転作業を行うことにした。新しい敷地の基礎工事は既に済んでいるので、この日の天文薄明終了を待って、元の早川ラボの建物を、みんなで「ヨイショ」と持ち上げ、移転先まで持って行き「せーの」で静かに?置いた。
その後、明け方まてに水道・下水道の管の接続を行い、9日朝以降は使えるようにした。また9日の日中にこの土地全体をフェンスで囲み、万一猛獣が出た場合に備えた。
そしてその日の夜には今度は天野道場の建物を基礎と切り離した上で、早川ラボのあった場所に持っていって“置いた”。これも便槽などとの接続をして、8月10日中には使えるようにした。ここは猛獣さえ気にしなければ?泊まることもできる。
実は天野道場のあった土地は来年の春くらいから工事を始めるので、年内くらいをメドに退去してほしいという要請が来ていた。
しかし結果的に新・早川ラボは旧早川ラボと天野道場を合体させたもののようになる。この時点では練習場は2個だけだが、由紀・如月・詩歌などの要請で年末までに練習場をひとつ増設して3つになる。
↓練習場増設後(2005末以降)の新早川ラボの図
(階段はベランダ(≒物干し)に行くためのもの)
一方、千里Gは青龍に命じて、天野道場が移転した跡地に1K(バストイレ付き)のユニットハウスを“ポン”と置かせた。水道とトイレの排水だけ接続してもらう。電気は屋根に載せたソーラーパネルから供給する。
天野道場の元の建物が撤去されたのが9日夜で、10日の午前中にはこの青龍に“置かせた”ユニットハウスが一応使えるようになった。ここは本格的な建築・造作は禁じられているが、ユニットハウスを“置くだけ”なら、問題にならない。
千里Gは青龍を連れて旧・早川ラボ(旧・天野道場の建物移転先)に瞬間移動する。青龍はキョロキョロしている。驚いたようだが「さっすが千里さん」と思っている。
ここで管理人室のユニットを取り外してくれるように言った。これは元の建物(旧・墨野道場)に後付けでユニットハウスの部品をくっつけたものである。ボルトさえ外すと簡単に分離できる(青龍だからちゃんとボルトを外してくれる。九重に頼むとボルトを無視してベリッと剥がす!)。
「この辺に置いて」
「へいへい」
「それからシャワーユニットのひとつをこちらにくっつけて」
「へいへい」
と言ってそちらもしてくれる。
「電気の線・水道管とトイレの接続だけしといて」
「分かりました」
実は配線とか配管は青龍がいちばん得意(丁寧)なので青龍を使った。
「あと、こちらにはドアが付いてますけど、本体側がこの分2ヶ所、開(ひら)いてしまいますが」
「ああ。じゃあ、そこは適当な建材で壁を作って塞いでくれる?費用がかかりそうなら、貴人からもらって」
「了解です。でもなんで2つに分離するんですか?」
「愛人を2人囲いたいんだよ」
「はぁ」
「ここの道場に男の子の愛人、この管理人室に女の子の愛人、さっきのユニットハウスに男の娘の愛人かな」
「千里さんなら愛人10人くらい囲えそう!」
実はGもA大神の指示で動いているので、なぜこのような作業をしているのかは分からない。一連の作業を終えてGが帰宅すると例によってVが「心細かったよぉ」と泣きそうな顔をしていた。
8月8日(月).
この日の参議院本会議で、郵政民営化法案は、大量の造反者が出たことにより反対多数で否決された。
これに対して小泉首相はその日の内に衆議院を解散し、この問題について国民に信を問うとした。
“参議院”で否決されたことを理由に“衆議院”を解散するという不思議な手法に戸惑う声もあった。しかし小泉首相は、この法案が衆議院で審議された時に反対票を投じた元議員は今度の選挙で公認せず、対立候補(“刺客候補”)を立てると表明。この断固たる態度は国民の圧倒的な支持を受けることとなる。