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午後からは個人戦となる。男子はそのままスポーツセンター、女子はそのまま社会体育館で個人戦に移る。
「これなら男女離れた会場でやっても同じでは」
「いやスタッフが兼任だったり、兄と妹が出ている保護者とかいるから」
「ああ」
「それに2つ隣り合ってればトイレが倍使える」
「それは助かるな」
「ちなみに由紀ちゃんは『君、女子は隣の社会体育館だよ』と言われたらしい」
「あの子。きっと新人戦あたりからは女子の部に回されるよ」
「そんな気もする」
「あの娘、生理が来たという噂ありますよ」
「生理があってもおかしくない気がする」
(公世が黙っていたので由紀が“生理の間”早朝ジョギングを休んだことは女子剣道部には伝わっていない)
「ちなみにトイレは私が手をつないであげて一緒に女子トイレに入りました」
「まあ男子トイレには入れないだろうな」
「公世先輩も女子トイレだったみたいです」
「公世は当然」
(公世は女子1〜2年からは“公世先輩”と呼ばれており“工藤先輩”とは呼ばれない。3年男子は“工藤さん”と呼ぶ。最近は弟からまで“きみ姉ちゃん”と呼ばれている)
ということで個人戦が始まる。個人戦参加者は男子143名、女子89名である。
参加人数 89
12:00 1r 50->25 (89->64)
12:49 2r 64->32
13:45 3r 32->16
14:13 4r 16->8
14:27 QF 8->4
14:37 SF 4->2
14:52 3rd place
15;07 Final 2->1
今回団体戦が終わった後個人戦が始まるまで30分程度しかなく慌ただしいが団体の決勝に出たような人は大抵2回戦からなので大きな問題は無い。S中女子は全員参加である。
1回戦敗退:高山世那、白石真由奈、エヴリーヌ、カレン
1回勝2回負:棚橋揺子、佐倉美比奈
2回負;丸橋五月
3回負(best32)月野聖乃、御厨真南
4回負(best16)清水好花、ノラン
4回戦を勝ち準々決勝に残ったのは下記4人である。
村山千里、沢田玖美子、原田沙苗、羽内如月
Best8にS中が4人残ってるが、如月は「組み合わせの運が良かっただけ」と言っていた。(春の大会のR中中村さんと同様の弁)
そして準々決勝はこうなった。
千里S○−×桜井F
前田R○−×原田S(延長)
沢田S○−×吉田M
木里R○−×羽内S
この4人が留萌支庁代表として道大会に出場する。留萌ではこの4人の実力が際立っている。
ただし前田−原田は本割りで1本ずつ取り、延長で前田柔良が1本取って勝った。沢田−吉田も1対1から時間切れ間際に玖美子がもう1本取った。
そして準決勝では千里と清香が勝ち、2004年1月以来、6回連続でこの2人による決勝戦となった。
先に3位決定戦が行われ、判定にもつれ込んだが玖美子がかろうじて勝利した。この2人の戦いもイーブンが続いている。
2003新 前田×−○沢田
2004春 前田△−△沢田
2004夏 前田×−○沢田
2004新 前田○−×沢田
2005春 前田○−×沢田
2005夏 前田×−○沢田
そして決勝戦である。ここまでの2人の成績はこうである。
2003新 木里×−○村山
2004春 木里×−○村山
2004夏 木里○−×村山
2004新 木里×−○村山
2005春 木里○−×村山
2005夏 木里 − 村山
お互い知り尽くしている2人の対戦である。激しい攻防が続く。男子の試合を見に行っていた人も女子の決勝というのでこちらを見に来て凄いギャラリーである。
「なんか中学生の試合じゃないよね。高校生同士って感じ」
「このまま道大会決勝も全国大会決勝もこの2人だったりして」
「多分この2人、同じ町に居たからお互い切磋琢磨してこんなに強くなったのだと思う」
「1年生の頃から2人とも目立ったけど、かなり成長してる」
「なんか土日はこの2人で手合わせしてるらしい」
「凄い。成長するわけだ」
「去年は全国大会の3位同士だからね」
「今年はほんとに全国大会の決勝でやるかも」
試合はお互い1本ずつ取って延長に行く。延長の終了間際お互いに最後の勝負とばかりに面打ちに行く。
が「面あり」の声は掛からない。恐らく相打ちと見なされたのだろう。
結局時間切れで判定となる。「判定」の声で旗は白1−赤2。
また旗が割れた。
(副審の1人が白を揚げかけて赤をあげた←厳重注意をくらった)
が赤の清香の勝ちである。両者礼をして下がる。
退場してから千里は「負けちゃったぁ」と言って伸びをしたが、清香は「納得いかん」と言っていた。本人は自分が負けていると思っていたようである。
しかしこれで清香は留萌地区大会で春夏連覇を遂げた。
今回団体戦は男女ともS中が制したが、個人戦は男子はS中の公世、女子はR中の清香と、2校が優勝を分け合った。
男子のベスト4(道大会進出)は、1.公世(S) 2.所沢(R) 3.権藤(H) 4.竹田(S) となった。竹田君は初めての道大会進出である。なお、吉原君がbest8, 佐藤君がbest16に入ったが、春の大会でbest8に入る好成績を残した由紀は4回戦で所沢君と当たってしまいbest32に留まった。でも所沢君から1本取って所沢君が俄然本気モードになっていた。
公世の弟、工藤大樹も1回戦・2回戦・3回戦と勝ってBest32まで行った。
「やはりお姉さん2人が強いもんねー」
「新人戦では団体戦メンバーになるかもね」
「でも大樹(ひろき)君も女子にならないか心配」
「俺は女にはならねー!!」
ちなみに“大樹”は“ひろき”ではなく“だいじゅ”と読む。彼は身長が姉?の公世より高い172cmあり、ちんちんも大きい。毎日オナニーに励んでいるので結構立派なサイズになっている。よくちんちんをぶらぶらさせて家の中を歩いているので(なんで男の子ってちんちんを見せるの?)弓枝から
「そんなにぶらぶらさせてるとチョン切るぞ」
と言われている。
彼は今の所、顔は女装が行ける程度に可愛いが、きっと今後は残念なことに!男っぽくなっていくものと思われる。
翌日、7月10日には剣道の級位・段位審査が行われた。
沢田玖美子・前田柔良、そしてM中の吉田さん、F中の桜井さんが二段に合格した。これで留萌の二段も随分増えた。
月野聖乃と田詩歌は初段に合格した。
如月は1月に初段になったばかりなのでまだ次に行けない。
男子では公世と竹田君が二段に合格した。また吉原君が初段に合格した。工藤大樹も1級になった。
佐藤君や由紀などは1月に1級になったばかりなのでまだ初段は受けられない。
ところで7月9日(土)には、千里Yの方はまた家のお祓いを頼まれた。金曜日に宮司さんが来て
「千里ちゃん、明日予定ある?家のお祓いを頼まれているんだけど」
と言い、千里が
「明日ならいいですよ」
と答えるので、セナは
「あれ〜。明日の剣道大会どうするんだろう?」
と思ったものの、あまり深く考えないことにした!
「高木姉妹を連れて行っていいですか」
と千里が訊くと、宮司は一瞬考えてから
「うん、まあいいよ」
と答えた。
それで7月9日(土)は宮司の車に、花絵さん、千里、高木姉妹が乗って小平町の古い民家を訪れた。鰊御殿(にしん・ごてん)とまではいかないが、結構大きく古い民家である。多分昭和初期の家ではないかと思った、
「わぁ、うようよ居ますねー」
と貞美が言っているが
「その手のことをあまり言わないように。相手を刺激するから」
と注意する。
「分かりましたぁ」
姉の紀美のほうはこの手のものが分からないようである。
白虎と六合を召喚して、高木姉妹をガードさせた。宮司・花絵さん・千里は自分の身は自分で守れる。
玄関で挨拶して中に通される。花絵さんが「家守りさんが居ない」と小さな声で言っていた。
千里たちは神棚のある居間に通されたが、千里はこの居間の中にいる雑霊を一瞬で消滅させた。花絵さんが呆れた顔をしている。貞美はびっくりしている。神職はポーカーフェイスである。紀美は何も分からない風だ。
千里としては御主人たちからお話を聞くのに邪魔だから消しただけである。
それでお話を聞くと、このようなことである。
・元々この家はポルターガイストの類いが多かった。古い家だから色々あるのだろうと思って気にしないようにしていた。
・しかし5年前に母が亡くなった頃から、何か重圧を感じるようになった。御主人が肝臓が悪いと言われ酒を断ち、もらった薬を飲んでいる。奧さんも大腸癌と言われ内視鏡による手術をした。しかし2人とも病状が全く改善されない。
・長女が受験に失敗し、現在旭川の予備校に行っているが、長女は旭川にきてから、もの凄く体調がよくなった。やはりその家自体に問題があるのではと言っている。その下にも女の子1人と男の子2人いるし、子供たちによくない影響が出る前に何とかしたい。
取り敢えず祈祷をしようとするが、神棚の米・塩・水が多分5年以上交換されていないようである。榊も無い。それで新しいものに交換してもらい、持参した御神酒(おみき)と榊を供えてもらった。
それで千里が笛を吹き、花絵さんが太鼓を叩いて、神職が祝詞をあげる。千里の笛の音に紀美も貞美も驚いた様子である。
たぶん「正しい」笛の吹き方をしているのを聞いたことが無かったのだろう。龍笛という楽器は“間違った吹き方”をしている巫女さんがとても多く、その間違った吹き方の人が後輩に教えるから、ますます間違った吹き方が広まっているという困った状態にある。本当の龍笛は龍が鳴いているようにパワフルに吹くのだが、蛇やミミズが寄ってきそうな弱い笛の吹き方をする人が多い。特に篠笛やファイフから来た人が篠笛と同じような吹き方をしたりしているのも困ったものである。
本当の龍笛の吹き方には強い息の力が必要である。肺活量も要求する。平安時代、基本的に男性が吹く楽器とされていたのも道理である。
そしてその龍が鳴くような千里の龍笛の音が家の隅々まで響いていくと家の中に棲んでいた雑霊や妖怪たちがどんどん消滅していく。花絵にはおなじみの光景だが、貞美は「すごーい」という感じで眺めているようである。でも紀美には分からないようである。
祝詞が終わった所で千里が宮司に目でサインを送る。宮司も頷く。宮司は
「語祈祷をしていてちょっと気になるところがあったのですが」
「はい」
それで宮司や千里が向かったのはこの居間の隣にある仏間である。仏檀横の床の間に何か像がある。
「御主人、この像は何ですか」
「それは宗教やってる叔母が押しつけて行ったんですよ」
宮司と千里は目を合わせた。
一方花絵は、この像が既に“力を失っている”ことから『千里、笛を吹いているうちに何かしたな?』と思った。
(実際には昨夜の内に千里GとVが来て、この家の妖怪たちの元締め及びその取巻きの眷属たちを処分した。子牙の術を使わなければならないほどの大物だった)
「この像はよくないです。処分させてもらえませんか?」
「もしかしてこの像が害悪を?」
千里が言った。
「この像自体は悪いことしていません。でも悪い霊を集めるんです」
「ああ」
「この像が良くないのか。処分した方がいいのか」
と紀美が訊く。
「うん」
「だったら私が処分してやろう」
と紀美。
「こちらは?」
「この子の曾祖父さんが凄い人だったんですよ」
と千里は言う。
「へー」
「でも本人は霊感ゼロで」
「うん。私は霊とかお化けとか全然見えない」
と本人も言う。
「でも色々な儀式の次第を伝授されているから、それでこういうのの処分法は分かる」
「へー」
「いわば熟練のコンピューター・オペレーターみたいなものですね。コンピュータの動作原理は全然分からないけど、色々な使い方を知っている」
「うん。私は熟練の素人」
と本人も言っている。
「なるほどー。だったらお任せします」
それで千里が出してくれた“保冷バッグ”に紀美はこの像を入れた。
「なんか理由は分からないけど、この手のものを入れるのに保冷バッグは使えるらしいんです。曾祖母ちゃん(恵雨)もお祖母ちゃん(藤子)も使ってた」
と紀美が言うと
「保冷バッグはアルミでできてるから静電遮蔽されるんですよ」
と花絵さんが言う。
「なるほどー。静電遮蔽か」
と御主人は納得している。
「でも千里ちゃん、いつも保冷バッグ持ち歩いてるの?」
と貞美が訊く。
「いつも持ってる訳じゃ無いけど、今日は必要になる気がしたから持って来た」
「へー」
「この子はその日必要になるものが全部分かるんですよ。この子が傘持っていけと言ったら、朝どんなに晴れてても雨が降りますから」
と花絵さんが言う。
「それは凄い巫女さんだ」
と御主人は感嘆していた。