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■女子中学生・夏祭り(13)

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北海道の函館(はこだて)から札幌(さっぽろ)に至る鉄道ルートには2通りがあり、山線・海線と呼ばれている。かつてのメインルートは“山線”でこれがそのまま函館本線になっている。長万部(おしゃまんべ)から、北東のニセコ・小樽(おたる)を通って札幌に至るルートである。
 
これに対して現在のメインルートは“海線”で長万部から南東の東室蘭(ひがしむろらん)・苫小牧(とまこまい)まで室蘭本線を通り、そこから千歳(ちとせ)線を通って札幌近くの白石(しろいし)駅に至るルートである。
 

 
山線が線形が悪い上に、ニシン漁衰退後は沿線人口も減少したのに対して、海線は線形がよく、東室蘭(鉄鋼の町)・登別(温泉がある)・苫小牧(本州などとの航路のある港がある)・南千歳(空港がある)といった利用者の多いところを通っているため、現在ほぼ全ての優等列車が海線を通っている。山線が使われるのは夏休みなどの多忙期の臨時列車とか、また過去に有珠山の噴火で室蘭本線が通れなかった時くらいである。
 
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なお室蘭本線の苫小牧−岩見沢間は、便数の少ないローカル線である。
 

さて、今年の北海道中学校剣道大会は蘭越(らんこし)町で行われる。これは↑の地図でいうと、ニセコ町の隣町である。この区間(長万部−小樽)の函館本線は極めて閑散なローカル線であり、ここに行くのは結構大変である。
 
2005年当時は小樽から蘭越駅に行く列車は1日に6本しかなく、JRで行く場合はこれに合わせたタイムスケジュールで行動する必要があった。
 
S中の男女団体出場組はJRで行くのを断念し、学校のバスで往復することになった(片道4時間半)。一方、千里・玖美子・沙苗・公世(以上S中)、清香・柔良(以上R中)の6人は次の連絡で行くことにして早めに切符を確保していた。留萌支庁大会の結果が出てすぐ予約を入れた。
 
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旭川7/29 14:00(スーパーホワイトアロー18) 15:20札幌15:28(ニセコライナー) 18:38蘭越
 

7月23日(土)の朝、玲羅が自宅でお酒を振った上で“再度炊飯スイッチを入れて”少しはリカバーした御飯に、熊カレーを掛けて食べていたら父が言った。
 
「何かいい匂いだな」
「お父ちゃんも食べる?これ神社でもらってきたカレーだけど」
「食べてみようかな」
 
それで熊カレーを分けてあげたら
「美味しい!」
と言っている、
 
それで玲羅は姉が高校進学で旭川か札幌に行っちゃったら、熊カレー買って来ようと思うのであった。
 
(壮大なる伏線回収?ただし、この話はもう一展開ある。来月くらいに書く)
 

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千里たちが旭川で合宿してから蘭越に行くという話を聞いて所沢君と竹田君が
 
「自分達もそのルートに相乗りさせてもらえないか」
と言った。それですぐ予約を入れた。
 
「座席が私たちと別になっちゃったけど」
「そのほうがいい!」
 
それで竹田君と所沢君も旭川合宿に参加することになったのである。
 

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竹田・所沢の2人は千里たちとは別行動で、23日朝7時半の高速バスに乗り、10時半頃旭川駅前に到着する。ミッキーに迎えに来てもらい、貴子の家に入った。
 
「広い家だねぇー」
と感心してミッキーの案内で道場に行く。
 
「おはようございまーす」
と声を掛けて中に入る。
 
いきなり清香のヌードが目に飛び込んでくる!
 
「ごめーん」
と後を向いて言う2人。
 
「ああ、清香が裸で歩き回ってるのは普通だから気にしないで」
「気になるよぉ!」
「修行が足りんな」
 
「女性の裸を見ても気にならないように性欲を滅却してあげようか」
「それ結婚できなくなる気がするからパスで」
「勘がいいな」
 

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清香が一応服を着たので道場を案内してもらう。
 
「凄いな。練習場が3つあるとひたすら練習できるわけだ」
「シャワールームもこれだけあれば待たなくていいね」
「冬にはオンドルが入る」
「素晴らしい」
 
「男性陣はこちらで練習して」
と言って本館の居間に案内する。テーブルを片付けてあり、ここで練習できるようになっている。
 
「天井が高いんだね」
「ピアノ練習室を作ったから、それで音響のために天井を高く作ったんだよ」
「なるほどー」
 
「トイレ・バスルームはこの本館のを使って。女子が道場のを使うから」
「分かった」
「本館のトイレには女性マークが付いてるけど気にしないで使ってね」
「うん」
 
それで2人はすぐに道具を出して準備運動の上、練習を始めた。
 
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7月23日(土)の午後には、越智さんが来て指導してくれた。越智さんは千里の様子は毎月見ているものの、清香についても
「君もよく成長してるね」
と満足そうだった。越智さんの指導もより高いレベルになっていた。
 
公世はここに来ても毎朝・毎夕10kmのジョギングを欠かさなかった。弓枝が自転車で伴走した。
 
また初顔合わせになった竹田君・所沢君については
「色々指導したいことはあるけど、短期間で飛躍的に改善されるものではない。君たちも工藤さんと一緒に毎日10kmのジョギング、あと竹刀の振り方の精度を上げることだな」
と言って、貴子に言って真剣を2本出してもらい、それで素振りをさせる。
 
「凄い重い」
「人を殺す力があるから留意して扱うように」
「はい」
 
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「絶対に剣を振る前後に人が入らないように気をつけて」
「そうします!」
 
「休む時は・・・あれ?米沢さん、居ないの?」
「米沢は出張中なんです。私が代理します。伊呉です」
「じゃそのイグレさんに預けるように」
「分かりました」
 

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それで2人は真剣での素振りをやっていた。30分ほどやったら休憩し
「真剣・素振りのあとは甘い物食べて心を落ち着かせた方が良い」
と言うミッキーの勧めに従ってケーキを食べた。
 
「確かに真剣を扱ってすぐの掛かり稽古は危険な気がする」
「うん。なんか人を殺してしまいそう」
 
「だから心の弱い人は絶対に真剣を持ってはいけないんですよ」
「だよね!」
「絶対人を斬りたくなる気がする」
 

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2人は夕方、公世と一緒に10kmのジョギングに出た。弓枝が公世の伴走をするが、竹田君と所沢君には、千里が召喚した七瀬鏡子に自転車で伴走させた。七瀬は自転車を使わなくても伴走できるが一応(自粛して)自転車を使わせた。
 
竹田君と所沢君はなぜ伴走者が2人付くのだろうと思ったが、公世がぐいぐい彼らを引き離して走って行くので
「そういうことだったのか!工藤さん凄い」
と思った。
 
ジョギングが終わった後は、青龍と玄武を召喚してマッサージをさせたが
「痛たたたた」
「やめてー!死ぬーーー!」
と悲鳴を挙げていたので、かなり凝りが溜まっていたようである。
 
(九重や勾陳と違って、青龍と玄武のマッサージなら本当に死ぬことはあるまい・・・多分)
 
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でも2人は翌日「凄く身体が軽くなった気がする」と言っていた。実際これだけでかなり動きが良くなった。なお2人は朝のジョギングはパスして夕方のジョギングだけすることにした。
 
「工藤さん、よく朝10km走ってからハードな練習できるなあ」
「やはり凄い努力してるんだな」
 
なお男子2人は庭に埋めた!イナバの物置に泊まってもらった。昨年ハイジと裕恵を泊めたところである。あのあと地面の下に埋めたのでかなり過ごしやすくなった。去年はやはり暑かったと思う。入口から梯子(はしご)で出入りするようにしている。もちろんエアコンも入っている。
 

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7月24日(日).
 
七尾善美は金沢に来ていた。
 
首都高から何となく関越に乗り、藤岡JCTで何となく上信越道に分岐した。甘楽(かんら)PAで“焼きまんじゅう”を食べ、東部湯の丸SAで“峠の釜めし”を食べる、
 
夜通し走って明け方有磯海(ありそ・うみ)SAで朝食、ついでに仮眠。そして昼頃起きて“ますの寿し”を買って食べる。午後から金沢に入る。そして車を駅裏の時計台駐車場に駐めて、尾山神社・老舗記念館、長町の友禅工房などを見た。
 
夕方、示野のイオンモールで金沢名物・芝寿しを買い、駐車場の車の中でそれを食べて、少し駐車場で仮眠した。
 

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ところで福川司は野球部は引退になったものの、ずっと杏子と2人で公民館で練習を続けていた。杏子もソフトの大会も終わったし、高校では野球をやることを考え、ウィンドミルではなく野球のワインドアップから投げ下ろすやり方に変更した。杏子の球は司より速いので司も
 
「ぼくも負けないようにしなくちゃ」
と思ってトレーニングに励んだ。
 
早朝のジョギングは公世がいないので司と由紀だけだったが、由紀も半分くらいまでは付いてこれるようになり、
「この子ぼくより伸びるかも」
と思っていた。
 

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7月24日(日).
 
雅海は司の家を可愛いスカート姿で訪問した。司のお母さんが歓迎してくれる。
 
今この家には司と両親だけが住んでいる。長兄は札幌、次兄と三兄は旭川に行っている、もし司が来春札幌に出るとこの家は両親だけになる。
その場合、両親はいっそ札幌に移動して、長兄や“唯一の娘”である司と一緒に暮らすことも考えている。
 
雅海が訪問してきた時、司はサマードレスを着ていて
「こんな格好恥ずかしい」
と言ったが、雅海は
「ううん。可愛いよ」
と言った。
 

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「そうだ、雅海ちゃん、法的な性別を女性に変更したんだね。おめでとう」
「ありがとう。なんかぼく周囲に流される性格だから『お前、女の子になったのなら、法的な性別もちゃんと変更した方がいい』と言われて、つい『そうしようかな』と言っちゃったら変更されちゃった」
 
「それ凄く雅海ちゃんっぽい」
「でも考えてみたら、ぼく小さい頃から、わりと女の子になりたかったかも」
「小学校の頃も、劇とかで女役すると嬉しそうにしてた」
「うん。実際嬉しかったよ」
「やはり女の子になりたかったんだ」
「でも女の子になれるわけでもないしと諦めてた部分が大きかったと思う」
「ああ、そういうのはあるかもね。女の子になれたらなりたいと思っている男の子ってわりと居ると思う。上原君とか佐藤君もかなり怪しい」
 
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「あの子たちを見たら、貴子さん、『女の子に変えてあげようか』って絶対言いそう」
「言いそう!」
と言って2人は笑う。
 

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「でも司ちゃんも法的な性別変更して、2学期からは正式な女生徒になるんでしょ?」
「え?そんな予定は無いけど」
「そういう噂が流れてるけど。3組のクラス委員と保健委員が『福川さんは2学期から正式な女子生徒になるから』と担任の先生に言われたって」
「え〜〜!?」
「だから修学旅行の部屋割でも普通の女子として女子部屋に組み込まれた」
「そうだったのか」
 
「それに高校では女子野球に行くんでしょ?」
「なんかそれが既定路線になりつつある気もする」
 
「男の子に戻りたい?」
「うーん・・・逆に自分はもう男の子には戻れない気がする」
「うん。既に不帰点を超えてると思うよ」
「今更『ごめんなさい。ぼく男の子でした』と言ったら、痴漢の大罪人として逮捕されそう」
「ま、それはありそうだね。でも司ちゃん、実際問題としてこれまで何度も女湯に入って、女の人の裸を見て欲情したりした?」
「全然。ぼくこないだ杏子ちゃんに指摘されたけど、普通の男の子してた時代から男の子が好きだった。だから女性が恋愛対象じゃなかったんだよね」
「ああ、司ちゃんって潜在的な男の娘だったのかもね。だいたい普通の男の子をしてた時代から、女装したら女の子で通りそうな感じだったよ」
「そうかも。だから貴子さんに目を付けられたのかも」
 
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雅海は言った。
「ま、そういうことなら、完全な女の子になっちゃったら」
 
司は考えた。
 
「それでもいいかなあ」
 
「女の子になれば堂々と男の人と結婚できるじゃん」
「ぼく野球部の子たちからラブレターたくさん来てる」
「まあ来るだろうね」
 

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7月25日(月).
 
司が早朝ジョギングに出ようとすると母が止めた。
 
「今日は病院に行くから」
「へ?病院?」
「あんたの性別検査をしてもらうから」
 
あ、その予定になってたのかな。それで親から学校に連絡があって、クラス委員たちがその話を聞いてたのかも、と司は思った。それで答えた。
 
「分かった」
 
「だから制服着て。下はスラックスじゃなくてスカートを穿いてね」
「うん」
 
それで司は制服のブラウスを着てスカートを穿く。
 
「ぼくこれからはずっとスカートでいいかも、修学旅行でもスカートだったし」
 
と司は思った。それで母の車に乗って旭川に出た。そして大きな病院に来た。
 

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受けた検査は4月に受けた検査、5月に受けた抜き打ち検査と同様のものである。おしっこを取って(女子トイレを使う)、検査室で身長・体重・TB/UB, W, H を測られ、血圧を測ってから採血される。そしてMRI室に入り、どうもお腹の付近をよく調べられていたようであった。そして婦人科に行き、服を全部脱いで女性の医師に観察される。そしてまた内診台に乗せられ、内診された。
 
「これ何度受けても恥ずかしい!」
と思った。
 
「生理来てますよね?」
「はい。5月6月7月と来ました。今黄体期だと思います」
「うん。確かに黄体期にあるみたいね。生理来たのは5月が最初?」
「はい。それが最初の生理でした」
 

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女子中学生・夏祭り(13)

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