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7月31日(日).
千里Bは朝9時Q神社に姿を現した。
指令室のモニターで見ると、B(Blue)とY(Yellow)が重なっている。
それを見て千里Gたちは言った。
「やはりこのパターンを続けるみたいね。学校が始まったらまたどうなるか分からないけど。夏休み中はこのパターンかな」
「それでどうする?」
「悪いけど星子ちゃん、P神社の方は、星子ちゃんが千里Yの代理を頼む」
「やはり」
結局自分が代理することになるんだろうなとは思っていたのだろう。
つまりこれまでQ神社に行って千里Bの代理をしていた星子は、今度はP神社に行って千里Yの代理をすることになるのである。
星子にはP神社の祭事の笛を覚えてもらわなければならないので、一週間くらいを準備期間とする。その間は千里Yはまだ河洛邑から戻ってきてないことにすることにした。
「でも私、家のお祓いとかできませんよ」
「それはVちゃんやって」
「まあいいよ」
VちゃんはYちゃんと同様に目が良くないから、自然な代理ができそう、とGは思った。しかし花絵さんが9月に結婚して留萌を離れるし、現在既に結婚準備であまり仕事に入ってないのはとても運がいいと思った。花絵さんには千里でないことが容易にバレるだろう。また蓮菜も頻繁に予備校の合宿とかに行ってて、あまり神社に顔を出していない。ただ蓮菜は千里が複数いることを認識しているので、違う千里が居ても、適当に代理してるのだろうと思ってくれそうだ。
「そうだ。Yちゃんの携帯電話は?」
Gがある方角を見て言う。
「A大神様、Yの休眠しているところに携帯電話とか笛とかありますか?」
「ある」
と言って携帯や龍笛の入ったバッグを丸ごと渡してくれた。三重に持っていっていたものである。携帯と龍笛(No.222 花姫)は星子が持っておくことにした。バッグに入っていたおにぎりは一週間経っているので捨てた。ホワイトロリータはみんなで食べちゃった。なお、星子が使用していたNo.221の龍笛はVに返した。
なおこの携帯のクローン携帯を元々Gは所持しているが、そちらはVが持っておくことにした。この携帯は2年前の春までは小春が使っていたものである。千里が「小春の遺品だから私が持っておく」と言ったので小春が「私はまだ生きてる!」と怒っていた。
しかしこの時Gは気付かなかった。BとYが重なってQ神社に出現している時に“Y”が休眠場所にもいることに。実はこの時、休眠場所にはYもBもいたのである。つまりQ神社に出現しているB,Y以外に休眠場所にもB,Yが居た。
Gはこの事態はコリンを自分たちに巻き込まないと対処できないと思った。それで(7/31) コリンを司令室に召喚した。
コリンは千里が2人並んでいるのを見る。ひとりはすみれ色の腕時計をしてすみれ色のピッチ(*42) を持ち、もうひとりは緑色の腕時計をして緑色のピッチを持っている。これが多分三重で自分に指示を出した千里だろう、とコリンは思った。そばに星子もいる。
「あなたたち誰?」
「コリンにはとても長い説明をしなければならない」
と千里Gは言った。
(*42) 通称“ピッチ”というのは1995年から2010年代まで使用された簡易式の携帯電話。正確にはPHS (Personal Handy phone System)。正式の携帯電話に比べると移動に弱く、基地局を移行する時に切れやすい欠点があった。また、田舎には基地局が無く圏外になる場所が多く、一方都市部では回線が足りなくて通話できないこともあった。
しかし何と言っても料金が安いことから若い人を中心に1990年代後半から2000年代まで広く使われ、結果的に携帯文化普及の後押しをすることになった。
7月31日(日).
七尾善美はこの日ホテルで紹介してもらってタクシーを1日借り切り札幌観光をした。赤レンガ庁舎と時計台を見て(運転手さんが写真を撮ってくれた)、大通公園を少し歩き、テレビ塔に上って“テレビ父さん”と記念写真を撮る。
ここでお昼を食べる。なお運転手さんはテレビ塔には上らず、どこかでお昼を済ませた模様。だからテレビ父さんとの写真を撮ったのは“弟”である。“弟”とテレビ父さんの写真まで残った!(善美が撮影した)
テレビ塔のあと、羊ヶ丘展望台に連れていってもらい、クラーク博士の像の前で“博士と同じポーズをして”また記念写真を撮ってもらった。最後は白い恋人パークに連れてってもらう。
時間掛かるだろうからもう帰っていいと言ったのだが「今日は1日貸し切りだから待ってますよ」というのでここを見学したあと、ホテルまで送ってもらった。運転手さんに“白い恋人”を1箱「お子さんへのお土産」と言って押しつけて降りた。
7月31日(日).
剣道の道大会はこの日はいよいよ試合が行われる。団体戦(決勝以外)→個人戦(決勝以外)→団体戦決勝→個人戦決勝と進む。
団体戦は14の支庁から1校ずつと札幌市代表、それに地元の後志(しりべし)支庁からもう1校が代表として出て来ている。だから16チームで戦うので、1回戦(8)→準々決勝(4)→準決勝(2)と進む。決勝戦は夕方からある。
S中女子はこういうオーダーで出て行った。
ノラン/如月/沙苗/玖美子/千里
1回戦ではノランは敗れたものの、如月・沙苗・玖美子で勝ち上がった。準々決勝では、ノランと如月が敗れたものの、沙苗・玖美子・千里で勝って勝ち上がった。これでベスト4である。
しかし準決勝でノラン・如月・沙苗が敗れここで終わった。しかし3位の賞状を持ち帰ることになる。
男子の方はこのようなオーダーだった。
吉原/佐藤/由紀/竹田/公世
1回戦は先頭の2人が敗れたものの、後の3人で勝って勝ち上がった。しかし準々決勝は竹田君が敗れてここで終わった(ベスト8)。
ところでこの大会の間、トイレに関して公世はもう諦めて普通に?女子トイレを使用していた。由紀も如月や聖乃などに付き添われて女子トイレを使った。
秀香は男子トイレにはいろうとして
「君ここは男子トイレだよ」
と言われるが
「ぼく男です」
と言って
「あ、そうなの。ごめんごめん」
と言われていた。秀香は男声なのでこれで納得してもらえる。
でも2回トイレに行って2回それをやったので
「秀香ちゃんは素直に女子トイレに入った方がトラブルが無い気がする」
と言われる。
「声出さなきゃバレないよ」
そう言われて本人は
「いやだー」
と泣いていた!?
(多分女子トイレに連行された経験がある)
女子たちは
「ヒデカちゃん、女子トイレを嫌がるような振りして普段は女子トイレ使ってる気がする」
「あの子は女子トイレで何も問題無いよね。喉仏も目立たないし」
などと言っていた。
団体戦が(決勝以外)終わると個人戦が始まる。
14支庁から4人ずつ、札幌市から4人、そして地元の後志支庁から更に4人の合計64人で争われる。1回戦(32)→2回戦(16)→3回戦(8)→準々決勝(4)→準決勝(2)となる。
まず1回戦だが、千里・清香・玖美子は勝ったが。柔良は支庁大会4位だったので他地区の1位の人と当たり、ここで消えた。柔良は昨年もこのパターンで1回戦で消えている。
男子では、公世は当然勝った。支庁大会2位の所沢君は相手に1本取られたもののその後2本取り返して勝った。3位のH中権藤君は札幌2位の人と当たりあっけなく負けた。そして4位の竹田君だが、他支庁1位の人と当たった。しかしこういう相手には必殺先制攻撃とばかりに試合開始早々凄い勢いで相手の懐に飛び込み、相手が反射的に面の防御をしたので胴で1本取った。そのあとは相手がかなり本気になったのをひたすら逃げて3分経過。強敵から1勝を挙げ、2回戦に進出した。
2回戦。女子は3人とも勝った。
男子だが、公世は当然勝った。竹田君は1回戦ほどの相手では無かったので何とか2本勝ちするることができた。しかし所沢君はかなり強い相手であった。1本取られたあと1本取り返したのだが、それで相手が本気モードになり、すぐもう1本取られてしまった。ここで敗退である。
3回戦。千里と清香は当然勝った。
玖美子は苦戦した。開始早々1本取られたが、時間切れ寸前に1本取り返し、1対1となる。3回戦は延長が無いので判定となるが判定が1−2で玖美子の勝ちであった。相手が凄く悔しそうだった。玖美子も勝った気がしなかった。しかし玖美子は昨年は3回戦負けだったから少し進歩した。
男子では公世は勝った。竹田君はここでかなり強い相手だった。猛烈な攻撃がくるが、防御して逃げて、防御してとやっていたら、相手が転んだ!むろんすかさず面を打ち込んで1本取る。床掃除のあと再開。相手の攻撃は更に凄まじくなるが、竹田君は防御しまくった。
それで時間切れとなったので、竹田君はほとんど負けていた試合をものにした。内容では完全に負けていた。
準々決勝。
千里と清香は順当に勝った。
玖美子は相手に30秒で2本取られて負けた。しかし5位の賞状を持ち帰ることになる。
男子では公世は勝った。しかし竹田君は昨年もベスト8だった3年生・函館の桐生君に当たり、10秒で2本取られて負けた。竹田君もベスト8で、5位の賞状を持ち帰ることになる。
準決勝。
千里と清香は勝った。こんな上位の試合というのに2人とも圧倒的だった。2人の力がこの北海道で卓越していることを示す。
そして男子では公世が帯広の深川君に軽く勝った。深川君は準々決勝で、1月に公世も対戦した恵庭の敷島君に勝っているが、公世の相手ではなかった。もうひとつの準決勝は、上記・桐生君が札幌の2年生・富士君に勝った。
1月の大会では桐生君は富士君に敗れていたので、リベンジを果たした格好である。
富士君は身体も大きく、パワーだけなら間違いなくこの大会出場者の中でトップである。
個人戦決勝は団体戦決勝の後に行われる。
団体戦決勝が行われる。
先に行われた女子は最初の4人で決着が付き、座り大将になった両チームの大将が不満そうだった。その後行われた男子の決勝では最初の3人で決着が付き、座り副将・座り大将だった。両方の大将は物凄く不満そうだった。
そして女子の個人戦決勝が行われる。この時点で千里も清香も既に全国大会行きが決まっている。あとはどちらが優勝カップを手にするかである。
「始め」の合図で試合が始まるが物凄いハイレベルの戦いである。両者の動きが速くて、目で追えない観客が続出する。
「何なんだ、こいつら」
「凄い勝負だ」
どちらも凄いスピードの動きでお互い相手の横に回り込み何とか隙を創り出し、そこを攻めようとしているが、どちらもよく相手の動きを見て身体を回転させ、隙を見せない。何度かそれでも強引に攻撃に行くが、1本は決まらない。
(千里たちの中でもRとGは動体視力が高い。YとVが目が弱いのと好対照)
結局3分経ってもどちらも1本取れないまま延長戦に入る。しかし2分経っても決着が付かない。ついに2度目の延長に入る。両者激しく動き回り、そして鋭い攻撃を繰り出す。しかし1本が決まらない。そのまま2分が経過する。
判定となる。
「判定!」
の声。
赤1白2
千里の勝ち!!
両者礼をして下がる。そして試合場を出たところで2人はハグした。