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■女子中学生・夏祭り(4)

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「やはり花和君、いくら男らしくても他の男子と同じ部屋というわけにはいかないもんね。でも顧問の先生たちと同じ部屋で大丈夫?」
 
と食事の時、留実子のそばに座ったチア部・部長の柴田知枝が言う。
 
「いや、ぼくが団員の金玉を握り潰す事故を団長は心配した」
「は!?」
 
要するに、留実子を一般の男子部員と同じ部屋に泊めた場合、何かの気の迷いで夜中に留実子を襲おうとした男子は間違い無く留実子に金玉を握り潰され、男を廃業することになる。そういう事故を防止するため、留実子は分けたのだという。
 
「ぼくに金玉を握り潰されて男を廃業した元・男子が過去に10人いるという噂が立ってる」
「はあ・・・・・」
 
ほんとにありそうだと知枝は一瞬思った。
 
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「ぼくは男を廃業に追い込んだ覚えはないんだけどね。ぼくを襲おうとする男はまず居ないよ」
「そんな気がする!花和君に腕力でかなう男なんてまず居ないもん!」
と柴田知枝は言った。
 
留実子は男子としてもかなり頑強な体格で、応援団のどの男子よりがっちりした体格である。アメフトのラインマンができる感じ。女子が彼と2人きりになったら恐怖感を覚えるくらいだ。彼を襲う気になる男は、まず居ないだろう。
 

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実際問題として顧問の先生にしても河合団長にしても留実子は実際にはペニスくらいあるだろうと思っている。だって毎日オナニーしてると言ってるし!だから留実子を自分たちと同じ部屋にした。それでも念のため、同室になるのは顧問・団長のみにしたのである。
 
このホテルは安いだけあり、部屋に風呂が付いていない。浴場に行く方式である。留実子は夜中にお風呂に行ったようだが、留実子が男湯・女湯のどちらに入ったのかは誰も知らない。でも団長たちは多分男湯に入ったのだろうと思った。ただペニスを他の団員に見られないように夜中に入ったのだろう。実際丸刈りの中学生が女湯に入れるとは思えない。(作者もそう思うぞ)
 

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一方、主催者側で確保された野球部員の宿舎は、引率者・コーチなど含めて最大28名まで泊まることができる。スコアラー・コーチなどに女性がいる場合も多いので女性部屋を1室確保できるようになっている。S中は全部で24人だから1部屋少なくていいと連絡した上で女性部屋に“女性4人”を泊めることにした。
 
403(4)福川司・水野尚美・山口飛鳥・佐々木美甘
201(4)強飯監督・菅原主将・前川・小林・
202(4)加藤・東野(以上3年)山園・宇川・
203(4)橋坂・阪井・田中・梶屋(以上2年)
204(4)柳田・小森・松阪・工藤
205(4)飛内・田口・西谷・長山(以上1年)
 
ここは日本旅館で部屋に鍵が掛からないが、4階は女性専用フロアになっている。
 
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女子マネ3人と一緒に“女性部屋”に入れられた司は
「まあいいか。ぼく今女の子だし」
と思った。
 
でも尚美が
「ほうら司先輩にはこんなに柔らかなおっぱいがある。触ってごらん、Cサイズだよ(*3)」
と言って、1年生の女子マネ2人も
「どれどれ」
と言って、司のバストを触っていた。
 
「でも司先輩どうやって性別誤魔化してるんですか。私が男子制服着て出て行っても『着替えて来い』と言われそう」
 
「ソフト部の某女子から聞いたのではね、小学3年生の時に女子ソフト部に入ったけど、野球部が8人しかいなくて大会に出られないって困ってた時にソフト部から“もしかしたら男に見えるかも”と言われて借りたらしいよ。でもそれで他の選手と接触の少ないピッチャーやらせたら、相手のバッターをバッタバッタと三振に取ったから『ぜひ野球部に来て』と言われてそちに移籍して、それが続いてるらしい」
 
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「へー。やはり最初は女子ソフト部にいたんだ」
 
なんか勝手な噂が流れてるなあと司は思った。でも司は小学3年生でなぜ野球を始めたのか実は自分で記憶が無い。
 
(ほんとに女子ソフト部から移籍したんだったりして)
 

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(*3) どうでもいいが「触ってごらんウールだよ」(1982年・ウールマークのCM:広告主は国際羊毛事務局)へのオマージュ。割とパロディが多く、もはや元ネタが分からないまま発せられていることもある。
 

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「でもよく男子のバッターを打ち取りますね。男の子たちパワーあるのに」
「それが司先輩のボールの握り方に秘密があるんだよ。私、教えてもらった」
と尚美が言うので、司はまたボールの握り方講座をすることになった。
 
「これが普通の直球の握り方。これを身体全体を使い、手首のスナップも利かせて投げ込むといわゆる伸びのある球になる。特に右打者には手元で急に速くなるような気がするから振り遅れやすい。でもこのボールの欠点は球質が軽いことなんだよ。打たれると外野に持っていかれる。ホームランを浴びやすい。実を言うと物理的な理論では速い球ほど遠くへ飛ぶ。運動量保存の法則。でも直球の握り方にはもうひとつ、こういう握り方もある」
 
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といって別の握り方を示す。
 
「これ実はソフト部の杏子ちゃんに教えてもらった。彼女も高校では野球やりたいといって、女子の身体でも簡単には男に負けないようなボールを覚えようと思ってこの握り方を研究してたんだって」
 
「へー」
 
「アメリカでは速球というとたいていのピッチャーがこの握り方らしいんだよ。日本の多くのピッチャーの直球に比べて伸びが無いから簡単に打てそうなんだけど実は打ちにくい。ボールがバットを避けるような動きをすると杏子ちゃんは言う」
 
「ボールがバットを避けるんですか!?」
 
「日本ではより速い球が評価されるからこの球は日本ではあまり評価されない。でもアメリカでは早いカウントで相手に打たせて取り、ピッチャーがあまり消耗しなくて済むやり方が、うまい投球の仕方と言われる。それで速度的に劣るかも知れないけど、芯に当たりにくいこの球が重宝されるらしい」
 
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「その方が楽な気がする」
 

「ナックルとは違うんですよね」
という質問が出る。
 
「ナックルの握り方はこう」
と言って司は握り方を示す。
 
「ただナックルってコントロールするのが難しいから、これでストライク取れるようになるには相当の練習が必要だと思う。ナックル練習するよりはこのアメリカ式速球を覚えたほうがいいと思う」
 
「確かに」
 
それで司はこのボールの握り方を女子マネたちに教え、ついでにチェンジアップの握り方も指導してあげた。(いづれS中に女子野球部ができたりして)
 

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なおお風呂には22時頃4人で一緒に行った。1年生の飛鳥と美甘がキャッキャ言って司の胸に触り、あまり騒ぐから27-28歳の女性に注意され
「ごめんなさい」
と司が代表で謝った。(騒いだのは飛鳥と美甘なのに)
 
しかし司が完全に女子の身体であることはしっかり女子マネ全員の知る所となった。
 
「ぼくもう男には戻れなくなった気がする」
と司は思った。
 
(何を今更)
 

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翌日、大会初日、朝食が終わった後で、強飯(こわい)監督は司に言った。
 
「福川さん、今日の先発頼むね」
「え〜〜〜!?」
と司は驚きの声を挙げて訊いた。
「なんで山園君じゃないんですか」
 
「実は明日当たる札幌C学院が左打者の多いラインナップなんだよ。だから山園君を明日の試合に温存したい」
「分かりました」
と司は答えた。
 

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「今回は小森君と前川君と山園君でいけるだろうから、ぼくはキャッチャーやってればいいと思ってたのに」
と司は思った。
 
一方強飯監督は思った。
「あの子、自分がエースだとは思わない方が気楽に投げられるだろうからね」
 
3日連続試合があるなら、1試合目に投げるピッチャーは多くの場合、そのチームのエースであり、3試合目にも投げることが多い。
 
むろん福川司の背番号は“正捕手”の番号2番である。
 

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そういう訳で、司は7月16日(土)の第1試合、S中vs苫小牧K中(南北海道代表)に登板することになったのである。
 
相手K中のエース浜崎広栄(こうえい)君は相手チームが背番号2を付けた“女子”がマウンドに立ち投球練習しているのを見て不快に思った。短期決戦でピッチャーのやりくりが大変なのは分かる。きっとS中は明日の札幌代表C学院との試合にエース(1番は前川が付けている)を使いたいのだろう。しかし10番(山園が付けている)とか11番(小森が付けている)が出てくるのならまだしも、2番ってキャッチャーだろ?この試合はキャッチャーで充分というのか?しかもあいつ女じゃん。ふざけやがって。
 
それで浜崎は「こんなふざけた奴ら、1人も塁に出さん」
と思ってマウンドに立った。
 
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最初から自慢の130km/hのストレートを投げ込んでくる。それで相手S中の1番・2番を連続三振に取る。そして迎えた3番の菅原。
 
全力投球の球をド真ん中に投げ込む。
 
菅原君がジャストミート。
 
球はぐいぐい伸びてスタンドに飛び込む。
 

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菅原君がダイヤモンドを一周するのを、浜崎はぽかーんと見ていた。ピッチャー交替が告げられる。ライトに回されて、控えの1年生投手田村(背番号11)が出ていく。田村は4番阪井に内安打を打たれたが、5番前川をセンターフライに打ち取り、1回表を終えた。
 
1回裏、K中の攻撃。1番打者は
「なんで女が投げてるのさ?試合前の投球練習では100km/hくらいのストレート投げてたから女にしては速いと思うけど、俺たちの敵ではないな」
と思って出て行った。
 
ところがいきなり内角低めに125km/hくらいの速球。
 
「嘘!?」
 
思わず見送った彼は信じがたい思いでマウンド上の相手投手を見る。あいつ女のくせにこんなとんでもないスピードボールを投げるのか?
 
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2球目。何とかタイミングを合わせる。しかしボールは芯には当たらずボテボテのゴロである。セカンドが取って1塁送球でアウト。
 
司はそのまま2番打者をピッチャーゴロ、3番打者をサードゴロに打ち取り1回裏の攻撃を3人で終わらせた。
 

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試合はそのまま司と田村君が投げ合い、5回まで両者無得点が続く。6回裏、K中は左打者の代打を出してきたが、司が110km/h程度と125km/h程度の2種類の速度のスピードボールとカーブとを使い分けるのでなかなか打てない。それで結局3人で攻撃を終える。
 
7回表、疲れてきた田村君が打たれ、1アウト満塁になったところで浜崎君がマウンドに戻ってくる。バッターは今日は9番に入っている司である。
 
「こいつ俺のボールに近いほどの速い球を投げる。しかもこいつの球は当たっても飛ばない。凄く重く感じる。いったいどういう投げ方をしたらあんな球が生まれるんだ」
などと思いながら司に相対した。
 
まずはインコース低めに全力投球の130km/hのストレートを投げ込む。司が振り遅れた感じの空振り。
 
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「やはりこのボールは打てんだろう」
と思う。
 
続けて今度はカーブで外角ギリギリに放り込んで0−2と追い込む。
 
「まあ俺のこのボールを女に打たれたら、俺は男を辞めなきゃな。どうだ。これが男の球だぞ」
などと思いながら全力投球で1球目と同じ内角低めに剛速球を投げ込む。
 
ジャストミート。
 
打球は高く上がり・・・・フェンス際でセンターが取った。
 
これが犠牲フライとなって2点目を失う。
 

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浜崎はまた呆然としていた。
 
「俺、女に打たれちまった。俺、男辞めなきゃ・・・・」
と浜崎は考えていた。
 
結局浜崎はベンチに下げられ、3人目・2年生の井上(背番号10・明日先発予定)が出て行き後続を断つ。
 
7回裏最後の攻撃。K中はまた左打者を次々と代打に出してくるが、司の2種類の速球にタイミングが合わず打っても内野ゴロにしかならずケームセット。
 
これでS中はリーグ戦の初戦に0−2で勝利し、全国大会に向けて好調なスタートを切った。なおこの日の第2試合では札幌市代表のC学院が中北海道代表のH中学を1−0で破っていた。
 

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この日のK中の宿舎、ひとりの少女が部員の泊まっている部屋に入ってくるので、中に居た上野が言った。
 
「君、どこの部屋?ここはK中学の選手が泊まっている部屋なんだけど」
「私、K中の生徒だから」
と“男”の声。
 
「お前まさか浜崎〜!?」
 
「私、女に負けたから男を辞めることにしたの」
「そ、そうなのか」
「病院に行って、睾丸を取ってくださいと言ったら、私未成年だから保護者の承諾が無いと手術できないと言われた」
「まあそうだろうな」
 
常識的な病院で良かったと上野は思った。
 
「だから取り敢えず女の子の下着とスカートとブラウスと買ってきた」
 
よくこいつが女の下着売場で商品を見ていて通報されなかったもんだと思った。
 
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「取り敢えず男の服から女の服に変えたの」
「その髪は?」
「これかつら〜」
「そうだろうな。丸刈りの頭が突然その長さまで髪が伸びるわけない」
「でもこれで私女の子よ。ちゃんと女子トイレも使ったんだから」
 
よく逮捕されなかったもんだ。
 
「でもお前、明後日のC学院戦にも投げてもらわないといけないんだけど」
「私頑張る」
「まあ頑張ってくれるならいいけど」
 
いいのか?
 
結局この日、浜崎は女装のままこの部屋で寝たのである!
 
(ところでこの日、浜崎君は男湯・女湯のどちらに入ったのでしょう?)
 
 
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女子中学生・夏祭り(4)

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