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■女子中学生・秋の嵐(6)

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蓮菜は考えた。
 
昨日の校外学習に参加した千里は黄色い腕時計をしていた。つまりYellowだ。丸一日稼働して疲れて寝てるのでは?千里って普段は3人で分担して学校に出てるみたいだから、それを1人で1日やったら、疲れて今日はまだ寝てるという可能性がある。
 
Yellowがダウンしている。Blueは絶対に女子の試合には出ない。
 
とすると、Redに頼るしかない。Redは多分昨日1日寝ていたはずだから、今日は充分活動する体力がありそうだ。
 
そこで蓮菜は千里Redに電話を掛けたのである(実はYellow, Red 双方の携帯番号を知っていて、それが“別の千里”と認識しているのは蓮菜だけ)。
 
なかなか出ないが我慢強く待つ。
 
2度掛け直して3度目のコールの5回目の呼び出し音でやっと取った。
「はい」
という声が眠そう!!
 
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「千里さあ、数子ちゃんから頼まれたんだけどね。今日バスケの大会があるのに、るみちゃんが怪我して出られないらしいのよ」
「ありゃ。どんな怪我?」
「ダンベル持ってスクワットしてて、うっかりダンベルを足に落としたらしい」
「るみちゃんが使うダンベルなら重そうだ」
「そんな気がする。それで絶対的に戦力が足りないらしいのよ、千里、助っ人してあけられない?」
「いいよ。どこであるの?」
「千里が7月に剣道の大会で行った、苫前町のスポーツセンター」
「ああ。あそこか。分かった。多分10分くらいで行けると思う」
「よろしく」
 
それで電話を切った。
 
10分で行くと言ってたけど、あの子、テレポーテーションでもできるのかね?
 
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できると思わないと説明のつかない事例は過去に何度もあったけど。
 

それで実際には、(休眠場所に居た)千里は蓮菜との電話を終えてすぐに、苫前町のスポーツセンターに姿を現したのである。一度行ったことのある場所なので、1発で出現できた。
 
A大神から連絡を受けたコリンは慌てて千里の着替えを用意し、大神から千里Bのバッシュももらい、自らも苫前町に飛ばしてもらって、千里Rに渡した。
 
「さんきゅさんきゅ」
 
それで千里は更衣室でスポーツブラを着けスポーツソックスにバッシュを履くと、軽く屈伸運動や筋を伸ばす運動などをして、チームメイトの到着を待った。
 
やがて、久子と友子・雪子が到着し、1年生3人(雅代・泰子・伸代)の車も到着する。久子が数子の携帯に電話する。
 
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「え?千里もうそちらに行ってるんですか?すみません。こちらはあと10分くらいで到着すると思います」
 
それで久子は、8人(久子・友子・数子・千里・雪子・雅代・泰子・伸代)の名前を記載したエントリーシートを提出した。
 
「数子ちゃんも、もうすぐ到着するみたいだからユニフォーム配るね」
と言って友子がまずは第1試合で使う、ホーム用の白いユニフォームを配った。
 
「あれ?ユニフォームができたの?」
と千里が言っているので、久子が呆れて
 
「3年生の誰かの保護者さんが寄附してくれてユニフォーム作ったんだよ」
と説明する。
 
「3年生って、どなたなんですか?」
「私も友子も知らない。だから3年男子の誰かの保護者かも」
「男子なのに、女子のユニフォームを寄付してくれるって奇特ですね」
「性転換して女子選手になるつもりだったりして」
 
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「佐々木さんあたりですか?」
という声が複数から出る!
 
「細川さんもかなり怪しい気がする」
などと千里が言っているので
 
「ほほぉ」
と久子・友子が少し呆れている(数子はまだ到着していない)。
 
「佐々木君でも細川君でも歓迎だけど、3年生はこの大会でもう引退だね」
「優勝すれば来月の北北海道大会に行けるけどね」
「それは性転換予定の誰かさんのために、頑張らねば」
 
なお、番号を空けてはいけないので、春には留実子が付けていた6番を今日は千里が付けることになった(千里は春は12番)。急遽、裁縫の得意な友子が番号の付け替えをしてくれた。(留実子のユニフォームは千里には大きすぎる)
 
4.久子(ヒサ)SF 5.友子(トモ)SG 6.千里(サン)SG 7.数子(カズ)PF 8.雪子(スノー)PG 9.雅代(マサ)SG 10.泰子(ヤス)SF 11.伸代(ノブ)C
 
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やがて数子が到着するが
「千里、ありがとう!来てくれて」
と言ってハグしていた。
 

開会式では、まずR中男女キャプテンから優勝旗の返還が行われた。大会長の挨拶などの後、選手宣誓に行く。
 
ここでいつもはR中の男女キャプテンがするのが、今大会はそうではなかった。
 
春にR中女子がファウルが多すぎるとして厳重注意をくらった(新人戦の時も注意されていたのに)ことから、R中は選手宣誓を辞退した(させられた)。それで抽選によって宣誓する学校を決め、男子はM中、女子はC中のキャプテンが前に出て共同で選手宣誓をおこなった。
 

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さて今回の組合せはこのようになっている。ちょうど8校の出場なので、全校1回戦からである。1回戦→準決勝→決勝と進む。
 
2004 Autumn Basketball
H┳┓
M┛┣┓
E┳┛┃
R┛ ┣
S┳┓┃
T┛┣┛
C┳┛
K┛

 
1回戦、T中学との試合が始まる。留実子が居ないので、千里がティップオフをすることになった。相手は身長170cm、千里は166cmで、4cmくらいの身長差があるが、千里が高い跳躍力を見せてボールを雪子の所に飛ばした。それで試合はS中の攻撃から始まった。
 
留実子が居ないので、代理センターの伸代がリバウンドやブロックで頑張るが、やはり留実子ほどはできない。しかし、こちらは雪子の巧みなゲームメイク、距離が7m以上あってもほとんど外さずにゴールに放り込む千里のスリーが冴え、数子と泰子も頑張って得点して、71-48の大差でT中を下した。
 
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「取り敢えず1勝」
「これでBest4だ」
 

準決勝以降、女子はスボーツセンターに隣接する社会体育館に舞台を移す。準決勝の相手はK中であった。
 
この試合、S中は体力の無い雪子を休ませ、久子がポイントガード役を務めた。また友子も決勝戦に備えて休ませたので、準決勝は6人で戦うことになった。しかし残りの6人はみんな充分な体力があるので、1年生の3人を1人ずつ交替で休ませ、久子・数子・千里は出っ放して頑張り、63-50でK中に勝った。
 
そして決勝戦の相手は例によってR中である。
 
この試合ではR中がホーム、S中がアウェイ扱いになるので、両チームとも決戦前にユニフォームを着替えた。実は決勝戦前に着替えられるように組合表を調整してあったのである(R中とS中をシードするついでにそうなる位置に置いた。それ以外は純粋な抽選)。
 
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試合前にR中は何か話し合っていた。恐らく、こちらに留実子が居ないようなので、その対応をどうするか急遽話し合ったのだろう。
 
ティップオフはR中の173cmほどあるセンターさんと166cmの千里でやる。7cmも身長差があれば普通は勝負にならないのだが、それでも“この千里”は強烈なジャンプをして、ボールを確保。雪子の所に飛ばして、こちらが攻める。これは速攻になったので、向こうが防御態勢を整える前に千里がスリーを入れ、試合は0-3から始まった。
 
R中が攻めて来るが、やはり留実子の穴は大きい。相手センターには数子がマッチしているのだが、簡単に振り切られて中に進入され2点を奪われて2-3.
 
それで数子がスローインして今度はS中の攻撃である。雪子がドリブルしながら攻め上がるが、向こうはこちらの選手に選手を貼り付けなかった。
 
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へ?
 

と思う。
 
向こうの5番を付けたスモールフォワードの人が千里にピタリと付いたほかは、残りの4人がダイヤモンドのような形に並んだ。
 
何?なんでこの人たち、こちらの選手に貼り付かないの?と千里は混乱した。
 
「ゾーン・ディフェンスだ!みんな相手選手全員の動きを見て!」
と久子が大きな声でみんなに注意した。
 
ゾンディー・フェンスって何??とバスケット用語を知らない千里は混乱する。
 
千里が混乱しているようなのを見て、雪子は数子にボールを送る。数子が中に進入しようとするが、その付近の壁が厚くなり、進入は困難である。友子にパスする。友子がスリーを撃つが外れる!
 
R中が攻めて来る。また6番を付けた向こうのセンターの人がこちらの防御網を強引に突破してシュート。入って2点。4-3.
 
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ここで監督の三井先生がタイムアウトを要求。選手を集めた。
 
「みんなが混乱しているようなので止めた。詳しくは、はい、雪子ちゃん」
と三井先生は最も理論に詳しそうな雪子を指名した。
 

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「R中はダイヤモンド1というゾーンディフェンス(*24)を組んでいます。通常はバスケットでは相手の1人にこちらの1人が貼り付くマンツーマンというディフェンスを使うのですが、もうひとつ、誰が誰とマッチすると決めずに、このエリアは誰が守るというように、場所に選手を貼り付ける防御態勢を取るチームもあります。これをゾーン・ディフェンスと言います。ゾーンは相手チームに卓越した選手がいるような場合に有効です。たとえば、うちのチームで留実子さんだけが入ったような体制だと、ゾーンにかなりやられてしまいます」
 
という所で雪子は言葉を切る。時計を見ながら話す。
 
「でもゾーンの弱点はスリーなんです。エリアを守っていても遠くから撃つスリーには無力です。そこでスリーを撃つ選手に1人、防御力にすぐれた器用なプレイヤーを貼り付けて、残りの4人でゾーンを組むというやり方があります。これをダイヤモンド1と言って、今R中が取っているのがこの体制です。ですから、みなさんは普段と勝手が違うかも知れないけど、普通に攻めて下さい。ただファウルに気をつけて下さい。結果的に中への進入はかなり難しいです。千里さんはダイヤモンドの4人のことは考えずに、自分に貼り付いている5番さんを振り切ることだけ考えて下さい」
 
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ここでブザーが鳴るので、全員コートに戻る。千里は頭の中の混乱は収まったものの、まだ実はよく分かっていない!でも、雪子は「5番を振り切ることだけを考えて」と言ったなというのを頭に置いた。よし、瞬発力の勝負だ!
 
(*24) S中は上の大会に行ったことがないので未体験だが、実は昔は中学生の強豪校にはゾーンを採用する学校が異常に多かった。ゾーンディフェンスはゲームの面白みをそぐのでNBAでは昔から禁止されていた。日本でも2016年度から中学生以下では禁止された。ゾーン的な動きを取ると反則を取られる(スクリーンプレイにスイッチで対応する場合などは問題無い)。
 
そもそも若い世代はそのようなこざかしいテクニックを覚えるより、基本的なマッチングテクニックを鍛えるべきであり(3年後の千里や暢子たちが到達した境地)、個人の身体能力を強化しない限り本当に強いチームは作れないというのが基本的な考え方である。
 
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それで千里は試合再開後、大きく動き回る作戦に出た。コートの奥まで走りこんだかと思うと、手前の方に戻る、千里は左から攻めることが多いのだが、右側にまで走っていく。そして急に停まって反対に走り出したりする。これはこちらと向こうの体力勝負である。
 
これをやっていると、向こうのフォローが間に合わず、相手との距離が瞬間的に空くことがある。するとそこに雪子から矢のようなパスが来て、千里は即スリーを撃つ。今日の千里は極めて正確にゴールにボールを放り込む。全く外さない。
 
それでも、やはりゾーンの堅い守りを他の選手はなかなか突破できない、雪子は友子が使えそうな時は友子にもボールを回すが、あいにく友子は千里のように百発百中とはいかない。ゴール成功率は3割程度である(それだけ入れば普通かなり優秀なシューター)。しかも今日は留実子が居ないで、リバウンドはほとんど相手の6番に取られてしまう。
 
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それで第1ピリオドは32-9という悲惨なスコアとなった。
 

第2ピリオド、R中は4・6〜8番の4人を下げて、11〜14番の4人を入れてきた。ゾーン要員を交替させたのである。
 
しかしこの4人はスターターの4人ほどはうまくなかった。雪子が巧みなパス回し(フェイントを含む)で攪乱すると、簡単にゾーンに穴が空いてしまい、こちらはどんどん“普通に”得点をあげることができた。また彼女らはS中のディフェンスを突破できなかった。
 
わずか2分で32-21となるので、向こうは慌てて試合を停めて、結局スターターに戻す。すると、こちらはまたR中のゾーンに阻まれて得点ができなくなってしまう。また、点差はじわっじわっと開いていった。
 
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友子、数子、1年生の3人に諦めの気持ちが生じてくる中、久子、雪子、千里の3人は全く諦めていなかった。
 
久子と雪子が考えていたのはこういうことである。
 
「ゾーンは運動量が激しい。交替せずに最後まで持つ訳が無い。しかし交替すれば簡単にこちらに突破されることを向こうは認識したから交替できない。更には千里に貼り付いている選手は後半になったらダウンする」
 
千里の場合は“なーんにも考えていない”!ので全く諦めの気持ちは無かった。
 
前半を終えて点数は52-27である。
 
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女子中学生・秋の嵐(6)

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