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■春水(20)

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千里3をアクアでその川崎のマンションまで送って行き、その後で青葉は千里2に電話した。
 
「3番と会ってきた」
「お疲れ様。まあそういう訳で、川崎のマンションに居るのは確実に3番、オーリスに乗っているのは確実に2番、葛西には2番が居ることが多いけど、3番も使う。1番は葛西を知らない。一度死んで青葉に蘇生してもらったオーラの弱い子が1番だから」
 
「やはり、その1,2,3でいい訳ね」
「うん。私もそう呼んでいる」
「これって、ずっとこのままな訳?」
 
「1番が霊的な能力を回復させたら、1と3は合体して元に戻ると思う。落雷の影響をいちばん強く受けたのも1番なんだよ。そこから回復の途中でまた死んじゃったから、蘇生はしたものの凄く弱い。今の状態では合体する能力も失われているんだ」
 
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「じゃいづれ1人に戻るんだ?」
 
「まあ東京オリンピックくらいまでには戻れると思うよ。多分私がひとりに戻ったらアクアもひとりに戻る」
 
「やはりそのくらい掛かるか・・・」
「青葉も1番の治療をしてくれているね。助かっている。私も治療しているけど」
「治療者のひとりは、ちー姉だったのか!」
「まあ自分のことだし。でも別れている状態も結構便利なんだよね〜」
「便利かも知れないね」
 
「だから何か面倒なことがあって『千里』に相談したいことがあったら、まず私、2番に連絡してよ。それで適当に調整して3人の中の誰かが行けるようにするから」
 
「分かった、そうさせてもらう。ところで厄払い旅行に参加するのは誰?」
「1番。今、あの子には神仏の加護も欲しい。それに私と3番はリーグ戦で忙しいし」
 
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「・・・ちー姉、もしかしてWリーグじゃない所に参加してる?」
「私はリーグ戦は9月29日に始まると言ったよ」
 
むむむ。知りたければそのヒントで調べろってことか?
 
「海外?」
「もちろん。日本に居たら私が複数の場所に現れていることになるもん」
「それ今更だと思うけど」
 

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青葉は結局この日、大宮に移動し、彪志の所に泊まった。
 
翌18日、千里2と一緒に館林の**寺に行き、御住職と会って、呪いを掛けられている人を救うため、大きなサイズの男の子の身代わり人形が欲しいと言った。
 
「確かにそういうご要望はあります。どのくらいのサイズが必要ですか?」
「30cm大のが作れますか?」
「大丈夫です。でも制作には2ヶ月くらい待ってもらえますか?」
「分かりました。お願いします」
 
青葉は住職にお代を尋ねたのだが、住職は「おこころざしで」と言って金額を言わない。しかし千里が「50万円くらいでいかかでしょうか?」と言ったら、「はい、いいですよ」と住職は答えた。
 
住職の脳内を読んだなと青葉は思った。千里姉はそれが得意なのである。
 
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それで青葉がその場で現金で50万円払って領収書をもらった。しかし今回の事件も赤字確実だなと青葉は思う。とっても貧乏そうな矢恵に50万円なんて、とても請求できない!まあ、5万円くらい請求するかなぁ。
 
青葉は千里と一緒にお昼を食べた後、彪志のアパートに行って掃除などをし、夕食を一緒に食べ「一休み」してから、夜中にアクアで高岡に帰還した。
 

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千里2と青葉が金沢・東京を往復していた9月16-18日(土日祝)、北海道の湿原の風アリーナ釧路、黒部市の黒部市総合体育センター、大分県のダイハツ九州アリーナの3ヶ所に別れて、全日本バスケットボール選手権大会(天皇杯・皇后杯)の2次ラウンドが行われた。
 
これは各都道府県の代表が出場し(男子はB2のチームも)、3会場で合計15個のトーナメントを行い、各トーナメントの優勝者が次のラウンドに進出できるという仕組みになっている。
 
これに出場した千葉のローキューツ、東京のジョイフルゴールドは、いづれも優勝して、11月に全国8府県で行われる3次ラウンドへの進出を決めた。
 

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2017年9月26日(火)、青葉はまた例の自動車学校に行き、今度は中型免許のコースに申し込んだ。
 
「あんた頑張るねぇ」
と言って受付のおばちゃんが入学手続きをしてくれる。
 
「あら?あなた性別が女って書いてあるけど」
「はい、法的に女になりました」
「ほんと!良かったね!免許証の性別も書き換えた?」
「はい、運転免許試験場に行って、性別変更届けを出して書き換えてもらいました」
 
免許証の表面には性別は記載されていないものの、中に入っているICカードには性別も記録されている。それを書き換えてもらった。また警察のデータベース上の性別も同時に変更してもらっている。
 
「じゃ、この後は女で問題無いね。あら?あなたまだ最初の免許を受けてから2年経ってないけど」
「第1段階の修了試験を受けるのがちょうど2年目になります」
「なるほど!だったら問題無いね」
 
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それで青葉は26-28日の3日間、実技の教習を受ける。例によって
 
「君は上手すぎる。中型じゃなくて、大型を取ればいいのに」
と言われたが
「まだ20歳なので」
と言うと
「うそ!?」
と驚かれるのは、もう気にしない!!
 
そして順調に第1段階の教習を終えて、9月29日に修了試験にも合格し、仮免を取る。
 
青葉が普通免許を取ったのが2015年9月29日なのである。
 
その後、9月30日と10月1日に第2段階の実技教習を受ける。準中型を持っている場合、中型を取るには、第1段階5時間、第2段階4時間の実技を受ければよく、学科は受ける必要が無い。
 
そして10月2日(月)に卒業検定を受けて美事合格。翌日10月3日に富山市の運転教育センターに行って、新しい免許証を手にした(高岡市の運転免許センターは更新のみとなっていて、新規取得は富山市まで行く必要がある)。
 
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これで青葉の免許証にセットされた免許は原付・小特・普通・準中型・中型・普通二輪・大型二輪・大特・牽引の9種類となった。残りの大型と5種類の二種免許は来年の9月29日以降しか取れない。
 

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9月30日、今年の大阪バスケット実業団のリーグ戦が始まった。
 
三善美映はその日、Bリーグのアルバルク東京−大阪エヴェッサの試合を見に行くつもりだった。その試合は府民共済Super Arenaで行われていたのだが、美映はアパートを出た後で、試合の会場が分からなくなった。
 
あれ〜?どこだったっけ?と悩み、スマホで調べようとしていたら近くで
 
「あんたもバスケット見に行くの?」
「うん、今から行く所」
 
と会話している若い女の子2人の声が聞こえる。
 
あ、この人たちも見に行くのかな?だったら付いていけばいいか、と思った。
 

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それで来てみたら、東淀川体育館である。
 
え?こんな狭い体育館でBリーグの試合するんだっけ?と思ったものの、確かに試合が行われるようである。それでチケットを買って中に入ると、ここで行われる試合がBリーグの試合ではなく、実業団1部の試合であることに気付いた。
 
(普通はチケットを買う段階で気付くものだが美映はとってもアバウトな性格である)
 
あちゃー!間違った。紛らわしい日程で実業団の試合なんかするなよ!などと考えているが、さすがにそれは無茶な話だ。
 
ここを出て会場を調べ直して移動しようかと思ったものの、まあいいか。今日はたまには実業団の試合でも見るかと思い、座席に就いた。
 
そして始まったのだが・・・・
 
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美映は試合の一方のチーム、サウザンド・ケミストラーズに物凄く上手い選手がいるのに気付く。
 
全体的にそちらが劣勢なのだが、その選手ひとりでどんどん敵の隙間を抜いて得点をあげていく。相手がたまらずダブルチームを掛けても、うまく逃げてパスを受ける。そしてとうとう、その選手ひとりだけで逆転勝ちしてしまった。チームの得点の半分以上をひとりであげている。
 
背番号4を付けたその選手の名前はHOSOKAWAとユニフォームに染め抜かれていた。
 
でも・・・なぜこの選手、Bリーグじゃなくて、実業団なんかにいる訳〜?この選手の実力ならB1の優勝を狙うようなチームでも充分行けると思うのに!いや、むしろこの人、日本代表に欲しい!
 
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9月30日はフランスでキュー(千里2)もLFBのリーグ戦初戦を迎えた。
 
リーグ戦自体は29日に始まったのだが、初日は1試合のみで、他の試合は30日から始まった。
 
今日の相手は昨シーズン3位の強豪であったが、キューや同じく新戦力のセネガル人選手マレベの活躍で10点差で勝利した。
 
「試合には勝ったが(スターター枠キープの)お尻に火がついた」
などとシモーヌが言っていた。
 

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阿倍子はその日、少し調子が良かったので京平に留守番をさせて、ひとりで近くのスーパーまで買物に出た。
 
トイレに行きたくなったので、入ったら
 
「あんた男じゃないの?」
という声が聞こえる。
 
それで見てみると、見覚えのある人物が50歳くらいのおばちゃんに捕まっている。
 
阿倍子は近寄って声を掛ける。
 
「晴子ちゃん、どうしたの?」
 
「あ、阿倍子さん?」
と晴安は女声で阿倍子に返事した。
 
「あんた、この人の知り合い?」
とおばちゃんが訊く。
 
「そうですけど、何かありました?」
「この人、本当に女?」
「間違い無く女ですよ〜。一緒にお風呂入ったことあるし」
 
などと言うと、晴安は少し恥ずかしがっている。確かに昔入ったことはあるがそれは混浴の温泉で、全員水着をつけていた。
 
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「ほんと?ごめーん。てっきり女装で女子トイレに入って来た痴漢かと思った」
 
「私、時々間違えられるんです! 私は女ですというプレートでも下げておこうかな」
と晴安。
 
「それはさすがに怪しすぎる」
と言って、阿倍子もおばちゃんも笑う。
 
それでおばちゃんは
「間違ってごめんねー」
と言って、トイレから出て行った。
 
それから晴安は阿倍子に言った。
 
「助かったぁ。ありがとう!」
 
阿倍子は晴安をあらためて見て言った。
 
「晴子ちゃん、可愛いよ」
 
「そう?でもほんと助かった。大抵女子トイレやプールの女子更衣室はパスしてるんだけどなあ」
 
「顔の調子があまりよくなかったのかもね。今日は眉毛が少し太いし」
 
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それで晴安は鏡を覗いてギョッとして言った。
「しまったぁ、眉毛の処理忘れてた!」
 
と言って、慌ててバッグを取り出し、眉毛を細くしていた。
 
「ああ、それで女度が上がったね」
「警察に突き出されてもちゃんと説明する自信はあるけど、結構面倒だから」
 
「たいへんね〜」
と阿倍子は微笑んで言った。
 

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「最近は、女装が多いの?」
 
と阿倍子は結局晴安と一緒に買物をした後、店内の休憩コーナーで自販機の80円のコーヒーを買って飲みながら話す。結婚している身で“男性”と会うのは罪悪感を感じるが、女装の相手なら“女子”に準じてもいいよなと思う。
 
「こういう格好は昔からだけどね。あくまで息抜きだよ」
と晴安は話している。
 
「奥さん公認?」
「公認しているわけではないけど、黙殺されている気がする」
 
「ふーん。まあ黙認でもしてもらっているのなら、いいんじゃないの?」
「時々、勝手に女物の服が捨てられている」
 
「それ、やはり奥さんは嫌がっているのでは?」
 
「嫌がられても、我慢できるものではないし」
「晴子ちゃん、女の子になりたい訳ではないよね?」
 
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「それは無いつもり。あくまで私は女の子の服が着たいだけ。だから女性ホルモンも飲まないように我慢しているよ」
 
飲まないように我慢してるって・・・つまり時々飲んでいるのか!
 
「男性機能はまだあるの?」
「あるし、失いたくないと思っている」
「ちゃんと奥さんとしてる?」
 
阿倍子はあまり深い意味があって訊いたのではないのだが、晴安は少し悩むようにしてから答えた。
 
「妻が今3歳の子、1歳の子、そして妊娠中の子と3連発で子供を作ったのもあって、結果的に4年くらい妻とはセックスしてない」
 
「でも子供ができたということはその前にはセックスしたんでしょ?」
 
「僕は妻の中ではどうしても逝けないんだよ。ひとりでなら出来るんだけど。だから全部人工授精なんだ」
と晴安が言った。
 
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阿倍子はその話を聞いて、彼に親近感を感じてしまった。
 
 
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