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■春水(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-11-23
 
アクアの映画の撮影は8月いっぱい精力的に続けられ、結局8月中にほぼ全てのシーンを撮り終えてしまった。
 
何と言っても、8月7日に参戦した主役のアクアがこの1ヶ月間に2度しかNGを出さなかったことで、予定よりずっと早く撮影が進行してしまったのである。監督は当初の予定では、主なシーンを8月中に撮影し、編集しながら追加シーンを9-10月の土日に撮影するつもりだったのだが、結局9月中は撮影をしないという方針を出演者に伝えた。
 
ただ撮影のギャラを期待していた俳優さんが多いので、制作委員会側はその間日数単位でギャラを払う契約の俳優さんには、これまでの出演頻度に応じて4-10回分のギャラを払うということで了承を得た。(メインの俳優さんたちは拘束時間に関係無くグロスの契約)
 
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9月はここまで撮影した分のビデオを編集し、その出来を見て、一部のシーンを撮り直したり、あるいは追加シーンの撮影を10月に行うことにする。また予告編の第一段を9月中旬からテレビやネットで公開して、前売券も発売開始することにした。前売券の印刷は既に8月下旬から進めている。
 

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この映画の主題歌は当然アクアに歌わせることになっていた。ただ今回それを誰が書くかが結構な問題であった。
 
これまでアクアの歌う楽曲は、青葉とケイが1回交代くらいで書き、歌詞は毎回マリが書くのが定着している。3月に発売した『星の向こうに』と7月に発売した『憧れのビキニ』を青葉が書いているので、今度はケイの番である。しかし今回ケイはローズ+リリーのアルバム制作で全く時間が取れない。そこで3回連続になってしまうものの、今回も青葉にお願いするということで、コスモスは関係者の了承を得た。歌詞についてはマリも多忙だったのだが
 
「アクアちゃんのためなら」
 
と言って忙しい中『真夜中のレッスン』という可愛い詩を書いてくれた。
 
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青葉は大学の期末試験が終わった後、8月6日(日)にレジャー水泳客で賑わう芝政ワールドに行って、ビキニ女子たちが闊歩しているのを見ながら、この詩に曲を付けた。
 
そして更に問題だったのが、カップリング曲である。アクアのCDのカップリング曲はこれまで一貫して葵照子+醍醐春海(蓮菜+千里)のペアが書いてくれていた。ところが千里は7月4日の事故のあと
 
「ごめん。今は埋め曲レベルのものしか書けない」
 
という状態に陥っていた。
 

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それで困っていた時に、当の千里からコスモスに連絡があった。
 
「雨宮グループの新人作曲家で、琴沢幸穂という人がいるんだよ。この人が凄くいい曲を書いているんだ。彼女に書いてもらえないかな?」
 
と言い、現在ローズ+リリーが制作中のアルバムに入る予定の曲『フック船長』の譜面を送ってくれた。
 
コスモスは音痴なのだが、譜面を読むのは上手い! それでこの曲を見てみてひじょうに良い品質の曲を書いていることを認識した。念のため自らピアノ伴奏をして、ちょうど事務所に居た桜野みちるに歌わせてみたら、みちるも
 
「これカッコいい歌ですね〜」
と言った。
 
琴沢の曲を使うのなら雨宮グループの作曲家の仕事の窓口になっている新島鈴世さんに連絡してということだったので連絡してみたら、新島さんはなぜか笑って!?
 
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「琴沢幸穂ちゃんは優秀だよ。その映画のストーリーも把握しているから、すぐ依頼するね。使うかどうかは出来た作品を見てから決めて」
と言ってくれた。
 
楽曲はわずか3日後に送られて来たが『恋を賭けようか』という少し色っぽい感じの曲である。これも念のため、コスモス自身がピアノ伴奏して、桜野みちるに試唱してもらった。
 
「ちょっと言葉遊びが面白いですね、この曲」
とみちるは楽しそうに言う。
 
「うん。小学生はこの言葉遊びに気付かない」
「中高生にはかなり受ける」
「男子大学生がかなり狂う」
 
「これって女子高生になったアクアにピッタリの曲かも」
とみちるは言ったが
「アクアは男子高校生のはずだけど」
とコスモスは訂正しておく。
 
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「アクアって、結局男子高校生してるんですか?1度スカートの制服着てるの見たけど」
「あれ、ズボンを友だちに隠されたらしい」
「毎度のことだな」
 
「でも高校生になったアクアにピッタリの曲だと思うよ」
とコスモスは言った。
 
それで採用することにして、新島さんにその方針を伝えた。普通に印税方式で支払うので良いということだったので、それで契約書を交わし、JASRACにも登録した。
 

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9月2日に青葉が枚方市のプールでのタッチ練習を終えてホテルに戻ってきた時、コスモスからメールが入っていることに気付く。電話してみると、アクアの映画の主題歌の音源制作をしているので、インカレが終わったら東京に来てくれないかということであった。
 
「映画の撮影はどうなっているんですか?」
「8月中に事実上終了した」
「凄い」
「あの子、2回しかNG出さなかったらしい」
「それはまた凄いですね」
 
「今ビデオ編集中なんで、10月に入ってから多少の追加シーンを撮るかもという状態なのよ」
 
「じゃ明日こちらが終わったら最終新幹線で東京に移動します」
「分かりました。お願いします」
 

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インカレ最終日。9月3日(日)。
 
朝1番に行われた400m個人メドレー予選では、青葉は4位でA決勝へ。皆橋君もA決勝、蒼生恵はB決勝に進出した。
 
その後、100m自由形に出た希美はB決勝進出。100m背泳に出た諸田さんは予選落ち。200m平泳ぎに出た香奈恵と中原さんはいづれもA決勝に進出した。
 
予選の部最後に800mリレーの予選が行われる。女子は予選タイム3位でA決勝へ、男子は予選タイム13位でB決勝に進出した。
 

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1日目も2日目も中休みは2時間ほどあったのだが、今日は1時間ほどの休憩ですぐ決勝の部に入った。青葉はその間はお弁当も食べずにひたすら寝ていた。
 
14:30女子800mの決勝が行われる。青葉は予選3位だったので3コースである。予選1位で4コースを泳ぐ永井さんは昨年の銀メダリストである。顔を覚えているので青葉が会釈したら向こうも会釈を返してくれた。5コースを泳ぐ予選2位は南野さんだ。
 
「Take your mark」
という声で全員不動の姿勢を取る。
 
各自の後ろにあるスピーカーからブザーが鳴り、一斉に飛び込んだ。
 
昨年は上位4人で激しく争ったのだが、今年はまずは5人の争いという感じになった。こういう長距離のレースでは結構駆け引きの部分もある。3〜5コースの3人と1コースの人、7コースの人の5人がほぼ並んで泳いでいく。そしてお互い相手の位置を把握しながら、仕掛ける時を待っている。
 
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ラップカウンターが4になる。
 
南野さんが少しペースを上げた。それに永井さんが続き、青葉もそれに続く。1往復してくる間に1,7コースの選手との差が付いたようである。どうもこの3人の戦いになった様相があった。残り2往復となった所で今度は永井さんが少しペースを上げる。青葉もそれに付いて行く。南野さんは更にペースを上げた。永井さんも対抗して上げる。青葉も更に上げる。
 
青葉は無理せず2人に付いて行っているのだが、南野さんと永井さんは必死でペースを上げようとしているようだ。ところが無理しすぎたのか、残り1往復になった所で南野さんのペースがやや落ちる。永井さんはペースを保ってそのまま泳ぎ続ける。青葉は今が勝負時だと思った。
 
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今までキープしていた全体力を投入して、グッとペースを上げた。永井さんはいったんは離されてものの、向こうも必死で追ってくる。向こうが追ってくるのを感じ取って、青葉は更にペースを上げる。
 
そして向こうの壁でターンして最後の50mは全力で泳ぐ。筋力の限界を超えて水を掻き、足も動かす。体格的に向こうが勝っているせいか僅かながら向こうのペースが速い。距離を詰められているのを感じる。青葉は限界の限界を超えて必死に泳いだ。
 
しかし向こうもかなり追いすがってきた。
 

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ほぼ同時にゴール板にタッチした。
 
時計を見る。
 
1.KAWAKAMI 8:35.28
2.NAGAI___ 8:35.29
3.MINAMINO 8:37.12
4.HARADA__ 8:42.51
5.MAEDA___ 8:44.69
 
やった!
 
0.01秒差で青葉の優勝であった。永井さんが首を振って青葉に握手を求めてきたので青葉も笑顔で応じた。
 
「来年は負けないから」
「こちらもまた鍛錬してきます」
 
この時点で青葉はもう退部届のことは完璧に忘れている。
 
「ところで川上さん、なんで今年の春の日本選手権は欠場したの?」
と退水しながら永井さんが訊いた。
 
「欠場??」
「だって昨年のインカレで標準記録突破してたのに」
「え〜〜〜!?」
「まさか出場資格があることを知らなかったとか」
「知らなかった!」
「幡山さんは教えてくれなかったの?」
「う・・・」
 
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ジャネは・・・人にそんなことを注意するほど親切な人ではない!
 
「じゃ今度は登録忘れないようにね」
「ありがとう!頑張る」
 

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男子の1500mが行われている間に女子800mの表彰式が行われるが、青葉は表彰台のいちばん高い所に立って金メダルを掛けてもらい、満面の笑みで観客に手を振った。2位の永井さん、3位の南野さんとも握手する。
 
表彰式が終わってから控え席の方に戻ろうとしていたら
 
「K大の川上さん」
と40代くらいの女性に声を掛けられる。
 
「はい?」
「JADAの者です。ドーピング検査にご協力頂けますか?」
「はいはい」
 
実は青葉はドーピング検査を受けるのは初めてであった。この後、青葉は
「うっそー!?」
と思う体験をすることになる。
 
係の人はまず青葉に150円を渡して、自販機でお茶か水を買って飲んで下さいと言う。それで青葉は烏龍茶を買って飲み干した。
 
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「ドーピング検査は初めてですか」
「はい、初めてです」
 
「でしたら少し驚かれるかも知れませんが、よろしくお願いします」
「はい」
 
それで一緒にトイレに行く。
 
「中でおしっこ取ってくればいいんですか?」
「そうなんですが、おしっこを出す所を私が確認させて頂きますので」
「は?」
「昔は各選手に個室の中で取ってもらっていたのですが、それだと他人の尿を隠し持っていて、それをコップに注ぐという人が出てきたので、確かに本人の身体から出るところを検査官が見なければいけないことになったんです」
 
「え〜〜〜!?」
 
それで一緒に大型の個室の中に入り、青葉は結局水着を脱いで裸になり、そこで係官が持っているコップの中におしっこをした。
 
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なんつう恥ずかしい!
 
みんなこんなこと、やってるの〜〜〜!?
 
「それではこのコップから目を離さないで下さいね」
「はい?」
「選手が目を離した隙に、薬物をコップに投入する悪徳検査官がいたので、封印するまでの間、選手・検査官の双方がコップから目を離さないようにするというルールになったんです」
 
「大変だ!」
 

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それで青葉は残りのおしっこをトイレの中にして水を流した後、水着をまた着て個室の外に出て手を洗うが、言われたとおりコップからずっと目を離さないようにしていた。
 
一緒に事務局に行き、コップをカバンの中に入れて封印する。封印した後はもう検査官も開けることはできない。開ければ封印が破れてしまう。
 
それで所定の書類にサインして解放された。
 
あまり何度もやりたくない!と青葉は思った。
 
そういえばちー姉は、高校1年の時、まだ男の身体だったのに、女子選手と思われて女性の検査官にドーピング検査されたと言っていたけど、どうやって性別を誤魔化したんだ?と思った。こんな裸になっておしっこするのなら、タックしてたって男とバレるぞと思う。
 
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やはりちー姉は、中学生時代に性転換済みだったとしか思えない。
 

ドーピング検査を終えて時計を見ると、15:05である。
 
「きゃっ、出番が!」
と声を挙げたら、検査官が
「もしかして次の出番がありましたか?」
と訊く。
 
「15:19からの400m個人メドレーに出るんです」
「それはいけない。一緒に行って、遅れた理由を説明します」
と検査官が言ったので、一緒に走って選手入場口の所に行った。
 
「すみません!遅くなりました。K大の川上です」
と声を挙げる。
「今締め切った所なんですが。2度も場内呼び出ししましたよ」
とスタッフが怒ったような顔で言う。
 
それでJADAの人が、ドーピング検査をしていたことを説明する。
「ああ、そういう事情でしたか。分かりました。それでは参加を認めます」
 
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それで青葉は400m個人メドレー決勝に出場することができた。
 
「でもこのメダルどうしよう?」
「私が預かってます!」
と検査官が言ったので預かってもらった。
 

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