広告:ここはグリーン・ウッド (第6巻) (白泉社文庫)
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■春水(18)

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「そうですね。。。。アクアという名前は、そもそも伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が、黄泉の国から戻ってきて、川に入って水中で禊(みそぎ)をしたことにちなんで付けられたものでしたね?」
 
と青葉は言った。
 
「そうそう。知っている人はごく僅かだけどね」
と紅川さん。
 
「彼のホロスコープで水星が強いからとも言っていたね」
と山村さん。
 
「うん。よく知ってるね」
と紅川さん。
「本人から聞きましたから」
と山村。
 
「そういうことでしたら、水の神様がいいです。その伊邪那岐命の禊に関わるのであれば、住吉さんですね」
と青葉は言った。
 
「だったら関係者一同で行きましょう」
とコスモスが言う。
 
「関係者一同って誰々だろう?」
 
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「ここにいる8人、サブマネージャーの2人、アクア本人と田代の両親、親権者の長野支香、エレメントガードの4人、今井葉月、行く時にもし退院していたら鱒渕さん、ファンクラブ会長の松浦紗雪、上島先生、雨宮先生、醍醐春海、葵照子、琴沢幸穂、マリとケイ、30人かな」
 
と山村さんは名前を挙げた。
 
「30人か。もう団体旅行だな」
と紅川さんは言っている。
 
「いや、そのメンツはみんなアクアの強い関係者ですよ。ぜひそれ時間を合わせてお参りに行きましょう」
とコスモスは言った。
 
「じゃ、僕が直接その30人に連絡を取って、都合のいい日を探し出すよ。山村君、あらためて今の名前紙に書いておいてくれない?」
と紅川さんは言う。
 
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「分かりました。今日中に会長にメール致します」
 
「いちばんスケジュールが厳しいのは、上島先生とケイかな」
 
「いや、多分一番厳しいのはアクア本人」
 
「確かに!」
 

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日程調整の結果、マリとケイは9月中はアルバムの作業のためどこかに出かけるのは困難ということで、10月にして欲しいということであった。千里は10月以降リーグが始まるので土日は無理という話だった。ところがアクア本人は平日は学校があるので厳しい。更に上島先生は、現在アルバムの制作を3つ同時でやっていて(つまり30曲ほど書かなければならない)、当面全く時間が無いので、申し訳無いが他の人で行ってきてということだった。
 
紅川さんも困ったようだが、山村は言った。
 
「考えてみたんですが、30人もの人数で移動していたら無茶苦茶目立つと思うんです。ファンが騒いだりして、まともにお参りできないと思うので、日程を3つくらいに分けたらどうでしょう?その方が日程の調整も付きやすいし」
 
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「確かにそうだね」
 
それで再度日程を調整した結果、10月7日(土), 10月9日(祝), 10月11日(水)という3つの組に分けることにした。
 
結局、上島先生は不参加になった。また琴沢幸穂は大学の試験日程にぶつかるのであとから別日程で行きたいということだったので交通費と玉串料だけ支給することにした。この話に「まだ学生だったのか!」と驚きの声があがっていた。
 
「ちなみに男性?女性?」
「スカート穿いてたし、胸があったからたぶん女性」
とコスモスは言っていた。
 
「ここにスカート穿いてて胸のある男の子もいるけど」
「出がけに探したんだけど、どうしてもズボンが見つからなかったんですー」
 
龍虎のマンションでは、ズボンや男の子用下着は、買っておいてもすぐに紛失する傾向があるようである。
 
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紅川と山村はこのように組み分けをした。
 
7(土)アクア、コスモス、山村、鱒渕、葉月、和泉、大宮万葉、マリ、ケイ、丸山アイ、佐良しのぶ(運転)
9(祝)アクア、ゆりこ、田代涼太、幸恵、長野支香、ヤコ、エミ、ナツ、ユイ、高村友香(運転)
11(水)アクア、紅川、緑川志穂、三田原、雨宮三森、松浦紗雪、醍醐春海、葵照子、矢鳴美里(運転)
別日程:琴沢幸穂、不参加:上島雷太
 
マリ・ケイが参加する日はふたりの専任ドライバーである佐良さん、醍醐春海・葵照子が参加する日はふたりの専任ドライバーである矢鳴さんが入れるので、この際、運転をお願いすることにして、アクアのドライバーである高村はどちらも入らない第2日程のドライバーを務めることになった。
 
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「アクアは3回参加?」
とゆりこが訊く。
 
「主役のアクア抜きでお参りって、あまりにも間が抜けているから、忙しいのに申し訳無いが3回行かせる」
と紅川さん。
 

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「これは各々の組に、何かあったら運転を交替できる人が付いているんだよね。7日なら大宮万葉さん、9日ならゆりこちゃん、11日なら醍醐春海さん」
と三田原さんが言っている。
 
「ちょっと待って。私、普通免許しか持ってないからマイクロバスは運転できない」
とゆりこが言うが
「第2日程は人数が10人だから定員10人のワゴン車を使う。だからゆりこにも運転できるよ」
とコスモス。
 
「だったらいいか」
 
(普通免許・準中型免許で運転できるのは定員10人以内の車。中型免許なら定員29人までの車を運転できる。但し2017年3月以前の普通免許から移行した5t以下限定の中型免許、2007年6月以前の普通免許から移行した8t以下限定の中型免許では、いづれも定員10人以下の車しか運転できない。マイクロバスを運転するには限定解除の教習と試験を受ける必要がある)
 
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「第3日程も9人だからワゴン車。第1日程だけが11人だからマイクロバスを使う」
「これが定員13名のVIPタイプで、座席がゆったりしているんだよ。マイクロバスって窮屈なのが多いからね」
「へー、いいなあ。私もそちらに乗りたい感じ」
 
「ゆりこちゃんも第1日程にする?定員に余裕があるし」
 
「でも私が抜けたら2日目の予備ドライバーは?」
「ワゴン車だから、田代のお父さんも運転できるし、ヤコも運転できる」
「だったらいいか」
「出納係は友香が運転手と兼任でできるしね」
 
「結局1日目が主力、2日目は家族とバックバンド、3日目はお偉いさんという感じになるのかな」
 

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「醍醐春海さんはこないだの日曜日に、とうとう国際C級ライセンスの条件を達成してライセンスを申請したと言っていた」
「あの人、忙しそうなのに、よくそんな時間があるね」
 
千里(千里2)は9月10日に十勝でレースに参加して6位に入り、5つめのレース順位認定で(レース除外条件の無い)C級ライセンス取得条件を満たした。
 
「大宮万葉さんは、運転歴10年らしいし」
「あの人もどうも年齢がよく分からない」
 
などという話が起きていたことを青葉は知るよしもなかった! ただ、何かの時は運転をお願いしますと言われて了承しておいた。
 
ゆりこも言っていたように第1日程の移動にはマイクロバス(VIPタイプ座席数13)を使用するので、中型免許が無いと運転できない。しかしそのことをこの時点で青葉は認識していなかった。
 
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青葉は9月10日夕方の新幹線で高岡に戻った。その後、矢恵さんと連絡を取り、11日の日中、アルプラザ津幡の駐車場!で会った。
 
店内でケンタッキーを買ってきて、青葉のNISMO Sの車内で食べながら密談する。
 
「川上さんが、お人形のこと聞いておいて欲しいと言っておられたので聞いてきました」
「どうでした?」
 
「ナナさんが持っていた人形は、だいたい女性の親族で分けたらしいのですが、ひとつだけナナさんが凄く大事にしていて、まるで自分の娘のように毎日陰膳まで供えていた30cm大の日本人形があったらしいです」
 
「かなり大きなものですね。そのお人形はどうしたんですか?」
 
「自分の代わりに自分が死んだ後も大事にしてと生前は言っていたそうなのですが、まるで生きているかのような人形で、みんな怖がっていたらしくて」
 
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「ああ」
 
「それで何とか1年間は仏檀の横に置いて、水と御飯を供えていたそうなのですが、一周忌の時に、やはりナナさんと一緒に送ってあげようよと長女の貞子さん(五十六や平和の姉)が言うのでお寺でお焚き上げしてもらったんだそうです」
 
「やはりそうでしたか」
 
「その話を聞いて思ったんですが、もしかしてナナさんは自分の呪いをその人形に移していたんでしょうか?」
 
「そうだと思います。たぶんその人形は元々は男の子だったんではないでしょうか。そして息子のように可愛がっていた。だから呪いはそちらに移って、お人形は女の子に変わってしまった。でもそのおかげでナナさんは82歳の天寿を全うできた。多分誰かお坊さんとか拝み屋さんとかにそのあたりの処理をしてもらったんですよ」
 
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「でもその人形を処分してしまったので、呪いが父に移ってしまった」
 
「だと思います。でも貞子さんを責めないで下さいね」
と青葉は言う。
 
「いや、私でも死んだ人の遺品の、生きているかのような人形なんて、怖くて処分したくなると思います」
と矢恵。
 
「でも取り敢えず、同じ手法が矢恵さんにも使えると思います」
「なるほど。でもずっと将来に私が死んだ後のことが心配」
 
「ええ。ですから、別の方法も私、考えますけど、当面の危機回避策として人形の用意を進めましょうか。次の夢で万一突然危険なことを予言されると怖いので」
 
「はい、お願いします。それ実費が結構掛かると思うんですけど、支払いは少し待って頂けませんか?」
 
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「いいですよ。余裕ができた時で」
 
「すみません」
 

9月16日は、タクシーただ乗り幽霊の方の処理をした。千里にも金沢に来てもらい、放送局の人、HH院の住職と一緒にこの問題の最終的な処理、そして打合せを行った。先代の次郎杉の燃え残りは、結局観音堂にそのまま安置して供養をすることになった。
 
一部の霊が新しい次郎杉にも入ったことを確認する。住職は、ひょっとしたら水商売関係の新しい霊が、そこが居心地が良くて入ったのかもと言っていた。
 
「あらためて考えたのですが、この次郎杉が境内ではなく、山門の外にあるのは、かえって良いのかも知れないです」
と住職は言った。
 
「お寺の中まで入るのは、信心が無いとわりと敷居が高い。でも山門の外なら、安心して居られるのかも知れません」
 
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「それはいいことかも知れないですね」
と神谷内ディレクターも言っていた。
 

そこまで終わってから、青葉と千里は高岡の自宅に戻り、一緒に晩御飯を食べてから、夜0時頃、オーリスで帰って行った。身代わり人形についても千里に頼んだ。千里は例の館林のお寺に相談してみると言っていた。
 
ところが翌朝7時頃、その千里から電話があり、突然だが結婚することになったと言う。青葉はてっきり貴司さんと結婚するのかと思ったのだが、別の男性で、仕事で知り合った川島信次という人だと言ったので青葉は戸惑う。何でも昨日彼および彼のお母さんと会い、結婚の約束をしたらしい。
 
「ちー姉、真剣に訊くけど、貴司さんのことはもういいの?」
「貴司のことは好きだよ。忘れられるものではないと思う」
 
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千里がまだ悩んでいるようなので青葉はハッキリ言った。
 
「悪いけど、私はちー姉のその結婚話に賛成できない」
 
しかし千里はその後、朋子の携帯にも電話してきて、朋子はその結婚に賛成だと言った。その後で朋子は青葉に言った。
 
「千里ちゃんが不倫しているようだなというのは思っていた。でもそちらを諦めて、他の人と再婚するというのなら、それでいいんじゃないの?青葉は納得できない所があるかも知れないけど祝福してあげようよ」
 
「それはそうだけどさ」
 
朋子に諭されて青葉も千里の信次との結婚に反対しないことにしたものの、どうにも割り切れない気持ちであった。
 

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ところが10時頃に千里は青葉にメールして来た。
 
《青葉ごめーん。そちらに私のバッグ忘れてない?》
 
そのバッグの中に免許証なども入っていて身動きできないので、忙しい所を申し訳無いが、届けてくれないかと言われた。
 
《今、東部湯の丸SAにいるから》
《東京じゃないの?》
《午前3時頃ここに着いてから、1時間くらい仮眠するつもりが、疲れが溜まっていたのか、さっきまで寝ていた》
 
は?
 
青葉はあらためて自分のスマホの着信履歴を見てみたのだが、7時の結婚するという電話は、東京の用賀のアパートから掛かってきているのである。7時に東京に居た千里が、まだ東京への移動途中の東部湯の丸にいるというのはおかしい。
 
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そして考えた。だいたい7時の電話で千里姉は、信次さんとそのお母さんに昨日会ったと言っていたが、千里は昨日は1日こちらに居て、自分と一緒にただ乗り幽霊の処理をしていたじゃん!
 
青葉は何か自分の理解できないことが起きていることを認識すると、母に言って、アクアに乗り、北陸道を走って、東部湯の丸SAまで行った。
 

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春水(18)

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