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■春水(3)

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月山淳・和実の最初の子供・希望美(のぞみ)は2015年10月13日に卵子の採取に成功して受精させ、15日に代理母さんの子宮に胚移植を行った。そして昨年7月7日4:20に代理母さんが出産。すぐに和実と淳が引き取って育て始めるとともに、家庭裁判所に特別養子縁組の申請を行った。
 
特別養子縁組が認められるためには幾つかの条件がある。主なものとして
・夫婦共同で養子にすること(男性または女性の単独では認められない)
・親が25歳以上
・6ヶ月以上継続して養育していること(試験養育期間)
・子供は6歳未満(但し6歳未満から養育していれば8歳未満までは申請可能)
 
希望美の場合、生まれてすぐ引き取りすぐに申請していたが、実際には申請した後、試験養育期間が経過する半年間は手続きは留保され(その間に和実も25歳の誕生日を過ぎる)、半年後の2017年1月8日以降に裁判所の調査が開始されたようである。
 
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和実と淳は裁判所の調査官に一緒に面談し、DNA鑑定書も見せて、希望美は実際には和実と淳の実子であり、和実が子宮を持っていないので代理母さんに産んでもらったものであることを説明した。
 
「奥さんは失礼ですが、元男性で2012年に性別変更なさってますよね。それでもおふたりの遺伝子上の実子なんですか?」
 
と調査官はDNA鑑定書を見ながら、驚いたように言った。
 
「はい。私は一種の半陰陽なのだそうです」
と言って、松井医師に書いてもらった診断書を見せる。
 
「なるほど、非常に小さな卵巣があるんですね!」
と調査官は言った。
 
実際には和実の卵巣は「時々出現する」という不可思議なものなのだが、そう書いても合理的な説明と思ってもらえないので、松井医師は方便としてとても小さな卵巣があり、卵子の採取も極めて困難であると書いた。そして和実は実際の卵子採取は103回も試行してやっと採取できたことも説明した。
 
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「それは大変だったでしょう」
と裁判官も同情的に言う。
 
「子宮も小さなものがあるらしいんですが、小さすぎてとても赤ちゃんを育てることはできないので、代理母さんにお願いしたんです」
 
「そういう事情だったんですね。分かりました」
 

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調査官は現在、淳と和実が別居生活になっていることについても質問した。
 
「喫茶店を作ったので、その運用のために私はこちらにいますが、淳は東京での仕事がキリがつかないので、東京に滞在しています。夫婦仲には問題はありませんし、淳も時間が取れる時はこちらに来て、一緒に希望美の世話をしてくれています」
 
「では将来は淳さんもこちらに引っ越してこられるのですね」
「はい。そうです。実際にはまだ2−3年先になると思うのですが」
と淳本人も言う。
 
「システムの作成って職人芸的な要素も大きいので、簡単には他の人に引き継げないんですよ。今手がけているシステムが完成して安定して動作するようになるまでは付いていて欲しいと言われているので」
 
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「なるほど」
 
「それともうひとつは生活費の問題もあるんです。一応喫茶店は法的には営業許可も取り、従業員も雇って限定的に営業を開始しているのですが、経営が軌道に乗るまでは不安要素もあります。その間、私の給料で生活を支えることができます」
とも淳は説明した。
 
「ああ、経済的保険の意味もある訳ですね」
 
養親の経済的な安定性というのは結構審査のポイントのひとつなので、この説明にも調査官は好感していたようであった。
 

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調査官は、夫婦とはいっても妻が性転換していること、更には夫まで事実上女性化しているということで、初期段階ではあまり良い印象を持っていなかったようだったが、実際には和実が半陰陽で遺伝子的に2人の実子であるという説明で、大きく評価を変えたようであった。
 
調査官は代理母に関することについて、対応した病院(射水市の松井医師、最終的に卵子の採取の場所となった東京の病院、そして胚移植と出産を行った仙台の病院)や、出産した代理母さんにも面談したようである。
 
調査はその後、時間を置いて数回行われたものの、特に3月30日に喫茶店がグランドオープンして、最初の1ヶ月の営業成績が予定を大きく上回る黒字であったとの報告も受け、とうとう裁判所の認可が得られた。
 
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2017年7月1日(金)付けで、希望美の1歳の誕生日の直前に、特別養子縁組を認めるという審判結果が届き、和実はすぐに区役所に特別養子縁組届を提出した。これで希望美は法的にも和実と淳の実子となった。
 
このことはクロスロードの仲間にはすぐに同報メールで報され、みんなからおめでとうを言ってもらえた。
 
淳も有休休暇を取って仙台に駆けつけ、また盛岡から和実の両親も来てくれて胡桃も含めて、6人で(サイダーで)祝杯をあげた。
 
(和実・淳・希望美・胡桃と、和実の両親で6人)
 

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和実はクロスロードの仲間達の中で千里からはおめでとうメールが2通来ているのに首をひねったが、千里の場合、ままあることなので気にしないことにした。
 
しかし元々は和実と淳の体外授精は、千里と貴司の体外受精(京平)にヒントを得て実行したものなのだが、希望美を代理母と特別養子縁組で実子にした経緯は、この後、千里(千里1)が川島信次との子供(由美)を作るのに真似ることになる。ただし、その試みは信次の死亡により使えなくなり(夫婦でないと特別養子縁組が使えない)、普通の養子縁組を“変則使用”することになる。
 

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赤ちゃんの予防接種のスケジューリングはひじょうに大変である。
 
・いついつまでに受けさせなければならないというのがある。
・これを先に打ってその後これという順序のあるものがある。
・それを注射した後は、一定期間他の注射ができないものがある。
・指定された間隔をあけて2回または3回打つものがある。
・絶対に必要な物と、できるだけ打ちたい物、可能なら打ちたい物がある。
・多くの予防接種は事前に予約しておかなければならない。
 
それでいつどれを打つかを決めるのは結構なパズルである。
 
和実の場合は、そういうパズルみたいなのを和実が大好きなので、しっかり計画を立ててもれなく受けさせていった。
 
(しばしばうっかりどれかを受けさせ忘れて病院の先生などに相談してくるママもいるのである)
 
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桃香は予防接種についてガイドブックを読んでいて途中で分からなくなり、結局千里が日程を組み、適宜病院に予約も入れてくれた。実は千里は京平の予防接種の計画も立てていたので経験者であった。
 
それでまずは生まれて2ヶ月経った7月10日に最初の予防接種を受けに行く。この日程は千里が決めたので、千里が車で連れて行ってくれるものと桃香は思い込んでいたのだが、この日の朝、千里は桃香のアパートに来なかった。
 
困るので電話してみる。
 
電話に出たのはフランス滞在中の千里3である。
 
「ああ、桃香。何?」
「早月を予防接種に連れて行きたいから車を出してくれないかと思って」
「予防接種か。でも私、まだフランスだからさすがに行けないよ。でもお友達に電話して行ってもらうね」
 
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むむむ。フランスに居るって、確かに4月頃フランスに行くと言ってはいたが、昨夜もうちに来て一緒に晩御飯食べたじゃん!と思う。しかしまあお友達に連絡して連れて行ってくれるということならそれでもいいかと考える。
 
実際、30分ほどで、お産の時にも来てくれていた千里の友人・天野貴子さんがご自分の車、灰色のホンダ・シャトルでやってきてくれた。
 
「ベビーシートはあるはずと言われたのですが」
「ええ。家に置いてあるんですよ。千里が色々な車に乗っているみたいだから、車には載せておけないと言って。これなんですが、天野さんの車に設置できますかね?」
「ああ、これは3点シートベルトで固定するタイプだから、3点式シートベルトさえついていれば行けますよ」
「3点式シートベルトのついてない車って無いですよね?」
「1994年4月以降に国内で製造された車なら後部座席も3点式シートベルトですね。それ以前から走っている車は今はもうかなり少数だと思います」
「20年以上走っている車は凄いな」
 
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それで天野さんがベビーシートをシャトルの後部座席右側に取り付けてくれて、桃香がその横に乗り、天野さんの運転で千里が予約を入れてくれていた病院に行った。
 
「あ、そうそう。千里さんは13日にフランスから帰国なさるそうですよ。さっき電話した時に言いそびれていたから言っておいてと言われました。今の時間はフランスはまだ夜で、寝ておられたみたいで」
と天野さんが言った。
 
「帰国?うーん。。。帰国ねぇ」
と桃香は悩んでしまう。私、フランス土産には何がいいと言ったっけ?などと桃香は考えていた。
 
なおこの日、千里1の方はJソフトのSEとして千葉の○○建設を訪れ、信次と衝撃の再会をすることになった。
 

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7月13日にフランスから緊急帰国した千里3はそのまま北区の合宿所に行き、日本代表に復帰してほしいと言われた。その時刻、千里1は川崎のレッドインパルスの体育館に行き、自ら2軍落ちを申し出る。そして千里1が帰った後で、千里3が川崎にやってきて、黒江アシスタントコーチからむしろかなり実力を上げていることを認められる。
 
それで結局レッドインバルスでは、2軍降格を申し入れた千里を「村山十里」の名前で背番号66で登録してしまった。この結果、レッドインパルスには背番号33の「村山千里」(実は千里3)と背番号66の「村山十里」(実は千里1)が共存することになる。66.十里は午前中に横浜の2軍の練習場に来て、33.千里は午後に川崎の1軍の練習場に来るというパターンが《きーちゃん》の誘導で確立するのだが、その前に千里3はインドまでアジア選手権に行ってくることになる。
 
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この日の夕方、千里3は経堂の桃香のアパートを訪れると
 
「今朝フランスから帰国したんだよ」
と言って、パリの空港で買ってきたというお土産のボンママンのマドレーヌとジャムを渡した。
 
「あ、これ好き〜!」
と桃香も言う。
 
「でもすぐにインドに行って来なくちゃ行けなくて」
「そりゃ大変だね」
「31日に戻って来る予定だから」
「じゃ気をつけてね」
と言って桃香も明る〜く送り出した。
 
そして千里3が出て行ってから1時間もすると千里1が帰って来て
 
「今日は何か疲れた〜」
と言った。そしてボンママンのマドレーヌとジャムを見ると
 
「あ、このマドレーヌ好き〜。誰かお友達にもらったの?今お茶入れるね」
と言って、紅茶を入れ始めた。
 
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桃香は「うーん」と、うなりながら、その千里の後ろ姿を見ていた。
 

7月15日(土)、5月頭から6月中旬まで1ヶ月半の撮影で急遽制作された映画『アクア2008〜奇跡の邂逅』が公開された。当時小学1年生で腫瘍の摘出手術を明日に控えていたアクア(田代龍虎)と、インターハイの強豪高との戦いを前にしていた高校3年生・醍醐春海(村山千里)との出会いをファンタジックに描いた作品で、1時間20分の上映時間の内、約20分がアニメーションになっている。
 
長時間のアニメーションが入ったのは、主演の2人が小学生・高校生で撮影に使える時間が限られていたことから来た苦肉の策でもあるのだが、映画前半のクライマックスであるふたりが龍に乗って旅をするシーンがとても幻想的な雰囲気になる効果も出した。
 
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2人が龍に乗って飛行しながら地上の様子を見るシーンは実際にドローンを飛ばして東北自動車道を上空から撮影した映像を使用した。
 
一応、アクア(田代龍虎)・醍醐春海(村山千里)という実名は出しておらず、アクアに相当する小学生は佐藤翌桧(さとう・あすなろ)、千里に相当する女子高校生は可能三恵(かのう・みつえ)という名前になっており、学校名も架空のものに置き換えられている。演じているのは実際には小学3年生の三次香美ちゃんと、本当に高校3年生の品川ありさである。
 
ありさは実際にはサッカー選手であったが、バスケットにも助っ人で大会に出たことがあると言っていた。ただ彼女はサッカーでも蹴ったボールがどこに飛んで行くか分からないという困った選手だったが(それでゴールキーパーをしていた)、バスケットでもシュートは全く入らない(入った記憶が無いらしい)。しかしリバウンドやブロックは本当に上手いので、あまり吹き替えを使わずに撮影ができたらしい。
 
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なお、三恵のシュートシーンは品川ありさと身長が比較的近く、体格も似ているエレクトロウィッカのシューティングガード永岡水穂(東京T高校・栃木K大学出身, 172cm)が吹き替えをしている。
 
172cmもの身長があれば普通フォワードをさせられるのだが、東京T高校は強い選手が多く、身長はあってもレイアップシュートが必ずしも得意ではない彼女はフォワードとしてはベンチ枠に遠かった。しかしミドルシュートは割と得意だったので「シューターやってみる?」と言われ、そちらで開花したのである。
 
今年の春、WNBAに行った花園亜津子の補充シューティングガードとしてエレクトロウィッカに入った。大学を卒業したばかりなので、ユニバーシアードの代表候補になっていたのだが、連休明けに代表から落とされてしまったので、千里がそれをコスモス社長に伝えた。そこから「ぜひ吹き替えをして欲しい」と映画制作側が要請し、本人も「千里さんの役なら」と言って、引き受けてくれたのである。
 
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この映画では三恵のチームメイト役名・長島遙香(佐々木川南相当)が翌桧に言うセリフ
 
「手術頑張らなかったら、ちんちん切られちゃうぞ」
 
というのが映画の予告編にも(「ちんちん」の所がピー音で消されて)出てきて、その後、ネットでは大いに受けた。そして
 
「**頑張らなかったら、**切られちゃうぞ」
という形の色々な言葉が大喜利のようにツイッターやラインを賑わせることになった。
 
この長島遙香を演じているのは古賀紀恵という実年齢20歳の女優さんだが、このセリフのお陰で突然注目度が上がった。本人は「ちんちん」なんて最初言えなくて、NG出してしまいましたとコメントしていた。
 
もう女を忘れて
「ちんちん切るぞ!」
と防音室の中で20回叫んでから再挑戦したらしい。
 
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