広告:まりあ†ほりっく 第3巻 [DVD]
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■春水(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-11-18
 
青葉は7月5日に鱒渕水帆のお見舞いに行った後、とにかくも彼女の生命の火が消えてしまわないように、生命維持に絶対必要な器官を中心に遠隔ヒーリングをしていたのだが、なかなか改善が見られず、青葉としても無力感を感じ始めていた。
 
ところが7月27日の夜以降、急に症状が改善され始めた。
 
何があったんだ!?と訝った。
 
ひょっとすると薬を変えたのかも?と思う。それが偶然にも彼女の体質に凄く合っていたのかも? 特に膵臓がかなり弱々しかったのがしっかり動くようになり、肝臓や腎臓の機能も回復し始めたことで、青葉は
 
「ひょっとしたら助かるかも」
 
という気持ちになった。
 
8月中、彼女の身体は日増しによくなっていった。青葉は途中でコスモスにも電話して様子を訊いたのだが、コスモスからは
 
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「確かによくなりつつあるんですよ。お医者さんも奇跡だと言っているということで。このままなら年内には退院できるかもということです」
「それは良かった。やはり薬を変えたんですか?」
「症状が改善されているので、より軽い薬に変えたらしいですよ」
 
軽い薬に!?
 
てっきり強い薬に変えたかと思ったのに!
 

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一方青葉は千里の治療も同じくリモートで進めていたのだが、こちらはレゴのブロックを組んで行って富士山の高さまで積み上げるような作業という気がした。日々少しずつ改善しては行っているものの、目標は遙かに遠い気分だった。
 
千里の身体を治療しているのは、青葉が治療開始した時「先客」が4人いて、青葉は5人目の治療者だったのだが、7月末頃に6人目の治療者が加わったことを意識した。しかもこの人が物凄くパワーがあるのである。
 
一体、ちー姉の治療をしているのは誰々なんだ〜!?
 
と思う。恐らくはちー姉の眷属の誰か(人を治療する能力のある子がいることは以前から感じていた)と羽衣さんは関与しているっぽいと思う。もしかしたら出羽の美鳳さんも、とまでは思ったものの、残りの2人は見当が付かなかった。
 
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(実は千里2と《こうちゃん》から頼まれた虚空である)
 
しかしこの6人目の治療者の参加で、もしかしたらちー姉の身体は本当に2〜3年で治るかもという気がしてきた。その点について8月上旬、《ゆう姫》に訊いてみたら
 
『私も最初気付かなかったのだが、青葉、お前は物凄く大きなことを見落としている』
 
と、姫様は、なぜか笑いながら答えたので、青葉は「何なんだ??」と思った。
 
『千里を治療している6人の中で今この問題に気付いているのは2人だけだな』
とも言う。
 
(気付いている人:虚空・千里2、気付いてない人:白虎・美鳳・羽衣・青葉)
 
『姫様。だったら、千里姉は復活しますか?』
と青葉はあらためて訊いた。
 
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『その質問には私が答える必要は無い。青葉、お前は年内にも自分で答えを見つけ出すだろう』
 
と《ゆう姫》は答えた。
 
『まあ、お前がよほどのボンクラでなければな』
と姫は付け加える。
 
むむむ!?
 

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8月16-18日。青葉は水泳部のメンバーと一緒に敦賀市に行き、全国国公立大学選手権水泳競技大会に出場した。
 
この大会には青葉が得意の長距離が無いので、400m自由形と400m個人メドレー、400mリレーと400mメドレーリレーに出場した。
 
400mでは決勝には進出したものの7位、個人メドレーは5位でメダルには届かなかった。しかし400mリレーでは準優勝、400mメドレーリレーでは優勝して、青葉はリレーでメダルを獲得した。
 
18日の競技が終わった後、青葉は金沢に戻りお寺で仮眠させてもらってから、その日の深夜、3度目の《幽霊回収》作業を行った。そして翌日の深夜には、千里と一緒に金沢の高層ビル屋上で《最終回収》作業を行った。
 
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そしてこれ以降《タクシーただ乗り幽霊》の噂は全く出なくなった。
 

青葉の中学以来の友人で、ユニバーシアードのバスケット女子日本代表に参加している寺島奈々美は8月12-15日に都内大田区の片柳アリーナでU24 4ヶ国対抗2017に出場した。
 
奈々美は控え組であるが、この試合ではむしろ控え組を積極的に使ってくれたので、奈々美はたくさん出場機会をもらい、3試合でスリー8本を含む38点を稼ぎ、スターター陣が腕を組んだり、厳しい視線で見つめるほどであった。
 
この大会が終わるとメンバーは翌日台湾に渡り、19日からのユニバーシアードに備えた。
 

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8月7日(月)は前回の予防接種から4週間が経ち、早月の2度目の予防接種の日であった。むろん千里が病院に予約を入れてくれている。
 
さて千里は今日は来るかな?と桃香は窓を開け、晴れ渡る空を見ていた。すると8時半頃、赤いミラがやってくる。
 
「今日は予防接種だから練習は休みにしたんだよ」
と千里(千里1)は言っている。
 
なお千里1はアテンザのことを忘れているので、千里1が運転する車はミラである。
 
(1はミラしか知らない。2は全部知っている。オーリスを使うのは2のみ。3はミラとアテンザを知っているが主としてアテンザを使う)
 
「ああ、それは悪かったね」
と桃香は言うが、今日の千里は、わりとまともかなと思った。
 
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それでミラの助手席をいっぱいいっぱいまで前に出した上で、後部座席・左側にベビーシートをセットし、その隣、運転席の後ろに桃香が乗り、千里(千里1)の運転で病院に行った。
 
ところがこの日、病院で待っている内に突然天気が悪くなり、雨が降り出した。
 
「ありゃあ、傘持ってくるの忘れちゃった」
と千里が言うので、桃香は不思議に思った。
 
「千里にしては珍しい。千里が傘持って行きなよと言った日は、朝どんなに晴れていても雨が降っていたから、私は大学3年の時以来、外で緊急に傘を買ったことが無かったのに」
 
「うーん。勘が悪くなっているのかなあ」
と千里1は悩むように言っていた。
 
病院の帰りはもう土砂降りである。
 
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「いいよ。私が駐車場まで走って行って車を玄関まで持ってくるから桃香はここで待ってて」
と千里は言った。
 
「すまん」
と桃香。
 

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それで千里が物凄い勢いで降る雨を見ながら駐車場まで走ろうとした時。
 
「この傘をお使い下さい」
と言って、スモッグを着た女性が笑顔で傘を差しだした。
 
千里はその女性を病院のスタッフだと思った。
 
「ありがとうございます!助かります!」
 
と千里はその女性に御礼を言って傘を借りると、その傘を差して駐車場まで行き、車を出して玄関の所まで来た。桃香が乗りやすいよう運転席側を玄関に付けるように停めた。手を伸ばして後部ドアを開ける。桃香は乗りこんで早月をベビーシートに載せると、傘を貸してくれた女性に御礼を言って返した。
 
それでミラが去って行くのを見送って
「全く世話が焼ける」
と《たいちゃん》は呟いた。
 
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千里1が霊的な能力を失っていた時期、眷属たちはこのようにして千里を守っていたのである。
 

8月6日の関東ドームでのライブで夏のツアーを終えたアクアは翌7日の朝8時、ツアーではリハーサル歌手を務め、映画ではボディダブルをすることになっている葉月、マネージャーの山村と一緒に撮影が行われているスタジオを訪れた。
 
「みなさん、遅くなって申し訳ありません。今日から撮影に参加させて下さい。遅くなった分、みなさんの3倍頑張るつもりなので、よろしくお願いします」
とアクアは挨拶した。
 
「おお、頼もしい。君の出番がたくさん溜まっているよ」
と中村監督は嬉しそうに言った。
 

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撮影はアクアが到着してすぐから始まる。
 
何といっても主役なので、大量に出番がある。午前中は出てきている役者さんが少ないので、アクアの独白(どくはく)のような場面、盗みの計画を練っているような場面を中心に撮影を行う。
 
アクアは来生愛だけでなく内海俊夫刑事役もするのだが、監督は本当に高校生のアクアに23歳の俊夫を演じることができるか、かなり不安がっていた感じもあった。しかしアクアがそれまで人前で使ったことの無かったバリトンボイスで落ち着いた演技をするので、監督も助監督も驚いていたようである。
 
「これなら内海刑事どころか課長もできる」
などと褒めていた。
 
「でもアクアちゃん、凄い低い声が出るね。声変わりしたの?」
「いえ、してません。これ発声法なんですよ」
とアクアは普段の女の子のように高い声で答える。
 
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「発声法で出せるんだ!?」
 

アクアは午後からは他の人と絡むシーンを演じていったが、各々の役者さんに「参加が遅くなって申し訳ありません」と謝っていたので、多くの共演者がアクアに好感を持ったようである。
 
この日は結局朝8時から夜10時まで、食事とトイレに行く時間を除いて14時間フル稼働で撮影をした。なお、夜10時以降の撮影はマネージャーの山村が拒否したので、監督も
 
「アクア君がNGを1度も出さずにどんどん撮影をこなしてくれたし、当面は高校生以下の俳優さんは夜10時で上がりにしようか」
と言って、それで解放してもらえた。
 
お陰で他の高校生以下のタレントさんも「助かったぁ」などと言っていた。
 

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アクアはこの後、お盆休み前の13日まで一週間フル稼働したが、その間1度もNGを出さなかったし、他の人の台詞間違いまでうまくカバーしてしまうので監督が
 
「その展開面白いからそれ採用」
などと言って、そのまま続けたりした。
 
アクアは毎日朝8時から夜10時まで稼働していたが、全く疲れを見せることが無かった。かえってボディダブルの葉月のほうが激しく疲労しているので、山村マネージャーはコスモス社長と話して、アクアと身長の近い姫路スピカを呼び、彼女にもボディダブルをさせることにした。
 
「取り敢えず愛のボディダブルは葉月ちゃんで、俊夫のボディダブルはスピカちゃんでやろうか」
と監督が言うので
 
「葉月ちゃんが男の子で、スピカちゃんが女の子だから、逆がよくないですか?」
とフェイが言う。
 
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「え?葉月ちゃんって女の子じゃなかったんだっけ?確か本名は、せいこちゃんと聞いた気がしたし」
 
と監督が言うので、葉月は真っ赤になっていた。
 
しかし結局、監督の言った通り、葉月が愛で、スピカが俊夫というので行くことになってしまった!
 
実際問題としてスピカの方が葉月より長身なので、その方が収まりが良かったこともある。スピカは男の子役に張り切っていたし、葉月はとっても可愛い仕草で女子高生の愛を演じていた。
 
(葉月は現在中学3年だが、多分女子中学生ではなく男子中学生)
 

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