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■春水(8)

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8月26-27日。
 
東京および千葉では、お正月に行われる全日本バスケットボール選手権の1次ラウンド・都道府県予選が行われた。
 
今年から全日本は各連盟ごとの枠が無くなり、Wリーグ所属チーム以外は全て都道府県予選、エリア別2次ラウンドと勝ち上がっていく必要がある。当然のことながら複数の強豪チームのある都道府県では熾烈な争いになった。
 
千葉では千女会とローキューツが決勝で激突した。去年までのように別ルートで本大会に出るということができないので、どちらも以前に増して真剣度の高い勝負となった。試合は最初千女会がリードするも、第2ピリオドで江向音歌と黒川アミラを中心とする必死の反撃で同点に追いつく。第3ピリオドではシーソーゲームが続いたものの、第4ピリオド、ソフィアが3連続スリーを叩き込むなどベテラン組の活躍で、結局5点差で勝利。
 
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ローキューツは2次ラウンド東日本大会の切符を掴むことができた。
 

過酷な争いになったのが東京大会である。東京は有力な大学も多いし、東女会も強いし、何と言っても、玲央美や彰恵・王子たちのジョイフルゴールドと、暢子や誠美・雪子たちの40 minutesがある。どちらも今年の日本代表になった選手のいるチームであり、両者とも実力的にはWリーグの中堅クラスである。
 
「この大会に負けた方が性転換するというのは?」
「それ冗談で済まないからやめとこうよ」
 
40 minutesもジョイフルゴールドも順調に勝ち上がり、準々決勝はこのような組合せになった。
 
東京T高校×−○W大学
東女会×−○ジョイフルゴールド
レピス×−○40 minutes
東京MH大×−○BC運輸
 
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W大学は奈々美がユニバーシアードに行っているものの、東京T高校には何とか勝った。T高校も今年のインターハイでbest8に入っている強豪校である。
 
東女会(教員連盟)は今年の全国教員大会で準優勝した超強豪なのだが(優勝は千葉の千女会)、ジョイフルゴールド(実業団)に全く歯が立たなかった。ダブルスコアで敗れてしまう。
 
「強すぎる〜!」
「なぜこのチームがWリーグに行ってないんだ!」
という声があがっていた。
 
レピス(実業団)には坂本加奈など札幌P高校出身のメンツが割といる。ひじょうに強いチームなのだが、40 minutesには全くかなわない。
 
「どうやってもこのチームには勝てる気がしない」
「何か日本代表経験者がゴロゴロいるし」
「まあジョイフルゴールドにも勝てないけどね」
 
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とあきらめ顔であった。
 
BC運輸(実業団)の監督は旭川N高校出身の富士涼花で、千里の後輩の夢野胡蝶などもいるチームである。東京MH大との試合はかなり厳しいものであったが、何とか辛勝した。しかし涼花はこの試合の後こう言った。
 
「うちがBEST4に進出できたのは組合せが良かったからだ」
 

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準決勝はこうなる。
 
W大学×−○ジョイフルゴールド
BC運輸×−○40 minutes
 
ジョイフルゴールドはこの試合に主力を出さなかった。それでもW大学に20点差をつけて勝った。
 
40 minutesもこの試合に、雪子・暢子・由実・聖子・誠美などといったメンツを出さずに温存した。それでもダブルスコアでBC運輸に勝った。
 
「な?言った通りだろ?」
などとBC運輸監督の涼花は開き直って言っていた。
 

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そして決勝戦はジョイフルゴールドと40 minutesとの戦いとなる。ジョイフルゴールドは2010年以来7年連続で全日本に出ている。40 minutesもチーム結成以来2年連続で出場している。しかし今年はどちらか片方は確実にこの大会で出場の芽を摘まれてしまう。
 
序盤から激しい戦いとなった。王子や玲央美がその体格で攻めて来る。誠美や松崎由実がそれを停める。王子が誠美にかなり強引な停め方をされて、しかもそれがファウルを取られなかったことから、思わず王子が興奮して誠美の胸をどつき、アンスポーツマンライクファウルを取られる場面もあった(さすがにその後は自粛した:アンスポは2回取られると退場になる:なお試合後、王子はちゃんと誠美に謝り和解した)。
 
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試合は2点差から残り1秒で暢子がゴールを決めて延長戦にもつれ込むものの、最後は玲央美のスリーでジョイフルゴールドが1点差で辛勝した。
 
最後は両チームとも立てない選手が多数出るほど消耗の激しい試合であった。
 
これでジョイフルゴールドは2次ラウンドに行けることになったが、40 minutesは今年からの新しいシステムの前に涙を呑んだ。
 
「これは社会人の試合じゃ無かった」
「プロ真っ青のハイレベルのゲームだった」
「こんな試合を1次ラウンドでやるなんて、もったいなさすぎる」
「上の方の大会でやれば凄い観客呼べるのに」
 
とこの試合を観戦した多くの人が語った。
 

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青葉は8月後半、富山選手権に出た以外は、インカレに向けての練習に励んでいた。その間にユニバーシアードでジャネが次々とメダルを獲得するニュースが入ってくるので、水泳部は大いに沸いていた。
 
8月31日(木)、青葉たち水泳部の一行は朝一番のサンダーバード(5:35-8:22)に乗って大阪に出た。今年のインカレ会場は東和薬品ラクタブドーム(門真市)である。大阪駅から更にJRと地下鉄で門真南駅に移動し、会場に入る。11:00からの公式練習に参加した。
 
今回の参加者はこういうメンツである。
 
男子 諸田(4) 中原(2) 吉田(2) 奥村(2) 皆橋(1)
女子 香奈恵(4) 杏梨(2) 青葉(2) 蒼生恵(2) 希美(1)
 
これと顧問の角光先生、マネージャー役の布恋(3年生)という12名である。布恋は実は大阪の企業への就職を狙っており、今週の前半、幾つかの企業を訪問していた。それで「そのついでにマネージャーしてもいいよ」と言い、やることになった。更に布恋は「私だけ月曜日に大阪に出て、その時の交通費とか、部費からもらえませんよね?」などと角光先生に言い、先生も苦笑して、先行して下見をするという名目で部費から出るようにしてあげた。帰りは一緒に帰ってくる。
 
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翌2017年9月1日(金)から競技が始まる。
 
50m自由形の後、400m自由形があるので、女子では杏梨、男子では吉田・奥村・皆橋が出て行ったが、杏梨と奥村君がA決勝に進出、皆橋君もB決勝に進出した。吉田君は18位であと2つの所で落選だった。
 
1時間ほどして200m背泳があり、蒼生恵と諸田さんが出て行ったがふたりとも予選落ちであった。お昼過ぎに100平泳ぎがあり、香奈恵がB決勝、中原さんがA決勝に進出した。
 
この日の午前の部には400mリレーの予選があり、男子は予選落ちだったが、女子はA決勝に進出した。
 

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「団体出場すると待遇が違うね〜」
と香奈恵が言う。
 
お昼休みは近くにあまり大きな食事処が無いこともあり、マネージャーとして参加している布恋と、リレーに出なかった諸田さんが買ってきてくれたお弁当を食べながら、指定の控え席で女子部員たちは話をしていた。
 
昨年は個人資格での参加だったので、サブプールの端の方で、待遇がかなり悪かったが、今年は女子が団体出場できたので、サブアリーナ(バスケットなどをする施設)ではあるものの、結構良い場所である。
 
ちなみにここを割り当てられているのは団体出場している女子のみで、個人資格での参加になった男子は昨年同様サブプールの端の方である。しかしお昼ごはんは女子の控え場所に来て一緒に食べていた。
 
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「来年はシードで出場しましょう」
「8位以内に入ればシードだからね」
「今年優勝すれば、来年はプールサイドの特等席」
「そこまで行けるといいね」
「頑張ろう」
 
この時点で青葉は自分が退部届を出していることをほぼ忘れて、やる気満々であった。
 

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「ところでハルちゃん(奥村君)は入場の時、ちょっとトラぶってたね」
「いつものことだから気にしない」
 
彼が男子選手のADカードを持っているのに、容姿が女子にしか見えないので、咎められたのである。
 
「写真と本人は一致しているから問題無い」
と吉田君。
 
「更衣室で着換える時も、女子下着だからギョッとされるし、男子水着姿になっているとブラ跡が付いているから、注視されるけど気にしない」
と奥村君は言っている。
 
「最近そういう人多いから大丈夫だと思うよー」
と布恋。
 
「まあおっぱいも無いからね」
と吉田君。
 
「いや、おっぱい結構ある気もする」
と杏梨は言う。
 
「胸に脂肪が付くようにしているだけだよ」
「乳首も普通の男の子の乳首に見えない」
「乳首マッサージしてるから」
「やはりおっぱい大きくしたいんだ?」
「いや、別にその意図は無い」
「よく分からん」
 
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「それにボクは女装趣味があるだけの、普通の男の子だし」
「いや、絶対に普通ではない」
 

15時半から決勝が始まる。
 
女子400mA決勝で杏梨は7位だった。男子400mB決勝では皆橋君はトップの9位、A決勝に出た奥村君は5位だった。奥村君の順位認定の際に、事務方で少し揉めていたようである。男子水着は着ているもののバストは微妙に膨らんでいる感じもあり、見ようによっては女子にも見えてしまうので、本当に男子なのか確認していたようである。
 
「まあ女子の試合に男みたいな選手がいたら問題になるけど、男子の試合に女子みたいな選手がいても問題は無いはず」
 
などと奥村君は5位の賞状をもらった後、杏梨に連行されて女子の控えエリアに来て休憩しながら言っていた。彼は今日はこれで出番終了なので、結局更衣室にも行かず、その場でユニフォームに着換えてしまった。多分彼は男子更衣室に行くこと自体がストレスなのではと青葉と杏梨は後で話した。
 
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結局彼はその後ずっとこちらに居たものの、奥村君が女子選手の中に居てもほとんど違和感が無い。
 

17時半を過ぎて100m平泳ぎが行われる。女子B決勝に出た香奈恵はトップの9位、男子A決勝に出た中原君は最下位の8位だった。
 
「やっぱり100mは平泳ぎでも天才の集まりだよ。もう雰囲気で圧倒された」
などと中原君は言っていた。
 
そして今日最後に行われた400mリレーでは香奈恵/杏梨/希美/青葉で泳いで2位と0.01秒差の優勝であった。
 
「やったやった!」
「これで一気に40点」
 
と4人のメンバーは金メダルを掛けてもらってから言った。
 
「最後は青葉がタッチ上達していたお陰で勝てたね」
「うん。去年の青葉なら4位だった」
 
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3位とも0.04秒差、4位とも0.05秒差だったのである。観客の目には5人の泳者が同着だったように見えた。
 
アンカーを青葉にするか希美にするかはかなり議論したのだが、引き継ぎ違反になったら怖いというので今日は青葉を最後にしたのである。本当は一番速い希美をアンカーにしたかったのだが。
 
「明日はバタフライが青葉でないと辛いから第3泳者にするけどタッチ頑張ってよね」
「うん、頑張る」
 
メドレーリレーは、背泳ぎ→平泳ぎ→バタフライ→自由形の順序である。
 
この日は予め練習用にレーン貸切の予約をしていた枚方市のプールで青葉は布恋と香奈恵が付きっきりでタッチの練習をしていた。
 

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2日目の結果はこうなった。
 
200m自由形 希美(8位) 杏梨(12位) 奥村(12位)
800m自由形 青葉(A決勝へ)
1500m自由形 吉田(A決勝へ)
400mメドレーリレー 男子(予選落ち) 女子(優勝)
 
「よし。これでまた40点」
「金メダル嬉し〜い」
 
女子のメドレーリレーは
蒼生恵(背)→香奈恵(平)→青葉(バ)→希美(自由形)
 
と泳いだのだが、問題の青葉から希美への引き継ぎ時間は予選で-0.02秒、決勝で-0.01であった。
 
「危な〜い!」
 
引き継ぎが-0.03秒未満であると引き継ぎ違反で失格になる。
 
「やはりまだまだだなあ」
「ごめーん。また今晩も練習するね」
「当然」
 
それでこの日も青葉は確保していた枚方市のプールに行き、ひたすらタッチの練習をした。
 
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