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■春社(21)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-08-07
 
「そうだ。川上さんにお願いがあるのですが」
と社長は帰り際に言った。
 
「はい」
「ホシがかなり意気消沈しているようなのです。何か詩も曲も全く浮かばないというのですよ。彼女の心のヒーリングをしてあげてもらえないでしょうか?」
 
「分かりました。高野山でボイスレコーダとカーナビを処分したら、向こうの旅館に行ってみます」
 

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それで青葉はその日の夕方の新幹線で京都に移動。瞬環さんにお願いして借りておいてもらったレンタカーを使って真夜中に★★院に着いた。
 
「こないだ持って来たのと同系統のものだな」
と夜中なのに起きてきてくれた瞬醒さんが言う。
 
「そうです。どなたか付き合ってもらえます?」
「醒練!」
「はい、お供します」
 
それで2人でまた一緒に封印の場所まで行き、2つのアイテムの封印を終えた。
 
★★院に戻ったのはもう明け方である。4時間ほど休ませてもらい、御飯も頂いて5月17日午前10時頃、★★院を出た。
 
名阪国道まで北上してから、東名阪道→伊勢湾岸道→東海環状道→東海北陸道と走り、夕方近くに、ホシとナミが滞在している旅館に行った。
 
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ホシたちは社長から連絡を受けていたのもあり、先日、溺れた子供を助けた時にけっこう会話を交わしていたこともあり、青葉を暖かく迎えてくれた。それで青葉はホシにできるだけ楽な服装をした上で横になってと言った。
 
「できるだけ楽な服装というと、下着姿でもいいですか?」
「はい。できるだけ身体を拘束するものが無い方がいいんです」
「だったら、裸でもいい?」
「実は裸がベストです」
「じゃ、裸になっちゃおう」
と言ってホシは服を脱ぎ始める。
 
「ホシ、ちんちんが付いているのを川上さんに見られちゃうよ」
とナミがからかう。
 
「守秘義務があるから、私にちんちん付いていても、川上さん誰にも言いませんよね?」
「言いませんよ」
「じゃ安心」
 
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それでともかくもホシは全裸で青葉の前に寝た。
 
ホシの手を握って、ゆっくりと体内をスキャンする。
 
「あれ?ホシさん、卵巣の調子が悪くないですか?」
と青葉が言うと、ホシはちょっとショックを受けたような顔をする。
 
「実は・・・もう生理が5年くらい来てないんです」
とホシが言うと
「じゃ妊娠中なんですね」
と青葉は言った。
 
「え〜〜〜〜〜!?」
 
「出産させちゃいましょ」
「嘘!?」
 
青葉はホシの卵巣から膣口に至る女性器の経路上の全体を把握しながら、膣口の側から順に少しずつ活性化させて行った。
 
「なんか・・・・」
とホシが言葉を漏らす。
 
「どうしたの?」
とナミ。
 
「すごーくHな気分!」
「性器を活性化させてますから、当然そうなります」
 
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「えーん!セックスしたいよぉ」
「それは我慢してください」
 
「私もちんちん付いてないからなあ」
とナミは言っている。
 
青葉はホシの子宮上部から卵管の付近になにやら黒い固まりがあるのを認識していた。それを少しずつ外側に押し出していく。念のため、おまたの付近に防水シートを敷く。そして20分くらい掛けて、それを膣の外に排出させてしまった。
 
「わっ」
とナミが声をあげた。
 
《何か》が飛び出して外に飛んでいこうとする。
 
青葉はそこに気を集中して、それを「強い風」で粉砕してしまった。先日千里から伝授してもらった秘法である。ついでに部屋の窓ガラスが粉々に割れた。
 
「きゃっ」
「ごめんなさい。窓ガラスまで割れちゃった。弁償しますから」
「いえ、それはうちで払います。でも・・・」
 
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などと言っている内に、音を聞いて旅館の人、隣室にいたサニー春吉さんと森さんが飛んできた。ホシは取り敢えずガウンを着た。
 
「すみません。倒れかかったら割れちゃって。弁償しますから」
とホシが言ったが
 
「いや、たぶんガラスが老朽化していたんですよ。おけがはありませんか?」
と旅館の人は言い、弁償は不要と言って、掃除をして新しいガラスを填めるので、その間他の部屋に居て下さいと言って、案内してくれた。
 

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「でも川上さん、あれは何だったんですか?」
とホシが訊いた。
 
「悪魔の子供ですよ。薬をやった時にあれを妊娠してしまったんです。でも今私が粉砕しましたから、もう大丈夫です」
と青葉は事も無げに言った。
 
恐らくは薬で自我が崩壊している間に、何か変な物が体内に侵入してしまったのだろう。
 
「これで3〜4ヶ月もしたら生理が再開すると思いますよ」
「ほんとに!?」
 
と嬉しそうに言ってから、ホシは数日前に見た悪夢を思い出し不安になる。
 

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「でもあの悪魔、戻って来たりしない?」
「大丈夫ですよ。何なら強力なお守りあげましょうか?」
「あ、欲しいです」
 
「じゃこれを」
と言って、青葉は自分の数珠の房の所に付けている針水晶の珠をひとつ取り外す。
 
「これをあげますよ」
と青葉が言うと、ホシは驚いて
「それ大事なものなのでは?」
と言う。
 
青葉は裁縫セットの中の糸を通してホシに渡す。
 
「紐は適当なものに交換してください」
「でも・・・・」
 
「ある人が、たくさんの人を救いたいという祈願をしてこの珠に託したのです。ホシさんとナミさんの歌は、何万人もの人の心を癒し、希望を失いつつある人の命を救います。ですから、ホシさんはこの珠を持っているにふさわしい人です」
と青葉は言った。
 
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ホシは引き締まった顔をして
 
「お預かりします」
と言い、その水晶の珠を受け取った。
 

それでホシはまた全裸になってセッションを再開する。
 
「裸になるの〜?」
と驚いていたサニーさんたちもしばらく見ている内に
 
「あ、なんか凄い効いているみたい」
と言う。
 
「凄く気持ちいいですー」
とホシは言う。
 
「なんかこのセッション受けてたら、作曲のほうのスランプも脱出できるかも」
とホシ。
 
「私は心の痛みは治療しますけど、詩や曲ができないというのはホシさんが自分で乗り越えなければならない壁です。挑戦できそうな気がしたら、少し頑張ってみましょう。でもまだしばらくは単純に休んでいていいと思いますよ」
 
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と青葉は笑顔で言った。
 
青葉は女性器付近が全体的に傷んでいるのを修復しながら、心のヒーリングも進めていった。ホシはたくさん涙を流していた。
 
セッションはその部屋で1時間ほど、元の部屋に戻ってからも夕食をはさんで4時間ほどに及んだ。
 

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5月18日(水)、青葉はやっと大学に出て行くことができた。16-17日の2日間は最初明日香がアクアを往復運転すると言っていたのだが、美由紀が騒ぐもので結局、ラッシュに掛かったりする可能性もあり、8号線の金沢市内部分が首都高並みの「戦場化」する朝は明日香のお母さんが運転して明日香は助手席に座り、比較的楽な帰りは明日香が運転するもののお母さんが助手席で細かく指示を出してあげたらしい。
 
この日、ジャネさんが「外出」の名目で大学に出てきて、早速プールで泳いでみるということだったので、青葉もそれを見に出て行く。
 
「凄い凄い。これ動画撮影しよう」
と言って、筒石部長がデジカメを構えて、ジャネさんの泳ぎを撮影していた。
 
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「あれ、なんでだろう。最初の2分しか撮れてない」
と筒石さん。
 
「2分間撮影したら自動的に撮影終了するとか?」
 
古いデジカメには動画の撮影時間に制限のあるものが結構あったのである。
 
「そんなの聞いたことないけどなあ」
と言って筒石さんが見ているが、どうも筒石さんは機械音痴っぽい。
 
「ちょっと貸して下さい」
と言って青葉が見てみると、メディアがいっぱいになっていることが分かる。
 
「部長。これカードがいっぱいになってますよ」
「あ、ほんと?じゃ新しいSDカード買って来なきゃいけないんだっけ?」
 
「パソコンに移して消せばいいんですよ」
「あ、そんなことできるの?」
 
どうも本格的に機械音痴のようである。確かに写真が満杯になる度に新しいSDカードを買う人というのは時々いる。
 
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「取り敢えず私のパソコンに移しましょうか? あとでCDにでもコピーしてお渡ししますよ」
 
と言って青葉は自分のバッグからパソコンを取り出し、筒石さんのデジカメからもSDカードを取り出す。SDカードにはハートマークが印刷されている。どういう趣味なんだ!?
 
それでカードをパソコンに差してメディアを開いた。
 

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「え!?」
 
いきなり何かのプレイヤーが立ち上がり、曲を再生しようとしたので青葉は反射的に停止ボタンを押した。
 
そしてそこに表示されている文字を見てぞっとする。
 
そこには『20100722-001342』という文字があった。
 
「どうしたの?」
「ちょっと待って下さい」
 
青葉はSDカードの中身を確認する。DSPlayというアプリが入っている。自動起動が設定されていて、挿入したらこのアプリが起動される仕組みになっているようだ。普通なら自動起動をしていいかどうか自体をこちらに聞いてくるのだが、おそらく何か特別な仕掛けで強制的に自動起動しているのだろう。
 
「部長、このSDカード、誰かにもらいました?」
「ああ。こないだ何かのDMに入っていたんだよ。それでちょうど、俺、SDカード1枚壊してしまって、デジカメ使えなくなってたんで、ちょうどいいと思って、それ挿してたんだよね」
 
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「そのDM、まだとってありますか?」
「どうだろう?」
 

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