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■春社(15)

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千里はここまで来るのに使った義肢製作所の福祉車両を借りて、ジャネたちをそのまま金沢に送り届けることにした。
 
「ちー姉、あとでそれを返しに行くの?」
「うん。返した後、新横浜駅に舞い戻って、向こうで借りた福祉車両の返却をする」
「お疲れ様!」
 
実際には東京で借りた福祉車両は《こうちゃん》が既に返却してくれている。《こうちゃん》はその後、何かの場合にそなえて東京で待機してくれている。
 

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千里たちは1時間半ほど走った所のSAで休憩した。ここはハイウェイオアシスになっており、商業施設や、ホテル・プールなどのあるリゾート施設などが併設されている。
 
ジャネさんは早速義足を使って歩行してみている。
 
「なんか普通に歩けるよ!これすごーい」
「良かったね」
「私、一生車椅子か松葉杖なのかなあとか思ってたけど、まるで足があるみたい」
 
「ハイテクの勝利ですね。10年前なら、こんな技術はありませんでしたから。足の電気信号を読み取って反応する義足自体は30年前からあるんだけど、こんなに細かい反応ができるものは、最近まで作れなかったらしいですよ」
と千里は説明する。
 
「今の時代に生きてる幸せですね」
と圭織が言った。
 
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ジャネさんが歩けるのが嬉しくてたまらないようで、かなり歩き回っている内に施設から結構離れて大きな池に橋が架かっている所まで来た。休日で人が多いものの、この付近まで来る人はそう多くないようで、人もわりとまばらである。
 
「だいぶ来たね。戻ろうか」
とお母さん。
「さっき美味しそうなアイスクリームがあった。あれ食べたい」
と圭織。
 

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それで戻り掛けた時のことであった。
 
ドボン!という水音がして「きゃー!」という声が上がる。
 
見ると橋から5〜6歳くらいの子供が転落したようである。
 
「私、人を呼んでくる」
と言って圭織が走り出す。
 
しかしその時、向こうの方で別の水音がある。見ると若い女性が着衣のまま池に飛び込み、その子供を助けようとしているようである。彼女はきれいなクロールで子供に近づき、助けようとしたのだが
 
「あ、だめ!」
とジャネさんが言った。
 
女性は子供の正面から近づいたのだが、子供が女性にしがみついてしまったのである。
 
その時、ジャネさんが服を脱ぎ始めていた。
 
スカートを脱ぎ、上着も脱いで下着だけになる。
 
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「あんた何してんの?」
「着衣のまま泳ぐこと自体が無謀」
と言うと、ジャネさんは義足も取り外した上で、今脱いだスカートをまるめて手に持ち橋から下の池に飛び込んだ。
 
見事な泳ぎで、おぼれかけた子供と、その子供にしがみつかれてしまって、自分も沈みそうになり、苦しんでいる女性のそばまで寄る。
 
そしてジャネさんは自分の穿いていたフレアスカートの端をつかんだまま、子供の前に投げるようにする。
 
「君、これをつかんで」
 
そう言われた子供がスカートの端を掴む。
 
それで最初に助けに飛び込んだ女性は子供から離れることができた。
 
「そちらはひとりで岸まで行ける?」
「はい、行けます」
と女性が言うので、ジャネさんは、スカートの端に子供を捕まらせたまま力強い泳ぎで岸まで行った。
 
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少し遅れて最初に助けに飛び込んだ女性も岸まで到着する。その頃、やっと圭織が呼んできた、リゾート施設のスタッフさんが到着した。
 

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青葉たちも岸の所に駆け寄る。
 
最初に飛び込んだ女性がジャネの足に気付いて驚いたように言う。
「あなた、足が」
 
そしてジャネも彼女を認識して嬉しそうに言う。
「わあ、ステラジオのホシさんだ!」
 
そして母親が駆け寄った時、助けられた男の子は初めて泣き顔になり
「お母さん」
と言った。母親は自分の服が濡れるのもかまわず、男の子を抱きしめた。
 

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「私、ステラジオは『青い金魚』以来の大ファンなんですよ」
とジャネさんが嬉しそうな顔で言う。
 
「わあ、ほんとに?それは凄い」
「あのオリジナルCD持ってますよ」
「すごーい」
 
それはホシとナミが高校生時代にカラオケ屋さんで吹き込んだCDであり、パソコンに強い友人に頼んで、パソコンとCDドライブを使って100枚程度(正確な枚数は本人たちも知らない)制作し、街頭ライブで売ったり、自分のブログに書いて通販したものである。ジャネは横浜市内の街頭ライブで見かけて買ったと言った。
 
「でもあなた、足の先が無いのに、あんなに泳げるなんて」
とホシが言うのに対して
 
「足なんて飾りです。水泳は心で泳ぐんですよ」
 
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とジャネが答えると、ホシは感動しているようであった。
 
実際にはジャネにとっては2014年12月以来、1年5ヶ月ぶりの泳ぎであった。
 
その頃、やっとホシは青葉に気付く。
「あ、大宮万葉さんだ!」
 

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リゾート施設の人が全員をプールの休憩所まで連れて行ってくれた。青葉はジャネさんの身体が濡れているので、研究所で借りてきた高機能義足がトラブってはいけないと、取り敢えず笹竹が持っていた義足をジャネさんに渡し使ってもらった。
 
「青葉ちゃん、そんなのどこに持ってたの?」
「いや、義足を使っている人から預かったまま返しそびれちゃって」
「あらら」
 
これはマソが使っていた義足なのである。マソの方がジャネより背が高いのでたぶん使えると思ったのだが、実際何とかなったようである。しかし普通の義足だと歩きにくいようである。
 
「なんか、びっこ引く感じになっちゃう」
とジャネは言っている。
 
あらためて高機能義足のすごさを認識したようである。
 
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ジャネさん、ホシ、水に落ちた子供が、プールの設備でシャワーを浴びさせてもらった。
 
ジャネさんは旅行中なので着替えを持っており、お母さんが車から取って来てくれたのでそれに着替える。ホシもやはり着替えを持っていたので、ナミがやはり駐車場まで行って取って来た。最初に落ちた子供が着替えを持っていなかったが、
 
「少し大きいけど、私のでもよければ着る?」
と言って、ナミが言って、とりあえず服を着替えさせた。ナミは150cmくらいしか無いので、服が子供に着せやすい。
 
「これスカートなの?やだあ」
と子供は言っている。
「我慢しなさい、そのくらい」
と母親が言っている。
 
「小学生ですか?」
「小学2年生です」
「君、めったにスカートなんて穿けないから、ちょっと女の子体験しておくのもいいよ」
などとナミは言っていた。
 
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本当はズボンも持っていたのだが、スカートを穿かせたのはナミの悪戯心である。
 

「暖かいものでもどうぞ」
と言ってリゾートのスタッフさんが暖かいココアを差し入れてくれたので、水に入った3人が飲んだ。
 
「泳ぎは自信あったんですけど、溺れている人を助けるのは大変なんだなとあらためて認識しました」
とホシが言う。
 
「あれ、ライフセーバーとかの訓練受けている人でないと難しいんですよ」
とジャネは言う。
 
「着衣だと動きが制限されるから、飛び込む前にまず服を脱いじゃうのが基本」
「なるほど」
「正面から近づいたら、しがみつかれるから、屈強な男性でも一緒に溺れちゃいますよ。髪の長い女の子なら、後ろから近づいて髪をつかむのがいいんです」
「ああ」
 
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「でも基本はロープとか棒とかを差し出して、それにつかまらせる。とっさのことで用意が無かったんで、脱いだスカートを使ったのですが」
 
「なるほどー」
「実はスカートより長ズボンの方が優秀みたい」
「へー!」
 
「ホシはショートパンツだったから、どっちみち服は使えなかったね」
とナミが言っている。
 

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「ステラジオさん、ゴールデンウィークのライブはお休みなさってましたけど体調不良とかですか?」
とジャネが訊いた。
 
「ええ。すみません。楽しみにして頂いていたのに」
とナミが謝る。
 
「なんか今はアルバムの制作中とか聞きましたけど」
「そうなんですよ。ダウンしたついでに、この近くの温泉宿に籠もって楽曲を練っているところで」
とこれもナミが言う。
 
それを見て青葉はホシさん、やはりかなり精神的に参っているなと思った。こういう場面ではたいていホシが返事するのが、これまでのステラジオだった。
 

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「でもホシさん、泳ぎは実際うまいと思いましたよ」
とジャネのお母さんが言う。
 
「私の両親、ふたりとも水泳選手だったので」
とホシ。
 
「凄い!」
「ふたりとも国体とか出てたそうです。水泳選手同士の結婚ってんで私も随分期待されてたみたいで」
「ああ」
 
「でも私は県大会で入賞するくらいが精一杯で、全然ダメだったんですよ」
とホシ。
「いや、県大会入賞は充分立派」
と圭織。
 
「でもそれで私、関東大会にも出たこと無いんです。なんか親からはいつも冷たい視線を受けていて。母親からはよく殴られていたし」
とホシは言う。
 
ホシが音楽活動にのめり込んでいったのは、そういう家庭環境ゆえだろうかと青葉は想像した。芸能界に入ってくる人には、しばしば家庭に問題のある人が多い。
 
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「私もお母ちゃんに随分殴られたなあ」
とジャネさんが言うと、お母さんは苦笑している。
 
「水泳選手なんですか?」
「うちも母は国体とかに出てたんですよ。私も事故に遭う前は大きな大会とかに結構出てたんですけどね」
とジャネ。
 
「さっきの泳ぎなら、少し練習すればまた出られるよ」
とお母さん。
 
「そう?実は私も結構いけるかもとさっき泳いでいて思った」
とジャネさんは言っている。
 

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話が長くなりそうだったので、助けた小学生の子と母親とは別れて、青葉たちとステラジオの2人でホテルのレストランに移動した。母親はあらためてジャネとホシに御礼を言っていた。
 
レストランの個室を借りて入り、夕食を一緒に取ることにする。
 
ジャネが午前中にBlind Basketballの試合を見学してきたことを言うとホシたちは興味を示していた。
 
「目の見えない人たちがあそこまで頑張っているのを見てたら、私も頑張らなきゃと思ったんですよ。だから私、パラリンピック目指そうかと思ってたけど、むしろ普通のオリンピックの代表を狙うくらいの気持ちで頑張ろうと思って」
 
とジャネさんが言うと、ホシはいたく感動していたようである。大きな挫折を今乗り越えようとしている彼女の姿を見て、自分自身にも投影しているのだろう。
 
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「興味があるようでしたら、試合のある日を連絡しますよ」
と千里が言う。
 
「よろしくお願いします。見たいです」
とホシ。
 
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