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■春社(10)

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「でもうちで作っている義肢にはちゃんと動くのもあるんですよ」
「体表の微弱電流に反応するとかですか?」
 
「それもよくご存じですね!」
と舞耶さんは本当に感心しているようだ。
 
「逆に単純に人間の身体の動きに合わせてきちんと動く能動式もありますよね」
「そこまでご存じなのは凄い」
 
「自分の意志でちゃんと動いて握ったり開いたりして物を掴める義手は実際に装着している人を見たことあります。複雑な作業は難しいみたいだったけど、それで車の運転とかもできるんですよね。特例で運転免許をもらえたみたいで」
 
「あ、それは私が知っている人という気がする。その人が使っている義手もうちの会社の試作品なんですよ」
「わあ、それは凄い。でも義肢って、機能を優先するタイプと見た目優先のタイプがありますよね」
 
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「ええ。うちはどちらも作っていますが、どちらかというと機能優先のものに力を入れているんですよね」
 
「ああ、そういうメーカーは稀少だから頑張って欲しいですね」
「ですねー。これで給料も良ければいいんですけど」
「まあターゲットが限られている商品ですからね。その人たちには必須の大事なものではあるんだけど」
 

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この日の受付は最初青葉と月音さんがしていたが、告別式が始まるとふたりとも親族席の方に座り、その後は町内会の人たちがしてくれた。その告別式もかなり進み、もう焼香が始まって、喪主席にいる人たち(咲子・山彦・風彦・洋彦・聖火・桃香)が焼香のため祭壇の前に行った頃、郵便局の人が入ってきた。
 
「速達で書留が来ています」
「はいはい」
 
と言って受付に立っていた町内会長の奥さんが代理で受け取り、フルネームでサインした。
 
「あれ?現金書留じゃないのね?」
「はい。普通の書留ですね」
「へー」
 
現金書留で香典を送って来た人は何人かいたが、普通の書留なら、もしかしたら弔電の代わりのメッセージか何かかもと思った彼女は親族席のいちばん後ろに座っていた、佑子さんに声を掛けた。
 
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それで佑子さんと一緒に開封した所、香典袋に為替が入っていた。見ると額面は2万円であった(と2人とも思った)。それで、他の香典と一緒に、控え室の香典の袋が立っている所に立て、その送り主の名前をリストに書き足して「郵送につき会葬御礼未渡」とコメントを付けておいた。
 
これが最後の香典になった。
 

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告別式は11時頃に終わり、その後出棺、火葬となった。初七日法要の後、遺言の公開があり、12:50頃から精進落ち(他地域で言う「精進落とし」を高知県ではこう呼ぶ)が始まる。挨拶が終わった所で、青葉・彪志・芳彦・紗希の4人はエスティマに乗せて先に帰した。
 
一方他の人たちは食事会となり、仕出しやこの日午前中に親族や町内会の女性たちが作った簡単な料理が出される。この食事会が途中からカラオケ大会と化し、大いに盛り上がった!?
 
その後、解散となるが、空港までのバスを運転する予定だった来彦がつい勧められてビールを飲んでいたことが発覚。運転は千里がすることになった。
 

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先に出た青葉たちは結局ひとつ早い便に間に合い、青葉は
 
高知空港1650-1735伊丹空港 新大阪18:46-21:22金沢
 
という連絡が金沢まで戻った。
 
精進落ちに最後まで付き合いバスで高知空港に向かった千里たちは
 
高知空港19:10-19:55伊丹空港 新大阪21:33-22:10米原22:48-0:39金沢
 
という連絡になり、金沢駅そばのホテルに泊まった。最初は桃香が青葉と自分と朋子の服を高岡の自宅まで取りに行くと言っていたのだが、青葉がかなり早く金沢に着いたことから、結局青葉が金沢駅そばの駐車場に駐めたままの朋子のヴィッツを運転して高岡に戻り、翌朝服を持って金沢まで来ることになった。
 

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さて、千里は桃香には自分の入学式に着られるようなフォーマルは喪服と一緒に持って来ていると言っておいたのだが、実際には持って来ていなかった。それで青葉が別行動になっていて「多少怪しいことをしても」大丈夫なのをいいことに高知空港に着くと《きーちゃん》を分離し、彼女には洋彦さんたちと一緒に18:25の羽田行きに乗ってもらった。
 
そのまま用賀のアパートに帰ってもらう。それから千里のフォーマルを入れた鞄を持った状態で、喪服の入った鞄を持った千里といったん入れ替わり、荷物を下に置いてから、再度お互いの身体だけ入れ替えて、元に戻った。それで千里は入学式用のフォーマルの入った鞄を持って新幹線に乗った。
 
その日《きーちゃん》は用賀のアパートですやすやと眠った。ちなみに千里が高知・金沢に行っている間、Jソフトの方には、《せいちゃん》が女装して勤めている。
 
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『なんか最近もう女装しても何とも感じなくなってきたなあ』
と忙しくシステムの設計提案書を書きながら《せいちゃんは》独り言のように思考した。初期の頃は女の服を着ると、あそこが立ってしまってどうにもならなかったのである。しばしば女子トイレの個室に籠もってひとりで処理していた。
 
『何なら、いっそ女に変えてやろうか?おまえ女になったら結構もてるぞ』
と《くうちゃん》が言う。
 
『1万年くらい経ったら考えてみる』
と《せいちゃん》は答えた。
 

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千里は7日は青葉の入学式に参列し、そのあと青葉の服装センスがあまりに酷いので、通学用の私服をみんなで協力して買いそろえてやった。
 
「青葉の服装センスがなってないのは、やはり小さい頃から親に放置されて、服どころか食べていくだけで精一杯だったからだろうな」
 
と桃香はあとで千里と話した。
 
千里と桃香は7日の最終新幹線で東京に戻った。
 

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8日、桃香は会社に出て行くと「無断欠勤」で課長から酷く叱られた。
 
「メールしましたけど・・・」
と言うが
「メールだけでは困る。そういうのはちゃんと電話して僕の許可を取ってくれなきゃ。だいたいいつまで休みたいというのも書いていなかったし」
 
と課長はカンカンであった。結局始末書を書くハメになった。
 
一方千里の方は8日朝、桃香を送り出した後、久しぶりにJソフトに出勤した。千里本人(千里A)が会社に出て行ったのは10月に1度出て行って以来、半年ぶりである。その間、実際には千里B(きーちゃん)と千里C(せいちゃん)が交代で出社していた。
 
千里は朝礼が終わると山口龍晴専務のデスクに行き、休暇願を提出する。
 
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「専務、前々から言っておりました強化合宿の件で、明日から休暇よろしくお願いします」
「あ、了解了解。しかしうまい具合に仕事の切れ目になったね」
「ええ。タイミングが良かったです」
 
千里が担当していたプロジェクトは1月下旬に運用を開始し、当初は多少のトラブルもあったものの現在安定して動作している。2ヶ月安定していれば、あとは千里がいなくても他の人でも何とか対応できるはずである。
 
「じゃオリンピックで優勝してきてね」
「はい。優勝できなかったら責任取って退職しますので」
「いや、それは困る」
 

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千里はこれまで何度も退職願を提出しているのだが、専務が受け取ってくれないのである。
 
千里はこの日午前中は今年入った新人さんの教育でビジネスマナーやプロジェクトの進め方などに関する話をした。この程度なら千里Aにでもできる話である。午後からは昨年秋に入社した女性SE藤さん、およびMTFプレオペの新入社員・石田さんを連れて新規のシステムの話のある会社に行き、挨拶と先方がどのようなことをしたいと考えているのかに関する「お話」のようなものをした。
 
なお先方には石田さんが戸籍上は男性で肉体的にもまだ一部男性であるというのは言ってないし、言う必要もないだろうと専務は言っていた。彼女は秘書検定も取っているし、専門学校に通いながらバイトもしていたので、けっこうそつの無い言動ができていて、先方にも気に入ってもらえたようだ。
 
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彼女は情報処理技術者試験の既にレベル3まで取得しており、このシステムを受注できたら、藤さんがリーダー、石田さんが実質的なサブリーダーとして開発を進めることを予定している。
 

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「でも村山さんって、すごく発想が柔軟ですよね。ふつうのSEには思いつかないようなことを提案されますよね」
と藤さんが言っていた。
 
彼女は専門学校卒で他のソフトハウスで3年間の経験があるが、前勤めていた会社が昨年8月に倒産し、それでJソフトに移ってきたのである。
 
「ああ、私はプログラムが分からないから、こういう発想するんだと思うよ。どうやって実現するかが分からないから、どういうものが欲しいかだけ考える」
と千里が言うと
 
「そういう発想の転換ができるのが凄いです」
 
と向こうは何だか感動していた。むろん彼女は千里が「プログラムが分からない」というのは冗談だと思っている。
 

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この日は千里は5時半で会社を退出し、そのまま北区の合宿所に行った。荷物は今日はぐっすりと用賀のアパートで休んでいた《きーちゃん》が用意しておいてくれて、途中で交換した。
 
この日合宿所に集まっているのは代表候補として3月9日に発表された18名と発表されていない補欠選手4名の合計22名、その他にアジア選手権を制した時と同じコーチングスタッフの山野ヘッドコーチ・高田アシスタントコーチ、チーム代表の坂口さん、ほか数名のトレーナーやメディカルスタッフなどである。
 
合宿は本当は明日からなのだが、夕食後早速自主的に練習を始める。
 
「サーヤ、勘はにぶってないね」
と久しぶりの代表活動参加になった鞠古留実子(旧姓花和)が、旧友で代表は常連の森下誠美から言われていた。
 
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「マチンコを蹴落として代表に入るつもりだから」
「うん。頑張ろう」
 
と言って2人は殴り合っていた!
 
「ところで彼氏はどうなった?」
と百合絵が訊く。
 
「ああ。元気にスカート穿いてお化粧して新しい会社に行ってOLしてるよ」
と留実子。
 
「嘘!?彼、女の子になっちゃったの?」
 
「というのを唆しているんだけどねぇ。俺は女装趣味はねぇと言って拒否してる。でもお化粧は覚えさせた」
 
「サーヤの話もどこまで本気でどこから冗談かよく分からない」
 
「でも新しい会社で女子バスケ部に入らないかって勧誘されたらしいよ」
「なんで〜?」
「今度の会社には男子バスケ部無いからさ」
「ああ」
「コーチ資格で入部してくれないかと言われたらしい。実際自分のトレーニングにもなるからいいんじゃないかと思うけどね」
「うん。それならいいんじゃない?」
「せっかくだから性転換して選手兼任で入ったらと言っておいた。精液は冷凍保存しているし、別にちんちん無くても問題無いから」
「精液保存してあればちんちん要らないんだっけ?」
「うん。必要無い」
「ナイトライフに使わないの?」
「じゃんけんに勝ったら使ってもいいよと言ってるけど、今の所50連敗くらいかな」
「そんなにじゃんけん弱いんだ!」
「それで今年に入ってからはずっとあいつに可愛い服着せてお化粧して、僕のお嫁さんになってもらっている」
 
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「なんか楽しそうだね」
 
「あいつがエプロンドレス着てお料理している所に僕が後ろから抱きしめてそのまま押し倒して入れちゃう」
 
「えっと・・・・」
「もしかしてサーヤが鞠古君に入れるわけ?」
「あいつがお嫁さんだから」
「うーん・・・・」
 
「2人目はあいつに産んでもらおうかな」
 
「あ、交代で産むのもいいよね」
 

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