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■春社(11)

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合宿中の12日には青葉から会社を設立するのに資本金の払い込みをしなければならないが来月頭までお金が無いので一時的に貸してくれないかと言われ、快諾して700万円振り込んでおいた。
 
また青葉がどうもかなり危険な事件に関わっているようだと感じた千里は青葉の後ろで暇そうにしていた《ゆう姫》に語りかけた。
 
『今回のはちょっとやばそうなんです。万一の時に青葉を助けてやったりはなさいませんよね?』
『私はそんなに親切ではない』
と姫様は言う。
 
『それでは私の眷属のひとりを姫様に預けさせてもらえませんか?その存在を青葉に秘匿しておいて欲しいのです』
 
『ああ。そのくらいなら、してもよい』
 
それで千里は万一の場合にはある程度の戦闘も可能な《びゃくちゃん》を姫様に預けた。《びゃくちゃん》は最近、大阪に行って京平のお世話をしていることが多いのだが、そちらは《いんちゃん》に行ってもらった。
 
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16日の昼過ぎ、紅白戦をしている最中にその《びゃくちゃん》から
 
『やばい!青葉を停めて!』
という直信が飛んできた。
 
「すみません!タイム!!」
と大声で言って千里は試合を停めた。
 
「何だ?何だ?」
と高田コーチが言う中、千里はコート脇に置いていたバッグに走り寄り、青葉に電話を掛けて、向こうでとても危険な曲を再生しようとしていたのを停めた。
 
電話は1分以内に終えたが、電話を切ると周囲の視線が冷たい。
 
「すみませーん。妹が誤って劇物の入っている瓶を開けようとしていたものですから」
と千里は弁明する。
 
「ふーん。それで?」
とチーム最年長の武藤博美。
 
「えーっと、今日は全員にカツ丼おごりますから」
と言う。
 
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「カツ丼じゃダメだな。ステーキをおごってもらおう」
と代表チーム主将でレッドインパルスの主将でもある広川妙子が腕を組んで言う。
 
「分かりました。それで」
と言って千里はペコペコした。
 

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その日の夜、部屋で休んでいる時に冬子から電話がある。
 
ゴールデンウィークのローズ+リリーのツアーで、青葉に龍笛を頼んでいたのだが、青葉が何か人の命に関わる案件に関わっていて北陸から離れることができず、誰か他の人に代わってもらえないかということらしかった。
 
「千里はゴールデンウィークの予定は?」
「4月25日から5月11日までオリンピック代表候補の合宿」
「じゃ。だめかー!」
「ちょっと私も誰か吹ける人がいないか探してみる」
「頼む」
 
それで千里は真っ先に海藤天津子に電話してみたのだが、彼女はゴールデンウィークは彼女が主宰している神秘サークルのメンバーを連れて富士登山するということであった。
 
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他にも何人かライブで演奏できるレベルの龍笛の吹き手に電話してみたのだが急なことで、日程の取れる人がいない。
 
千里は正直困ったなと思った。
 

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『千里が吹いたら〜?』
と投げやりな感じで《すーちゃん》が言う。
 
『合宿中に抜け出す訳にはいかないよ』
と千里。
 
『龍笛吹く時だけ千里が行けばいいじゃん』
と《すーちゃん》
『はぁ?』
 
『ああ、なるほどー!』
と《てんちゃん》がその方式に気付いた。
 
『貴人がケイたちについて全国を飛び回る。そして龍笛を吹く時だけ千里に交代する』
 
『え〜〜〜!?』
と千里も《きーちゃん》も言う。
 
『千里はふだん旭明流で吹いているけど、鳳息流でも吹けるだろ?』
『たぶん吹ける』
 
旭明流は留萌Q神社で先輩巫女の寛子さんから習ったもので、最終的には寛子さんの師匠の師匠にあたる名人さんから免許皆伝を認定されている。鳳息流は千葉L神社で、もうひとりの龍笛担当であった巫女さんが吹いていたのを真似させてもらったものである(彼女も交換に千里の吹き方を学んだ)。
 
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『それで吹けば千里だとはバレないよ』
 
『でも私がステージに出ている間、合宿の練習は?』
『5分や10分くらいなら私が代理をするよ』
と《すーちゃん》
 
それでツアーには基本的に《きーちゃん》が付いて回り、龍笛を吹く場面では
 
1.ステージの《きーちゃん》が合宿所の千里と位置交換
2.合宿所の《きーちゃん》が自宅にいる《すーちゃん》と位置交換
 
というステップを踏むことにした。出番が終わったらこの逆をやる。篠笛やフルートくらいなら《きーちゃん》がそのまま吹くことにする。また入れ替わりがバレないようにするため《きーちゃん》はツアー中、プロレスラーのマスクのようなものをかぶって、顔を隠しておくことにした。・
 
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『マスクとか服の下の中身だけ位置交換できる?』
『できるよー』
『凄いことを知った。これ何か使えそうだなあ』
と千里は言って、考えるようにした。
 
ともかくも、何とかなりそうなので、千里は冬子に電話して『禁断の吹き手』を紹介すると伝え、冬子も千里が推薦する人なら信頼するよと言って、龍笛の吹き手は決まった。
 
そういう訳で、ゴールデンウィークのローズ+リリーのツアーでは、シビアな問題に同時に2つ関わり時間の取れない青葉に代わって、千里が(内緒で)龍笛を吹くことにしたのである。
 

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千里はできるだけ他の子たちが眠っているタイミングを見計らって、《くうちゃん》に頼んで、自分と《きーちゃん》《すうちゃん》の3人だけが話し合える空間を作り出してもらった。
 
『まあさっきは、他の子たちの手前、あの計画に賛成したんだけどね』
と千里は切り出す。
 
『そのやり方では確かに物理的には可能かも知れないけど、練習にも演奏にも集中できなくて、中途半端なことになりかねないと思うんだよ』
 
『それで代わりにこういうことにしたい』
と言って千里は、これまで眷属全員に秘密にしてきた、あることを打ち明けて代替案を提示した。
 
『すごい秘密を知ってしまった』
と《きーちゃん》も《すーちゃん》も言う。
 
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『だから基本的にはやり方は同じ。当日、彼女は合宿所の私の部屋で休ませておくから、出番になったら《きーちゃん》は彼女と自分を入れ替えて』
 
『了解。じゃ結局私が基本的にはツアーに同行するのね』
『そうそう。彼女は他の眷属とは違うから、長時間は動かせないんだよ。ステージの間だけ入れ替えて、打ち合わせとかはきーちゃんが聞いといて』
『分かった』
 
『私は出番無し?』
と《すーちゃん》が訊く。
 
『うん。せっかく提案してくれたのにごめんね。でも何なら基礎練習中とかに私と入れ替わって代表合宿を体験してみる?』
 
『なんか、そういうのやってると深みにハマりそうだけど、経験してみたい気はする』
『じゃ、きーちゃん、その時はよろしく〜』
 
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『OKOK』
 

合宿は4月9日から20日まで12日間、みっちりと行われた。今回代表メンバーは大幅に若返っており、それに合わせてかなりハードな練習になっている。それで元々体力の無い数名が「今回の合宿はきつーい」と言って、途中でへばってしまうこともあった。
 
4月18-19日は男子の代表候補が世界最終予選に向けた第2次合宿に来たものの、女子の方が優先でコートは使わせてもらった。しかし1回だけ男子代表と女子代表で練習試合もした。
 
試合はさすがに男子が勝ったものの
「女子強ぇ〜」
「スピードがほとんど男子と変わらん」
「全然気が抜けなかった」
「一瞬の隙にやられてしまう」
「さすがアジアチャンピオン」
 
と言って男子代表選手たちが、女子代表選手たちを褒め称えていた。
 
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「ところで男子で1人か2人、ちょっと手術して女子チームに参加してくれたりはしない?」
などと高田コーチが冗談を言っていた。
「今女子代表になればリオに確実に行けるよ」
 
何人か顔を見合わせていたものの
「大丈夫です。俺たちもOQTを勝ち上がってリオに行きますから」
と前山さんが言っていた。
 

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千里の合宿は20日夕方終了した。
 
「じゃ次は25日〜」
「また頑張ろうね〜」
と言って別れる。
 
千里は合宿所に駐めていたアテンザに乗ると都内の小さな体育館に向かった。そこでひとりでバスケの練習をしている人物がいる。
 
「お疲れ〜、貴司」
「お疲れ〜、千里」
「じゃちょっと手合わせしよう」
 
ジャージの上下を脱ぐと、下はチーム名の入ってないバスケットウェアを着ている。合宿所を出る時にこれを着けて来ていたのである。
 

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千里と貴司は、1on1やシュート合戦、ゴール下の攻防練習、またパス練習などで2時間ほど汗を流した。
 
「結構いい汗掻いたね」
「私たち結構健全なデートしてるよね」
「僕は健全じゃないデートの方が好きだけど」
 
時間が遅いし、他に体育館を使っている人もいなかったので、用具室の中でふたりで一緒に着替え、ついでにキスだけした。
 
体育館の人に御礼を言って出る。アテンザにふたりで乗って、首都高から中央高速に乗った。
 
「だけど、代表合宿は何か女子は凄い気合いが入っていたね」
「男子は何か動きが鈍かった。もう少し気合い入れた方がいいと思うけど」
「うーん。。。平均年齢高いからなあ。女子は今回物凄く若返ったみたいね」
「うん。大リストラしたね。でも若い選手が多いから練習内容がこれまでの1.5倍になっている感じ」
「大変そう」
 
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「ちなみに貴司は手術受けて女子チームに参加したりはしないよね?」
「遠慮しとく。それに今の女子代表のレベルなら、僕が性転換して参加してもロースターに残れるかどうか微妙だと思う」
「気が弱いこと言ってるな」
 
「実際問題として僕の身長ならセンターやってと言われそうだけど、僕はゴール下で、鞠古や森下に勝てる気がしないよ」
「まああの子たちはゴール下で10年15年戦ってきているからね」
 
最初は貴司が運転し、談合坂SAで休憩。ここで夕食兼夜食という感じの食事を取った。車はSAの建物から最も遠い付近に駐めており、食事のあとでトイレにも行った後、車に戻ってフロントグラスにはサンシェード、横の窓にはカーテンを取り付けて目隠しする。
 
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ふたりで後部座席に乗り、ロックを確認した上でキスした。そのまま抱き合う。
 
むろんふたりは「セックスは」しない。
 
ふたりは貴司もオリンピック切符を掴めたらセックスするという約束である。
 

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貴司が結局眠ってしまったので、千里は自分が運転席に座った上で、助手席に《きーちゃん》を座らせる。
 
その後《きーちゃん》は大阪にいる《いんちゃん》と位置交換した上で、更に千里と位置交換した。これで千里は大阪に来ることができて、《きーちゃん》は結果的に運転席に座るので、そのまま《きーちゃん》が車を出して、夜の中央道を走って行った。《いんちゃん》はそのまま助手席で仮眠する。
 

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大阪のマンションではもう阿倍子さんは居間のソファの上で眠ってしまっていた。千里は彼女に毛布を掛けてあげて、部屋の灯りを消した。
 
京平は起きて独り遊びしていたようだが、千里を見ると「カーカー」と言って嬉しそうにする。
 
『京平、おかあちゃんのおっぱい飲む?』
と尋ねると嬉しそうな顔をするのでベビーベッドから抱き上げて居間の床に座って京平を抱きおっぱいを直接飲ませてやった。
 
これは実は千里と京平の「日常」なのである。
 
千里が来られない日は女の眷属が千里に擬態して遊んであげたりもするが、千里以外はおっぱいも出ないし、京平には誰が擬態しているかの区別が付いているようで「きーきー」とか「すーすー」とか呼びかけてくる。
 
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このマンションは貴司が仕事やバスケ活動、更には浮気!?で不在がちなので、阿倍子と京平の2人暮らしに近い状態ではあるものの、実際には夜中になると千里やその眷属たちに伏見の人たちまで入り乱れて、かなり賑やかなことになっていたりする。伏見の人たちは原則として千里たちにも見られないようにしているようだが、ノリのいい《てんちゃん》に見つかって『まあまあ』とか言われて、京平を入れて3人で遊んだりしたこともあった。
 
今夜の京平は千里のおっぱいを飲みながら、時々口を離しては色々な声を出して、様々な出来事の報告をしているような感じだ。それで結局30分ほどおしゃべりをした後、眠ってしまったので、そっとベビーベッドに置いて布団を掛けてあげた。
 
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京平とのふれあいが終わると千里は伏見の人に向かって会釈する。向こうは見られているとは思っていなかったようでビクッとしていた。それで千里が《きーちゃん》に連絡すると《きーちゃん》は車を非常駐車帯に駐め、まずは自分と千里を入れ替え、その後《いんちゃん》と入れ替わった。
 
結果的に千里が運転席、《きーちゃん》は助手席に来る。
 
『じゃこの後は私が運転するね』
『うん。途中で交替しよう』
 
それで千里の運転で中央道を走り続け、阿智PAから桂川PAまで《きーちゃん》が運転、最後はまた千里が運転して、朝6時頃、千里(せんり)のマンション前に到着する。
 
「貴司着いたよ」
「わ、完璧に熟睡してた」
「また頑張ってね」
「うん、そちらもね」
 
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ふたりはキスして別れた。千里は車を近くの月極駐車場に入れると、新幹線で東京に帰還した。新幹線の中ではぐっすりと寝ておいた。
 

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