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■春社(7)

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しばらく病室でジャネとお母さんと話をする。ジャネは外出するので1年半ぶりの外出着で、ブラウスとロングプリーツスカートを身につけている。やがて、圭織が来て、ジャネのお父さんも来て病院を出る。今回の外出では病院の車椅子を借りたのだが、ジャネは1年半ぶりに病院の建物の外に出て「外の空気はいいなあ」と言っていた。
 
お父さんは友人から借りたというアルファードを持って来ていたので、それに協力してジャネを乗せ、金沢駅まで行った。お父さんは学校の体育の先生をしており、週末は部活の生徒たちに付いているとのことで、金沢に残る。しかしホームまではお父さんが車椅子を押して行った。
 
青葉、圭織、ジャネ、お母さんの4人で新幹線に乗り込み、お父さんの見送りで東京に向けて発車した。グリーン車には初めて乗ったという圭織が
 
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「すごーい。乗り心地がいい」
と感動していた。
 
その日は取り敢えず東京駅近くのホテルに泊まった。
 

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ホテルで一息ついていたら明日香から電話が掛かってくる。
 
「お疲れ〜。今日はどうだった?」
 
「うん。自分としてはまあこないだよりうまく運転できた気はしたんだけどね」
「何か問題あった?」
 
「いやあ、うっかり舟橋JCTで能登方面に行っちゃって」
「あそこは難しいんだよ」
 
「車線変更するの忘れててさ。気づいた時はもう七尾方面に行くしか無かった」
「まあ仕方無いね。慣れてきたら、あそこ分岐の直前にも高岡方面に進行できる場所があるんだけど」
 
「うん。それには気づいたけど、私の腕ではあそこは進行できなかった」
「初心者には難しいんだよね〜」
 
「仕方無いから次のICで降りたら、なんか凄い所で」
 
「あそこは次の能瀬ICで降りちゃいけないんだよ。能瀬ICは難しいもん。その更にひとつ次の狩鹿野ICまで行った方がいい」
 
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「そうだったのか!20分くらいあの付近の田んぼの中を彷徨ったら、美由紀がうるさかった」
 
「あはは」
 
「でも身にしみてあそこの怖さが分かったから次は行けると思う」
「うん。月曜日は私そちらに戻ってると思うけど、月曜日の帰りも運転する?私が助手席に乗ってあげるから」
 
「うん。運転したい!」
と明日香は明るく言った。
 

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さてまた1ヶ月半ほど時を戻す。
 
千里は4月1日付けでレッドインパルスの一軍正選手となり、当日は歓迎会に出席した。もっともみんなから
 
「去年もいたよね」
「いや、10年くらい前からいた気がする」
 
などと言われた。
 

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4月1日には千里が勤めている(?)Jソフトウェアでも入社式が行われた。現在の社員は32人。これに8人の新人さん(大卒3名・専門学校卒5名)が加わる。実際にはこのうち数人は2月頃からバイト資格で出社して補助作業を中心に仕事をしてくれている。8人の内男性3人はビジネスススーツ、女性5人はJソフトの女子制服を着ている。
 
千里本人に代わって出社して彼らを見ていた千里Cこと《せいちゃん》はあれ〜、千里の女子制服は誰が持っているんだ?と疑問に思った。千里A,B,Cと「3人1役」をしているので、しばしば物が3人の間で行方不明になることがある。更に千里Aが物忘れの天才である。制服については、昨年の春には結構女子制服を着て勤務していたものの、最近はずっと私服である。他の女子社員でも女子制服を着ているのは事務の子くらいだ。矢島さんにしても竹下さんにしても女子制服を着ている所を見たことが無い。おかげで《せいちゃん》はあまりスカートを穿かなくて済んでいる。女装自体には随分慣れてきたものの、いまだにスカートは苦手である。
 
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また《せいちゃん》は今日入社した8人の中で1年後まで残るのは何人だろうとも思っていた。昨年4月に入社したのは千里を含めて5人だったが、千里以外の4人は全員半年以内に辞めてしまった(昨年度入社組では途中入社の3人が残っている。途中入社自体は10人くらい居た)。
 
専門学校卒の中で佐久間安祐美という子が
「私は女ではありますけど、男並みに仕事するつもりですので、どんどん鍛えてください」
と本当に男っぽい口調で言うので、1日付けで係長に昇進したばかりの矢島さんが
 
「うん。頑張ってね」
と言った上で
「まあうちはそもそも男女関係無く仕事してる気もするけどね」
と付け加えた。
 
最後に自己紹介+誓いの言葉を言った石田光子という子は、ややおどおどした感じで
 
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「実は私、戸籍上は男なんですけど、普通の女子と同様に頑張りますのでよろしくお願いします」
と、ふつうに女の声に聞こえる声で言う。
 
「別に戸籍で仕事する訳でもないから戸籍の性別はわりとどうでもいい」
と長山次長が言う。
 
「そもそもうちの会社は、女だからといって軽い仕事を割り当てられるってこともないから、逆にOLしたいと思ってたら、期待外れかも知れないけどね」
と矢島さんが付け加えた。
 
「千里ちゃん、何か付け加えることある?」
 
と矢島さんがこちらに振るので、《せいちゃんは》
 
「まあ女子トイレに入って悲鳴あげられなければ、問題無いんじゃない?」
と言った。
 
すると千里の1年先輩の竹下さんが
「ごめーん。私、昨年実績で3回、女子トイレで悲鳴あげられた」
と言っていた。
 
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千里はレッドインパルスの入社式から1日置いて4月3日には今度は3月いっぱいで辞めた40 minutesの送別会をしてもらったものの
 
「選手としては辞めてもオーナーとしては残るんだから、送別会の必要もないんだけどねえ」
 
などと言われる。
 
そしてこの日、その送別会の最中に冬子から電話があり、★★レコードのドライバー・チームが解散という噂があることを聞く。
 
結局、ドライバーチームの恩恵を特に受けている6人で集まって意見交換することにし、千里はこの送別会の会場からそのままアテンザを運転して、密談をおこなう上島雷太さんの家まで行った。
 

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話し合いは夕方19時から、夜通し続いたが、話の流れとしては、★★レコードがしないのなら、この6人で共同で会社を設立し、その会社でドライバーを雇うという方向で早い時期に固まった。それで上島さんと後藤さんのふたりが代表になって★★レコード側と交渉するということになる。
 
しかし40 minutesの運営会社を作り、青葉が個人会社を作り、ここでもまたドライバー会社設立って、会社作りが続くなと千里は思った。
 
上島さん宅での話し合いは明け方まで続いたものの、雨宮先生は途中でダウンしてしまう。明け方、後藤さんと田中さんが「少し寝せて」と言って奥の部屋に行き仮眠をしたのを機に、千里と冬子は退出することにする。
 
「どうやって帰る?タクシー呼ぼうか?」
と冬子が訊くので、千里は
 
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「車で来ているから冬のマンションまで送るよ。その後、私は今日は40 munutesの運営会社設立で、9時に立川さんと一緒に法務局に行って、そのあと創立記念のお茶会の準備」
と答える。
 
「忙しいね! でも徹夜してて運転大丈夫?」
「ああ。私目立たないように適度に寝てたし」
 
それで千里のアテンザに冬子を乗せて車を出す。実際には千里は運転席に座るなり『きーちゃん、運転よろしく〜』と言って眠ってしまう。それで《きーちゃん》が『やれやれ』という顔をして、千里の中に入って車を運転し、冬子を恵比寿のマンションに置いてから江東区の40 minutesの運営会社の事務所前に付ける。ここで千里を起こす。
 
「ありがとう。じゃ、このまま運転頼むね。少し待ってて」
と言って千里は《きーちゃん》を運転席に残したまま自分だけ分離して運転席から降り、道路のそばから立川さんに電話する。立川さんとお願いしていた司法書士さんが降りてくるので、千里が助手席に乗り、2人を後部座席に乗せて
 
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「じゃ、きーちゃん、法務局までよろしく〜」
と言う。
 
それで《きーちゃん》はハザードランプを消して方向指示器を点けて発進。2kmほど離れた法務局墨田事務所まで行った。3人を降ろしてから《きーちゃん》は車をいったん、いつもの練習場所の体育館の駐車場に駐めた。
 
なお、ここの法務局は駐車場がわずか3台分しかなく、といって駅から歩くと結構な距離があるという困った場所にある。
 

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法務局での登記手続きは、番号札を先に《こうちゃん》に取っておいてもらったので、あまり待ち時間もなく順番となる。そして書類はあらかじめ司法書士さんにチェックしてもらっていたし、その司法書士さんに同席もしてもらっていたのでスムーズに終了する。
 
それでまた《きーちゃん》に迎えに来てもらい、司法書士さんをそちらの事務所まで送った後、千里と立川さんは40 minutesの事務所まで送ってもらった。
 
この日は14時と19時に簡単なお祝いの会を開くことになっていたので、千里と立川夫人の潤(うるう)さん、総務部長の浩子、そして《きーちゃん》の4人でビールやおつまみなどを買いに行ったり、狭い事務所の中に折りたたみ式のテーブルを並べたりした。このテーブルは、練習場所に使わせてもらっている廃校の備品を許可を取って借りてきたものである。これを運ぶのに《きーちゃん》と千里・浩子は体育館と事務所を2往復した。
 
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駐車スペースは2台分借りていて、お昼過ぎまでは立川さんの車と千里の車が使用していたのだが、車で来るメンバーがいた時のために2台とも13時頃、《こうちゃん》に頼んで体育館の方に移動させた。
 
13時半頃から、麻依子や夕子など、主婦のメンバーが子連れで集まってくる。麻依子の子供・希良々ちゃんももう3歳で結構おしゃべりする。「ジュース飲みたい」などと言うものの「甘いものはダメ」とママに言われて、結局お茶をもらって飲んでいる。
 

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14時を少しすぎた所で
 
「キャプテンが来てないので、不肖副キャプテンの私が乾杯の音頭を取らせていただきます。株式会社豫拾分および女子バスケットチーム40 minutesの将来の発展と皆様の幸福および女らしさ増進を祈って乾杯!」
 
と麻依子が言って、みんなでビールやコーラなどで乾杯する。
 
「女らしさと言っちゃったけど、一部男子スタッフもいるが」
「性転換してもいいよー」
「立川社長が性転換すると、潤さんが困ると思う」
「私は別にかまわないよー」
「どうします?社長」
 
立川さんは苦笑していた。
 
「なんか結構おつまみがたくさんある」
「足りなくなったら買ってくるから遠慮無く食べてね〜」
「お昼食べ損ねた人のためにチキンとかも買ってるよ〜」
 
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選手たちは千里とほぼ同世代以下の人がほとんどであるが、早く結婚した人の中には、もう5〜6歳の子供がいる人もいる。そういう子供たちはハンバーガーやおにぎり、チキンなどにかぶりついてご機嫌である。
 

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